芋出し画像

クラブ・レむンボヌ②


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 北の倧歓楜街、すすきの。東京の歌舞䌎町、犏岡の䞭州ず䞊び日本䞉倧歓楜街ず呌ばれおいるが、ネオンの消えた昌間は買い物を楜しむ䞻婊や孊生たちが行き亀う懐の広い街だった。

 凍お぀く空気にコヌトをかき抱き、私は倧通公園ぞず向かう。すすきのから倧通たで地䞋鉄でひず駅。地䞋通路を䜿えば冬でも快適に移動できるが、寝がけた頭を叩き起こすためにあえお冷たい倖の空気を吞った。

 ランチタむムも終わる昌䞋がり。䌚瀟勀めの人々が財垃を片手に歩いおいるが、い぀もの私なら猫ずねんごろに眠っおいる時間だ。急な電話に叩き起こされ、久方ぶりに倪陜の䞋を歩いおいるが、そのたぶしさに目が眩んで吞血鬌にでもなったような気分だった。

 䞉が日もずうに過ぎた䞀月、倧通公園では二月に開催されるさっぜろ雪た぀りに向けお雪像補䜜がはじたっおいる。垂内の山䞭から雪をかき集め、鉄筋で足堎を䜜るのはテレビ局など倧手䌁業が協賛する倧雪像だ。雪た぀りの時期は䞭囜の旧正月である春節ず重なり、党囜のみならず䞖界各囜からたくさんの芳光客が抌し寄せるのだった。

 電話で呌び出されたのはホテルの最䞊階にあるカフェラりンゞ。私が名前を告げるず、店の奥に案内される。宀内は暖房が匷く、屋倖ずの枩床差にマフラヌを倖した。

「遅くなっおすみたせん、あぐり」

「こっちこそ、急に呌び出しちゃっおごめんなさいね」

 窓際の垭に、迫力の和装姿があった。足もずの悪い冬でも和装を貫く圌女は、私が働くクラブのオヌナヌだ。向かいの垭に芋慣れぬ青幎が座っおいこずに気づき、互いに小さく䌚釈をした。

 玹介したい人がいる。オヌナヌはそう蚀っおこの店に呌び出したが、二人の間にはぎこちない空気が流れおいる。新しい恋人のたぐいではないらしく、青幎は私を芋お明らかにほっずした衚情を浮かべおいた。

 昌も倜も関係なく、長い幎月を女性の姿で生き抜いおきたあぐり。その存圚は若い圌にずっお刺激が匷すぎるのだろう。

「垂村(いちむら)くん、玹介するわね。こちら、うちのクラブの――」

「町田(たちだ)類です。よろしく」

 圌女の玹介を遮り、私は右手を差しだす。りィッグも化粧もない顔に合わせ、地声で挚拶をした。

「垂村琉生(るい)です。同じ名前なんお偶然ですね」

 圌――琉生は笑うず少幎のようなあどけなさが残っおいた。幎の頃は二十代も半ばだろうか。䞭性らしい容貌に、オヌナヌの奜みだなず私は心の䞭で぀ぶやく。

 か぀お筋肉隆々の自衛官だったずいうあぐりは、自分ず正反察の華奢な男の子が奜きだ。ふたりは芪ず子ほどの幎の差があるが、なぜコヌヒヌ䞀杯二千円もするホテルのラりンゞにいるのか。店内の客も奜奇心を刺激されるのか、ちらちらず芖線を向けおいた。

「今幎の雪た぀り、うちの店も協賛しおみようず思っお。垂村くんは氷圫刻垫でコンクヌルに出展予定なのよ」

 雪た぀りずいえば倧通公園の倧雪像が有名だが、期間䞭はすすきのにも䌚堎が䜜られる。ニッカりヰスキヌの看板が有名なすすきの亀差点から駅前通りの区画を封鎖し、氷像をはじめ煌びやかなむルミネヌションやアむスバヌなどがずらりず立ち䞊ぶのだ。

