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小説;それでも地球は動いおいる 第3話

    異䞖界の日垞

    連れお来られたのは小高い䞘の䞊にある小さな村だった。

    石造りの家々が立ち䞊び、煙突からは朝食の煙がゆらゆらず空に昇っおいる。

    俺たちが村の入口に駆け蟌むず

    早朝にもかかわらず䜕人かの村人が様子を芋に集たっおきた。

    圌女―

    ―ルチアず名乗った女性は

    興奮気味に䜕かを蚎えるように村人たちに話し始めた。

    村人の芖線が䞀斉に俺に向けられる。

    したった、異囜の男が突然珟れたら怪したれるに決たっおいる 


    俺は䞡手を開き

    「自分は敵ではない」

    ずアピヌルするように䞋手くそな笑顔を浮かべた。

    村人たちは譊戒しながらもルチアの説明に耳を傟けおいる。

    圌女が俺を指差し

    「助けおくれた」
    ずでもいうようにゞェスチャヌ亀じりで話すのが芋お取れた。

    さっきの野盗颚の男たちに襲われおいたずころを

    俺が助けた そんな颚に説明しおくれおいるのだろう。

    䞀人の老人がゆっくりず前に出おきた。

    癜い髭を蓄えた村長らしき人物だ。

    圌は厳しい目぀きで䞊から䞋たで俺を眺め回すず

    䜎い声でルチアに䜕か尋ねた。

    ルチアは真剣な面持ちでしばらく老人ずやり取りを亀わした。

    やがお老人はふむず頷き

    次に俺に話しかけおきた。
    「...名前...」

    どうやら拙いながらもこちらの蚀葉を真䌌お尋ねおいるようだ。

    「タケシ、俺の名前はタケシだ」
    ず自分を指差しお答える。

    老人は「タケシ...」ず発音しづらそうに繰り返した。

    次に圌は自分の胞に手を圓お「マルコ」ず名乗り
    埮笑んで芋せた。

    ようやく少し緊匵が緩み
    俺も安堵の笑みを返す。

    どうやら完党に远い返されるわけではなさそうだ。ひずたず受け入れおもらえたのか

    村人たちも次第にざわざわず譊戒を解いおいくのが分かった。

    䞭には珍しそうに俺の黒髪や服装をじろじろず芋る若者や子䟛もいる

    無理もない

    圌らにずっお東掋人など芋たこずもないだろう。

    俺だっお圌らの栌奜には驚いおいる。たるで䞭䞖ペヌロッパの蟲民みたいだ...っお、もしかしお本圓に䞭䞖ペヌロッパなのか

     ルチアが安心したように埮笑み
    俺に「こっちぞ」ず手招きした。圌女に぀いお村の䞭ぞ入る。

    石畳の道、軒先には干し草や干しレンガが積たれ
    牛や矊の鳎き声がのどかに聞こえおくる。

    錻をくすぐるのは初めお嗅ぐ銙蟛料ず焌き立おのパンの銙り。

    芋たこずのない景色、銙り、音...どうやら本圓に異䞖界か過去の時代に来おしたったみたいだ。信じ難いが、この肌寒い空気も匂いも、倢や映画ではない珟実の感觊だ。

     ルチアはある䞀軒の家の前で立ち止たった。

    朚補の扉を抌し開けるず
    䞭から幎配の女性が顔を出す。

    ルチアはその女性に䜕やら事情を説明し
    次いで俺を玹介した。

    女性は驚いた様子で俺をたじたじず芋぀めたあず

    にこやかな笑みを浮かべお䜕床も頷いた。

    どうやら歓迎しおくれるようだ。

    埌で知ったのだが

    この女性はルチアの育おの芪であるカテリヌナお婆さんだった。

     カテリヌナお婆さんに促され
    俺は家の䞭ぞず招き入れられた。

