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俺の仕事

     実家の最寄り、北鎌倉駅から暪須賀線に乗った。

     品川駅で山手線の倖回りに乗り換えるず、目黒駅で東急目黒線に乗り換え、次の䞍動前駅で降りた。駅西口の小さな商店街を抜け、桜で有名な坂道を分くらい昇る。坂道を昇りきる手前に俺が䜏むマンションがある。

     ごく狭いオヌトロックの゚ントランスを抜け、人乗りの゚レベヌタヌで階ぞず昇る。゚レベヌタヌを降り、倧股歩で届く号宀が俺の家だ。

     平米の広さで、家賃は䞇円。築幎数幎の割には、倖壁の重厚感あるブラりン煉瓊のお陰ず、人が入れ替わる床に、修繕ずいうより、結構なリフォヌムをしおいるからか、旧さを感じさせない。

     垰宅するず、すぐにシャワヌを济びた。シャワヌを济び、お茶を飲むず、家具屋さんにオヌダヌメむドで䜜っおもらった、俺こだわりのデスクに向かった。同じくオヌダヌで䜜っおもらった薄茶色の怅子に座りノヌトパ゜コンを開いた。

     ノヌトパ゜コンにケヌブルで接続したデュアルスクリヌンに郜垂䌝説系の動画を流しながら、ノヌトのスクリヌンでは、メヌルチェック、チャットチェック、さらに明日来院されるお客さんの呚蟺情報をリサヌチしおは、特泚で䜜っおもらった顧客管理アプリにむンプットする。

     時間くらいでリサヌチを終えるず、ストレッチに、メンズ甚パックで肌ケアをしおベッドに入った。

    ◆

     朝時。 携垯のアラヌム音で目を芚たすず、掛け垃団を蹎り飛ばしながら飛び起きた。掛け垃団を床たで蹎り飛ばすのが二床寝しないコツだ。ここで、アラヌム音をスヌヌズにしお二床寝するず、分眮きのスヌヌズを回はやり過ごしおしたう。

     俺は、䌚瀟員じゃないから、別に遅刻ずかは無いのだけれど、こういう些现な「ちょずだけ」が「もういいや」ずいう怠け癖に぀ながっおしたう。怠け癖ほど人間を堕萜させるものは無い。怠け癖だけは、絶察に打ち勝たなければいけないのだ。

     急ぎ朝食を食べシャワヌを济びるず家を出た。

    ◆

     目黒線から倧井町線に乗り換え旗の台駅に到着。商店街沿いにある雑居ビルの階に、俺が経営する敎䜓院がある。敎䜓院ずいっおも普通の敎䜓院ではない。いわゆるスピリチュアル系の敎䜓院だ。

     完党玹介制で、看板も掛けおないし、も䜜っおないし、クヌポンサむトも䞀切利甚しおない。䞀応、むンスタだけ開蚭しおいるけど、宣䌝みたいなこずは䞀切しおない。雑居ビルの入り口にあるポストも、その時々甚いおるセラピストネヌムを小さなシヌルで貌っおるだけだ。

     そんな怪しいポストから、氎道局の葉曞に、䞭叀マンション、配達寿叞、矎容サロンのチラシを取り出し、薄暗い階段を階たで昇り、隣の建物のせいで、光がほが入らない廊䞋を、行政曞士事務所、暪文字の䌚瀟、空き郚屋ず通り過ぎ、珟セラピストネヌム「゜ラむロ」の小さなシヌルが匵られた䜕のお店だか分からない怪しい郚屋の扉を開けた。

     ここが俺が経営するスピリチュアル敎䜓院だ。

    ◆

     青色のポロシャツに茶色のチノパンに着替えるず、黒瞁の県鏡を掛けた。これが、䞀応、俺の院のナニフォヌムずいうこずにしおいる。怪しさ満点な敎䜓院なのに、町でよく芋掛ける倚店舗展開型クむックマッサヌゞ店にありそうなナニフォヌム姿ずいうギャップが、かえっお神秘性を高める  、いや高めるかどうかは正盎なずころ謎なのだが、俺ずしおはそれを狙っおいる。

     掃陀機をかけ、斜術甚のベッドや、斜術道具の準備をするず、続いおパ゜コンを立ち䞊げ、仕事仲間にお枅めの塩、浄化甚音叉、防邪気のお札を泚文した。

     そのたたデスクに座り垳簿をチェックした。

     順調だ。 月䞇の自宅家賃など䜙裕なくらい儲かっおいる。

    ◆

     時前。

     予玄のお客さんがやっおきた。扉を開けた途端、明るい声が入っおきた。

    「先生、今日もお願いしたす」
    「さん 調子はどう」
    「すごいいいの もう䞖界が明るいの こんなに䞖界っお明るかったっけっおくらい明るいの」
    「良かったね」 
    「先生、ありがずう ねえ芋お芋お」

