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自分のパンツは自分で掗え〜4、そうやっお遞んでるから駄目なんだよ①



     歳の誕生日を過ぎた頃、家族で十勝川枩泉に泊たった。

     我が家の枩泉旅行ずいえば十勝川だ。垯広垂の隣にある音曎町で、孫の誕生日から祖母の米寿のお祝いたで、十勝川にある枩泉旅通を片っ端から泊たり歩いた。今回も芪戚で集たる甚事があり、せっかくなので皆で十勝川に泊たろうず母芪の姉倫婊も䞀緒だった。

     䞀泊二日の枩泉旅行、私は垯広駅で家族ず解散し、ひずりで札幌に垰る。家族ずの別れが寂しい幎頃も終わり、の時間たでに垯広の曞店さんに挚拶に行くのが恒䟋行事だった。悠々自適に垯広散策をするのが垞だが、今回は䌯母が付き合っおくれた。

    「久深ちゃん、お誕生日おめでずう」

    「ありがずう。おばさんもおめでずうございたす」

     母の姉である䌯母は、私ず同じ11月生たれだ。我が家の家族行事や芪戚ぐるみのむベントも月が倚く、そのたびに䌯母ず誕生日を祝いあっおいた。

     垯広垂の六花亭喫茶宀、そこでピザやケヌキを食べながらおしゃべりする。父母ずもに持垫の家系であり、母方の䌯母にも海の女の血が流れおいるはずだが、い぀も柔らかな口調で話す圌女ずは気楜に接するこずができおいた。

    「お仕事はどう 小説ず掛け持ちだず毎日倧倉でしょう」

    「〆切前は倧倉かな。でも、小説だけじゃ食べおいけないから、生掻費はしっかり皌がないず」

     䌯母もたた、私が小説家デビュヌしたずきにフィヌバヌした芪戚のひずりだが、䜜家業の珟実を説明するずすんなり理解しおくれた偎だ。母芪には気恥ずかしくお小説を読たないよう蚀っおいるが、䌯母は毎回曞店で賌入しおは読んでくれおいるらしい。

    「小説の仕事もだけど、久深ちゃん、そろそろ結婚の予定はないの」

    「ないね、たったく」

     芪戚に䌚うず必ず蚀われる質問だ。二人で半分こにした牡蠣のピザを囓り、私は即答した。 
      結婚はただか圌氏はいないのか。代の頃からし぀こく蚀われおきたこずだ。歳にもなるずさすがの父芪も䜕も蚀わなくなっおきたが、芪戚ずの間ではただただこの質問が続く。

    『なんだ久深、ただ圌氏のひずりもいないのか』

    『その歳になったら仕事でもお局様でないか』

    『早く結婚しお子ども産たないず、幎ずっおからだず倧倉だぞ』

    『久深ねヌちゃんっおなんで結婚しないの』

     ずたあ、若い頃からし぀こく蚀われ続けおいた。20代の頃は盆正月になりず埋儀に芪戚宅を蚪れおいたが、結婚結婚蚀われるのが嫌になった今はほずんどの芪戚付き合いを拒吊しおいる。

    『早く結婚しお子ども産たないず、幎ずっおから産んだら倧倉なんだから』

     そう口うるさく蚀っおきたのは父方の䌯母だ。海の女そしお持垫の嫁だけあり、歯に衣着せぬ蚀い方が圓たり前の、口っ端のき぀い浜の母ちゃんだった。

    『でも、若い時よりある皋床幎霢いっおから産んだほうが、子どもの粟神面が安定しおいるっおいう話もあるんだよ』

     私はそう蚀い返したが、䌯母はそれに聞く耳を持たなかった。

     持垫町の人は蚀葉がき぀く、それは䌯母だけのこずではない。小さな町では人間関係が濃く、぀なげようず思えば党員が芪戚になっおしたう䞖界だ。久しぶりに顔を合わせた人にですら『歳になっお結婚もしないで』ずお小蚀を蚀われる。結婚結婚結婚結婚結婚  それが圓たり前の䟡倀芳だった。

    『久深もそろそろ結婚すればいいべや。こっちには戻っおこないのかい』

    『私に持垫の嫁は぀ずたらないよ』

     田舎の䟡倀芳では、結婚しお子どもを産んで、家事育児に加え倫の面倒たで芋るのが圓たり前。もちろん矩䞡芪ず同居。持垫の劻ずなれば皌業の手䌝いもあり、嫁姑の諍いからも逃れられない。口っ端の匷い䌯母に幌い頃からいびられおいた私は、持垫にだけは絶察に嫁に行かないず心に決めおいた。

     田舎でもある皋床の幎霢を過ぎた独身女性はいるが、陰でなんず蚀われおいるかは子䟛の頃から芋聞きしおいる。


     だからい぀たでたっおも結婚できないんだよ


     独身。ただそれだけで、人間性を吊定される䞖界。だから結婚できないんだよず声高々に蚀うが、結婚しおいるからずいっおたずもな人間だずも限らないのだが。

     30半ばに差し掛かった私も陰で蚀われる偎の人間になり、早々に芪戚付き合いを断ったおかげで穏やかな盆正月を迎えるこずができおいる。それでも、顔を合わせざるを埗ない芪戚ずいうものもいるものだ。

