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自分のパンツは自分で掗え〜、そうやっお遞んでるから駄目なんだよ⑧

       
       蚀葉の意味を咀嚌しきれない。圌もそれに気づいたのか、あらためお蚀い盎した。

    「今たで奜きになった人たちみたいな気持ちを、田䞞さんに感じないんだ」

     ほう、ず、私はたばたきで盞槌を打぀。

    「ちゃんず話し合いをした぀もりなのに、田䞞さんが曞店に行ったこずにもやもやした。買い物じゃなくお、取材ずか、䜜家の仕事をしおいるこずに嫉劬しおしたうんだ。小説の話を聞く時のもやもやした気持ちは、自分が同じ立堎にならないず解決しないず思っお」

    「私は、瀧さんが新聞蚘事で文章を曞かれおいるこず、ずおもすごいず思いたすよ」

     しかし、圌はそれで玍埗しないらしい。私の䜜家掻動を身近に芋るず、瀧さんの䞭の、小説家になりたい気持ちやデビュヌ寞前で流れおしたった悔しさが蘇るのだろう。

       私ず同じ立堎ずは、自分が小説家ずしおデビュヌするこずを指すのだろうが、それは今日明日で簡単にできるこずではなかった。

    「本圓は、今日の凜通旅行で答えを出す぀もりだったんだけど  」

       やはり瀧さんも、今回の旅行をひず぀の区切りずしお考えおいたようだ。

    「やっぱり、田䞞さんに嫉劬しおしたう気持ちが抑えられない。もう少し考える時間がほしくお、あず䞀ヶ月埅っおほしい」

    「  それ、二股かけた人ず蚀っおるこず同じじゃないですか」

    「いや、違う」

     違わない。自分の気持ちを敎理できず答えを匕き䌞ばそうずする行為は、二人同時に奜きな人ができお遞びきれない優柔䞍断さず䞀緒だ。

     件の男性は、私ず同じ䌚瀟の先茩ず、どちらも奜きで遞べないず蚀った。しかし、それは結局、自分が䞀番倧奜きずいうこずだ。

       瀧さんも、結局自分のこずしか考えおいないんだろうな。私は残りのお酒を飲みながら、圌の話に耳を傟けた。

    「田䞞さんは小説や挫画が奜きだから、趣味も䞀緒で話も合うず思ったけど、俺が奜きな䜜品のこずを党然知らないし。同人誌即売䌚にも参加しおなくお、自分ずは違うんだなず思っお」

     自分の奜きな䜜品を勧めるのもいいが、盞手におすすめされた䜜品を読み、読曞の幅が広がっおいくのも読曞奜きの楜しみじゃないのかな。

     瀧さんもゎヌルデンカムむ読んでないし、チヌムナックスの話をしおも興味なさそうだったけどな。

     自分ずたったく同じ趣味を持っおいる人がほしいのかな。

     そんな人  いるのかな。

    「盞手を奜きになる気持ちも、今たでで䞀番奜きになった人に察しおの奜きっおいう感芚ず、田䞞さんに察しお抱く気持ちが、同じになれないっおいうか」

     人を奜きになる気持ちはそれぞれなんだけどな。

     最初から燃え䞊がる恋もあるし、少しず぀育っおいく恋心もあるんだけどな。

     たあ、瀧さんは私が婚掻や人生に悩む姿を芋お、それに憐れんだ気持ちを奜意ず勘違いしたんだろうな。

     自分のほうが幎䞊で、䜜家業の䞖界もわかっおいお、むニシアチブがずれお満たされるず思っおたんだろうな。

     でも、私ずいるずその自尊心が揺らぐんだろうな。

    「あず、やっぱり北海道ず東京は遠いっおいうか  」

     今さらそれを蚀うか。

     最初から考えればわかったこずじゃん。

     ずいうか、昔付き合っおいた圌氏も䌌たようなこずしたな。

     私に理想の圌女像を抌し付けお、でも、私にも意志があるこずに気付いお自分の立堎が匱くなったず気づくや吊や。自分が悪者になりたくないから、郜合のいい理由を適圓にでっちあげお、向こうから別れたいっお蚀っおきたんだったな。

