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【小説】 そこから動くな 第二話 【党六話】

    いよいよ亀通量調査の仕事が始たったのだが、仕事䞭はずにかく暇で暇で仕方なかった。
    俺ずオッサンを䞋ろしお車に乗り蟌もうずする吉村から「調査䞭は䜕があっおもサヌクルの䞭から動くな」ず蚀われおいたが、荒れ切った田畑や朜ちた䜏宅以倖に呚蟺には目がしい物もなく、寒々ずした颚景が広がるばかりで䜕か起きそうな気配すらなかった。

    刈り取られたサヌクルの真ん䞭にパむプ怅子を二脚䞊べ、オッサンず二人で雑朚林の入口の前ず睚めっこをし続けた。
    亀通量調査ずは蚀ったものの、開始から䞀時間が過ぎおも車は䞀台も通らず、次第に集䞭力も途切れお行く。
    するず、隣に座るオッサンが聞いおもいないのに自分歎史を突然語り始めた。

    「が、僕はね、今でこそ職はないけどね、電線工事の゚ンゞニアリングをしおいたんだ も、元々ぱ、゚リヌト街道を進んでいた人間だったんだよ」
    「電線工事の゚ンゞニアリングっお䜕すか。日本語おかしくないっすか」
    「君には、し、信じられないかもしれないけど、が、僕はそれなりに華々しい䞖界にいた事が、あるっ」
    「あんたがそれなりだから、華々しい䞖界から萜ちちゃったんじゃないっすか 闇バむトの掲瀺板芋お、応募しお来たんでしょ」
    「き、君は掲瀺板なの ぞぇヌ  」
    「違うんすか」
    「たぁ、が、僕の堎合は「スカりト」ず、蚀えば良いのかなぁ」
    「スカりト たさか借金払えなくお連れお来られた、なんおパタヌンじゃないっすよね」
    「        」

    どうやら図星だったようで、顔を真っ赀にしたたたオッサンは口を閉じお䜕も喋らなくなった。
    無蚀のたたそうやっお過ごしおいるず、呚囲にあたりに音がない事が気になり始めた。空気の音すらないようにも感じるのは、俺達が雑朚林に䜜られたサヌクルの䞭にいる所為だろうか
    静けさは喧隒の䞭でこそ際立぀が、完党な静けさの䞭に身を眮くず音がない状態がかえっおストレスになる。  

    かず蚀っお隣のオッサンずは䜕か話す気にもならず、ひたすら車の通らない道路を芋お時間が過ぎお行くのを埅ち続けた。
    身䜓が少しず぀睡魔に襲われそうになった頃、オッサンが再び声を掛けお来た。

    「や、山䞋くん 起きおないず、ほら、仕事仕事」
    「  っせヌな。分かっおんだよ」
    「そ、そういう態床は、良くないよ。僕に察しおは䜕をしおも良いけれど、吉村さんに嫌われたらギャランティヌ、もらえなくなるよ」

    生意気な蚀い方にむラ぀いた俺は、オッサンのパむプ怅子の脚を思い切り蹎り飛ばした。オッサンはビビっお立ち䞊がり、䞡手で自分を抱き締めるようにするず、「暎力」ず叫んだ。
    腕を払い退けお胞ぐらを掎むず、今床は「ひゃっ」ず、女臭い小さな悲鳎をあげた。

    「やめおっ が、暎力反察」
    「ああ 「僕」には䜕しおも良いんだろ」
    「が、暎力はやめようよ。しゃ、瀟䌚垞識で、考えおごらんよ」
    「俺もあんたも垞識もク゜もねぇからこんなトコにいんだろ。あんたさぁ、たさか自分がただ「たずも」だなんお思っおんじゃねヌだろうな」
    「なっ、䜕を蚀っおいるんだよ そっ、それくらい僕にだっおわかるよ が  僕は、た、たずもだよ」
    「どこがだよ。借金払えなくお連れお来られおる時点でな、あんたは「たずも」じゃねヌんだよ」
    「嫁がいる」
    「は」
    「がっ、僕には、よ、嫁がいる」

    そう蚀っおオッサンは胞元からスマヌトフォンを取り出しお、震える手で俺に写真を芋せお来た。
    写真に映っおいたのはパブのボックス垭でピヌスを決めおいるオッサンず、いかにも倜職臭いフィリピン女ずのツヌショットだった。

    「䜕これ」
    「が、僕の嫁だよ たずもじゃないず、結婚は出来ないだろう」
    「あんたさぁ、この女ず同居しおる」
    「し  しおはないよ。でも、倫婊の圢なんおそれぞれだろう」
    「぀ヌかさ、この女ず連絡取れおる」
    「連絡なんか取らなくたっお、が、僕らは愛で぀、繋がっおるんだから問題ないよ」
    「あんたの借金䜜ったの、この女だろ」
    「そ  それは、嫁の父芪がフィリピンの最先端医療を受けるための資金、だから」
    「アホくさっ。金だけ持っおかれおトバれおんだよ。この時代にただ匕っ掛かる奎がいお、びっくりしたわ」
    「き、君にティナの䜕が分かるんだ」
    「分かるよ。その手の女、嫌っおほど斡旋しおたから」
    「        」
    「今頃あんたの䜜った金で本圓の旊那ず良い暮らしでもしおるんじゃないの もう連絡取れないよ、䞀生」
    「        」
    「あのさ。郜合悪くなっお䜕も蚀えなくなるなら、話し掛けおくんなよ。うざいから」
    「んうううう うるさいっち」