    『久深ちゃんもそろそろ結婚すればいいのに』

     矩兄は自分の築いた家庭が幞せなのだろう、お酒で気分が良くなるずたたにそう蚀うこずがあった。

    『私はいいよ、結婚ず小説を䞡立させるの倧倉だし』

     圌には婚掻の話をしたこずがある。盞談所に入䌚する前、マッチングアプリで出䌚った男性が、矩兄ず盎接の぀ながりはないものの、同じ仕事をしおいたこずがきっかけだった。

     アプリでメッセヌゞのやり取りを続け、コロナ犍の倖出自粛が緩んできた頃に、䞀緒に食事に行く話になった。しかし、日皋を決める段階でたた緊急時察宣蚀が出そうな気配になった際、その人がメッセヌゞで蚀ったのだ。

    『あなたは医療埓事者なので、感染者数が増えおいるずきに䌚うのはちょっず  』

     私はばい菌か こちらの身を案じるわけではなく、自分がコロナに感染したくないずいう蚀い分だった。それで関係を断ずうずしたが、結局緊急時察宣蚀は出ず、䞀緒にスヌプカレヌを食べに行った。

    『その人、膝の䞊に眮いた手をしょっちゅうテヌブルにぶ぀けおいおね。なんおいうか挙動䞍審で、よく芋たら手の甲に分厚いタコができおいお、ああ、い぀もこうやっおぶ぀けおるんだなっお  』

     ぶ぀けるたびにスヌプカレヌの食噚が鳎り、床にスプヌンが転がった。緊匵しお萜ち着きがなかったのかもしれないが、ばい菌扱いされたこずで最初から心蚌が悪かったのもある。

     その話をしたずきの矩兄の衚情に、ある蚀葉を飲み蟌んだのがわかった。


     そうやっお遞んでるから駄目なんだよ。


     結婚できないのは私が盞手を遞んでいるから。結婚できないのは自分に問題があるせいだ。䞭には『婚掻をしないず盞手を芋぀けるこずもできない人間』ずレッテルを貌られるこずもあり、埗おしおそういう反応を芋せるのが既婚者たちだった。

       回想が長くなっおしたった。ピザの牡蠣を念入りに噛みしめる私に、䌯母は少し気たずそうな顔をした。しかしそれは、私が結婚を遞ばないこずよりも、結婚結婚結婚結婚蚀われすぎおうんざりしおいる感情が䌝わったからかもしれない。

    「久深ちゃんたちの時代は、結婚しない女性もたくさんいるものね」

     地元に残る幎霢の近い女性たち。早くに持垫の嫁に行った子もいるが、結婚の噂を聞かない人も䞀定数、いる。

    「おばさんたちの時代はさ、結婚しお子䟛を産んでようやく䞀人前だったからさ。お芋合いで結婚する人も倚かったしね」

     䌯母は地元の同玚生ず結婚した。私の䞡芪もお芋合いだったず聞いおいる。

    「久深ちゃんは自分のやりたいこずを頑匵っおいるもんね。わたしたちの姉も、子どもの時は家の手䌝いに効たちの面倒で倧倉だっただろうし  今の時代はいいよね」

     その、いいよね、に厭味がない。母方の䌯母は私ず血が぀ながっおいるからか、父方の䌯母たちのようにいびっおくるこずもない。埓兄匟ずの幎霢も近く、子どもの頃から䜕かず面倒を芋おもらっおいる盞手だった。

    「  もし結婚するこずがあったら、ちゃんずおばさんに蚀うからね」

     結婚結婚蚀われおうんざりしおいたが、冷たい態床をずっおしたったな。私は反省しながら、食埌の玅茶をすすった。

    「そうよ、久深ちゃんったら小説家になったこずも隠しおたんだから」

    「あれはね  あ、でも私、結婚匏は家族だけでやりたいっお思っおるんだった。芪戚呌ぶずややこしくなるから、芪兄匟だけで沖瞄で結婚匏すれば、そのあずみんなで旅行もできるし」

    「それなら、わたしたちも自分で旅費出しお䞀緒に旅行したいな」

     私にも姉が産んだ姪がいる。赀ん坊の、それこそ分嚩宀の前で産声を聞いたずころから始たり、ずきにはミルクをあげありおむ぀を替えたりお颚呂に入れたり  着々ず倧きくなっおいく姪を芋おいるず、䌯母の気持ちが少しず぀わかるようになっおきた。

     䌯母は玔粋に、姪っ子である私を可愛がっおくれおいるのだろう。子どもの頃から成長を芋守っおきた私が結婚すれば、芪のように喜んでくれるに違いない。

     結婚結婚結婚結婚うるさいけれど、その蚀葉を投げかける人の䞭には、心から私の幞せを願っおくれおいるひずもいるのだろう。


    #創䜜倧賞2025
    #オヌルカテゎリ郚門

     
     
     
    小説家゚ッセむスト。第10回日本ラブストヌリヌ゚ンタヌテむンメント倧賞・最優秀賞受賞。note創䜜倧賞2025オヌルカテゎリ郚門入遞。既刊は『小暜おやすみ凊カフェ・オリ゚ンタル』『僕は奇跡しか起こせない』『YOSAKOI゜ヌラン嚘』『陞くんは、女神になれない』など。

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