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癌がみつかったけど南インドでのんびりしてきました

    おもわぬツレができまして…

    わたしは本やマンガにすぐ影響されるたちです。
    アニメ『ロミオの青い空』を見てイタリアに行ったり、小説『リヴィエラを撃て!』のピアノ協奏曲第二番の演奏シーンに酔いしれるあまり、ブラームスの墓参りをしたくなってウィーンに行ったり。
    そんなわたしが「南インドのケララにあるアーユルヴェーダ病院に3週間滞在してパンチャカルマなる施術を受けてこよう!! 」と思ったのは『流水りんこのアーユルヴェーダはすごいぞ~!』を読んだからでした。
    インド人の夫をもつ流水先生は、オカルト作家でもあるため、本の内容はすこし神秘体験的な雰囲気もあったのですが、私が惹かれたのは「専門施設で毎日マッサージを受けて、食事は上げ膳据え膳のヘルシーなインド料理」の部分。なんとも極楽ではありませんか。
    さっそく「ケララ パンチャカルマ」で検索すると、日本人の専門家が同行して色々とサポートしてくれるツアーがあるようです。英語もろくにできない私がインドに挑戦するならこれしかない。さてお値段は…と見てみると、食事と施術時の薬代等々込みで3週間の滞在費は40万円弱。思った以上にリーズナブルです。 渡航費も、シンガポール航空利用で東京から10万円強。ある程度まとまった出費にはなりますが、3週間入院というボリュームを考えればとても安いし、コロナ禍でしばらく海外旅行に行けなかったぶんのお金の余裕もあったので、思い切って申し込みました。

    旅の期間は2月4日~2月28日。
    主催は、宮崎でアーユルヴェーダサロンを開いておられるAさんと、アーユルヴェーダセラピストの資格を持つツアーコーディネーターMさんの女性お二人。ツアー参加者は私も含めて8人。
    事前にオンラインで皆さんと顔合わせをし、主催さんからアーユルヴェーダの簡単なレクチャーを受けました。インドの旅行に必要なものをあれこれ教えていただき、後はそれらを買いそろえて…ビザをとって…と準備をすすめていた折、思わぬことが起きました。
    甲状腺癌がみつかったのです。

    ことは乳がん検診にさかのぼります。
    この年、わたしは五十肩を患いました。整形外科を訪れたところすぐ直るよと言われ、そういえば四十肩もいつの間にか治ったなぁとほっておいたのですが、どんどん悪化して腕が水平にすら上がらなくなり、ついには乳がん検診のマンモグラフィがうまく撮影できないという事態に。
    いつもは触診のみの産婦人科へ行っていたのですが、そういう事情から、エコー検査をしてくれる病院を受診しました。
    先生は広範囲に丁寧に見てくださり、甲状腺がやや腫れているのでと専門医を紹介してくださった。
    しかしながらその専門病院はとても人気で予約がなかなかとれず、一か月ほど遅れてやっと受診、首にえいやと針を刺して検査をし、検査結果を聞くための予約をとるのにこれまたさらに一か月を要し…で、再び病院を訪れましたら、なんと、結果は悪性だったのです。
    まじですかー!?
    だって、いや、悪性って、つまり癌では。
    この時12月。まあ癌だったら結果を早く聞きにくるよう連絡があるだろうし、それがないってことは問題なかったんだろうねと勝手に安心しきっていた私、予想外の事態に軽いパニックです。
    「あの、私二月にインドに行くんですけど、すぐ手術したら大丈夫ですかね行けますかね!?」
    …先生も最初にこの質問がくることは予想外だったらしく、一瞬、面食らったような顔をしたものの、
    「首を切る手術なので、しばらく重いものを持つのは大変だと思いますよ? キャンセルできるならした方が…」
    さすがのものすごくそりゃそうだな返答。そして、
    「年末は手術の予定が埋まっていてすぐは受けられないかも…詳しいことはこれから紹介する総合病院の方で聞いてください」

    普通、癌だと言われたら命や将来の不安で頭がいっぱいになるようですが、この時のわたしは、
    「何故もっと早く教えてくれないの!! そもそもすぐ受信できて結果もすぐ教えてもらえてたら最速で二か月前には手術受けてインドには静養気分でいけたじゃない、もうっ!!  これだから人気の病院は!!」
    というなんだか見当違いな怒りでぷんすか、ともかくもインドには行けるの?行けないの?という心配で頭がいっぱいだったのでした。

