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むスラ゚ルから来た女性が私に教えおくれた藍のこず

    「すみたせん、急ですが明埌日通蚳しお欲しいんですが、空いおたすか」

    い぀も仲良くさせおもらっおいる、元地域おこし協力隊員の友人からLINEが届いた氎曜の朝。

    なんでもむスラ゚ルから、私たちの䜏む地域の歎史ある正藍染め(しょうあいぞめ)を芋孊に来るずいう女性がいお、もずもず予定しおいたヘブラむ語の通蚳さんの郜合が぀かなくなったこずで、倚少英語ができる私に癜矜の矢が立ったようだった。

    その女性は自囜が緊匵した情勢の䞭、この正藍染めを䜓隓するために時期を合わせお来日したずのこず。

    案内する正藍染めは、1幎3か月ずいう工皋の䞭で、染めの䜜業をするのは2か月匱の限られた期間のみ。それを調べおタむミングを合わせおきたずいうのだから、その熱意に答えなきゃいけないず思うず、若干自分の英語力に䞍安がよぎった。

    関東に䜏んでいた時ならいざ知らず、玄9幎前にこの田舎に移䜏しおきおからはほずんど䜿っおいない自分の英語が、いったいどの皋床䜿いものになるか自信がなかったのだけど、予定も特になかったので匕き受けるこずにした。


    宮城県栗原垂文字地区 千葉家の正藍冷染

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    私の䜏む宮城県栗原垂の文字(もんじ)地区には、人間囜宝の千葉あやのさんの藍染め工房があり、珟圚では四代目の正䞀さんが継いでいる。

    実は、自分は9幎以䞊も前に栗原垂に移䜏しおきたのに、藍染めの芋孊や䜓隓をしたこずがなかった。

    䌝統工芞や文化䜓隓は、自分が旅行する時には「この土地らしいものを䜓隓しよう」っお思うのに、移䜏しおしばらく経っおしたったせいか、心のどこかで「もう自分が消費するコンテンツじゃないな」っお思っおしたっおいたのかもしれない。

    遠い囜から、わざわざ時期を合わせお芋に来おくれる方がいるほどのものが身近にあるのに、長く䜏んでいる自分は䞀床も経隓しおいない。そしお今、その文化を知りたいず海の向こうからやっおきた方に、通蚳ずしおその魅力を䌝える圹を任されおいる。そんな状況が、少し奇劙で、恥ずかしくも思えおきた。

    この感芚は、昔、ワヌキングホリデヌでニュヌゞヌランドに行った時、珟地の人に「きみの出身の街の人口は䜕人いるの」ず聞かれお即答できず、英語力よりも自分の䜏む町に関する知識の乏しさを恥じお、ネットカフェに寄っお自分の出身地の情報を調べおいた時の感芚に䌌おいお、ハッずした。

    「あぁ、自分あの頃からあたり成長しおないな」

    そう思いながらも、ずにかく自分には藍染めに関する予備知識がなかったので、友人からおすすめの論文を教えおもらい、自分の経隓䞍足が露呈しないよう、䞞䞀日かけお歎史ず藍染めずいう工芞に぀いおの情報を脳内に叩き蟌んだ。


    圓日、通蚳の話を持っおきた友人ず共に、むスラ゚ルから来おいるずいう女性Nさんを迎えに行くず、想像しおいたよりも若く、笑顔が玠敵な女性が埅っおいた。

    移動䞭に、むスラ゚ルの囜民性や日本に来お驚いたこず、宗教芳の違いなど、初察面の倖囜の方に聞きがちな話題に花を咲かせながら、藍染め工房に向かった。

    ご自宅兌工房に到着するず、䞞々ず肥えたかわいいネコちゃんがお出迎え。

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    自己玹介もそこそこに、早速藍染めの技術を芋せおもらえるこずになった。


    工房ず川で藍染めの実䜓隓

    家に隣接する藍染めの工房に移動するず、錻にツヌンずくる独特のにおいが充満しおいた。

    千葉家の正藍染めは、自然発酵を利甚した䌝統的な技法で、人工的な加枩や化孊薬品を䞀切䜿わないずいうのが特城。藍建お*するずきには「藍玉・朚灰・氎」の3぀しか䜿わない。(*染液を藍甕の䞭に䜜るこず)

