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木の葉🍃の便り

    花*花8787

    里山に暮らす若菜は、今日もおばあちゃんの離れの家に遊びに来ていた。

    若菜が大好きなのは、おばあちゃんの薬箱を眺めることだった。


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    おばあちゃんの家には、昔からたくさんの薬草が置かれている。

    どくだみ、おおばこ、よもぎ、すぎな、はっか……。

    薬箱の蓋を開けると、乾燥した薬草の独特な香りが、ふわりと漂ってくる。

    若菜は、この香りが大好きだった。

    里山の人々は、身体の調子が悪くなると、おばあちゃんのところへやって来る。

    「トキさん、何かいい薬草はないかね」

    そう言われると、おばあちゃんは相手の顔をじっと見て、

    「それなら、これがいいわ」

    その人に合った薬草を選んでくれる。

    そして、薬草を一枚一枚、まるで宝物を扱うように丁寧に手に取るのだった。

    おばあちゃんの煎じた薬草は、よく効くと評判だった。

    若菜は、そんなおばあちゃんの姿を見るのが大好きだった。

    そしていつか自分も薬草のことを知りたいと思い、おばあちゃんから少しずつ、その効能を教えてもらっていた。

    そんなある日のことだった。

    里山の上流から流れてくる小川のほとりに、一枚の大きな葉っぱで作られた舟が流れてきた。

    舟の中には、一通の手紙が隠されている。手紙は濡れないように、透明なビニール袋に包まれていた。

    若菜の家の前には、小川を横切るように小さな柵があり、そこには網が張られている。

    葉っぱの舟は、その網にちょうどよく引っかかっていた。

    これは、若菜と幼馴染の夏美の遊びだった。

    上流から葉っぱの舟を流して、相手の家まで手紙を届ける、二人だけの、秘密の郵便屋さんごっこだ。

    若菜は舟から手紙を取り出し、ビニール袋を開いた。

    中には、夏美からの手紙が入っていた。

    『若菜ちゃん、妖精さんの家に野いちごがいっぱいだよ!

    夏美より』

    若菜は、ぱっと顔を輝かせた。

    「野いちご!」

    若菜は急いでおばあちゃんの家へ行き、小さな籠を借りると、川の上流へ向かって走り出した。

    妖精さんの家は、川の上流にある。
    そこには、とてもきれいな水が流れていた。

    川辺には一本の大きな丸太が転がっている。その丸太は中がきれいにくり抜かれていて、まるで小さなドールハウスのようだった。

    若菜と夏美は、その中に小さな椅子やテーブルを置いた。小さな食器も並べた。

    二人が作った、妖精さんのお家だ。

    「若菜ちゃん!」

    夏美が手を振っている。

    「夏美ちゃん!」

    若菜が駆け寄る。

    そして、二人は妖精さんのお家の周りを見て、目を丸くした。

    夏美の手紙に書いてあった通りだった。

    野いちごが、いっぱいだ!


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    赤く熟した野いちごが、緑の葉っぱの間から顔を出している。