    はてさて、結論からいうと、この怒りと心配は不要なものでした。
    甲状腺癌は進行がとても遅く、転移がなければ命にかかわるものではないそうです。
    総合病院で改めて検査を受けた結果、そこまで大きな腫瘍ではない(1.6cm)し、2月にインドに行くなら1月末まで様子を見て再検査、それで緊急性がなさそうなら帰ってきてから手術を受けた方が良いのでは? という話になりました。
    さらに、海外旅行で感染症の可能性などもある、それを考慮のうえで医師のスケジュール等も考えると、手術は4月の半ば頃が妥当ではないかと。
    あらま。という感じです。拍子抜け(笑)
    すぐにでも入院して手術して体調戻して…と、ひとりで大慌てしてたのに、なんでしょう、ものごとはなるようになる…いや、なるようにしかならないものです。いい大人がちょっと恥ずかしい。
    ちなみに、手術の予定はやっぱりいっぱいで、年内はおろか一月中も難しいとのことでした。みなさまお大事に…。

    テッキニーアーユルヴェーダホスピタル

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    やってきましたよ!

    成田からシンガポール経由でケララ州のコーチン空港につき、車に揺られること約一時間。無事に、目的地のテッキニーアーユルヴェーダ病院へ到着しました。
    緑豊かな閑静な住宅街にある二階建ての病院です。
    宿泊用の部屋が6室、施術用の部屋が3室。
    一階には、アーユルヴェーダの神様であるダンワンタリ神の祭壇のある小部屋や、食堂、台所などがあります。
    敷地内にはたくさんの植物が生い茂っていますが、これらはすべて薬草として植えられたもの。小さな製薬所があって、オイルや薬を作っているところが見られます。
    部屋は二人部屋。私の同室さんは去年もこのツアーに参加した方で、前回は腰痛を治すのに専念したため、今年は若返りなど美容系の施術を受けたくて参加した、と話していました。
    彼女と再会したドクターやスタッフ、セラピストさんたちのきらきらした笑顔が、大好きな友人に対するそれと同じで、ああひとが温かいなあここは良い場所だなあ…と、さっそくうるっと感動してしまいました。
    同室さんが二度目であれこれ勝手がわかっていることと、英語がペラペラの才媛だったおかげで、滞在中はとても助かりました。

    病院の玄関口がきれいにお花で飾りつけられ、庭に祭壇がしつらえられて、ウェルカムセレモニーが開かれました。一人ずつ足を清めてもらい、ウェルカムドリンクとお花でおもてなし。
    そのあとスタッフさん総出で写真撮影…が、なかなか終わらない。
    聞けば、こちらの方々は写真撮影が大好きなのだそうです。スマホをかまえた男性スタッフが三人もいて、集合写真なのにどこを見ればいいのかわからない。終わったかなと思っても次は俺も入って撮ろう、次はこっち向きで、この場所で…と、本当にいつまでも楽しそうに撮影していました。
    夕刻には歓迎会が開かれ、お庭のステージでスタッフやセラビストの皆さんが歌や踊りを披露してくださいました。ドクターの息子さんまでもがギター片手に何曲か。
    スタッフさんのご家族も加わって、ヒンドゥー寺院でお祭りの際に奉じられる華やかな踊りが披露され、最後はまた和気藹藹の写真撮影。
    ケララの皆さんって本当にあたたかい…を通りこしてちょっと熱い、あつくるしい? かも? と思ってしまった、楽しい歓迎会でした。

