
💴住宅ローン控除で“残高証明書いらない”って本当?──令和7年の年末調整をやさしく解説
休憩室のひと言「今年から住宅ローンの残高証明書いらないらしいよ?」
税理士事務所の休憩室で、先輩がこんなことを言いました。
「今年の年末調整からさ、住宅ローンの残高証明書いらない人が増えるらしいよ。」
……はい、ここで新人事務員さん(あなた)の心の声。
「え、それ本当ですか?
じゃあ、今年は回収しなくていいんですか?
間違えたら税務署に怒られません?」
わかります。
僕も別業界から転職してきたとき、
年末調整=紙の海+専門用語の嵐で、何度も心が折れかけました。
あらためて自己紹介すると、私は
元高校数学教師 →
税理士事務所の事務員でAIコンサルタント修行中のバッツ
です。
数学と同じで、「ルールとパターン」さえ押さえれば年末調整もちゃんと解ける問題になります。
この記事では、とくに
「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」に、
残高証明書が必要な人と、不要な人をどう見分けるか?
を、初心者事務員さん目線で整理します。
読み終わるころには、
「この人は残高証明書いらないな」
「この人はまだ必要だから、必ず出してもらおう」
と、自分で判断できる状態を目指します。
結論|“多くの人”は残高証明書が不要。でも「全員」ではない

まず、いちばん気になる結論から。
令和7年分(2025年分)の年末調整から、
住宅ローン控除について「調書方式」という新しいやり方が本格的に導入されます。この「調書方式」では、
従業員が会社に出す書類に、年末残高証明書(住宅ローンの残高証明書)を添付しなくてよいとされています。
なので、先輩の
「今年から残高証明書いらない人が増えるよ」
というのは概ね本当です。
ただし注意点がひとつ。
すべての人がいきなり「調書方式」になるわけではありません。
古い借入・古い入居の人や、まだ対応していない金融機関のローンは、
引き続き「証明書方式」で、残高証明書が必要です。
だから事務員として大事なのは、
「今年から全部いらない!」
と覚えるのではなく、
“この人はどっちの方式か?”を見分ける目を持つこと。
ここから、そのための土台を一緒に作っていきましょう。
まず用語整理|「申請書」と「申告書」は別モノです
まず、年末調整まわりで混乱ポイント第1位がこれ。
「住宅ローン控除申請書」と「住宅借入金等特別控除申告書」
名前が似すぎです。
金融機関に出す「申請書」:住宅ローン控除“適用申請”
こちらは主に銀行などの金融機関に出す書類です。
名称例:
「住宅ローン控除に関する申請書」
「住宅ローン控除適用申請」 など(銀行によって表記が違う)
目的:
銀行が年末残高等調書を税務署へ送るために、
あなたのマイナンバーなどの情報をもらうこと
役割:
これを出すことで、調書方式の対象になれる仕組みです。
この書類は、事務所の年末調整現場ではあまり直接見ることはありません。
でも、あとで出てくる「調書方式」のスタート地点になっています。
会社に出す「申告書」:住宅借入金等特別控除申告書
こちらが年末調整で実際に扱う紙です。
正式名称:
「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」税務署から、初年度の確定申告後に年数分まとめて送られてくるもの
従業員は、2年目以降の年末調整のたびにこの申告書を1年分ずつ会社に提出
今回のテーマ、
「ここに残高証明書を添付するかどうか」
という話は、 この申告書+証明書のセット の話です。
旧ルール vs 新ルール|「証明書方式」と「調書方式」

昔ながらのやり方:証明書方式
これまでは、ほぼ全員がこの方式でした。
銀行 → お客さん(従業員)に
「住宅ローンの年末残高等証明書(残高証明書)」 を毎年郵送従業員 → 年末調整のときに
「住宅借入金等特別控除申告書」
+「年末残高証明書」
をセットで会社に提出
会社 → それを見ながら年末調整で住宅ローン控除を計算
事務員の立場からすると
毎年、残高証明書が全員分そろっているかチェック
申告書に書いた残高と、証明書の残高が一致しているか確認
という、地味だけど大事な作業が発生していました。