    むスラ゚ルから来たNさんは、その自然による倉化が藍染めの出来栄えにどう圱響するのかずいう質問を倚くしおいたのが印象的だった。

    「晎れの日ず、雚の日では藍染めのクオリティに圱響したすか」

    ずいうNさんの質問は、「そりゃ倩気が違うから気枩も違うし、きっず職人ならではの経隓ず勘ずかで埮調敎するんだろう」ず思いきや、4代目の答えは「いや、かわらない」だったので、通蚳をする私もちょっず面を食らった。

    しかも、どんどん質問するNさんに、4代目は党お䞁寧に答えおくれお、藍甕(あいがめ)に入れる玠材の分量やタむミング、時期や手順なども党お教えおくれたのにもたた驚いた。

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    藍甕の䞭にできる泡。これを「藍の華」ず呌び、発酵床合いを芋極める目安なのだそう

    千葉家では「藍は生きおいる」ず蚀い、この藍甕の様子を「藍の衚情」ず呌んだり「今幎は藍の勢いが良い」ずいうように衚珟しおいた。

    「うちの藍は、麻や朚綿はいいんだけっど、シルクはあたりあわねんだ」

    ずいうので理由を聞くず、

    「藍もシルク(蚕)もどっちも生き物だから」

    ず教えおくれた。

    芋せおいただいた反物の䞭に綺麗に染たったシルクがあったけど、䜕本かにいく぀かの確率でたたたた䞊手くいったものだそうで、こういう理屈も科孊的な説明だけではずらえきれない、自然ずの関係性のようなものを感じお面癜かった。

    きっず、長い時間をかけお藍ず向き合っおきた職人さんだからこそ感じられるものなのだろう。

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    時蚈を芋お時間を枬りながら反物を藍甕に沈める
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    空気に觊れさせるこずで酞化が起こり、色が緑から青に倉わっおいく

    テキスタむルに興味があるず蚀っおいたNさんは、型染めのデザむンに興味接々だったが、自分は䜿い蟌たれた藍染めの道具が特に気になった。

    染めた反物をひっかける竹や、藍が長幎かけおしみ蟌んだ染物を吊り䞋げるための朚材、そしお䜕十幎も䜿われおきた藍甕だ。昚幎は染めの終盀で藍甕の底から染料の藍が挏れ出しおしたったらしく、倧倉だったそうだ。

    䌝統工芞は、実際に行う職人さんだけではなく、その職人さんが䜿う道具もたた、専門に䜜る職人さんに支えられおいる。様々な工皋においお埌継者がいなくなっおいるこずも、䌝統工芞を続けるこずが難しくなっおいる理由のひず぀なんだろう。

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    染め終わっお䞀床也燥させた反物を、雚氎に沈めおブラシでこすっお糊を萜ずす

    面癜かったのが、糊を萜ずすためにコンテナに匵った氎は「雚氎」だず蚀う話。

    工房の呚囲の山は岩山で、雚氎が浞透せず流れおいくポむントにタンクを眮き、雚氎をためお糊を萜ずす際の氎に利甚する。塩玠などが入っおいる氎道氎ではダメなのだそうだ。

    こうやっお糊を萜ずしたら、そのたた工房の前にある川に行き、残った藍を掗い流す。これも「川の氎じゃなきゃいけない」のだから面癜い。

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    千葉家の家の前の川。この川がなければこの堎所で藍染めをやっおいなかっただろうず話しおいた

    初代で人間囜宝の千葉あやのさんは、この川の氎で藍を掗い流した埌に、県前の栗駒山に向かっお染物を掲げ、「ホヌヌホヌヌ」ず叫んでいたそう。

    工房にある「藍神様」にもお祈りをし、豊かな氎や冷たい颚を運んでくれる栗駒山などの自然にも感謝をする。

    氎や颚など、この土地にあるものだからできるのが「正藍染め」であっお、自然ず共に生きる䞭で守られおきた技法なんだずいう事が良くわかった。

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    川で掗うこずで、より鮮やかな青に倉化する瞬間が芋られるずのこず
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    普段はもうすこし川の流れがあり、反物など長い垃が流れに乗っおいくずよりキレむだそう
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    藍の苗を栜培しおいる畑。この藍を怍える時の䜜法にも口䌝で䌝えられたこだわりが沢山あった

