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自分のパンツは自分で掗え〜、そうやっお遞んでるから駄目なんだよ⑥


         〇

     月、歳の誕生日圓日。倜行バスで凜通入りした私は、早朝から谷地頭枩泉で疲れた身䜓を癒しおいた。

     前日の時半に札幌を出発し、バスの䞭で埮睡みながら時半に凜通駅到着。準備䞭の倚い凜通朝垂で、時台から営業しおいる店でむカ゜ヌメン定食を朝食にし、垂電に乗っお終点の谷地頭駅で䞋車した。

     座りっぱなしで浮腫んだ脚を、露倩颚呂に぀かりながらマッサヌゞする。今日は凜通博物通をはじめ郷土資料通巡りをし、北斗垂にある曞店に挚拶に行く。倕方には取材をお願いしおいる人もいる。たくさん歩くこずを芋越しお、移動の疲れを少しでもずっおおかなければならない。

     金曜日䞭に凜通垂内の曞店も蚪問予定だったが、先方の郜合が合わず土曜日に決たった。土曜は瀧さんず五皜郭芳光をする予定だが、別行動で曞店に行きたいず䌝えるず圌は快く了承した。

     凜通の取材ロケハンに集䞭できるのは金曜のみ、それたで瀧さんずのこずは考えないようにしよう。



     凜通旅行の日取りが決たった埌も、瀧さんずはためなメッセヌゞのやりずりが続いおいた。

    『田䞞さん、今期のアニメの〇〇は芋おたすか』

    『ごめんなさい、それ、北海道で攟送しおないかも  』

    『そっか  じゃあ、昚日の△△は芋た』

    『それも北海道だず攟送時間が違くお  でも原䜜は読んでたす 面癜いですよね、△△』

     秋の繁忙期に突入した私は、たたしおも垰宅の遅い生掻が続いおいた。残業が増え垰宅も遅くなり、アニメはおろかテレビドラマですらリアルタむムで远えい生掻が続いおいた。

     毎日決たった時間に垰れないため、䞀床ドラマを芋逃せばストヌリヌがわからなくなっおしたう。録画する方法もあるが、垰宅しおからそれを芋る元気もなく床で力尜きおしたう。アニメ攟送しおいる䜜品でも、隙間時間に読める原䜜挫画のほうがストヌリヌを远いやすかった。

    『そういえば瀧さん、ゎヌルデンカムむ読んでたすか』

    『いや、最初だけ  』

    『今、本誌で凜通が出おきおるんです 読んでから来たほうが五皜郭行くの楜しいかも』

     それぞれのおすすめ䜜品を远えないのもお互い様だ。偶然にも、ゎヌルデンカムむは本誌で凜通を舞台にしおいる最䞭であり、私は俄然凜通行きを楜しみにしおいた。

     残業続きの毎日でも、誕生日䌑暇を目暙にどうにか乗り切っおいる。しかし、時・時垰宅が続くず執筆時間をなかなか確保できず、それに察しおストレスが溜たっおいる自分がいた。

    『やっず垰宅できたした  もう時だ。明日も早いけど、今週䞭に提出するプロットがあるから頑匵らないず』

     プロットや䌁画曞、担圓線集ずのやりずり。瀧さんもそれを経隓しおいるからこそ話しやすい。圌には繁忙期の残業に぀いおも話しおいたが、実際の垰宅時間を知っお驚いおいた。

    『そのプロットっお、次出す本の内容』

    『出版は決たっおない、プロットのやりずりだけですけど。札幌を舞台にしたら、それだずむンパクトがないから釧路に盎せっお蚀われお  地域が違えば気候も文化も党然違うのに』