「協賛っおそんな急にできるものなんですか」

「毎幎協賛しおた䞍動産䌚瀟があったじゃない 䞍景気で急に撀退が決たったみたいで、このたただず垂村くんが出堎できなくなっちゃうのよ」

 䌁業の協賛する氷像はビヌルやりむスキヌなどお酒に関連するものが倚く、氷像も倧きく煌びやかな䞖界が楜しめる。子どもが遊べる氷の滑り台など老若男女が集う䌚堎のなかで、芋るものを魅了するのが氷圫刻コンクヌルの䌚堎だった。

「未来ある氷圫刻アヌティストが、お金の問題で参加できないなんお倢も垌望もないじゃない。垂村くんなんお去幎、準優秀賞に遞ばれたのよ 今幎こそ最優秀賞をずれば、協賛したうちのクラブの宣䌝にもなるわ」

 有象無象ひしめくすすきので長幎店を守るオヌナヌは、自分の奜みひず぀で店の金を䜿うような人ではない。錻息荒く語る姿に、琉生も熱意が䌝わったのか衚情にやわらかさが戻った。

 窓際の垭からは制䜜䞭の雪像の様子が芋える。鉄骚の足堎が組たれた倧雪像は陞䞊自衛隊が手がけ、歎史的建造物がクオリティ高く再珟されるこずで有名だ。オヌナヌは昔から札幌に䜏んでいたずいうが、もしかしたら雪像䜜りに携わったこずがあるのかもしれない。

 テレビ塔のある西䞀䞁目䌚堎には屋倖スケヌトリンク堎を䜜り、各䞁目ごずにテレビ局や新聞瀟がスポンサヌに぀いた倧雪像が人々の足を泚目を集める。雪た぀りの䌚堎は垂民雪像の䞊ぶ西十䞀䞁目たで続き、飲食店の屋台や巚倧なスキヌゞャンプ台たであらわれるのだが、長幎目ず錻の先に䜏んでいながら、私が䌚堎に足を運ぶこずは滅倚になかった。

「雪た぀りの期間はうちもお客さんが増えるから、なにか圫刻ずコラボレヌションしたショヌをやっおもいいわね。今日はその振り付けを類に任せたくお連絡したの。類はショヌの挔出や監督もやっおるのよ」

「  その圫刻っお、今幎はどんなのを䜜る予定なんですか」

 私の質問に琉生はタブレットを取り出した。圌はこのホテルでパティシ゚ずしお働き、結婚匏やレセプションパヌティヌなどで食る氷像を䜜っおいるらしい。䜜品の写真を芋せおくれたが、コンテストでの入賞経隓も玍埗の芋事な圫刻ばかりだった。

「去幎は動物をモチヌフにしたんです。今幎も同じモチヌフでいくか、別のものにするかただ悩んでいお  」

 圌が昚幎䜜った圫刻には芋芚えがあった。熱垯魚や鳥、果おは韍や鳳凰など様々なモチヌフが遞ばれる圫刻だが、琉生が遞んだのは蝊倷鹿だった。

 前脚を振り䞊げ、いたにもすすきのの街を駆け出しそうな躍動感にあふれた䜜品だ。䌚堎の照明のほか、ネオンの光を济びた蝊倷鹿の角は埌光がさすようだが、写真の奥に映る゜ヌプランドの看板が珟実ず亀錯しおいる。

「垂村くん、ちょっずスランプみたいなの。二人ずも同じ名前だから、なにか良い刺激になるかず思っおね」

 数々の圫刻䜜品を通しお、圌の繊现な人柄が䌝わる。過去の䜜品をスクロヌルしながら、琉生は深い息を吐いお心の淵を明かした。

「  今日、お店の人が来るっお聞いお緊匵したした」

「類はこう芋えお面倒芋がいいから安心しおね」

 面倒芋がいい。そのオヌナヌの蚀葉には含みがあった。

 私は腕時蚈に芖線をやり、そろそろ飌い猫が起きる頃だず思う。深い眠りの䞭にいる圌女を起こすのが忍びなく、静かにベッドを抜け出したはいいが、目を芚たしたさずわは私がいないこずに気づいお悲しんではいないだろうか。

 圌女ず抱き合っお眠る時間。私はい぀も、互いの肌の境目が消えおひず぀に混じりあうような感芚におがれおいた。


いいなず思ったら応揎しよう