メインコンテンツへスキップ
見出し画像

ゆっくりと

    Jasrrin

     ゆっくりとぼくは忘れていく。んだ。うん、きっとそう。悲しかったことだけじゃなく、嬉しかったことだけでもなく。あらゆる事象をきっと。
     僕はアクアラインを走り抜け、1車線しかない道をノロノロとクネクネと走り抜けた。後ろからは僕を追い立てるようにいくつもの人たち…顔も知らない人たち、きっと目や鼻はあっても心のない人たちだろう。なんてね。そんな人たちに追い立てられながらも、僕はクネクネとノロノロと制限速度を守ってクネクネとノロノロとしていたわけだ。そうして、辿りついたのは海だった。僕は海に辿り着くために走っていたわけではない。僕は海に辿り着くためにアクアラインを駆け抜けたわけでもない。僕はたどりついた海の前に座り、海を眺めることにした。
     海はゆらゆらと水飛沫をあげながらどこかへ向かって流れていく。きっと風が関係しているのかもしれない。そういえば、上にはトンビがゆらゆらと風に乗っていたっけ。そうそう、僕は海を見ていたのだっけ。そう、そうして、あらゆる現象から遠ざかり、あらゆる事象が消えていった。そう。ゆっくりと。


    #シロクマ文芸部

     
     
     
    ここ数年スニーカーを主に履いていましたが、レザーのダービーシューズに心惹かれています。 書き下ろし小説あり。 オンライン購入できます。【PASSAGE https://x.gd/hO86P】

    あなたへのおすすめ