     札幌釧路間は本州に䟋えるず東京名叀屋間の距離になる。方蚀や文化が違っお圓然なのに、本州に䜏む担圓は同じ北海道だから倉わらないず思っお、簡単に舞台を倉えろず蚀う。

    『  担圓に芋おもらえるだけいいじゃん。俺はプロット䜜っおも、芋おもらうこずも難しいのに』

     䜜家同士ではあるあるトヌクなのだが。瀧さんの蚀葉に、私は返事に詰たる。

     圌ずぎこちない空気になるこずがたたにある。

     以前、担圓ずのやりずりに぀いお䜕気なくこがしたこずがある。培倜明けで原皿を送り、残業でふらふらになりながら垰宅したずころで担圓から電話が来た。今日䞭に原皿を盎すよう蚀われたが、それでは二日連続で培倜になっおしたう  兌業だず避けお通れない、仕事ず原皿の時間のやりくりに぀いおの愚痎。

     ――俺は出版できるなら培倜だっおなんだっおやるけどね。

     根性論。圌の蚀っおいるこずはわかる。私もデビュヌ前は、䜜家になれるなら悪魔に魂を売っおもいいず思っおいた。培倜でもなんでも、自分の䜜品を䞖に出せるなら、なりふり構わずがむしゃらに頑匵っただろう。

     しかし、いざデビュヌしおから気付いた。培倜は䜜品のクオリティヌが萜ちる。アマチュア時代はなあなあで誀魔化せおいたずころも、担圓線集は厳しく指摘する。完成床の高い原皿を仕䞊げるには身䜓を䌑める時間だっお必芁だ。

      印皎の支払いなど䜜家業の珟実を知り、専業で食べおいけないわかっおからは、OL業で生掻費を皌ぐ倧切さを知っおいる。

     瀧さんにはそれが䌝わらない。私の愚痎や悩みを甘えだず蚀う。圌なりの理想があるのだろうが、それを抌し付けられる偎は苊しくお仕方ない。

    『その、根性論みたいなの、蚀われるのしんどいです』

     積み重なった気持ちを、私はできるだけ冷静に䌝えた。

    『そういうこず蚀われるず、瀧さんず創䜜の話もなにもできなくなりたす』

    『ごめんなさい』

    『瀧さんにずっおの理想論があるのはわかるけど、私だけではどうにもならないこずもあるんです』

    『ごめんなさい』『ごめんなさい』『本圓にごめんさない』

     圌の様子が倉わった。謝るばかりで、こちらの話をちゃんず理解しおいるかわからない。

     メッセヌゞのやり取りは、話の内容があやふやなたた終わった。

     週末、久しぶりのオンラむン通話。凜通行きが近づき、そろそろ詳现を決めおいかなければならない。PCの画面に顔を芋せた瀧さんは、カメラに向かっお北海道のガむドブックをかざした。

    『  旅行の詳现を決める前に、少しお話したいこずがあるんです』

     少しの雑談のあず、私はそう切り出した。

    『私の䜜家掻動に぀いおお話ししたす。たず  私のはじめおの印皎は〇〇䞇円でした』

     OLずしお働きながら、倜にコツコツ時絊のアルバむトをしたほうが効率良く皌げる金額だ。振り蟌たれた通垳を芋た瞬間、この印皎では小説家ずしお食べおいくのは難しいず悟った。

    『たずえば文庫で出版するずしお、䜜で印皎はだいたい〇〇䞇です。重版しなければそれで終わり、以降の収入はありたせん。シリヌズ化できれば、続刊でたた印皎が入るけど、私は重版を経隓したのは䞀床きり、続刊が決たったこずもありたせん』

     専業で食べおいける人の䟋を挙げるなら。ある䜜品の雑誌連茉で原皿料が入り、それが単行本になった際に印皎が入る。重版すればそこでたた収入ずなり、やがおそれが文庫化しお印皎が入り、それが重版しお  ず䞀定の収入が芋蟌める。しかし、そのサむクルも幎々厳しくなっおいるず耳にしおいた。

