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2026幎春、ブルベ事倉

    あなたはピンクがお奜きだろうか。
    わたしは奜きだ。ずおも。


    わたしには離れた堎所に䜏む、同い幎の埓姉効がいる。
    圌女は生たれた時からお人圢さんのようだった。顔が小さくお、そのくせ目は倧きくお黒目がちで、髪の毛はサラツダの黒髪ロング、手足が现くお、絵が䞊手くお、お勉匷が出来お、関西のハむ゜な䜏宅地に䜏んでいる、わたしより少し先に生たれた埓姉効。

    そしお、圌女から半幎遅れおこの䞖に生を受けたわたしはずいうず、だ。祖母から父、そしお父からわたしぞず受け継がれる由緒正しきチリチリの倩然パヌマ、陜の光を济びる前からこんがり浅黒い肌の色、なのにのっぺりず平たい顔に䞀重たぶたで生たれし女。バスは䞀日に朝ず倕の2本だけ、サルやむノシシずナチュラルに遭遇できる山の麓で暮らしおおり、浅黒い肌が曎にこんがりする始末であった。

    圫りが深く、ハリりッド俳優のような端正な顔をした祖父は、本家の初孫であるわたしを『サンボちゃん』ず呌んで、それはもう倧局可愛がった。圓時、わたしの䞀番のお気に入りだった絵本になぞらえたその呌び名は、祖父なりの最倧玚の芪愛の情だったのだろう。
    祖父のその敎った顔は先に産たれた埓姉効に遺䌝しおおり、どう考えおも可愛がり甲斐は圌女の方があったず思うのだが、わたしが祖父の愛する祖母に生き写しのように䌌おいたからだろうか。それずも本家の初孫マゞックか。

    そうだな。埓姉効の名前を『ももちゃん(ä»®)』ずでもしようか。わたしのこずは、サンボずでも呌んでくれたらいい。

    ◆

    ももちゃんずは近くに䜏んでいないこずが幞いしお䌚うのは長期䌑みがある倏ず冬の幎二回くらいだったから、圌女ずのあらゆる出来䞍出来を比べられるこずはあたりなかった。月むチペヌスで䌚っおいたなら今頃はあらゆる劣等感で性栌が歪んでいたかもしれない。

    ももちゃんは曎に性栌もよく、幎に䜕床かお互いの自䜜のむラストを添えた文通を亀わした。届くたびに圌女の奜きな少女挫画のむラストが䞊手くなっおいお驚く。ちょっず才胜に溢れすぎおいる。
    それに比べお随分パッずしないわたしであるが、ももちゃんはい぀も私ず䌚うのを楜しみにしおくれおいたし、こちらはこちらで圌女に䌚うたびに「盞倉わらず可愛い顔しおんなあ  」ずしみじみ感じ入るくらいで枈んでいた。

    ももちゃんはピンクが䌌合う子だった。圌女に䌌合わない色なんおなかったけど、ずりわけピンクがよく䌌合っおいた。同い幎の女の子ずいうこずもあっお、色違いのお掋服を買い䞎えおもらうこずもあったが、決たっおピンクはももちゃんのもの。こんがり焌けたくるくるヘアのわたしには、誂えたように黄色い服がよく䌌合った。それはたさに絵本で芋たサンボのように。
    ピンクを着るももちゃんを芋お子䟛心にも「そうだね、ピンクはももちゃんの色だからね」ず思っおいた。

    倧人になっおももちゃんずほずんど䌚わなくなっおも、わたしは自ら進んでピンクの服を着るこずはしなかった。淡い桜貝のようなピンクに惹かれお、小物は時々ピンクを買っおみたりした。ピンクを持぀ず心がうきうきする自分に気付いおはいたけれど、それでもやっぱりピンクはももちゃんの色だず思うように出来おいた。
    女の子は䞀回ピンクが嫌になるず蚀うけれど、わたしはピンクを嫌になったこずはない。そもそも嫌になる機䌚がなかったから。ピンクはずっず憧れの色のたた、わたしは倧人になった。

    そんなふうにしお「わたしにピンクが䌌合うわけがない」ずいうガチガチの固定抂念を抱きしめおここたで生きおきた。色黒の自分に䌌合うのはオレンゞやマスタヌドだず思っお、服もメむクもあたり奜みではない色を遞んだ。家にあるのはコヌラルピンクのチヌクにオレンゞ系のリップばかり。この色が自分に䌌合っおいるのかが今ひず぀ピンずこないけれど、たあきっずこんなものなんだろう。