     あの元圌は、私が最初の圌女だったな。

     恋愛経隓がない人っおみんなこんな感じなのかな。

     別にたくさんの人ず付き合えっおいうわけじゃないけど、恋人ずの関係だからこそ孊べる人間関係っおたくさんあるし。

     私もいろんな倱敗や経隓を積んで、少しず぀成長しおいったしな。

       それをうたく育おたり、芋守っおあげたりするのも倧事だろうけど  

       代代ならただしも、瀧さん歳なんだよな。今から考え方を倉えるのっお難しいだろうな〜。

    「  以䞊、です」

     話し終えた圌が、無蚀の私を盗み芋る。

     お酒を飲み干したグラスをテヌブルに眮き、私は口を開いた。

    「自分から圌氏に立候補したいっお蚀っおきたけど、やっぱり考え盎したいから、あず䞀ヶ月埅っおほしいっおこずですよね」

     気たずそうに、瀧さんがうなずく。

    「そっちの郜合で近づいおきお、思っおたのず違ったっお蚀われお、さらに考える時間が欲しいず。それで私が埅っおくれるず思ったんですか」

    「  ごめん」

    「埅぀必芁ないですよね」

     たくさん飲んだはずなのに、私の酔いはすっかり醒めおいた。

     目の前にいる歳の男性が、䞭孊生の男子に芋える。どうしお男の人っお、普段はぐいぐい匕っ匵りたがるくせに、いざ郜合が悪くなるず子䟛に戻るんだろう。

    「田䞞さんならわかっおくれるず思っお」

     それ、歎代の男たちにも蚀われたな。

       なんでみんな、私ならわかっおくれるず思うのかな。

     若い頃なら、それを蚀われた時に、理解できない自分が悪いっお思ったけど。私も倧人になっちゃったからな。

     なんで男の人っおみんなそうなんだろう。

    「  ずりあえず、明日の予定どうするの」

     明日は二人で凜通芳光の予定だ。この重たい空気を、圌は今埌どうする぀もりなのだろう。

    「䞀人で考えたいので、凜通芳光は別々にしたいです

    「の特急刞、予玄しちゃっおるけどどうするの」

     たさか芳光が終わった埌に凜通駅で再集合し、気たずい空気のたた隣同士の垭で札幌たで移動するずいうのか。

    「それも別々の時間にしよう。キャンセル料がかかるなら、俺がちゃんず払うので」

     深倜だずの予玄システムが䜿えない。朝にならないず決たらないずころもあるだろう。

       圌の考えは倉わらないようだ。人付き合いや仕事の考え方に぀いお話す時間を蚭けたが、瀧さんは私の蚀葉をシャットアりトしおいた。

      そもそも、自分䞭心の思考になっおいる圌を、考え盎すよう説埗するのもおかしい。そこたでしお瀧さんず䞀緒にいたいず思えなかった。

     気付けば深倜時を過ぎおいた。チェックアりトの時間を考えるず、そろそろ寝たほうがいい。

    「いったん寝お、あずは明日考えよう。の予玄も朝になったら確認するから。じゃあ、おやすみなさい」

    「  おやすみなさい」

     ツむンベッドの垃団にそれぞれもぐりこみ、郚屋の電気を消した。

     たぶたを閉じるが  眠れるわけがない。

     結局、瀧さんの郜合で振り回されただけだったな。

     䞀応、亀際を申し蟌たれたらお受けようず思っおたんだけどな。

     瀧さんのこずが奜きだったわけではないけれど。お互い婚掻しおるし、友情結婚みたいな、同志ずいうか仲間ずいうか、そんな関係でいられるず思ったんだけどな。

     せっかく新しいパンツ買ったのにな。

       おいうか。

     私、歳になったんですけど。

     歳ず歳は倧きく違うんですけど。

     もっず早くこの結果が出おいたら、歳のうちに婚掻も頑匵れたのに。

     代の婚掻は幎々䞍利になるっおいうのに。

     こういうのも『そうやっお遞んでるから駄目なんだよ』っお蚀われるの

      遞ばずに、瀧さんが考え盎しおくれるのを埅っおいた方がいいの

       え 私、ずいぶんひどいこずを蚀われたず思うんだけど。

       それでも、遞んでるっお蚀われるの

     たんじりずもしない私の隣で、瀧さんは倧きないびきをかきながら眠っおいた。



    「  倜、党然眠れなかった」

     いや、あなたいびきかきながら寝おたしたよ。

       眠れずに倜明けを迎えた私は、それを指摘する元気もなかった。

    「それで、今日はこれからどうするの」

    「やっぱり、宿なり凜通駅なりで解散しお、別々に芳光したいです」

    「わかった。は䞀人分だけキャンセルできたから、あずは自分でチケット取りなおしおね」

     敬語ずは、盞手に察する敬意があるからこそ自然ず䜿えるものだ。私は蚛りもせず、瀧さんにため口で話しおいた。

     朝食の時間が決たっおいるため、二人で食堂に向かう。スタッフに垭を指定され、凜通や北海道の名物をバむキング圢匏で遞ぶ。目の前で焌いおくれるオムレツも、食材にこだわった矎味しい朝ごはんも、無蚀の空気が重く、ほずんど味がしなかった。

     郚屋に戻り、スヌツケヌスに荷物をパッキングする。そこで私は、誕生日プレれントの存圚を思い出した。

     倧きな家電補品。これを持ち歩きながら、ひずりで凜通芳光するのは骚が折れる。

    「このプレれント、どうする」

    「それは俺の気持ちなので、もらっおくれるず嬉しいです」

    「その気持ちを抌し付けられる私は困るんだけど」

    「凊分するなりなんなり、自由にしおもらっおいいので」

    「それを私にやらせるの」

    「  俺が持っお垰りたす」

     荷造りを終え、忘れ物がないかを確認した埌、私たちは宿をチェックアりトした。

     旅通の倖に出る。同じ道を歩くのは嫌なので、それぞれ正反察の方向に向かうこずにした。

    「私は熱垯怍物園に行くから、こっちで。それじゃあ、さようなら」

    「  あの」

     キャリヌバッグを匕く私を、瀧さんが呌び止める。

    「本圓に、ごめんね」

     それに圌はなんず返しおほしいのだろう。䞀瞬、その考えが私の頭をよぎったが。

    「凜通芳光楜しんでね」

     螵を返し、私は歩きだした。

     寝䞍足で空が黄色く芋える。凞凹のある歩道に、キャリヌバッグを匕く音がやたらうるさい。

      私はただ、たっすぐに歩いた。

     振り返るこずはしなかった。



     こうしお、歳になった私の凜通旅行が終わった。


    #創䜜倧賞2025
    #オヌルカテゎリ郚門




     
     
     
    小説家゚ッセむスト。第10回日本ラブストヌリヌ゚ンタヌテむンメント倧賞・最優秀賞受賞。note創䜜倧賞2025オヌルカテゎリ郚門入遞。既刊は『小暜おやすみ凊カフェ・オリ゚ンタル』『僕は奇跡しか起こせない』『YOSAKOI゜ヌラン嚘』『陞くんは、女神になれない』など。

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