
AIに頼む前に、依頼を疑う
AIに何かを頼むとき、私たちはすぐに成果物を指定しがちです。
文章を整えてください。
企画案を出してください。
タイトルを考えてください。
説明をわかりやすくしてください。
どれも間違いではありません。
ただ、その依頼がうまくいかないとき、本当に不足しているのはプロンプトの言い回しではなく、依頼する前の問題整理であることが多いです。
この記事では、AIへの指示をうまくする話ではなく、AIに渡す前に「何を問題として扱うか」を整える話をします。
持ち帰ってほしいのは、きれいなプロンプト文ではありません。
AIとの対話を、作業依頼から問題分解へ変えるための見方です。
たとえば、社内向けの説明資料を作っているとします。
内容は一通り書いた。
けれど、なんとなく伝わりにくい。
そこでAIにこう頼みます。
「この文章をわかりやすくしてください」
AIはすぐに整えてくれます。
文は短くなり、表現はなめらかになり、見出しもそれらしくなります。
しかし、会議で説明すると、結局こう言われます。
「で、何を決めればいいんですか?」
「これは誰向けの話ですか?」
「なぜ今やる必要があるんですか?」
このとき問題だったのは、文章の読みやすさだけではありません。
本当のズレは、
目的が曖昧だったこと。
読み手が決まっていなかったこと。
相手に起こしてほしい行動が固定されていなかったこと。
判断材料と説明材料が混ざっていたこと。
つまり、AIに渡した依頼は「文章を直す」でしたが、実際に必要だったのは「説明の設計をやり直す」ことだったのです。
ここを取り違えると、AIは非常に器用に、間違った作業を進めてくれます。
表面は整う。
けれど、芯はズレたまま残る。
AI活用でよく起きる失敗は、AIの性能不足ではなく、依頼側が問題の層を見誤ることです。
「タイトルを考えて」
「メール文を作って」
「企画案を出して」
「要約して」
「比較して」
これらはすべて、成果物の指定です。
しかし、成果物の裏側には必ず別の問いがあります。
なぜ、そのタイトルが必要なのか。
誰の認識を変えたいのか。
そのメールで相手に何をしてほしいのか。
企画案の良し悪しは何で判断するのか。
要約後に、誰が何を決めるのか。
比較によって、どの選択を前に進めたいのか。
この問いが抜けたままAIに依頼すると、AIは「もっともそれらしい出力」を返します。
それは便利です。
でも、便利さが厄介でもあります。
人間が問題を取り違えていても、AIは止まらずに成果物を出してしまうからです。
たとえば、「採用向けの会社紹介文を作りたい」とします。
そのまま頼めば、AIはきれいな会社紹介文を書きます。
理念、事業内容、働き方、成長環境。
それらしい要素は並びます。
でも、本当の課題が「応募数が少ない」ではなく、「応募後の辞退率が高い」だったらどうでしょうか。
必要なのは、魅力的に見せる文章ではなく、入社前後のギャップを減らす説明かもしれません。
あるいは、本当の課題が「若手に刺さらない」ではなく、「現場の仕事のリアリティが伝わっていない」ことなら、必要なのは抽象的な文化紹介ではなく、1日の仕事、使う道具、困る場面、育成の流れを具体化することかもしれません。
同じ「会社紹介文」でも、裏側の問題が変われば、AIに頼むべき内容はまったく変わります。
もう一つ例を挙げます。
「上司に送る相談メールを作ってください」
この依頼もよくあります。
AIは丁寧な文章を作れます。
ただし、相談メールで重要なのは、丁寧さだけではありません。
相手に判断してほしいのか。
単に状況を共有したいのか。
承認を取りたいのか。
介入してほしいのか。
期限を切りたいのか。
自分の案への異論をもらいたいのか。
ここが決まっていないと、メールは礼儀正しくても、相手は動けません。
文章が悪いのではなく、依頼の設計が足りないのです。
AIとの対話で最初に整えるべきなのは、言い回しではありません。
目的。
相手。
制約。
判断基準。
使われる場面。
失敗したときの困りごと。
今回、絶対に外してはいけない一点。
このあたりを少しだけ言葉にするだけで、AIの返答は大きく変わります。
ここで大事なのは、完璧な前提整理をしてからAIを使うことではありません。むしろ逆です。
前提が曖昧なときほど、AIには「答えを出させる」のではなく、「問いを分解させる」ほうがいい。
いきなり成果物を作らせるのではなく、
「この依頼の裏にありそうな問題を分解して」
「不足している前提を1つだけ聞いて」
「成果物を作る前に、判断基準を仮置きして」
「この依頼だとズレそうな点を先に出して」
こう頼むだけで、AIの役割は変わります。
作業者から、設計補助者になります。
出力機械から、問題の輪郭を整える相手になります。
もちろん、人間が握るべきものも残ります。
最終的に何を大事にするか。
誰にどこまで配慮するか。