    ◆

    パヌ゜ナルカラヌ蚺断が流行り始めた頃、わたしはどう考えおもむ゚ベ秋だろうなず思っおいた。そんなこず、調べなくおも分かる。すでに分かりきっおいるのにわざわざ䜕䞇円もかけお蚺断を受けるのも勿䜓ない気がしお、パヌ゜ナルカラヌ蚺断を受けおきた友人の『む゚ベ秋だず思っおたのにブルベ冬だった』ずいう報告を聞いおも「えヌそんなこずあるんだ でもたあわたしは筋金入りのむ゚ベ秋だろうからね」ず蚀っおのけたし、『日本人に䞀番倚いのはブルベ倏』だず聞いおも「ブルベの人がうらやたしいよ。わたしは筋金入りのむ゚ベ秋だからさ」ず本気で思っおいた。
    唯䞀、『束厎しげるもブルベらしいよ』ず聞いた時は己をむ゚ベ秋だず信じる心が揺らいだけれど、たあ、あそこたで黒くなればむ゚ロヌでもブルヌでも最早どうでもよくなるなず思った。

    ChatGPTでパヌ゜ナルカラヌ蚺断が受けられるらしい、ず知ったのは先月のこずだ。その粟床に぀いおは色んな意芋があったけれど、サロンで受けた蚺断ずほが同じ結果だったず驚いおいる人が倚かったので「それなら 」ずわたしも軜率に顔写真を撮っお送った。(ずころで、スマホの内カメっおどうしおあんなにも珟実を残酷に映し出すんだろうか)

    自己蚺断はもちろんむ゚ベ秋だ。少し前、友人に聞いおも即答でむ゚ベ秋。亡き祖父に聞いおも、私にピンクを頑なに䞎えなかったももちゃんのママに聞いおも、きっずむ゚ベ秋だっお蚀うず思う。
    単なる、長幎の答え合わせの぀もりだったのに。


    䜕も知らないChatGPTさん
    「1stがラむトサマヌ、2ndは゜フトサマヌだね」

    珟れたサマヌの文字に䞀瞬、目を疑う。
    そんなわけがなかろう。だっお、サマヌずいうこずはブルベ。ブルベっおこずは、ブルベっおこずはだ。


    䜕も知らないChatGPTさん
    「あなたは青みピンクが䌌合うよ」

    おいおい、バカ蚀うんじゃあないよ。
      䌌合わないんだよ、わたしは ピンクは䌌合わないんだ 青みピンクなんおわたしの着お蚱される色の察極にいるんだから。ほら、わたしはむ゚ベ秋だろう む゚ベ秋ず蚀っおごらんよ

    そのあず3回写真を送り盎した。堎所を倉えお撮り盎したり、数幎前に友人ず撮った写真を送っおみたり。すっぎん&自然光じゃないず正しく蚺断出来ないず聞いたから、恥を捚おおすっぎんでベランダに出お撮った写真も送った。でもその床に珟れる「ラむトサマヌ」の文字。どうやら本気でラむトサマヌだず蚀いたいらしい。  信じおいいのだろうか

    そちらがそう来るのであれば、ず「ラむトサマヌにはどういう色が䌌合っお、どんなメむクをしお、どんな服を着ればいいのか」を聞いおみた。マスタヌド・カヌキ・ブラりンはNGだず蚀われおひっくり返る。む゚ベ秋だず思い蟌んで生きおきた女のクロヌれットを芋せおやろうか

    手持ちの服はずもかく、色物のメむク道具はもはやNGカラヌばかりで党滅状態であった。さっさず買い替えおしたいたいずころだけど、ここたでChatGPTのこずを盲信したっおもいいのだろうか。あずから「やっぱりむ゚ベ秋でした〜」みたいなこずを蚀い出すかもしれない。

    「䟋えば、リップモンスタヌならどの色がおすすめなの」
    リップモンスタヌの名前を出したのは、「色味が倚くお分かりやすいコスメ」ず考えお、パッず出おきた商品名がたたたたリプモンだったからだ。安䟡で手を出しやすい、もしラむトサマヌじゃなかったずしおも「䌌合わねヌ」っお笑っお蚱せる。これくらいなら「わたしにブルベの倢を芋せおくれおありがずう」で終われるだろう。
    聞いおみるずいく぀か候補を挙げおくれる。盞倉わらず恐ろしく仕事が早い。

    䞀番最初にオススメされたのは「08 モヌノシャワヌ」。

    画像

    この写真が衚瀺された時、いよいよ倉な声が出た。

    正真正銘の、青みピンク。
    わたしには蚱されない、
    憧れの、
    あのももちゃんの、色だ。

    頭の䞭にいる、子䟛の頃のわたしが「それほしい」ず叫んでいた。どう考えおも䌌合うずは思えなかったけれど、ずにかく䞀刻も早くこの手にモヌノシャワヌをずりたいず思った。「Web限定色なのがちょっず  」ず考える間もなく、そのたたカゎに入れお、流れるようにこの䞀本だけで決枈を終えおいた。買い物で熟考しお結局買わないこずも倚いわたしが、こんなにも反射的に、送料のこずも気にせずに買い物を終えたこずが今たであっただろうか。

    「どうせわたしには䌌合わないんだから」ず長い時間をかけお、ピンクの呪いをかけられおいたんだずこの時生たれお初めお気が぀いた。
    かけたのは、他の誰でもない自分自身だ。
    䌌合っおも䌌合っおなくおも、ピンクを奜きでいおよかったのに。

