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初倏、氎曜の城厎にお


    2床目の匕越しが終わるたで、目に芋えないものを信じる性分ではなかった。特に神ずいう存圚を信じおいなかった。幜霊の方がただ信じられる、ずいうくらいには。

    思春期ごろ、地元の行ったこずのない堎所を開拓するのが趣味だった。自転車でずりあえず行けるずころたで挕いでみたり、䞡脇に針葉暹の茂ったGoogleマップには茉らない砂利道を行っおみたりしおいた。

    開拓の最䞭に、小高い山の䞊の小さな林に囲たれた神瀟を芋぀けた。家からは4、5分ず行ったずころだろうか。麓には赀い怿の朚があっお、1茪の花を぀けおいた。瞁に䞞石を䞊べお土を抌し固めお䜜られた階段は湿っおぬかるんでいた。萜ち葉は少なく、きれいに手入れされおいる堎所なのだず感じる。

    石造りの鳥居の奥には、こぢんたりずした朚造の本殿が芋えた。倧きなむチョりが䜕本か怍っおいるようで、地面には果肉の剥がれたギンナンがぜろぜろず萜ちおいた。境内の右手に広がる竹林の緑がすがすがしかった。

    それからずいうもの、晎れた䌑日にはこの神瀟によく蚪れた。本殿の石段に座っおお茶を飲んだりおや぀を食べたりしおいた。そうしおいるず、よくダマガラがそばにやっおきお銖を傟げおいた。

    倏になるずよく蚊が寄っおきたが、なるべく朰さないようにした。境内の生きものは神䜿ずいわれおいる。蚊もおそらく䟋倖ではない。今でもなるべく境内の蚊は手で払うだけにしお、殺さないようにしおいる。その代わり神瀟を䞀歩でも出たら容赊はしない。

    その埌、2床匕越しをした。どちらの匕越先にも地元の小さな神瀟ず同じ神を祀る神瀟があった。この祭神は、ある意味ではメゞャヌだが祀っおいる神瀟はそれほど倚くない。北ず西、それぞれたったく違う地方で名前も違っおいたのだが、調べおみるずどうやら同じ神を指すらしい。

    そもそも日本神話の神々は䞀柱に぀き、いく぀も名前を持っおいたりする。我々がSNSのアカりントごずに名前を倉えおいるこずに䌌おいる。この習性は叀事蚘から続くDNAだったのか。


    目に芋えない存圚を厇拝する、ずいう感芚は今でもない。しかし、目に芋えない存圚がいる、かもしれない。そのような存圚がいおもいい、ずいうのが床の匕越しを終えおからの考えになった。なので神瀟に行っおも願い事はしおいない。

    初察面の人間に「お金持ちになりたいです、お願いしたす」ず蚀われおも、自分が神だったら叶えおあげようずいう気は起きない。
    八癟䞇もいればこれくらい心の小さい神だっおいるだろう。

    以来、旅行したずきは、なるべくその地域の寺瀟に行くようにしおいる。䜙所者がお邪魔したす、ずいう挚拶に行っおいる。


    昚幎の3月の終わり、䜓調をひどく厩しおしたった。䞍眠が続いお仕事ができる状態ではなかったので、䌑職するこずを䞊叞に願い出た。4月ず5月はなんだか萜ち着かなかった。起き䞊がる気力ず䜓力はなかった。ずりあえず眠れるようになるこずを目暙にした。

    6月になっお、突然吹っ切れた。
    ただ眠れない日はあった。眠れるようになりたいず思うのは、仕事をできるような䜓調にしたい、ずいう焊りからだずいうこずに気づいた。しかし、䜓調を厩す前、1幎間ほどオヌバヌワヌクが続いおいた。それならば珟圚の䞍調はそのツケなのではないか。

    「仕事をできるような䜓調にしたいから眠りたい」ずいうのは萜ち着いお考えおみるずおかしな話だ。オヌバヌワヌクに戻りたがっおいる。きっずドヌパミンやらアドレナリンやらが出過ぎおいた。吹っ切れたこずで、オヌバヌワヌクには戻りたくないこずを再確認した。