    若菜は、そっとひとつ摘まんだ。

    そして、口に入れる。

    「わぁ……おいしい!」

    口いっぱいに、甘い香りが広がった。

    それを見ていた夏美も、ひとつ摘まんで頬張った。

    「ほんとだ!」

    夏美は目を丸くした。

    「もっと酸っぱいかと思ってた!」

    「ね!」

    二人は顔を見合わせて笑った。

    そして夢中になって、野いちごを摘んでは食べ、摘んでは食べた。

    しばらくすると、二人は妖精さんの家の前に小さな野いちごを並べた。

    「妖精さんにも、あげよう」

    「うん!」

    二人は、丸太の小さな家の中にも野いちごを置いた。

    「妖精さん、召し上がれ」

    「おいしいですよ」

    二人は、妖精さんが小さな手で野いちごを摘んで食べている姿を想像した。

    それから若菜は、おばあちゃんへのお土産に、籠いっぱいに野いちごを摘んだ。

    その頃。

    若菜のおばあちゃんは、川のほとりにいた。

    若菜の家の前に張った網に、上流から流れてきた木の葉🍃や草🌱🌿がいくつも引っかかっている。

    おばあちゃんは、その葉っぱを一枚ずつ取り除いていた。

    実は、上流から流れてくる葉っぱは、おばあちゃんにとって大切な便りでもあった。

    その季節にしか咲かない草花。
    山の奥でしか見つからない薬草。
    そんな植物の一部が、川を流れてくることがあるのだ。

    おばあちゃんは葉っぱを手に取ると、じっと眺めた。

    「今年も、あの花が咲いたんだね」

    そう呟いて、微笑んだ。

    もしかすると、この葉っぱを川に流したのは、森の妖精なのかもしれない。

    若菜と夏美が葉っぱの舟で手紙を届けるように、森の妖精もまた、川を使って便りを届けているのかもしれない。

    夕方。

    若菜は、野いちごの入った籠を抱えて、離れのおばあちゃんの家に行った。

    「おばあちゃん、ただいま!」

    「おかえり、若菜」

    おばあちゃんは籠の中を見て、目を丸くした。

    「まあ、随分たくさん摘んできたんだね」

    若菜は嬉しそうに笑った。

    「すごく甘いのよ。おばあちゃんも食べてみて」

    そう言って、籠からひとつ野いちごを摘むと、おばあちゃんに渡した。

    おばあちゃんは、野いちごを口に入れた。

    「……ほんとだね」

    おばあちゃんの顔がほころぶ。

    「すごく甘くて、おいしいねぇ」

    若菜は嬉しそうに、おばあちゃんの顔を見つめた。

    すると、おばあちゃんは突然、いつもの薬草の話をする時のように、目を輝かせ始めた。

    「これはね、クサイチゴだよ」

    「クサイチゴ?」

    「そう。クサイチゴはね、疲れた時に食べるといいんだよ。それに、お腹の調子を整えるとも言われているの。昔から、咳や痒みの手当てに使われることもあるんだよ」

    おばあちゃんは、次から次へとクサイチゴの話を始めた。

    まるで、野いちごの中にも薬草と同じように、自然の恵みが詰まっていることを教えてくれるようだった。

    若菜は、そんなおばあちゃんの話を聞くのが嬉しかった。

    薬箱の中の薬草も。
    山の中に咲く草花も。
    川を流れてくる葉っぱも。
    そして、妖精さんの家の周りに実った野いちごも。

    みんな、里山から届いた小さな便りなのかもしれない。

    その夜。

    おばあちゃんは、若菜が摘んできた野いちごを、ひとつずつ丁寧に洗った。

    そして、鍋に入れて、コトコト煮た。

    甘い香りが、家いっぱいに広がっていく。

    「おばあちゃん、何を作っているの?」

    「若菜が届けてくれた、森の恵みだよ」

    鍋の中で、赤い野いちごがゆっくりと煮えている。

    やがて、おばあちゃんは出来上がったジャムを、小さな瓶に詰めた。

    翌朝。

    若菜は、焼きたてのパンに野いちごのジャムをたっぷり塗った。

    ひと口食べる。

    甘酸っぱい味が、口いっぱいに広がった。

    若菜は、ふと妖精さんの家を思い出した。

    「妖精さんも、食べてくれたかな」

    すると、おばあちゃんが笑った。

    「きっと食べてるよ」

    「よかった!」

    若菜は窓の外を見た。
    朝の光が、里山を照らし、小川は、今日も静かに流れていた。

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    その水面を、一枚の小さな木の葉がゆっくりと流れていく。

    🍃 🍃 🍃 

    今日も里山には、自然からの小さな便りが届いている。

    おしまい。

    こちらの企画に参加させていただきました。⏬

    #3つのお題に空想のひらめきを
    #野イチゴのひみつ
    #木の葉のてがみ
    #おばあちゃんの薬箱

     
     
     
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