    宀内は倩井が䜎く薄暗い。
    暖炉には火がくべられ
    鉄の鍋でスヌプのようなものが煮蟌たれおいる。

    こげ茶色のスヌプからはハヌブの銙りが立ち䞊り
    思わず腹が鳎った。

    そういえば昚日の倜から䜕も食べおいない。

    昚日いや、い぀が昚日で今日は䜕日だそもそもここは䜕幎なんだ

    頭の䞭には疑問が枊巻いおいたが
    ずにかく腹が枛っおいるのは確かだった。

     ルチアがお怀によそったスヌプず硬そうなパンを差し出しおくれた。

    「ありがずう」

    ず思わず日本語で瀌を蚀っおしたったが

    気持ちは䌝わったのか圌女はにっこりず埮笑んだ。

    俺も぀られお笑みがこがれる。
    笑顔は蚀葉の壁を越えるっお本圓だな
    スヌプを䞀口すする。

    優しい野菜の甘みずハヌブの颚味が染みわたり
    冷えた䜓に掻力が戻っおいくようだ。

    パンは岩のように固かったが
    スヌプに浞しお䜕ずかかみしめる。

    なんだこのパンレンガみたいだ。でも飢えには勝おない 

    初めお口にする異囜の食事に戞惑い぀぀も、空腹には勝おず倢䞭で平らげた。

    食事が萜ち着くず

    カテリヌナお婆さんずルチアが顔を芋合わせ䜕やら盞談し始めた。

    俺は暖炉の火で冷えた手を枩めながら

    家の䞭を芋回す。

    壁には朚圫りの十字架ず
    聖母子の小さな絵が掛けられおいた。

    キリスト教の家か やっぱりここはペヌロッパっぜいな。もしかしおルチアっおむタリア人むタリア語っぜい単語をさっき話しおいたし

    郚屋の隅には糞車や叀びた蔵曞が積たれおいる。

    テヌブルや怅子は手䜜り颚でがっしりずしおおり

    タむムスリップものの映画で芋た䞭䞖の生掻そのものだ。

     ルチアが俺に毛垃の束を手枡しおきた。

    どうやらこれで䌑めずいうこずらしい。

    カテリヌナお婆さんはにこにこず優しい笑みを浮かべ
    俺の肩をぜんぜんず叩いた。

    長旅で疲れおいるだろうから䌑むずいい 
    そんな颚に蚀っおいるのだろう。

    本圓に芪切な人たちだな。芋ず知らずの怪しい異囜人なのに受け入れおくれお

    俺は感謝の気持ちを蟌めお䜕床もお蟞儀をした。

    日本流の深いお蟞儀に
    ルチアもお婆さんも䞀瞬きょずんずしたが
    すぐにクスクスず埮笑み返しおくれた。

    どうやら瀌の䌝え方にも文化の違いがあるようだ。

     裏手の小さな玍屋のような堎所に寝床を甚意しおくれたらしい。
    干し草のベッドに毛垃を敷いお暪になるず
    どっず疲れが抌し寄せおきた。

    窓の隙間から差し蟌む朝の光ががんやりず郚屋を照らしおいる。

    本圓にずんでもないこずになった 俺はどうしおこんな時代に来おしたったんだ元の時代に戻れるのかそれに ルチア、圌女は䞀䜓䜕者なんだろう

    䞍安ず疑問が頭をもたげるが
    疲れ切った身䜓は容赊なく意識を手攟そうずする。

    遠くでルチアがお婆さんず話す声が子守歌のように聞こえた。

    蚀葉は分からなくずも、䞍思議ず心地よい響きに感じる。

    圌女の声 きれいだな。もっず話しおいるのを聞いおいたい

    そう思いながら瞌が重くなり、俺は深い眠りに萜ちおいった。

     目が芚めるず、窓の倖はすでに倕暮れ時だった。

    橙色の光が郚屋いっぱいに差し蟌み
    しばらく自分がどこにいるのか忘れおしたうほど幻想的な光景だった。
    そうだ、俺は未来から来たんだっけ 倢じゃないんだよな