    埅぀時間の倧切さ

    技術的な話を色々聞いた埌、隣接する斜蚭でさんは実際に藍染めの䜓隓をしに行くこずに。

    自分で遞んだ型で糊を眮いお、デザむンしたら3分間染料に沈める。

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    3分間、藍甕の䞭に自分で染めたい垃を沈める

    カップラヌメンはしばらく食べおいないけど、3分はそんなに長い時間ではない。ないはずなんだけど、この藍染めの液に垃を浞し、埅぀3分はずお぀もなく長く感じた。こんなに長い3分は初めおだったかもしれない。

    長く感じるのは藍の染料のアンモニア臭がなかなか匷烈で、心のどこかで「早く3分過ぎないかなぁ」ず思っおいたからかずも思ったけど、チラチラず時蚈を芋おいるず

    「長く感じるでしょ 藍染めっおね、埅぀のが倧事なんだよ」

    ず近くにいた人が教えおくれた。

    藍染めをするたでの工皋は、千葉家の正藍染めでは1幎3か月ずされおいる。その䞭で染めができる期間は僅か2か月匱。皮を蒔いお、藍を育お、収穫をしお、也燥発酵。党おの工皋が自然ず共にある。

    職人さんにずっおは、この染めの3分に至るたでに沢山の工皋を経お、時間をかけおここたで来たのだから、自分の感じた3分が長いず口に出すのはおこがたしい。

    ひず通りの䜓隓を終え、さんは「玠晎らしい䜓隓ができた」ず、ずおも満足したようだった。

    そしお、自分もたたたた通蚳ずしお参加させおもらった瞁だったのだけど、自分も色々ず感じるものがあっおずおもいい経隓になった。

    䌝統をどうやっお残すか問題

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    Nさんは、4代目に察する最埌の質問で

    「もしあなたの染めを孊びたいずいう人が来たら、たず䜕から教えたすか」

    ず聞いおいた。

    これは最初、正藍染めずいう技法に関しおの䞀般的なプロセスの質問かず思ったんだけど、そうではなかった。

    垰りの車の䞭でNさんは「もしできる事なら日本語をもっずできるようになっお、藍染めを孊んでみたい。むスラ゚ルには䜿われなくなった藍畑があっお、い぀かそれを埩掻させたい」ず蚀っおいた。圌女の倢なのだそうだ。

    4代目は「私たちのやり方をそっくりそのたた、党おの工皋を通しおやればできたす」ず答えおいお、どこかNさんの未来ず繋がる可胜性を残した蚀葉だったように思った。

    䌝統ずいうず、倉わらず残すものずいう思い蟌みがあったけど、もしその䌝統が蚱すのであれば、異囜の地に継がれおいくずいう圢もあるのかもしれない。 自分は、Nさんがその倢をかなえるずころを芋おみたい。


    問題は距離よりも「キッカケ」ず「関係性」


    この地に移䜏しおから9幎もの間、地元の䌝統文化を䜓隓する機䌚すら持おずにいた私は、遠くむスラ゚ルから来たNさんのお陰で知るこずができた。

    自分に必芁だったのは、その䌝統工芞のある土地の近くにいる事ではなく、ちょっずした「きっかけ」だったのだ。

    人が䜕かに觊れお関係性が生たれるのに倧切なのは距離ではなかった。

    だっお、遠くむスラ゚ルの囜で我が町の䌝統工芞にたどり着き、䜓隓たでしに来おくれる人がいるのだから。ず、すぐ近くに䜏みながらも、長幎芋孊すらしたこずがなかった自分は思う。

    これからの時代、情報があふれお均質化しおいく未来で、人が䜕を遞ぶかの倧切な芖点が「関係性」だず思う。

    誰かが知っお、

    そのうちの誰かが興味を持っお、

    さらにそのうちの誰かに䌝わっおいく。

    そんな連鎖が続けば、きっずこういった地域の䌝統工芞にも未来があるんじゃないかず思う。

    その関係性を䜜るためのきっかけをくれたNさんず、通蚳の䟝頌をくれた友人に感謝したい。


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