
「海底カフェの相談屋さん」:海中散歩の休憩所 思考のミルメルシィカフェへようこそ!【第65話:『未来が不安』】
【第65話:『未来が不安』】
その後、彼ら以外にも初来客が訪れた。
「いらっしゃいませ!ようこそ!ミルメルシィカフェへ!初めてご来店のお客様ですね!お席へご案内いたします!」
「どうも」
おや?彼はダニエルでしょうか。
イトウの魚人でしたか。イトウ属という鮭の仲間ですね。厳密には仲間とは違うのですが。
確か街の建物について……建築関係は彼が担ってくれていましたね。
「ベルナデッドからおすすめされて来たんだけど……」
「ベルナデッドさんとお知り合いの方なんですね!改めてご来店していただきありがとうございます!」
エテが紅茶を差し出した。彼はありがとうと言うと口をつけた。
「”ピエール博士が何でも解決してくれるさね!”……と言われるがまま、言葉に乗って来てしまいました……」
「その通りです!ピエールさんなら何でも解決してくれますよ!」
エテ、エテ。それは困ります。
「ええっと、それが街の修繕で悩んでいて」
はい。ぼくの意思は関係ありませんね。頑張りますとも。
「ダニエルさんですね。街の建築のことでしょうか?」
「ん?あ、ああ。自己紹介していなかったな。私はダニエル。アトランの街の建築家と建物の修繕を担当しています」
エテはにっこり微笑んでこちらに委ねている。
「改めまして、ご紹介に預かったピエールです。何がお困りですか?」
「海洋魔物がたまに街に入っては建物を壊してるのは知ってますね?」
ぼくは頷いた。
「その度に修繕していたのですが、今後”大きな波”がくるかもしれない。街の噂はそんな暗い噂で持ちきり。本当に噂通りになれば街は損壊します」
言葉通り、人も街も。ですね。
「ある程度の損傷なら何とかなります。ただ、広範囲で影響を受けた場合、私たちの物資や人数では修繕が間に合わないのです」
「……」
「そこで何かいい案はないかと……」
「仮にそのような”時”が来たとします。その前である今、補強するのか、作り直すのか。それとも事後にすぐ対応できるようにするか。人数や物資はいかに効率的に回すか。全てを取るのではなく、方針を固めるのが無難だとぼくは考えますね」
「そうはいってもな……」
「少し厳しいことを言っても?」
「もちろん」
「未来が不安になることは理解できます。しかしそれに怯えていて今、打開案を練るわけでもなく、何か行動に移すわけでもない。誰かに助けてもらえると思っていらっしゃるなら考えを改めた方がいいでしょう」
「……わからないくせに」
ええ、わかりませんとも。
転んだら手を差し伸べてくれてそのまま、引っ張り上げて連れていってくれる。そんな風に考えて……いえ、それが当然だと考えている人のことなど。
「……少し、考えてみるよ。今日はもう帰るな」
「はい、よく考えてみてください」
彼はエテに見送られながらトボトボと帰っていった。
▽第66話 少し厳しかった?