    パンチャカルマとは…

    アーユルヴェーダは、長い歴史に基づいたインド独特の生命科学です。
    生き物すべてが「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」という三つの性質をもつドーシャによって成り立っていて、そのどれかが多すぎたり少なすぎたりするとバランスが崩れて病気になる。私たちは常に調和を保つために気を付けなくてはなりません。
    パンチャカルマはアーユルヴェーダのデトックス療法です。消化のいい食事を通して胃腸を整え、ギー(精製バター)を飲んだりオイルマッサージを受けることで体内の毒素を排出しやすい状態にしてから、下剤や浣腸を用いて身体から毒素を排出。その後は体に滋養を与える食事やマッサージで体を整える…ということを三週間かけて行います。
    日本にいる間に、生活状況や体調に関する問診票を提出し、オンラインでドクターの面接も受けましたが、どこを重点的に治療するかは実際にインドに来てからドクターがそれぞれの様子を見て決めます。
    私は、五十肩の治療を中心に行うことになりました。
    癌と診断されたことは伝えていてCTの写真なども送っていたので、もっと内科的な治療になるのかと想像していたのですが、元々テッキニー病院では癌の治療(癌患者の受け入れ)はしていないとのことでした。

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    ダンワンタリン神

    南印度日々是好日

    毎日の暮らしの様子を記しますね。
    起床時間は特に決まっていませんでした。
    同室の方も私もあまりクーラーが好きではなかったので、風を入れるために部屋の窓を開けており、明け方になると鳥の声や近所の寺院からのお祈りの音楽が流れてきてとても風情がありました。(最終週は庭の溜池に住んでいるカエルが繁殖期を迎えたのか、鳴き声がすさまじくてびっくりでしたが…)
    そんなわけで、6時くらいにはだいたい自然の音で目がさめます。
    7時頃に、スタッフさんが朝に飲む薬とギー(精製バター)を部屋まで運んできて、血圧もはかるので、起きてそれを待つか、早く目が覚めた時は散歩に出かけるかしていました。

    朝の散歩はとても楽しかったです。
    主催さんが毎朝すこし遠くにあるヒンドゥー寺院にお参りしていて、参加者の皆さんも一緒にそちらを訪れることが多かったのですが、私は朝が弱めなため遠くまで歩く元気はなくて、いつも病院周辺のゴムの木の林や、牛の一頭居る原っぱあたりをひとりでのんびり歩いていました。
    南国の朝は長袖一枚がちょうどいいくらいで清々しく、めずらしい鳥の声を聴いて、色とりどりの花や、各家の庭に大きなフルーツがぶら下がっているのを見るのも楽しい。ケララはヤシの大地という意味だそうで、ヤシの木やバナナの木もわんさかです。
    インドというと、乾いた殺伐とした雰囲気を想像する方もいるかと思いますが、そちらは北インドの風景。南インドは水が豊富で緑が豊か、時々すれ違う人もにこにこしていて、英語で話しかけてくる方も多く、ゆったりとした雰囲気なのです。

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    夜明けのケララ

    7時30分には食堂にチャイとスパイスコーヒーが用意されます。
    食事はベジタリアンと聞いていたので、あれ、牛乳? と意外に思ったのですが、南インドはラクトベジといって、乳製品OKのベジタリアンが多いそう。
    私は日本ではコーヒー党ですが、このチャイの牛乳が濃厚でまろやかで。すっかり気に入ってチャイばかり飲んでいました。
    下剤治療などで食事制限のある日はチャイが飲めないので、とても悲しかったです(笑)

    8時ごろから一人ずつドクターの問診が始まります。
    私は五十肩治療コースなので、毎朝腕がどこまで上がるようになったかのチェック。睡眠や食欲や便通は特に問題なかったので、問診はいつも割とあっという間に終わってしまってちょっと物足りなかったです。
    でも、はじめは水平にするのもやっとだった腕がだんだん上がるようになってきて、毎朝ドクターが「グレイト!」と笑顔、通訳してくれる主催さんたちも大喜びしてくれるので、朝からとても良い気分でした。

    8時30分。朝食です。その前に食前薬、食後にも薬。
    お肉がないかわりに豆がたっぷり、野菜は細かく刻まれていてとても消化に良いカリー。大きな鍋にたくさん用意されているビュッフェ方式なので、食事制限のある日以外は好きなだけ食べられます。
    ちなみに、銀色のお盆によそって手で食べる。
    最初はすこし躊躇しました。熱いし、食べにくいよ…と思ったのですが、慣れてくると不思議とこの方がいいんだなと分かってきます。少し冷めるまで待つから胃に良いし、いちどにたくさん口に入れられないのでゆっくり食べることになる。
    食堂のすぐ横が台所で、覗くとおいしそうな匂いとともに調理スタッフの皆さんの働いている姿が見られます。ひとの手で丁寧に作られる食事…食べるものを、用意してもらってるんだな、ありがたいなあと実感します。
    参加者に、私がマダムと勝手に呼んでいた上品な奥さまがいて、最初はずいぶんお疲れというかやつれた感じで「わたし一日一食でいいんだけど…」とおっしゃっていたのですが、数日したら「ひとに作ってもらうごはん、おいしいなあ」と食欲を見せ始めて表情も明るくなり、すっかり食いしん坊に。少し太ったと言って喜んでいる様子に嬉しくなりました。お話を聞くと、日本にいたときは人のお世話ばかりで、身も心もくたびれてしまっていたようです。

