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Photo bysugitamokkoujo13

子供が、うそをつくということ。

    9才のある日、電話が鳴る。
    「もしもし。」
    「ちい…か?」
    「うん。」
    「お父さんだよ。」
    「うん。」
    「……。」
    とつ然の電話…。
    電話の向こうで、泣いているのが、わかる。

    「新しいお父さんは、やさしくしてくれるか。」
    「うん。」
    わたしは、うそをついた。

    「そうか。良かった…。でも、もし困ったことが、あったら、いつでも電話をかけておいで。」
    優しく、そう言って、電話番号を教え、電話は切れた。


    私が2才の頃に両親は別れている。写真すら、ないので、父親の顔も声も知らない。
    でも、この電話の相手が、本当の父親である事は、すぐに分かった。不思議なものだ。

    この出来事の後、小学、中学、高校。そして、社会人になってからも、私から電話は、かけなかった。
    なぜなら…。

    あの頃、母親も再婚し家を出ていた。
    残された私は、祖父母に育てられていた。
    父親は、それを知らずに、電話をかけて来た。私には、新しい家族が、あると思って。

    さらに父親にも、新しい家庭がある事を大人たちの会話から、私は知っていた。だから私からの連絡は、しない方がいいと思った。

    もう、それぞれが、それぞれの家庭で生活している。
    それを壊したく、なかった。子供なりに考えての事だった。

    ただ、あの時、急いでメモした電話番号だけは、ずっと、大切に持ち続けていた。
    それが唯一の父親との繋がりだと思えたから。

    家を出た母親とは、遠く離れて暮らしていたが、
    手紙のやり取りをして、連絡は取り合っていた。
    祖父母との生活も、穏やかであり、楽しく幸せだった。
    そう考えると、私は恵まれていたと思う。

    それでも、父親からの電話の事は、誰にも話さなかった。
    9才の私は、隠したのだ。何故か、その方が、いいと思った。

    その後、父親からも、電話が来る事は、なかった。

    私も大人になり、自分の家庭を持ち、長い年月が立った頃。

    知らない女性から電話が入る。
    父親の再婚相手の娘さんらしい。
    父親が、病気で亡くなったそうだ…。


    「あの時の電話のうそが、ばれちゃったね。嘘ついて、ごめんね。」
    空を見上げながら、うそをついてしまった事を謝る。
    あの時の嘘が正しいことだったのかは、今でも、わからない。
    でも天国に旅立った父親は、なぜ、私がそうしたのかをわかってくれていると思う。

    自分でも、自分の感情が、よくわからない。
    あの電話での短い会話しか、思い出が、ないのだから。
    ただ、自然と涙が込み上げてくる。それが、答えなのだと思う。



    後から知った事だが、父親の電話番号は変わっていなかった。
    何十年もたっているのに…。ずっと、そのままだった。

    私から電話が来るかもしれないと、変えずに、いてくれたのだろうか。
    今となっては、確かめようも、ないけど。
    番号が変わっていなかったことを嬉しく思う、9才の小さな私が、そこには、いた。

     
     
    せっかちで、そそっかしいけど笑ってね。あなたには、笑っていて欲しいから。これからも、いろんなコトに挑戦、体験していくよ!

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