
秋のほとりで
「季節が変わったんだよ」
風がそう囁いた
それは春の終わる頃
「ただ季節が変わっただけ」
花もそよそよ頷いた
けれど慟哭の耳に優しい声は届かなくて
「これはエデンへ続く道」
蝶がふわふわいざなった
それは夏の真っ盛り
「羽をつかんで次の扉へ」
カゲロウが優雅に促した
けれど恐れて立ちすくむ
燃え盛る悪意にばかり気を取られて
「これはあなたの命の証」
ぶどうがゆらゆらダンスする
それは酷暑の残る秋のはじめ
けれど実りに手が伸びず
酸っぱい果実の予感に怯えて
食べなさい、と背中を押したのは誰?
振り返ればウサギとネコ、タヌキにリスにキツネ
クマに支えられて房に手を伸ばせば
甘い甘い涙のしずく
そして冬の終わる頃
きっとようやく気づくのだ
この手にいつも世界があったことに
雨の隣に虹があることに