    午前中に、約一時間のトリートメントがあります。
    施術前には必ず、セラピストさんがアーユルヴェーダの神様であるダンワンタリ神へのお祈りのマントラを唱えます。これがとても神聖な雰囲気で、毎回とても楽しみでした。
    椅子に座ったまま頭のマッサージを少しした後、紙のふんどし一枚になってベッドに寝そべり、全身のオイルマッサージを40分くらいしてもらいます。
    これがもう贅沢の極み! です。
    ずいぶん昔にいちどだけ、都内でオイルマッサージをしてもらったことがあるのですが、全体的にオイルも少ないし、まあこんなもんかなあ…という感想でした。
    が、ここではすべてがその倍以上、マシマシです。オイルはこれでもかというほどべっとべとに塗りたくられ、マッサージ師さんは二人がかりで力強くぐいぐい、ぐいぐいぐいと、頼もしい。時々「イタイ?」と聞かれるのですが、痛いとかの前に激しい!! スゴイ!!
    オイルマッサージが終わると一人用サウナに首だけ出して入ります。
    見たとき「あっこれポワロに出てきたやつだ!!」と嬉しかったのですが、サウナは元々あんまり好きではなかったので、いつも5分だけにしてもらっていました。

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    マッサージのベッド、左に一人用サウナが写ってます

    オイルマッサージ+サウナは最初の一週間くらいで、パンチャカルマ療法の進行具合にあわせて施術も変わっていきます。
    二週目はオイルマッサージの後にあたたかい薬湯をひたすら体にかけ流し続けるという不思議なトリートメントになりました。これがとても気持ちがいい。映画に出てくるオリエントな王侯貴族にでもなったような心地です。正直、ずっとこれがいい…なんて思ってしまいましたが、そうはいきません。
    三週目にはオイルマッサージの後、薬草を包んだ布を熱して体をぽんぽん叩くトリートメントになりました、が、これがなかなかどうして熱い。
    「熱っ」と思わず声を上げるとマッサージ師さんたちは自分の手でポンポンやって冷ましくれるのですが…彼女たちは熱くないってことだよね…ひ弱なやつだと思われてるんだろうなあ…。
    最後の何日かは、施術で疲れた体に滋養を与えるトリートメントでした。
    米とミルクを煮たものを布で包んで熱したもので体を擦ります。ミルク粥に漬け込まれるような感じで体がぬるぬるのどろっどろになります。これもなんというか、なかなかない体験でした。

    午前のトリートメントが終わると、昼食まで特にすることがありません。
    というのも、暑い日中は外に出て日差しを浴びてはいけないとドクターからお達しが出ているのです。なので散歩はできない。じゃあ、まったり昼寝でも…といきたいところですが、昼寝もご法度。体内のバランスが崩れるからだそう。
    皆さん、洗濯をしたり本を読んだりと思い思いに過ごしていました。滞在中に誕生日を迎えるスタッフさんにあげたいと、菩提樹の種でミサンガを作っていた参加者女子もいて微笑ましかった。
    私は屋上が好きで、日陰にヨガマット(各部屋に一枚ずつある)をしいてスマホを見たりぼーっとしたり。
    そういえば、時々停電するものの施設内にwi-fiはしっかり飛んでいたので、デジタルデトックスはできませんでした。

    13時に昼食。アーユルヴェーダは「消化力」を大事に考えているため、消化力の強い昼食が一番豪華です。バナナやザクロなどの果物も出ます。
    生のザクロを食べたことがなかったので、最初すこし戸惑ったのですが、さすが南国のとれたてのザクロ、ぷちぷちした食感とジューシィさがたまりません。すっかり気に入ってしまいました。
    ちなみに、果物は食事の前に食べるのが良いそうです。これも消化力の関係だとか。