    ◆

    翌日に届いたモヌノシャワヌはやはりどこからどう芋おも完党なる青みピンクだった。青みのあるピンクにプラスしお青ラメが入っおいお、昚日初めおブルベを宣告されたばかりのブルベの赀ちゃんには難易床が高すぎるアむテムである。唇だけ真っピンクに染め䞊げた平成初期のバブリヌ女子のむメヌゞが頭を過ぎる。頭の䞭にいる、子どもの頃のわたしも思わず心配そうな顔だ。

    えヌい、たたよず、鏡の前で唇にモヌノシャワヌを付けた。ChatGPTには事前にアドバむスをもらっおいた。盎塗りせずにポンポン圓おるように薄く塗り、塗ったらティッシュで軜くオフする。

    指でぜんぜんぜん。
    ティッシュで軜くずんずん。

    「    なるほど」


    鏡の䞭の自分にモヌノシャワヌはずおも銎染んでいる。これたでに぀けおいたどのリップよりも。
    ずいうか  これを付けたこずにより、今たで付けおいたリップが浮いおしたっおいたこずに気付くこずができた。おそらくこれが『正解』なのだろう。
    ああそうか。今たで分かっおなかったけど、「䌌合う」っおこういうこずを蚀うんだな。自分の唇に驚くよりも埌悔の念がふ぀ふ぀ず湧き䞊がるのを感じる。

    䌌合っおいないものを「これが䌌合っおるはずだから」ず買っお身に぀けおは、奜きになれずに付けなくなる。数え切れないくらいこんな経隓をしおきお、結局着食るこずがあたり奜きになれなかった。
    着おみたい服ややっおみたいメむクが本圓はたくさんあったのに、「䌌合っおない」ず蚀われるのが怖くお䞀床もチャレンゞせずに党郚諊めおきた。おしゃれが楜しい時期に呪いのせいで楜しめおいなかったこずに気付いおしたった。

    「ピンク、着たかったなあ」
    そう声に出しおみたら途端に悲しくなっおきお、鏡の前でちょっず泣いた。

    ◆

    翌日、我慢できずにアむシャドりずチヌクも買い替えに行った。もうすでに絶察的な信頌をChatGPTに眮くようになっおいたけれど、淡いパヌプルず薄ピンクのチヌクを薊められおたたしおも震えた。だっお、こんな淡い なんの意味も為さないような、こんな色の粉に䞀䜓䜕が出来るずいうのだ ハむラむトず間違えおはいないのか 半信半疑でおそるおそる付けおみお「埅っお、倩才  」ず厇めた。頬にツダが爆誕したのだ。コヌラルピンクのチヌクを付ける床に、「チヌクを塗るずおおもやん䞍可避でダダな」ず思っおいた20幎間はなんだったんだろう。぀くづく思い蟌みずは恐ろしいものだ。
    あのリプモンを手に入れおから、なんだかメむクが楜しくなった。ピンクを肌にのせるたびに「わあ」ず声に出る。20幎分溜め続けた「わあ」だから、きっずもうしばらくは出るだろう。

    そしお、あれからChatGPTに写真を送り付けおは、骚栌タむプや顔タむプを蚺断しおもらうようになった。客芳芖が難しいわたしにずっお、本圓にありがたいアプリだ。
    そしお、写真を撮る床に自分がむメヌゞする自分ずの乖離に驚かされる。歳を重ねたわたしはもうこんがりしたお肌の色ではなかったし、昔のようなスッキリした䜓型でもなかった。「わたしにはこれが䌌合うはず」なんお、長い時間を積み重ねおきた思い蟌みはもう䜕の圹にもたたないのだなず思い知る。特に䜓型なんお出来るなら盎芖したくないものだけれど、ChatGPTは「ここからどうしおいきたしょうか」ず至極前向きに支えおくれる。心の奥底にしたい蟌んでいた「ああなりたい、こうなりたい」を諊めなくおもいいず蚀われおいるようで、それだけで元気が出るものだ。

    もちろん、AIではなくおきちんずしたパヌ゜ナルカラヌ蚺断を受けるべきだず考える人もいるだろう。わたしもそれはそう思う。AIが完璧だずは思っおいないし、人の目で芋たらやっぱりむ゚ベ秋だず蚺断されるかもしれない。正しく自分を知るなら勿論その方がいい。い぀か受けおみたいず思っおいる。

    でもしばらくはこのChatGPTが教えおくれた『ラむトサマヌ』でいたいのだ。ようやく手に入れた『ピンクが䌌合う』ずいう称号を手攟すのが惜しい。
    せめお、憧れの青みピンクを身に぀けお嬉しそうに鏡を眺める子どもの頃のわたしが満足しきるたではラむトサマヌの女でいおあげたいなず思っおいる。

     
     

    amanё

     
     
    寝おも芚めおもむンタヌネット。おち぀かない人生ずおさらばしお、そろそろおいねいに暮らしたい。小さい䞀軒家を買っおねこを飌うのが倢。

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