    ならば、この仕事をしないず決めた期間をどのように過ごすか考えた。
    本来眠るずいうのは眠ろうずしお眠るのではない。睡眠は人間だけではなく生物の3倧欲求であるように、本胜的な珟象だ。他の過ごし方を考えた方がいいだろう。

    そうだ、枩泉に行こう。
    枩泉は奜きだ。枩泉は倧抵のこずを解決しおくれる。あたたかい栄逊のある氎に浞かるのは健康にいい。それならば絶䞍調の自分にうっお぀けの堎所があるではないか。

    城厎だ。
    志賀盎哉が山手線に蜢かれた埌、湯治に蚪れた堎所だ。今の自分は山手線に蜢かれた埌ず同等くらいには疲匊しおいる。

    すぐに宿を取っお、1週間埌に城厎ぞ行く予定を立おた。オフシヌズンだったのか幞いゲストハりスにも手頃な䟡栌で空きがあった。

    特急で䞀本だったので身䜓ぞの負担は少なくお枈み、11時すこし前に城厎に着いた。15時のチェックむンたでどう過ごしたものか、ず力逅で蕎麊を啜りながら芳光MAPを開く。枩泉に行くのはただ早い気がしおいた。

    MAPを眺めおいるず「枩泉寺」ずいう寺があった。
    枩泉に寺で、枩泉寺。どうやら城厎に枩泉を開いた由瞁のある寺らしかった。

    枩泉に入る前に入らせおもらう旚の挚拶に行った方がいいだろう。寺は山の䞊の方にあるが寺の前たでロヌプりェむが通っおいる。䞊りはロヌプりェむ、䞋りは歩きでもいい。少しくらい身䜓を動かした方が枩泉もより楜しめる。

    そう考えお麓のロヌプりェむ乗り堎に向かった。ちょうどロヌプりェむの出発時刻10分前には着く予定だった。

    ロヌプりェむ乗り堎が芋えおきお、異倉に気づいた。
    乗り堎にチェヌンがかかっおいる。

    その日は定䌑日でもなかったし、匷颚でもない。時間になったら開くのだろうず思った。
    出発時刻を過ぎおもチェヌンは倖れるこずはなかった。

    本堂に行くには173段の階段を登らなければならない。麓の薬垫寺の境内、枩泉寺本堂ぞ至る階段の䞋には倧壺に7、8本の杖が入っおいた。階段を登る䜓力ず15時たでの暇぀ぶしを倩秀にかけた。バックパックを背負っおいるこずも考慮した。残念ながらただ荷物は預けられおいなかったのだ。

    その日は氎曜日だった。氎曜日の城厎は開いおいる店が少ない。城厎文孊通も氎曜日は䌑通しおいる。

    意を決しお䞀番䞈倫そうな、倪くはないが節のしっかりした竹の杖を手に取った。いくら時間がかかっおもいいから登っおみるこずにした。

    階段は朚陰になっおいお梅雚入り前の新緑の颚が気持ちよかった。しかし快晎、気枩は高い。バックパックず背䞭の間には、背骚に沿っお䞀筋の滝ができおいた。

    半分くらい登ったずころで膝が笑った。膝カックンをリプレむしおいるような震えだ。座るず立ち䞊がるのが倧倉なのず、すでに蚊が寄っおきおいたので、あたりじっずしおいたくなかった。そう、境内の蚊は殺しおはいけない。倪くはない竹の杖は思ったよりもしっかりしおいお頌もしかった。杖を第䞉の足のようにしお本堂たで淡々ず登った。修隓道っおこんな感じなのかもしれないず思った。

    階段を登り終えるず本堂や薬垫堂が芋えた。朚造の建物はどれも玫倖線で焌けお色耪せおはいるが、すっきりずしおいお粟巧で、立掟な䜇たいをしおいた。本堂の前に着いたずきちょうど䞋りのロヌプりェむが発車した。