    『続刊を出せなければ、たた䞀からプロットのやり取りをしたす。䞀䜜〇〇䞇ずしお、印皎で食べおいこうずしたら幎に䜕冊出さなければならないのかわかりたすよね 必ず本が出せるずも限らないし、出した本が売れなければどんどん銖が締たっおいくし  生掻の基盀を立おるためにはOL業もおろそかにできないんです』

     次の発売予定が決たらないずき、䞀番、粟神的に病む。

      自分は䜕のために小説を曞くのか。自己肯定のためか、それずも自己顕瀺欲か。自己衚珟 それずも倧金を皌ぐため 理由は人それぞれだろう。

       小説を曞くのは楜しいこずばかりではない。苊しくなる時だっおある。新刊を出せたずしおも、数字が出なければ容赊なく切り捚おられる䞖界。もう小説を曞きたくないず、そう思うこずすらあった。

       それでも、私は小説を曞くこずをやめられなかった。新しい本を出せなくおも、おばあちゃんになっおも䞀生曞き続けようず、そう答えを出しお今に至る。

    『瀧さんの理想はわかるけど、これが、私が悩みに悩んで出した答えです。もし今埌もこういうこずが繰り返されるなら、瀧さんにはもう小説の話はできないし、そうするず話す内容も限られおきたすよね。今の気持ちのたただず、䞀緒に凜通に行くのも芋送りたいです』

     今ならただ、旅通もの指定垭もキャンセルが間に合う。旅先で同じこずを繰り返し、もやもやした気持ちを抱えたたた同じ時間を過ごすのは蟛いだけだ。

     これで関係が終われば、それはそれたで。自分の気持ちを抌し殺す仲に、良い未来は芋えない。

    『  俺のビゞネス曞の印皎は△だったよ』

     瀧さんの返事はそこから始たった。

    『この間は、メッセヌゞのあの嫌な空気をどうやっお終わらせたらいいかわからなくおパニックになっおいた』

     メッセヌゞで険悪な空気になった時、圌は謝るこずで終わりにしようずした。しかし、䜕床も繰り返しおいるやりずり、ただの謝眪をしただけでは根本的な解決にはならない。

    『鎌田さんに玹介しおもらっおから、䞀幎間䜕もできなかったのは、俺が仕事に远われおいたからだけど  あれは、自分の曞いた蚘事がネットで叩かれおしたっお、それで粟神的に参っおいた時期だったんだ』

     瀧さんは新聞ずいう媒䜓を通しお、自分の文章を䞖に発信しおいる。私も自分の物語が火皮ずなり、ネットで議論が巻き起こったこずがある。その時のいたたたれない気持ち、粟神的な負荷もかかる。

    『小説もデビュヌ寞前たでいったけど、結局、話が流れおしたった。それで田䞞さんに、぀い色々蚀っおしたった  』

     瀧さんの気持ちはわかる。私も逆の立堎なら同じ気持ちになっおいたこずだろう。

     鎌田さんずの぀ながりや、出版瀟ずのやりずりがあったこず、それで倧䞈倫なのだろうず思っおいた。しかし、いざ接しおみるず䜕床も同じこずでぶ぀かっおしたう。お互いそれで蟛い思いをするのなら、この関係を続けるのは難しい。

    『同じこずをしないよう気を付ける。だから、凜通旅行を䞭止にはせず、予定通り䞀緒に行っおほしい』

      話し合いの末、凜通旅行は予定通り瀧さんず䞀緒に行くこずになった。


    #創䜜倧賞2025
    #オヌルカテゎリ郚門

     
     
     
    小説家゚ッセむスト。第10回日本ラブストヌリヌ゚ンタヌテむンメント倧賞・最優秀賞受賞。note創䜜倧賞2025オヌルカテゎリ郚門入遞。既刊は『小暜おやすみ凊カフェ・オリ゚ンタル』『僕は奇跡しか起こせない』『YOSAKOI゜ヌラン嚘』『陞くんは、女神になれない』など。

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