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#33 「教えて」は心の距離を近づける―子どもが先生になった日の気づき―

    こんにちは、たかこばです。
    このnoteでは、公立小学校教員であり、親子と先生の気づきが生まれる雑談コンサルタントの私が、親子も先生も幸せにする特別支援教育の話、4歳・2歳の子育てで我が子から教えてもらった話、その他日々の気づきなどをお届けしています。

    今日は、小学校低学年のAさんとの登校時のやり取りの中で、大切なことに気づかせてもらったことについて書きたいと思います。

    【1】正門での出会いと、教室への重い足取り

    低学年のAさんは、普段から1時間目の途中に登校したり、早くても朝の会の途中にやって来たりすることが多い子どもです。

    その日も、そろそろ来るかなと思って正門の方を見に行くと、ちょうどAさんと出会うことができました。そこで一緒に話をしながら教室へ向かうことになりました。

    正門のところでは、なかなか教室へ行きたがらない様子でした。池の鯉を見たり、生き物をの話をしたりしながら、少しずつ教室へ向かいました。あまり前向きな気持ちではなかったようで、嫌がる様子も見られましたが、肩を抱いたり、荷物を持ったりと、Aさんの気持ちが少しでも晴れるようにと、いろいろ工夫しながら一緒に教室へ向かいました。

    その日の1時間目は、Aさんのクラスに支援に入ることになっていたので、そのまま一緒に1時間目の国語の授業に参加しました。

    その時間は、新出漢字を学習する時間でした。そして、漢字を終えた人は、読書をしたり点つなぎをしたりと、自分で過ごし方を決めてよいというルールになっていました。


    【2】鳥の図鑑が引き出したAさんのピンと伸びた背筋

    Aさんは動物や昆虫が大好きです。

    新出漢字の学習中に、お気に入りの鳥の図鑑を机に持ってきました。その図鑑は、写真家さんが鳥の美しい一場面を切り取った、まるで写真集のような一冊でした。

    私も思わず表紙に惹かれ、
    「この鳥の図鑑、すごく素敵だね」
    と声をかけました。

    すると、Aさんはとても嬉しそうな表情でページをめくりながら、
    「この鳥はね、こういうところに住んでいて、こんなことができるんだよ」
    と話を始めてくれました。

    まだ漢字が終わっていなかったので、
    「漢字が終わったらぜひその話を聞きたいから、まずは漢字を頑張ろうね」
    と声をかけました。

    Aさんは体幹の弱さもあって、普段は机にだらっと突っ伏し、ミミズのような字を書くことが多い子どもです。

    けれども、その日は鳥の図鑑の話をすることが楽しみだったのでしょうか。いつもより背中がピンと伸び、力強く漢字を書いていた姿がとても印象的でした。


    【3】子どもに「先生」になってもらうことで縮まる心の距離

    約束通り、漢字の学習が終わった後、一緒に図鑑をめくりながら、一羽一羽きれいだねと話をすると、
    「これはね、こういう鳥で、ここに住んでいてね」
    と、Aさんはとても嬉しそうに教えてくれました。

    私は知らないことばかりだったので、
    「知らなかったな」
    「すごいね」
    「Aさんのおかげで今日賢くなれたよ」
    と返しながら話を聞いていました。

    すると、その後はいつも以上にたくさん話しかけてくれるようになったのです。

    朝、正門で出会ったときの様子と比べると、明らかな変化がありました。

    ふり返ってみると、関係性がまだ十分にできていない段階では、私という存在はAさんにとって「楽しい存在」ではなかったのだと思います。

    しかし、図鑑を通してAさんの好きな世界に私が歩み寄ったことで、Aさんの中での私の存在そのものが変わったように感じました。

    この出来事を通して、Aさんとの関係性が始まったのだと思います。


    【4】「先生」と「子ども」が入れ替わる時間

    ふり返ってみると、あの時間は「先生」と「子ども」の立場が少し入れ替わっていた時間だったのかもしれません。

    教員である私は鳥のことを知らない初心者であり、児童であるAさんは鳥の世界をよく知る専門家でした。

    教育の場では、つい大人が教える側、子どもが教わる側になりがちです。しかし、子どもが好きなことについて教えてくれる時間には、その立場が自然と反転します。

    デシとライアンが提唱する自己決定理論では、有能感は「自分はできる」「自分は役に立っている」と感じることで育まれるとされています。

    また、ロジャーズの来談者中心アプローチでは、相手の世界を理解しようとする姿勢そのものが、人との関係を育てていくと考えられています。

    私がAさんの好きな世界を知ろうとしたこと。
    そして、Aさんが「先生役」として教えてくれたこと。

    そのやり取りの中で、もしかすると「自分のことを分かろうとしてくれる人がいる」という安心感や、「自分は役に立てる」という感覚が育まれていたのかもしれません。


    【5】興味関心への「教えて」が心理的安全性につながる

    この出来事が教えてくれたのは、子どもにとって大切なものや好きなことに、教員が興味関心を示すことの大切さです。

    質問をして答えてもらうというよりも、
    「教えて」
    「もっと知りたいな」
    「それってどういうこと?」
    と、子どもの好きな世界について教えてもらう。

    このように子どもが「先生」になれる時間が増えるほど、不思議と心の距離は縮まっていくのだと感じています。

    これは、4月の出逢いや転入生との関係づくり、そして不登校傾向のある子どもとの関係づくりにも応用できることだと思います。

    もちろん、無理に学校へ向かわせる必要はありません。

    けれども、「学校には行きたいけれど、集団は負担だな」と感じている子どもにとって、教員が架け橋となるようなつながりをつくることは、とても大切だと感じています。

    子どもの大切なものに興味関心を示し、「教えて」と耳を傾ける。
    たくさん子どもの「好き」を教えてもらうことを通して、心の距離が近づいていく。

    そんな関わりを、これからも大切にしていきたいと思います。

    今日も最後までお読みくださりありがとうございました。
    このnoteを読んでくださったあなたの気づきが、もっと生まれますように。
    それでは、また。


    ■音声でお聴きになりたい方はコチラ■
    #156 子どもとの心の距離が近づく質問の力


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