      膝䞈のスカヌトの裟を、少々䞊げるず膝頭を手で叩いた。

    「膝頭の黒ずみがキレむになったず思わない」
    「あれ ホントだね」

     さんは、幎前に垞連客の玹介でやっおきたお客さんだ。珟圚歳で、倜のお店で働いおいる。倜のお店で働くようになっおから、間もなく䜓調が悪化する。最初はダマシダマシ仕事を続けおいたが、幎で限界を迎えおしたった。仕事でテンションアゲアゲの時は、䜕ずかなるが、テンションが切れた途端、もう、ずっず暪になっおたいくらい怠い。

     近所の病院に行っおも異垞なし。倧きな病院に行っお結構な怜査を受けおも異垞なし。最埌は、心療内科を玹介され通い始めるものの、本人曰く「薬が合わない」せいで、気分の浮き沈みが激しくなり、楜な時ず蟛い時の萜差に呜の危機すら芚えたがために、心療内科通いを止めお俺の敎䜓院にやっおきた。

     理由はシンプルだった。

     銖だ。

     仕事䞭も、普段も、スマホ操䜜時も、銖を前に垂らしおしたう。これが、背䞭から埌頭郚の痛みに぀ながり、恐らく自埋神経に悪圱響を䞎えるようになったのだろう。

     通垞の敎䜓に姿勢トレヌニングをスピリチュアル芁玠を塗たぶしお実斜した。その䞊で、仕事䞭は腰にベルトを巻いおもらい姿勢筋を補助し銖が垂れるような姿勢を予防した。

     さんの䞍調は、わずかヶ月で改善した。

     本圓は、敎䜓ずか運動療法的なアプロヌチで改善しおるのだが、それでは心理単䟡が数千円。ここに、クリスタル治療クリスタルず称する棒を経絡に沿わせる、オヌラ氎毒玠を浄化するずいう態、さらに、過去の心理的打撲の治癒ず称する怪しい療法を実斜。

     圌女はすっかり埗意客信奉客になった。今日も、実際には意味れロのクリスタル治療を斜した䞊で、膝の黒ずみに毒玠を連想させる営業トヌクを展開したずころ、こちらも倚分意味れロのオヌラ氎を䞇円分も賌入しおくれた。

     䞖間話分、新人の嬢の悪口を分ほど早口で展開するず、来月の予玄を枈たせ、笑顔で手を振りながらのお垰りずなった。

     これで䞇円の売り䞊げだ。

    ◆

     時前。

     さんがやっおきた。内に通うようになっおからただ半幎だが、すっかり埗意客信奉客だ。

     さんは歳の女性。基本、玹介でしかお客さんを取っおないので、事前情報がれロずいうこずは無いのだが、さんは飛び蟌みでやっお来たので、事前情報れロからの斜術だった。

     どうやっお芋぀けたのか聞くず、「有名なスピ系むンフル゚ンサヌの方にで教えおもらった」ずの答えだった。名前くらいは知っおるけど、知り合いでも䜕でも無い方だったので、色々ず譊戒しながらの斜術だった。

     でも、いざ問蚺するず事前の情報など無くずも、どんな問題を抱えおいるかがスグに分かった。

     さんは、䜕でもかんでも呪いに぀なげおしたう人だった。䌚瀟の同僚、先茩、䞊叞、取匕先の担圓者のちょっずした仕草から、䜕気ない蚀葉たで、党お、自分に呪いを掛けようずしおいる、ずいう被害劄想を抱いおいる人だった。

     初回の問蚺の時、俺が「どんな呪いを掛けられおるんですか」ず聞くず、「先茩が、『この前任せたタスクは、ちゃんずやっおるよね 私が手䌝わなくおも倧䞈倫だよね さんだけで出来るよね』、こんな颚に私に呪いを掛けおくるんです」ず答えた。

     最初は、頭の䞭にク゚スチョンマヌクが飛び亀った。正盎、蚀っおるこずの意味が分からなかったのだ。でも、粘り匷く話を聞くず、䜕ずなく問題が芋えおきた。芁は、さんが苊手意識がある人の蚀葉や仕草を党おマむナス方向に連想しおしたうのだ。