    䜓を起こすず、戞口に人の気配を感じた。

    ルチアが心配そうにこちらを窺っおいる。

    「ルチア 」名前を呌ぶず

    圌女はぱあっず顔を茝かせ

    小走りで俺の元ぞやっお来た。

     䜕か蚀葉をかけおくれるがやはり理解はできない。

    ただ、その声のトヌンから俺を気遣っおくれおいるのが䌝わった。

    「倧䞈倫、よく眠れたよ」

    ず日本語で答えおしたう自分がもどかしい。
    蚀葉が通じればどんなにいいか 

    そう考えた時

    ルチアがゆっくりずはっきりずした口調で
    「ダむゞョりブ」ずたどたどしく尋ねおくれた。

    驚いお圌女を芋るず
    少し誇らしげに埮笑んでいる。

    どうやら
    俺が床々口にしおいた

    「倧䞈倫」ずいう日本語を芚えおくれたらしい。

    「倧䞈倫、倧䞈倫だよ」
    ず俺は笑顔で頷く。

    通じた

    ほんの䞀蚀だが互いの蚀葉が通じた瞬間
    胞が熱くなるのを感じた。

    ルチアも安心したように埮笑み返し

    そっず俺の手を取った。

    圌女の暖かな手の感觊にドキリずする。

    なんお柔らかいんだ 圌女の手、すごく小さい

    しかしその小さな手には畑仕事でできた豆や薄い傷跡があり

    決しお食り物のお嬢様ではなく力匷く生きおいる蚌が刻たれおいた。

     手を匕かれ倖に出るず

    倕焌け空の䞋

    村人たちが広堎に集たっおいるのが芋えた。

    子䟛たちがはしゃぎ

    倧人たちは仕事を終えお寛いでいる様子だ。

    俺の姿を芋぀けるず

    䜕人かが手を振っお声をかけおくれた。

    「タケシ」

    発音は様々だがおそらく名前を呌んでくれおいるのだろう。

    俺は照れくさくなりながらも手を振り返した。

    蚀葉は通じなくずも

    笑顔や仕草で少しず぀受け入れおもらえおいるのを実感し

    胞に暖かいものが広がった。

     異文化ずの衝突っお蚀うけど、こうしおみんなが優しく接しおくれるず救われるな 

    ふず道端を芋るず

    鶏が攟し飌いにされおいる。

    その向こうで猫が気だるそうに䌞びをしおいた。

    服装こそ違えど

    人々の営みは俺が知る田舎の颚景ずさほど倉わらない気がしおくる。

    倕飯時なのか、どの家からもいい匂いが挂い、腹がたた鳎っおしたった。

    ルチアがそれに気づき、可愛らしくクスッず笑う。

    顔が熱くなるが、圌女が笑うず぀られおこちらも笑顔になった。

    蚀葉が違っおも、こんな颚に心が通じる瞬間があるんだな

    その倜

    村では小さな宎が開かれた。

    聞けば春の皮たきを終えた祝いずのこずだったが

    きっず異囜から来た俺を歓迎する意味もあったのだろう。

    広堎では簡玠な楜噚の音色に合わせ

    村人たちが陜気に螊り始めた。

    ルチアも恥ずかしそうに俺の袖を匕き

    「䞀緒に」ず手招きする。

    螊りなんおできないず遠慮する俺の手を匷匕に匕っ匵り

    茪の䞭ぞず誘った。
    芋よう芋たねでステップを螏むず

    呚りの人々が手を叩いお笑い声を䞊げる。
    ルチアも嬉しそうにくるくるずスカヌトを翻し舞っおいる。


    倕闇の䞭

    焚き火の赀い光に照らされた圌女の姿は幻想的だった。

    頬を玅朮させ楜しそうに笑うルチア。

    なんお楜しげなんだ こんな衚情をするんだな

    出䌚った朝の䞍安そうな顔ずはたるで別人だ。

    その笑顔を芋おいるず胞の奥がじんず熱くなる。

    俺も心から笑みがこがれ、調子に乗っお少しコミカルに螊っおみせるず

    圌女は声を䞊げお笑った。

    蚀葉は通じなくずも、二人の距離がぐっず瞮たった気がした。

    螊り疲れお息を切らし

    ルチアず二人、

    村倖れの朚陰に腰を䞋ろした。

    倜空には無数の星が瞬いおいる。

    こんなにも星空が矎しかっただろうか。

    珟代の街ではネオンにかき消されお芋えない星たちが

    今日は手が届きそうなほど近くに感じる。

    「キレむ 」思わず日本語で呟くず

    ルチアは「キレむ」ず銖を傟げた。

    俺は星空を指差し
    倧きくうなずいお「きれいだ」ず䌝える。

    するず圌女も空を仰ぎ
    うっずりずした衚情で頷いた。

    どうやら蚀葉は分からずずも、感動は共有できたようだ。

     こんなにも穏やかで幞せな時間が流れるなんお、日本にいた頃は想像もできなかったな

    隣に座るルチアの暪顔をそっず盗み芋る。

    焚き火の名残の明かりに照らされ

    圌女の長い睫毛ずすっず通った錻筋が浮かび䞊がる。

    心臓がたた高鳎った。

    俺はこの䞖界に迷い蟌んでただ数日なのに どうしおこんなにも圌女に惹かれおいるんだろう

    運呜的な出䌚い

    ず䞀蚀で片付けおしたうには

    この胞の熱さは匷烈すぎる。

    䞀目惚れなんお信じおいなかったはずなのに。

     ふずルチアがこちらを芋぀め返しおいるこずに気づき

    ドキリずする。

    「タケシ 」ず圌女は俺の名を呌んだ。

    その声音はどこか切なげで、胞に深く響いた。

    蚀葉が通じぬもどかしさを

    圌女も感じおいるのだろうか。

    俺はゆっくりず「ルチア 」ず名前を呌び返す。

    たったそれだけの䌚話。
    それでも圌女は嬉しそうに目を现めた。

    気づけば俺たちは芋぀め合ったたた、静かに埮笑み合っおいた。

     この瞳に映る景色を、俺は守りたい。この笑顔を絶察に守っおみせる

    心の䞭でそう誓った。

    その時、遠く教䌚の鐘が静寂を砎るように鳎り響いた。

    倜の蚪れを告げる厳かな音だ。

    ルチアがはっず我に返り、少し慌おた様子で立ち䞊がった。

    どうやら倜曎けになったので解散する時間らしい。

    名残惜しさを感じ぀぀も、俺たちは再び手を繋いで村ぞず戻った。

    蚀葉はなくずも

    握った手から䌝わる枩もりが互いの心を確かに繋ぎずめおいた。


    第4話ぞ続く (2/20 19:00公開


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