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豊穣

    漆畑美佳

    先日、富山を訪れた。

    ちょうど稲穂の実り始める時期。
    見渡す限りの秋空と、まだ実がきゅっとしまった黄金の稲穂、水が張られて目に沁みるほど青い田んぼ。

    その青を、いく層にも分かれて風が渡っていく。
    目には見えない、でもそこかしこで稲を揺らし、どこかへ流れていく波。

    こんな風景を目にするたびに、胸がぎゅっとなりぼーっとした幸福感で身動きが取れなくなる。

    もちろんお米はまだわたしたちの主食で、稲が無事に育つということは単なる一農作物の豊作を意味しない。一家、一族の平穏そのものを形づくる、農耕民族の根本になってると思うのだ。

    にしても、この光景は多くの人の心の原風景になってるみたい。

    ただ田んぼを映しただけの動画をSNSに載せたら、トトロのシーンに言及する人が多くて、不意をつかれた。

    ノスタルジーなんかじゃない。
    これは遺伝子レベルで刻まれた<豊穣>のイメージなのだと、心が痛むほど感じる。

    毎日休むことなく誰かが世話をして、猛暑や台風から守ってできたお米が、今日の一杯のご飯として目の前にある。

    その意味するところと、感謝を忘れてはいけないと、思う。


     
     
     
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