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    南インドの家庭料理とザクロ

    アーユルヴェーダの食の考えでもうひとつ大事なのが、
    「甘味」「酸味」「塩味」「辛味」「苦味」「渋味」
    この6種類すべてをとることです。
    カレーは日本人にはとても身近な食べ物ですが、南インドの本格ミールスはなじみがないんだなあとつくづく。だって毎食、見た目から味の想像が全くつかない。なのでいつも最初は少なめにとって、食べてみてから、おかわりの量を決めていました。おかげで、毎日撮った食事の写真を見ると、まるで小食の人みたいです。
    とはいえ、南インドの家庭料理はとてもおいしかったです。調理主任のエミリィさんの腕と愛情もあったのでしょう。去年もここに来た同室さんは、帰国後にエミリィさんの料理が恋しくて彼女の夢ばかり見ていたそうです。
    …その気持ちわかる!!

    食事後からおやつまでの時間に、午後のトリートメントが30分あります。
    午後のトリートメントは個人にあわせた施術。
    五十肩治すぞコースの私は、初めは上がらない左側の脇の下あたりにあるシコリをぐいぐい、それがなくなると左上腕の硬い部分をぐいぐい揉まれました。
    最初の頃、あまりに痛くて痣にもなるし、
    「ペイン(痛い)! ペイン!これでいいの!? ほんとに!?」と…あまりに私が泣き言を言うので、セラピストさんが主催さんを呼んで英語で施術の説明、主催さんが私に日本語で伝えてくれる…というお手間を何度もかけてしまいました。
    とりあえず、この固い部分を潰さないと次に進めないから、ちょっと痛いけど今は我慢してねと諭されて涙目ながら納得。実は、セラピストさんは私が日本人なのでだいぶ手加減してくれていたことも判明。現地の人ならもっと力を入れるんだけどねえ~とニコニコ…恐縮しました。
    参加者さんらにそのことを話したら、皆さん「一度現地向けを体験してみたら?」とおっしゃったのですが…無理ですよ…わたくし日本人の中でも軟弱な方ですから…。
    この時の担当セラピストさんは、よほど私を哀れに思ったのか、施術のたびにハグしてくれて、時には髪や頬にチュッとしてくれることもありました。

    15時30分は、みんな大好きおやつの時間です。スパイスコーヒーとチャイのほかに一品、手作りおかしが出ます。嗜好品に飢えているので、甘いお団子や蒸しパンは大人気。基本的には人数分しかないのですが、もしかしたら余らないかな?と皆が目を光らせていました。
    食が大事なアーユルヴェーダですから、食べ物は持ち込み禁止。毎日のごはんはとてもおいしいけど、嗜好品が恋しい…となります。
    ある日、参加者の一人が「庭に落ちてるタマリンドの実がおいしい」などと言ったものですから、皆わらわら庭に出て探しはじめた。食べてみると、なるほど梅干しのような酸味があっておいしい。まるで、おなかをすかせた昭和の子供たちのように庭をうろつき実を拾っていた我々でしたが、すぐに食事担当のスタッフさんに見つかって諫められました(笑)

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    魅惑のタマリンド

    17時からは、歩いて数分の場所にある教会の一室を借りて、アーユルヴェーダ勉強会です。
    散歩していてカトリックの聖人の絵などが飾られているおうちがぽつぽつあるなあと思っていたのですが、南インドはヒンドゥー教徒とキリスト教徒が多いそう。

    勉強会はちゃんと厚いテキストが用意されていて、本格的でした。女性のドクターが英語で解説をしたあとに、内容についての質疑応答。主催さんが全部通訳してくれます。
    ひとつ宿題が出ました。トリートメント前にセラピストさんが唱えるダンワンタリ神への祈りのマントラを、最終日までに覚えること。
    ちゃんと覚えたら、ダンワンタリ神のカードをあげると言われて、実はカード大好きな私はがぜん張り切ったのですが、現地の言葉にあまりにもなじみがないため暗記しきれず。おのれのポンコツさが悔しいばかりでしたが、最終日はみんなで唱えましょうね方式だったので一部口パクで乗り切り、見事(?)ダンワンタリ神カードをもらうことができたのでした。