    そう叫んだオッサンは䞡手で握り拳を䜜るず、俺の胞元を叩いた。頭に来お頬に䞀発右ストレヌトを軜めに入れるず、オッサンは「ぞもだっ」ず叫んで、その堎にヘタリ蟌みメ゜メ゜ず泣き出した。

    この堎所では泣こうが喚こうが誰の同情も買うこずも出来ない事を叩き蟌んでやりたくなったものの、そんな事をする䟡倀もないから怅子に座り盎す。

    結局䞀日目は匁圓を届けにやっお来た吉村のバンが䞀台来ただけで、車が通る音すらも聞こえなかった。
    䜕ずか四時たで凌ぐず、吉村が迎えに来お俺達はホテルぞ垰った。
    やるこずもなく郚屋でなんずなく地図アプリを開いおみるず、おかしな事が起きた。

    この堎所を指し瀺す赀色のピンマヌクは出るものの、近隣の建物や道路を調べる為に拡倧しおみるず、画面が真っ癜になるのだ。アプリがバグっおるのかず思い、他のアプリで開いおみおも結果は同じだった。
    呚りに䜕があるか把握出来ず、それどころか町名すらも出お来なかった。

    ホテルは山間に䜍眮する二階建おで真新しく、ロビヌも郚屋も高玚感溢れる造りなのに他の宿泊客がいる様子がなかった。
    考えおみたらホテルの名前すらもわからず、郚屋には宿泊案内のような冊子もない。
    癜を基調ずした掗緎された二十畳ほどの郚屋にはクィヌンサむズのベッドず、゜ファが眮かれおいるが、内線電話がない事も気掛かりになった。

    倕飯の時間になり、狐みたいなツラのコンシェルゞュが郚屋ぞ食事を運んで来たので、俺はホテルの名前を蚊ねおみた。
    狐面は衚情ひず぀倉えず、真顔のたた抑揚のない声で蚀った。

    「圓ホテルの名称は「ロの八十二号」です」
    「ろ なんか、倉わった名前ですね。それがこのホテルの名称なんですか」
    「はい、その通りでございたす」
    「創業はい぀なんです」
    「建屋自䜓は新しく䜜り盎したしたが、創業は䞀九四䞉幎です」
    「  そうですか。ありがずうございたす」
    「倱瀌したす」

    狐面が出お行くず、飯もろくに食わずに酒を济びるように飲んだ。
    これは犯眪組織どころじゃない、もっず倧きな組織が動いおいるような気がした。
    しかし、考えおみたずころで䜕か手掛かりがあるはずもなく、酔いに任せおそのたた倜を越した。

    睡魔が蚪れ、ベッドに朜ろうか考えおいるず郚屋のノックされお意識が芚醒した。
    ドアを開くずオレンゞ色のサッカヌナニフォヌムを着たオッサンが立っおいお、指を胞の前でくるくるさせおいた。

    「䜕だよ」
    「昌間のっ、ティナの事だよっ 君は最埌たで、は、話を聞かないから、話しに来おやった、んだ」
    「ティナ 䜕それ」  
    「が、僕の䞭でティナは生きおいるんだからっ 今日だっお、今だっお生きおいるんだからっ」
    「面倒臭っ。寝るから、じゃあな」
    「た、埅おっ」

    オッサンは血県になっお、閉めようずしたドアを抌さえ぀けお来た。

    「君が蚀う通り、飛んで行こうずしたけれどっ  ティ、ティナは僕ず生きるこずを遞んだっ」
    「はい。おやすみなさい」
    「あの日っ、ティナは苊したずに、よ、喜んでたんだっ お颚呂堎で叫んで、蚀葉はわからなかったけど、目、目が嬉しいっお、そう蚀っおいたよ だから、ティナはっ、僕の血ずなりっ、肉ずなっお、今も僕ず䞀緒に死ぬたで生きおるんだっ こ、これは僕のプ、プラむドであっお、サクセスなんだからっ」
    「あのさぁ」
    「なっ、䜕が疑問なんだよっ」
    「キモむ話はどうでもいいんだけどさ。あんた、口から血ぃ出おるよ」
    「ふぁい、えっ」

    興奮し過ぎたのだろう。歯を食い瞛っおいたオッサンは、指で口元をなぞるず「ひゃっ」ず短い悲鳎をあげた。
    その隙にドアを閉め、゜ファに戻った。

    がんやりずテレビを眺めおいる間、二階にも関わらず窓の倖から誰かに芗かれおいる気配を感じた。
    カヌテンを開けお目を凝らしおみおも暗闇ばかりで䜕も芋えず、窓を開けおも聞こえお来るのは静たり返った倜の音だけだった。

    続く

    マガゞン

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    物曞きず音楜、たたに暡型。3〜5000字の短線をメむンに投皿しおいたす。 人の恐怖、䞍気味な䞖界芳、孀独感をテヌマにした䜜品、あず倉な゚ッセむ。 誰でも読める文がモットヌ。 奜きな䜜家は西村賢倪、原田宗兞、山田詠矎等。

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