しあわせのポートフォリオ
銀行の残高が、7,600円になったことがあります。
まだ会社員のころでした。
全財産でした。
給料としては同世代よりかなり高いのに、手元にお金がまったくない。
先に言っておくと、私は家計簿のような収支をつけていなかったわけではありません。つけていました。
数字は全部わかっていた。
わかっていて、7,600円になったのです。
がんばっていなかったわけでもありません。
むしろ、がんばりすぎていました。
がんばって、管理して、それでも悪くなっていく。
あの頃の私と同じ場所にいる方に向けて、この記事を書いています。
家計簿は、何も変えてくれませんでした
家計簿は「何にいくら使ったか」を教えてくれます。
でも「なぜ使ったのか」は教えてくれません。
私は30年間、パリとミラノで服を買い付ける仕事をしてきました。
人一倍、桁違いにお金を使ってきた人間です。
そのころは服代に年間500万円以上使っていました。
さらに家具や勉強代にお金をつぎ込んでいたのです。
こう書くと特殊な人の話に見えますが、使っていた理由は驚くほど普通でした。
仕事だから。
周りがそうだったから。
立場にふさわしい自分であるため。
そして一番大きかったのは──持っていないと不安だったから。
これは、量が違うだけで、みなさんと同じだと思います。
職場で浮かないための服。
月に1回の白髪染め。
周りの子が3つやっているからと増えた習い事。
付き合いだからと出ている飲み会。
「やらないと損」と言われて始めた積立。
中身はよくわからないままの保険や投資。
どれも「幸せだから」ではなく「不安だから」払っているお金です。
不安から出ていくお金は、家計簿では削れません。
数字を眺めても、不安は消えないからです。
減らすべきはお金より先に、「不安に使っている時間」でした
7,600円になったとき、私が変えたのは節約のやり方ではありません。
問いを変えました。
「何を削るか」ではなく、「そもそも自分は、何のためにお金と時間を使いたかったのか」
そして気づいたのは、お金よりも先に、時間の使い方が壊れていたことです。
不安だから調べ続けるスマホの時間。
不安だから断れない付き合い。
不安だから手放せないもの。
起きている時間のかなりの部分を、私は「不安」につぎ込んでいました。
しかも不安は、いくら時間をつぎ込んでも、まったく減らないのです。
ここでやりがちな間違いが、「良い習慣を増やす」ことです。
朝活、ウォーキング、読書、日記、勉強。全部いいものです。
全部いいから、全部やろうとする。
そして続かなくて、また自分を責める。
実はこれが一番の悪手だと思っています。
悪いのはあなたの意志ではなく、順番です。
ポートフォリオという考え方
ここで「ポートフォリオ」という言葉を説明させてください。
むずかしい話ではありません。
ポートフォリオとは、「持っているものを、何に、どれだけ割り振るかの配り方」のことです。
昔ながらの袋分けを思い出してください。
給料日に、封筒に「家賃」「食費」「子どものため」と分けていく、あれです。
あの「分け方」がポートフォリオです。
プロの投資家がやっているのも、金額が大きいだけで、中身は袋分けと同じです。
そして投資の世界には、面白い鉄則があります。
うまくいくかどうかは、「どの商品を買うか」より、「分け方」でほとんど決まる、というものです。
だからプロは、商品を選ぶ前に、必ずこの順番で考えます。
何のためのお金か(目的)
どこまで減っても耐えられるか(限度)
何にどれだけ分けるか(分け方)
具体的に何を買うか(中身)──これが最後
初心者の失敗は決まっていて、いきなり4番から始めることです。
分け方を決めていないから、増やせば増やすほどぐちゃぐちゃになります。
もうお気づきかもしれません。
「良い習慣を増やす」は、いきなり4番から始めているのと同じなのです。
習慣は「中身」です。
その前に、自分の時間の分け方を決める必要があります。
そしてこれが、今の状況を変えたい人にとって大事なところです。
変えるのに、転職や引っ越しのような大きな決断はいりません。
最初に変えるのは、時間の分け方だけです。
幸せのポートフォリオで決めるのは、3つの定規だけです
お金の順番を、幸せに置き換えてみます。
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