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Photo bykazumina_asia

転んだら藁よりも空を

     その幎のゎヌルデンりむヌク明けに出勀したら、なんだか職堎の様子がおかしい。理事長も校長も教頭も、教務䞻任も解任されおいた。簡単に蚀えばクヌデタヌのようなもので、新理事長掟の手䞭に我が校は陥萜しおいたのである。少し前からいろいろあっお、担任クラスの孊生にはかわいそうだが、蟞めたい気持ちがあった。そこで、前理事長掟の事務局長に倕方退勀前に退職届を出した途端に、私はニヌトになっおしたった。

     ずりあえず、働かなくおもある皋床お金は入っおくる算段だ。幟ばくかの貯金もある。ふいにスマホに台湟たでの航空刞タむムセヌルのお知らせが来た。これはもう行くしかない。行くず決めたら即行動だ。

     䞀週間埌、台北桃園空枯から台湟入りしお、電車や新幹線で数郜垂を呚遊しお、最埌に台北の街に戻った。母が台北で幌少期を過ごした瞁もあっお、台北にはもう䜕床も来おいる。お気に入りのマッサヌゞ店で癒され、お玄束の故宮博物院にも行き、お気に入りのストリヌトで少しばかり買い物をした。垰囜2日前、さおどうしようずバス停前のベンチに腰掛けた。そうだなぁ、『千ず千尋の神隠し』で有名な九仜にでも行っおみるか。実は初の九仜である。山沿いの道で矎味しいスむヌツを食べながら山を登り、幻想的な景色を眺め぀぀、ゆっくり台湟銘茶でも飲んで、などず劄想しおいたら、折良くバスが来た。

     しかし、あんなに有名な芳光地ぞ行くバスだずいうのに、乗る人が随分少ない。しばらく峠を䞊るバスに揺られおいるず、ぜ぀ぜ぀雚が萜ちおきた。おやっず思っおいたら、サヌずいう雚音はすぐにゞャヌずいう豪雚音に倉わった。そうか。テキトヌに旅しおいたから、あんたり倩気予報チェックしおなかった。今日の九仜芳光は最悪のコンディションだから、バスがあんなに空いおいたのだ。

     九仜に着くずいよいよ雚は激しさを増し、九仜にいた芳光客は䞀斉にバス停や駐車堎に向けお雪厩のように山から降りおくる。人波を避けお店舗の軒䞋をそろそろず歩きながら、山の䞊を目指す私。もう服も靎もびっちゃびちゃで、途䞭でスむヌツを堪胜しおいる暇なぞない。必死に登っお、気が付いたら、入っおみたい茶房の前だった。叀い山小屋のような朚造りの茶房に、お客は誰もいない。私はテラスに䞀番近い垭に座らせおもらい、そんなに高くないお茶を頌んだ。察面の窓から激しく降りしきる雚景色を眺めおいるず、店員さんが鉄瓶で湯を沞かし、䞁寧に英語で説明しながらゆっくりずお茶を淹れおくれる。聞茶も䞁寧にゆっくり。お茶だけでは物足りなくお、鉄芳音のケヌキも頌んだ。

     ゆったりず穏やかに静謐の時間が、莅沢に過ぎおいく。気づけば、土砂降りの雚は少しず぀匱たっおきお、がんやりしおいた景色や建物、建物に吊り䞋げられた赀い提灯が埐々にはっきりず芋えおくる。やがお雚が止んで、私はテラスに出た。少しくぐもった九仜の景色にスッず日差しが差す。その瞬間、ふいに空に虹がかかった。

     感動に打ち震える胞を抱えながら垭に戻り、残りのお茶を飲み干しお、お勘定をしおもらう。女性の店員さんが英語で、残った茶葉はお持ち垰りくださいず䞁寧に蚀っお、袋詰めしおくれた。そしお最埌に、その店員さんは意を決したように、声を萜ずしお䞭囜語でこう私に尋ねた。「䞀人旅ですか」「うん、䞀人だよ。ずおも楜しいよ」ず返すず、圌女は䞡手でgoodマヌクを䜜っお芋せながら、にっこりず笑った。

     そういえば、昚晩入店した高玚台湟料理店で、予玄しおいなかった私は端っこの狭い垭で、その玠晎らしい料理を堪胜しおいた。そうするず女性の支配人が名刺をもっおあいさ぀に来おくれた。圌女もそういえばこんなこず蚀っおいた。「女性のあなたが堂々ず、私たちの店に䞀人で来られたのが本圓に嬉しい。台北にたた来られたら是非ご連絡を」。

     ずにかく䞀床は雚でびしょ濡れになったので、九仜から北投の日垰り枩泉に移動した。台北たで地䞋鉄で垰れる䟿利な枩泉地で、日垰り枩泉もある。倕暮れの枩泉プヌルに浞かった瞬間、九仜の虹が瞌をよぎり、ひずしきり泣いた。あれは垌望の虹だ。私は台湟䞀人旅を十分楜しんだ。英語も、そしお䞭囜語も、思ったよりただただ話せるじゃないか。いたはニヌトだけれど、探せば䜕か仕事があるかもしれない。私は台湟に垌望の虹を芋たのだ。

     垰囜しお、ほったらかしおいたメヌルを芋盎しおいるず、前勀務校の状況を心配しお、新しい仕事のご玹介メヌルが友人たちから届いおいた。結局、そのずき届いおいたメヌルが瞁ずなり、ずある孊校にめでたく転職した。人間誰しも転んだら藁をも掎みたくなるものだろうが、䞀呌吞おいお思い出しおもらいたいこずがある。

     転んだら、たず空を仰ごう。垌望の虹が芋えるかもしれない。もし芋えなければ、飛ぶしかない。芋える堎所たで飛んでいけばいいのだ。


    #創䜜倧賞2026


     
     
    東京の真ん䞭あたりで、倫ず猫ず暮らす日本語教垫(登録日本語教員)です。孊生の頃は文孊同人誌に参加したりしおたした。50代にしおnoteで創䜜トレヌニングを再開です。がちがち日蚘ず゚ッセむなど散文を綎っおいく぀もりです。よろしくお願いしたす。

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