31歳の起業と、48歳の起業
2009年、ジェネックスパートナーズを辞めた。
当時は31歳くらい。独身だった。
今振り返ってみると、失うものがほとんどなかった。
あの頃の自分が「起業に取り組んでいた」のか、それとも単にもがいていただけなのか、今となってはよく分からない。
ただ、とにかく必死だった。
そして15年以上経った今、僕はまた「幸せデザイン」という新しい会社を始めようとしている。
同じ起業なのに、やってみるとずいぶん違う。
「仕組みで回すやつが勝つ」
ジェネックスパートナーズ時代、上司だった大國さんから一冊の本を紹介してもらった。
正確なタイトルはもう覚えていないのだけれど、「結局、仕組みで回すやつが勝つ」というような内容だった。
そこから「仕組み化」という言葉が、自分の中に強く残った。
仕組み化とは何だろう。
当時の僕なりに考えて、たどり着いた答えはかなり単純だった。
自分が働き続けなくても事業が回って、そこからチャリンチャリンとお金が入ってくる。
そんな状態をつくることだった。
今振り返っても、この考え方を教えてもらったことにはとても感謝している。
実際、その後に会社を経営する中でも、「自分がいなくても回る状態をどうつくるか」はずっと考えてきた。
一方で、15年以上経った今だから思うこともある。
「チャリンチャリンと儲かる仕組みをつくること」と、「大きな会社をつくること」は、どうも同じではない。
仕組みをつくることと、会社をつくること
事業を仕組み化すれば、自分がずっと現場にいなくても回るようになる。
これはすごく大事だと思う。
でも、それだけで会社が大きくなるわけではない。
人を採用する。
人に任せる。
組織をつくる。
文化をつくる。
お金を投じる。
自分一人ではコントロールできないことを増やしていく。
会社を大きくしようとすると、むしろ「きれいに仕組み化できないもの」と向き合わなければならない。
大國さん、そこも一緒に教えてほしかったな、と今になって少し思う(笑)。
もちろん当時教えてもらっていても、31歳の僕には理解できなかったかもしれない。
そして、もう一度起業する
そんなことを思い出しながら、今、「幸せデザイン」という新しい事業を始めている。
そこで気づいた。
僕自身が、ずいぶん変わっている。
31歳の頃は、
「どうしたらうまくいくか」
「どうしたら儲かるか」
「どうしたら大きくできるか」
を考えていた。
今は新しいことを考えていると、いつの間にか別の思考が入り込んでくる。
「これをやって、今あるものを失わないだろうか」
という思考だ。
31歳の僕には、そもそも守るものがあまりなかった。
でも今は違う。
15年以上働いて、いろいろな経験をして、それなりに築いてきたものもある。
失敗したときに失うものが、昔よりはるかに具体的に見える。
これは経験を積んだから慎重になった、とも言える。
でも、起業という観点では、少し厄介でもある。
「どうすれば得られるか」より先に、「どうすれば失わずに済むか」を考えてしまうからだ。
31歳の自分に戻る必要はない
最初は、この「守る思考」をなくさなければいけないと思っていた。
これでは起業家らしくない。
もっとリスクを取らないといけない。
31歳の頃のようにやらないといけない。
でも最近は、少し違うのかもしれないとも思っている。
48歳の自分が、31歳の自分に戻る必要はない。
経験もある。
人とのつながりもある。
昔より知っていることも増えた。
できることも増えた。
守りたいものが増えた一方で、使えるものも増えている。
だとすれば、今考えるべきなのは「どうやって若い頃の自分に戻るか」ではないのかもしれない。
今持っているものを使いながら、どこまで大胆になれるのか。
そのほうが、今の自分にはしっくりくる。
「仕組み化」の意味も変わった
考えてみると、今回の「幸せデザイン」でも、僕はまた仕組みをつくろうとしている。
ただ、31歳の頃とは少し意味が違う。
あの頃は、自分が働かなくても事業が回り、チャリンチャリンとお金が入ってくる仕組みをつくりたかった。
今つくろうとしているのは、夫婦や家族が、大事なことをちゃんと話し合える仕組みだ。
「幸せを、偶然にしない」ための仕組み、と言ってもいい。
同じ「仕組み化」という言葉を使っているのに、15年以上経つと、つくろうとしているものがずいぶん変わっている。
これは少し面白い。
31歳の僕と、48歳の僕。
何も持っていなかった頃の起業と、いろいろなものを持つようになってからの起業。
比べてみると、自分がこの15年以上で何を得て、何を失い、何を怖がるようになったのかが見えてくる。
そして、昔の自分に戻るのではなく、今の自分なりの起業の仕方を探している。
15年後くらいに振り返ったとき、今の自分のことをどう思うのだろう。
それはちょっと楽しみでもある。
人生というのは、本当に面白い。