新しいやり方:調書方式
令和4年度の税制改正で導入されたのが、この「調書方式」です。
流れはこうなります。
従業員(納税者)が、最初の段階で
金融機関に 「住宅ローン控除に関する申請書」+マイナンバー を提出
金融機関が
税務署に 「住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書」 を提出
税務署が
その情報をもとに、
「住宅借入金等特別控除申告書 兼 年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」
(いわゆる「控除証明書等」)を従業員に直接交付
そしてここが重要ポイント。
この「控除証明書等」を会社に出すとき、
年末残高等証明書の添付は不要
と国税庁のチラシにはっきり書かれています。
つまり、
「税務署がすでに残高情報を持っているので、
会社にあらためて証明書を出さなくていい仕組み」
が調書方式なんです。
2025年の現場は“過渡期”|両ルールが混在します
では、「今年から全部調書方式!」かというと、そうではありません。
調書方式は、令和6年以降に入居した人などから段階的に適用
それ以前から住宅ローン控除を受けている人は、
引き続き、証明書方式のままです。さらに、金融機関側のシステム対応が間に合っていないところもあるため、
対応済み銀行と未対応銀行で、方式が分かれています。
その結果、令和7年分年末調整の現場ではこうなります。
調書方式の人:
→ 残高証明書なしで申告書だけ出してくる人証明書方式の人:
→ これまで通り、残高証明書も一緒に出してくる人
事務員目線だと、
「同じ住宅ローン控除なのに、人によって出してくる紙が違う」
という、ややカオスな状態です。
なので、ここからは
「この人は残高証明書が要る? 要らない?」を
バッツと一緒にチェックする手順
を作っていきましょう。
バッツ流チェック手順①|初年度か? 2年目以降か?
まずは、そもそも年末調整で扱う対象かどうかを確認します。
住宅ローン控除の初年度(入居した翌年分)は、
原則として確定申告で手続きします。この段階では、会社の年末調整は関与しません。
2年目以降から、年末調整で住宅ローン控除を扱えるようになります。
なので、まず従業員さんに確認するのはここです。
「住宅ローン控除って、今年が何年目ですか?」
「今年が1年目です」
→ 年末調整では扱わない(確定申告の案内へ)「2年目以降です」
→ 今日の本題、「調書方式か証明書方式か」を見ていく対象になります。
バッツ流チェック手順②|調書方式か? 証明書方式か?
ここからが今年いちばんのポイントです。
A. 調書方式っぽい人(=残高証明書“不要側”)
次のようなとき、調書方式の可能性が高いです。
税務署から届いた書類が
「住宅借入金等特別控除申告書 兼 年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」
の形になっていて、
その中に「住宅借入金等の年末残高」や「控除額(見込額)」が印字されている。金融機関からの案内(ホームページやパンフレット)に
「当行は調書方式に対応しました。
年末調整では残高証明書の提出は不要です」
のような説明がある。
この場合、国税庁の説明どおり、
控除証明書等には、住宅ローンの年末残高等証明書の「添付は不要」
なので、会社として残高証明書を回収しなくてもOKです。
事務員としては、
従業員が残高証明書を持ってこなくても
申告書に残高や控除額が印字されているなら
「あ、これは調書方式だから、残高証明書なしで大丈夫なパターンだな」
と落ち着いて判断しましょう。
B. 証明書方式のままの人(=残高証明書“必要側”)
一方で、こんなケースはまだ証明書方式側です。
金融機関から毎年
「住宅ローン年末残高等証明書」が郵送されてきている。税務署から来た申告書に、
年末残高欄が印字されておらず、従業員が手書きしている。金融機関のHPに
「当行は年末残高調書方式には対応していません」
のような記載がある。
この場合、従来どおり
申告書 + 年末残高証明書(原本またはコピー)
をセットで提出してもらう必要があります。
バッツ流チェック手順③|パターン別に会社はどう動く?
