💴年末調整書類の保管、まだ紙でいいの?― 電帳法施行後の「現場のリアル」とこれからの対応方針
はじめに:休日出勤で100人分の年末調整を終えた日
こんにちは。税理士事務所事務員バッツです。
本日も休日出勤で、100人以上の年末調整を一気に片づけてきました。
今日の顧問先では、
各従業員がfreeeに住所等の基本情報を入力し、
保険料控除証明書をアップロードし、
入力も自動化されている……はずなのに、
結局は自社で利用させていただいている申告ソフトが別。
1人ずつページを開いては入力し、
郵送で届いた証明書を切り取り、
のりで貼り付け。
――この流れ、もうやめませんか?
電子帳簿保存法(電帳法)も完全施行され、
請求書や領収書は電子保存が当たり前になりました。
それでも、年末調整だけは“紙の山”が残っています。
今回は、2025年(令和7年)時点の制度を踏まえながら、
「なぜ年末調整はまだ紙なのか」
「保管はどう変わるのか」
を整理していきます。
第1章 年末調整書類はなぜまだ紙なのか

まず押さえておきたいのは、年末調整書類の法的位置づけです。
企業が従業員から回収する主な書類は以下の3点です。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
保険料控除申告書
配偶者控除等申告書
これらは所得税法第194条・源泉徴収関係書類として扱われます。
国税庁の通達によれば、これらの書類は電子的に提出・保管することも可能ですが、義務ではありません。
つまり、
「紙での提出・保管を続けても違法ではない」
というのが2025年12月時点の実務です。
また、これら書類は7年間の保存義務があります(国税通則法第70条)。
税務調査時に備え、原本が残っていることが重要視されるため、依然として紙での保管が主流なのです。
第2章 電帳法の波 ― 電子化できるもの・できないもの
2024年1月、電子帳簿保存法の猶予措置が終了し、
電子取引データ(請求書・領収書など)は電子保存が義務化されました。
ここで誤解が広がっています。
「電子帳簿保存法=すべての書類を電子保存できる」
これは誤りです。
電帳法で定められているのは
「電子取引」や「会計帳簿」に関する保存義務。
年末調整関係書類(控除証明書、扶養控除申告書など)は対象外です。
もっとも、電子的に保存すること自体は可能です。
その場合、次のような要件を満たす必要があります:
タイムスタンプの付与または訂正削除履歴の保存
検索性の確保(日付・金額・取引先など)
適切な見読性(いつでも閲覧できる状態)
freeeなど主要クラウド会計ソフトは、
これら要件に対応済みですが、
「他社の申告ソフト」との連携が不十分なため、
結局PDF出力や紙保存が残る――というのが現場の実情です。
第3章 電子化が進まない3つの理由

実務担当者なら、誰もがこう思っているはずです。
「データ化したのに、なぜまだ紙で残さなきゃいけないの?」
理由は3つあります。
1️⃣ ソフト間の連携不足
freeeやマネーフォワードで収集した従業員情報を、
申告ソフトへ完全に自動連携できない。
結果、二重入力・印刷・のり貼りが発生。
2️⃣ 画像読み取りの精度の限界
保険料控除証明書のOCR精度は高まっているものの、
100%ではありません。
誤読や未読を防ぐためには、
人的チェックが不可欠です。
3️⃣ 従業員のITリテラシーの差
「アップロードしたと思ったら違う年度の証明書」
「家族分が混ざっている」など、ミスの温床も。
この3点がそろう限り、
「完全電子化」は理想論で終わってしまうのです。
第4章 今できる“紙と電子のハイブリッド運用”
現時点で最も現実的なのは、紙と電子のハイブリッド運用です。
保険料控除証明書など、原本が発行される書類は紙で保管
扶養控除申告書など、自社作成のものはPDFやクラウドで電子保管
電子保管する場合は、タイムスタンプや訂正履歴を確保
この運用なら、法令遵守を守りつつ、
将来の完全電子化にもスムーズに移行できます。
freeeやマネーフォワードでも、
「電子帳簿保存法対応プラン」を活用すれば、
電子保存体制を整える第一歩として十分に有効です。
第5章 まとめ:紙を減らす前に、正しく残す

「紙をなくす」のはゴールではなく、
正しく残す仕組みを整えることがゴールです。
電子化を焦って運用が崩れるより、
まず紙での保存ルールを整備し、
次に電子帳簿保存法に対応したシステム運用へ移行する。
この順番こそが、現場の混乱を防ぐ一番の近道です。
おわりに:効率化は「現場の声」から始まる
税制改正や法令対応が進むたびに、
経理現場は“やること”が増えていきます。
でも、どんなに制度が進んでも、
実務を支えるのは現場の知恵と手間です。
電子化の波に飲まれるのではなく、
「紙とデジタルのいいとこ取り」をしながら、
自社に合った運用をつくる。
それが、2025年の年末調整に求められる
“本当の効率化”だと感じています。
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