     䟋えば、「ちゃんずやっおるよね」には、「ちゃんずやっおないよね貎方、寝る時間を削っおでも、もっずちゃんずやっお」ずいう蚀霊の呪いが掛けられおいお、「私が手䌝わなくおも倧䞈倫だよね」には、「あなたは手䌝うに倀しない人だから、人で苊しみなさい」ずいう蚀霊の呪いが掛けられおいお、「さんだけで出来るよね」には、「倱敗しろ 倱敗しお怒られろ」ずいう蚀霊の呪いが掛けられおいるず連想しおしたうのだ。 

     そしお、自宅で人になった時、その連想がどんどん加速しおゆく。

     ぀たり、「倱敗しお怒られろ」は、「怒られお居堎所を無くしおしたえ」になり、「居堎所を無くしおしたえ」は、「䌚瀟からクビにされおしたえ」になり、「䌚瀟からクビにされおしたえ」は、「お前の人生ボロボロにしおやる」に倉換しおゆく。

     もちろん、これはさんが勝手に負の連想を展開しおいるだけで盞手偎にそんな意図など無い。だけど、さんの䞭では、【勝手に負の連想をさせられる】こずこそが呪いの仕業しわざずいう理屈なのだ。

     最初は困った。本圓に困った。でも、さんが回目に来院したその日の内に枋谷の倧型曞店に行っお医孊曞を読み持った。するず医孊曞の䞭に䜿えそうなノりハりを発芋した。さらに耇数の医孊曞を圓たり、そのノりハりを独自に進化させるず、さんに詊しおみた。

     やっおるこずは、認知行動療法思考の癖を改善するや、マむンドフルネス・ベヌスド・ストレスリダクション負の感情をただ芳察する方法や、タッピング療法䞍安を思い浮かべながらツボをタッピングしお開攟するなどの、心理療法を組み合わせただけなのだが、それを、呪い封じだの、呪い返しだの、心の防埡網だの、浄化だのずいった、スピリチュアル芁玠を塗たぶしお神秘化した䞊で、物事を認識する仕組みを぀ず぀修正しおいったのだ。

     だから、倚分、やっおるこずは心理療法の真䌌ごずだず思う。

     正盎、こんなの䞊手く行くなんお思っおもいなかった。最悪、諊めおもらっお、「違うスピリチュアル敎䜓垫のずころに行っおもらえばいいや」ず考えおいたのだが、これが、なぜか、スッゲヌ効果を発揮

     負の連想が止たったのは、ただ有り埗るかなずも思っおいたのだが、回目に来院しおきた時に、䜕か衚情が明るいなず思い、「あれ、䜕か開県したでしょ」ず聞いたら、「私、呪いを癒やしに転換できる胜力の持ち䞻みたいです」ず嬉しそうに蚀われた。

     ぀たり、瀟内の人間関係が劇的に良くなったのだ。

     今たで苊手だった先茩は、自分を䞀番可愛がっおくれるようになったし、今たで避けられおるず感じおいた同僚からもランチに誘われるようになったし、プラむベヌトでも遊ぶようになった。芁は仲良くなったのだ。

     さんからは、「先生凄い」ず蚀われたが、理由は簡単だ。

     奜意の返報性の法則ずか、奜意的な単玔接觊効果ずか、ミラヌリングの法則ずか、たあ理屈は䜕でも構わないが、さんがプラス連想に倉わり、盞手に察する苊手意識が枛ったため、盞手からしたら、以前に比べおさんのこずが奜意的に映るようになった。

     だから、䞊叞も先茩も同僚も譊戒を解き、奜意的に接しおくれるようになった。

     ただそれだけだ。

     ある意味、俺がやっおるこずの方が呪術の類いのような気がするけど、この神秘性が高単䟡のコツであり、顧客生涯䟡倀アップのコツでもあるから、俺にずっおはさんは、今埌も倧いに参考になる成功䟋なのだ。 今日も、すっかり仲良くなった同僚や先茩ず、䞀緒に出掛けたフェスが楜しかった、ずいう話を笑顔でずっずしおいた。

    ◆

     午埌は、事務所可敎䜓可物件の内芧に蚪れた。

     珟圚、移転先を探しおいる。旗の台の院も幎。そろそろ移転のタむミングだ。自分で蚀うのも䜕だが、俺みたいな怪しい商売人は、目に觊れすぎるず危険だ。隠れ家敎䜓ずいう芋せ方で、衚には䞀切情報を出さずに、玹介オンリヌ、必ず噂ベヌスでの口コミマヌケティングオンリヌで集客を図るわけだが、この神秘性こそが、高単䟡の秘蚣の぀である、ず同時に、俺の商売を守るためのディフェンスでもある。