パターン①:調書方式(残高証明書不要)
集めるもの
「住宅借入金等特別控除申告書(兼控除証明書)」
だけで足ります(実務上、控除証明書部分も一緒になっていることが多い)。
チェックポイント
年末残高が印字されているか
控除可能期間・居住開始年月日などが、前年までの情報と矛盾していないか
イメージ
「税務署が計算した“答えの書いてある答案”をチェックするだけ」
に近い感覚です。
パターン②:証明書方式(残高証明書必要)
集めるもの
「住宅借入金等特別控除申告書」
「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」(住宅ローン年末残高証明書)
チェックポイント
申告書に書かれた年末残高と、証明書の残高が一致しているか
名義人が本人になっているか
借入先の金融機関名が一致しているか
こちらは今まで通り、「証明書を見ながら計算内容を確認する」パターンです。
保存義務|捨てていい紙・捨てちゃダメな紙
会社側:7年間とっておくべきもの
年末調整の各種申告書は、
翌年1月10日の翌日から7年間の保存が義務付けられています。
その中には当然、
「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」
も含まれます。
一方で、残高証明書そのものを、会社が必ず7年保存しなければならないとは決まっていません。
現場では、
コピーだけファイルに綴じておく会社
年末調整が終わったら原本を従業員に返す会社
など、運用に差があります。
従業員側:原本はちゃんと取っておいてもらう
調書方式で会社に出さない場合でも、
従業員にはこう声をかけておくと親切です。
「税務署から問い合わせが来ることもありますので、
銀行から届いた残高証明書は、
ご自宅で保管しておいてくださいね。」
税務署のQ&Aや銀行の解説でも、
証拠資料として手元保管しておくことが推奨されています。
よくある不安&勘違いQ&A
Q1:従業員が「銀行から残高証明書届いてないんですけど…」と言ってきた
A:調書方式の可能性があります。慌てず確認しましょう。
まず、税務署から届いた申告書に
年末残高や控除額が印字されているか確認。金融機関が調書方式対応一覧に載っているか、国税庁のサイトや銀行HPで確認。
印字されている + 対応金融機関なら、
残高証明書なしでもOKなパターンと判断できます。
Q2:「去年は出してもらったのに、今年は要らないって本当に大丈夫?」
A:制度改正と移行時期の影響です。
調書方式は、令和6年以降居住開始の人などから段階的に適用されます。
そのため、
去年までは証明書方式
今年から調書方式
という途中から切り替わる人もいます。
社内では、
「調書方式と判断した場合は、
“理由”を簡単にメモに残しておく(例:〇〇銀行調書方式対応+申告書に残高印字)」
といった運用にしておくと、
後から見直すときにも安心です。
Q3:本当は必要な人から、残高証明書をもらい忘れていたら?
A:その年の年末調整では住宅ローン控除を適用せず、
従業員に「確定申告での対応」を案内するのが原則です。
無理に不完全な情報で控除をしてしまうと、
後から修正が必要になり、かえって手間・リスクが増えます。
Q4:税務調査で会社が怒られないために、最低限何を押さえるべき?
保存義務のある書類(申告書など)を7年きちんと保管しているか
調書方式/証明書方式をどう判断したか、社内で基準があるか
あやしいと感じたケースを、
きちんと上司や顧問税理士に相談しているか
完璧を目指すより、
「判断に迷うところは、必ず誰かとダブルチェックする」
という“クセ”をつけておくほうが大事です。
まとめ|“残高証明書いらない時代”でも、事務の仕事はなくなりません

最後に、今日のポイントを3つに絞ります。
令和7年分の年末調整から「調書方式」が本格導入され、
多くのケースで年末残高証明書の提出は不要になっていく。しかし、居住開始時期や金融機関の対応状況によっては、
これからも証明書方式が続き、残高証明書が必要な人もいる。大事なのは、
初年度かどうか
調書方式か証明書方式か
を一人ひとり見分ける目と、
必要な書類をしっかり保存すること。
元数学教師らしく言うなら、
「公式そのものより、
“どの問題でどの公式を使うか”を見分ける力が大事」
年末調整も同じです。
パターンと手順さえ押さえれば、あとは毎年の“反復練習”で必ず慣れます。
明日からできる、ちいさな3ステップ
自分の会社で
「調書方式の対象になりそうな従業員ってどれくらいいそうですか?」
と、上司や顧問税理士に一度聞いてみる。
今年の年末調整チェックリストに、
「住宅ローン控除:調書方式/証明書方式」のチェック欄を1つ追加する案を考えてみる。
判断に迷ったら、
「とりあえず保留して誰かに相談する」
という安全なクセをつける。
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