    19時30分、夕食の時間です。
    夕食は毎食お粥です。むろん「消化力」のためですね。
    この消化を第一に考えた食事を続けていると、日本での今までの食事がものすごく体に負担をかけてきたんだなということがよく分かります。ありがちな言い方ですが、こちらに来てからは身体が喜んでいる気がする。
    今まで脳の都合優先でおざなりにされてきた身体の中の動きに意識が向いて、少しずつですが打ち解けてきたようにさえ思えます。
    消化に良い食事をし、毒素を外にだすことで、いつも限界を超えて働かされていた身体がすこし楽になり、元気になって、やっと悪いところの修復が始まるのかもしれません。

    食事のあとは、敷地内を少し歩きます。これも消化促進のためでしょう、そうするようドクターからお達しが出ています。
    せかせかではなく、ゆっくり、大きく手を振って。ふと見るとしかし、手を振っていたのは私だけだったので、これは五十肩治療メニューの一環のようです。
    病院の門の近くに黄色い藤のような花が下がっています。私たちが来たばかりの頃はほんの少ししか咲いていなかったのですが、毎日ちょっとずつ花が増えていきいます。私たちが帰った後に満開を迎えるだろう、とドクターに聞きました。盛りの時期には毎年カーテンのようになるそうです。見られないのが残念。

    あたたかい日のおわりごろ

    三週間過ごして、娯楽が少ないって案外良いものだなあと思いました。
    いま施設内の製薬所でオイルを煮ているよ、とか、これから浣腸の薬を作るよ、などの声がかかるとみんな喜びいさんで見に行きます。
    大きな鍋で薬草を煮たり、粉にして練ったりと、薬の作られていく過程は全部ちゃんと見えます。
    食堂でチャイを飲みながら、参加者の皆さんの普段の生活のことや勉強していることの話を聞いたり、主催さんにアーユルヴェーダのこと、健康のこと、インドについての話を聞きました。
    辛い下剤療法のあとにだけ飲める、とてもおいしい特製スープのレシピをエミリィさんに聞きました。
    ヒンドゥー寺院のお祭りに出かけて象に大はしゃぎしたり、最終日の前日には街にショッピングにもでかけました。
    すべてがどこかゆったりして、急ぎすぎず、便利すぎず、見えるものはいつもより瑞々しく、触れる事々が楽しくやさしく感じられたのでした。
    同室さんが「細くて可愛い月が出てる」と教えてくれたので、屋上にあがって眺めた夜もありました。

    そんな風だったので、日本に帰る頃にはあたたかなインドの生活を離れることがとても寂しく…せわしない日々に戻って行くこと、きっとすぐ馴染んでしまうことが悲しくもありました。
    なんといっても、3月の仙台はまだまだ寒い。想像しただけでも体が縮こまってしまいます。

    ゆっくりとでもせわしなくても、時間は過ぎていくのでした。
    羽田空港に到着したあとも、家ではなくてインドの方に帰りたいような気がして、しばらくロビーでぼんやり座っていました。
    原っぱの牛に会いたいなあと、思いました。

    癌の手術が無事終わり…

    日本に戻ってからもしばらくは消化に良い食事、できればベジタリアン生活を頑張りたい…とは思っており。豆を買い、禁酒なんぞも一応一か月はできたのです。
    が、うっかりお酒を解禁したらお肉の方もなし崩しにずるずると。
    気づけば、生活全般がすっかり元に戻っていました。意志弱…。

    4月に、予定通り甲状腺癌の手術をしました。
    首元を切ったのでしばらく喋りにくかったりはありましたが、経過はとても良くて、術後四日で退院。
    一か月後の検診の際に切ったものの写真を見せてもらい、説明を受けたのですが、想定よりも悪性腫瘍はかなり小さかったのだそうです。
    幸いと言っていいのか…と、執刀医の先生は腫瘍に対して傷が大きくなったことをすこし申し訳なさそうに話しておられましたが、私は、癌は南インドののんびり生活のおかげで小さくなったんじゃないのかなあと思っています。

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    いつかまた会いたいなあ
     
     
    写真置き場として利用していましたが、もう少し違うことも考えましょう…。

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