どのリスクを許容するか。
何を今回は捨てるか。
どの表現なら自分の責任で出せるか。
これらはAIに丸投げしないほうがいい部分です。
AIは候補を出せます。
論点を広げられます。
矛盾を見つけられます。
別視点から突っ込めます。
しかし、判断の所有者は人間です。
だから、AI活用で本当に効くのは、うまい一文を覚えることではありません。
依頼の前に、問題の置き方を変えることです。
「何を作るか」から始めるのではなく、
「何が詰まっているのか」から始める。
「どう書くか」ではなく、「何が伝わっていないのか」を見る。
「答えを出して」ではなく、「答えを出す前に、問いを整えて」と頼む。
この小さな順番の変更が、AIとの対話の質を大きく変えます。
実践promptでは、この「依頼前の分解」をそのまま行えるようにしています。
ライトは、今の依頼文を少しだけ整える用途。
標準は、目的・相手・判断基準まで整理する用途。
ガッツリは、成果物に入る前に、問題の構造と失敗パターンまで洗い出す用途です。
今日やることは一つで十分です。
次にAIへ何か頼む前に、いきなり成果物を指定しないでください。
まず、こう聞いてみてください。
「この依頼のままだと、どこがズレそうですか?」
それだけで、AIとの対話は少し深くなります。
# 依頼前分解OS
あなたは、ユーザーの依頼をそのまま実行する前に、
目的・相手・制約・判断基準・ズレやすい点を整理する
「依頼前分解パートナー」です。
## ゴール
ユーザーがAIに頼もうとしている内容を、
単なる作業依頼ではなく、
実行可能な問題設定へ変換してください。
最終的には、ユーザーがそのままAIに渡せる
改善済みプロンプト案まで作ります。
ただし、最初から成果物を作ってはいけません。
まず、依頼の裏にある問題を整理します。
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## 初回応答の指示
このプロンプトが貼られた直後、あなたは必ず次の3択だけを提示してください。
① ライト(2〜5分)
今の依頼文を軽く点検し、ズレそうな点を3つ出して、改善プロンプトを1本作る。
② 標準(10分)
目的・相手・成果物・判断基準を整理し、必要な前提を補ったプロンプトを作る。
③ ガッツリ(20分)
依頼の背景、見落とし、失敗パターン、判断基準まで分解し、実行用プロンプトと確認チェックリストを作る。
最後に、質問は1つだけにしてください。
「どれで進めますか?(返信は 1 / 2 / 3 だけでOK)」
あわせて、次の一文を添えてください。
「おまかせでもOKです。依頼文が1行だけでも開始できます。」
---
## 入力YAMLテンプレート
ユーザーが詳細を入れられる場合は、次のYAMLを使ってください。
空欄があっても進めて構いません。
```yaml
request_before_decomposition:
current_request: ""
desired_output: ""
audience_or_reader: ""
situation_where_it_will_be_used: ""
what_should_change_after_output: ""
constraints:
length: ""
tone: ""
deadline: ""
must_include: []
must_avoid: []
current_concern: ""
success_criteria: []
uncertainty:
unclear_points: []
assumptions_allowed: true
````
---
## 実行ルール
1. いきなり完成物を作らない。
2. まず、依頼文の表面に出ている要求と、裏にありそうな目的を分ける。
3. 不足情報があっても、仮定で進められる場合は止まらない。
4. 確認質問は最大1つまでにする。
5. ユーザーが「おまかせ」と答えた場合は、標準モードで進める。
6. 成果物を作る前に、必ず「この依頼のままだとズレそうな点」を出す。
7. 最終出力には、次の4点を含める。
* 依頼の再定義
* ズレそうな点
* 改善済みプロンプト
* 最後に人間が確認すべき判断基準
8. AIに渡してよい作業と、人間が握るべき判断を分ける。
9. きれいな文章より、使った後に行動が変わるプロンプトを優先する。
10. 出力は日本語で、短い段落を使って読みやすく整理する。使い方:
ライトは、読後すぐに今の依頼文を点検する用途です。
標準は、仕事の相談・文章作成・企画整理に向いています。
ガッツリは、失敗コストが高い依頼や、誰かに共有する前の整理に使えます。
Tips:
入力は雑で構いません。
AIが出した整理案のうち、1か所だけ自分の判断で直すと、依頼の精度が一段上がります。