     だから、やネットに情報が出回り始めたら、俺は移転するようにしおいる。

     この手の商売は、お客さんずの合う合わないが本圓に激しい。合うお客さんは信者信奉客になるが、合わないお客さんは探偵みたいになる。俺も、今では合わないお客さんだった堎合の察凊法を確立したので、もう悩んではいないのだが、少し前迄は、合わないお客さんに察しおも、圧が匷い営業マンみたいに説き䌏せお、商品を売り぀けたりしおいた。

     こういうお客さんは、合わない⇒䞍信ぞず心理状況が倉化する。そしお、時に、俺達を詐欺垫扱いしお攻撃を仕掛けおくるのだ。

     珟圚、䞊に、その兆候が認められたので、早めの移転を決意した。もちろん、セラピストネヌムも「゜ラむロ」から違うネヌムに倉える予定だ。垞連客さんには、パワヌアップしたずか、お告げがあったずか、テキトヌに嘘攟うそこいた䞊でね。

    ◆

     埡成門駅の改札前で、䞍動産屋の立川さんず合流した。い぀もぶかぶかなスヌツにスラックスを履いおくる立川さんは、旗の台の物件探しの時もお䞖話になった人。ちなみに立川さんには、単なる敎䜓垫ず䌝えおいる。

     軒目は、埡成門にある築幎の雑居ビルだった。

     駅から分、倧通りの䞀本裏にあり、築幎数の割に新しく芋える倖芳だった。入り口が若干分かりにくいのが実に

     隠れ家スピ敎䜓には、この冒険感が欠かせない。ちょっず迷っお到着するのが良いのだ。

     早速、オヌトロックを開き、゚レベヌタヌで階に䞊がる。内廊䞋も最高だ。倖の道路から扉が芋えるのが奜たしくないからだ。出入りを芋られるのを嫌がるお客さんが倚いし、倖郚からの監芖が効かない堎所にしたいずいう商売䞊の理由もある。

     ずいうのも、以前、こんなこずがあったのだ。

     さんずいう垞連客で、幎間䞇円も捧げおくれるようなお客さんだった。でも、ある時、さんの自宅で俺がプロデュヌスした防霊鈎鈎に護笊文字を蚘した物を怪しんだ圌氏さんが、俺を詐欺垫ず決め぀け、探偵の真䌌事みたいなこずを始めたのだ。そしお、俺の院から出おきたお客さんに突撃しお質問を济びせた。

     幞い突撃されたお客さんが超が぀く信奉客で、俺がどれだけ凄いか語っおくれた䞊に、その日の内に突撃の詳现を連絡しおくれた。俺はすぐに察凊し、さんに「あっ、さんは、もう内を卒業しお倧䞈倫そうだね」なんお挔技を打っおリリヌスしたから、それ以䞊の詮玢はされずに枈んだのだが  。

     だから、内廊䞋型か、旗の台院みたいに隣の建物のお陰で出入りが芳察出来ない物件が望たしい。

     宀内は平米、長方圢の䜿いやすい間取りだった。隣の郚屋も事務所、逆の隣の郚屋もサロン。倚少の音も問題無い。䞭々良い物件だ。䞍動産屋の立川さんも、「ここは人気があるから、スグに埋たりたす」ず、掚しおいた。

    ◆

     件目に玹介されたは恵比寿駅から埒歩分の堎所にある築幎で内廊䞋のマンションだった。

     駅から毛现血管みたいに広がる道をクネクネ進むず到着した。立地は玠晎らしい。宝探しみたいな地図を䜜れそうでありがたい。マンションも、築幎数の割に芋栄えが良いし、枋い煉瓊の倖壁のお陰だず思うが、劣化の叀さではなく、ビンテヌゞの叀さを醞し出しおいる。

     䞍動産屋の立川さんによるず、ここは元々、䞀棟オヌナヌの賃貞マンションだったが、盞続時に売华され、新しいオヌナヌずなった䌁業がリフォヌムした䞊で、事務所可になった物件だそうだ。

     玹介予定の郚屋がただ退去前だったため、別の階の同じタむプの空き郚屋を内芧させおもらったのだが、平米ず広さも問題無いし、角郚屋だし、玹介予定の郚屋の隣もオフィス利甚。䜕の問題も無し

     䞡方ずも良かったが、総合的に考え、本目のマンションに決めた。

    話 了

    目次ぞ


     
     
    代の限界フリヌランスです。耇業で皌ぎながら毎日物語を䜜っおたす。noteに加えおThreadsでも掌線小説を展開䞭なので是非フォロヌしおやっおください。他にもD2C型のファンベヌスマヌケティングを研究実践䞭絶賛苊戊䞭

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