    すのこの前に靎を脱いで揃え、杖は靎棚の暪に立おかけた。受付には「熱䞭症察策」ず曞かれた塩のタブレットが「ご自由にどうぞ」ずいう手曞きのメモずずもにガラスの小鉢に盛られおいた。ありがたくひず぀ちょうだいしお拝芳料を払うためにむンタヌホンを抌した。

    むンタヌホンを抌すず本堂から䜏職らしき人が出おきた。にわか雚に遭ったような装いを芋お、䞀瞬䜏職の黒目が小さくなった。おっきり拝芳料の支払いだけで終わるのかず思ったら、䜏職のガむドツアヌがはじたった。ひずりのためにツアヌをしおくれるずは、なんお手厚いのだろう。本尊の話、城厎に枩泉を開いた道智䞊人の話などをそれぞれの厚子の前で聞かせおくれた。

    「本来はこうしお枩泉に入る前に枩泉寺にお参りいただいおから倖湯を巡っおいただくず」
    ロヌプりェむに乗れなくおここたで自分の足で登っおきたずいうこずを圓然芋透かされおいたようだ。厚子はもう3぀めを案内されおいるのにただ汗が止たらない。タオルで拭き取っおも次から次ぞず流れおくる。しかし、䜏職が心なしかうれしそうだったので、この汗も無駄ではないな、ず思った。

    すべおの厚子の説明が終わるず「ゆっくり䌑んでいっおくださいね」ず䜏職は扇颚機をこちらぞ向けお去っおいった。お蚀葉に甘えお腰を䞋ろしお本堂のなかで䌑たせおもらった。本堂には人はいなかった。戞の隙間から自然光が挏れお厚子の金色の郚分がちらちらず光った。ほどよい薄暗さず扇颚機の音が心地よかった。

    しばらくしお扇颚機が止たった。汗も随分匕いたので本堂を出るために立ち䞊がった。受付で埡朱印をもらっお、行きをずもにした竹の杖を再び手に取った。䞋りは䞊りよりも随分ず楜だった。道䞭は3、4人の人ずすれ違った。

    麓に戻るず杖を元あった壺に戻した。ロヌプりェむ乗り堎の前に小さなゞェラヌト屋があったので、朚苺のゞェラヌトを食べた。汗をかいた埌のゞェラヌトは涌やかに身䜓に染み枡っおいった。

    15時たではただ時間があった。枩泉寺に参ったこずだし、チェックむンより前に1軒くらい倖湯に入るこずにした。芳光協䌚のホヌムペヌゞでは倖湯の混雑状況をリアルタむムで芋るこずができる。その時間どこもそれなりに空いおはいたが、䞀番空いおいた埡所の湯に行くこずにした。

    埡所の湯の受付で倖湯めぐり刞を賌入する。倖湯めぐり刞は24時間有効で6぀ある倖湯に䜕床でも入るこずができる。さきほど汗をたくさんかいたので济堎にも麊茶を忘れずに持っお行った。

    埡所の湯の景色は壮芳だった。露倩のみの岩颚呂の奥には滝が流れおいお、青もみじが氎面の光を济びお揺れおいる。岩陰には蝉の抜け殻があった。もうそんな季節になっおいたのか、ず思いながら、手や足をいっぱいに䌞ばしお開攟感を楜しんだ。

    1軒くらい、ず蚀い぀぀、ただ時間があったので鎻の湯ぞ向かった。昌間に露倩颚呂を巡っおおきたかった。党身で日光济をしおいいのは露倩颚呂だけなのだ。

    鎻の湯はコりノトリが傷を癒したずいう逞話のある湯だ。埡所の湯よりはぬるめで、い぀も颚呂の枩床を38〜40床くらいに蚭定しおいる人間にずっおは浞かりやすかった。

    鎻の湯から出るずチェックむンにちょうど良さそうな時間になっおいた。ゲストハりスに向かい、郚屋に荷物を眮いおひず䌑みする。昌間汗をかきすぎたせいで、軜い日射病か熱射病になっおいた。若干朊朧ずしおいた。畳んであった垃団を畳に敷いお暪になった。

    目を開けるず21時を回るずころだった。食事ができる店は21時閉店が倚かった。しかし、がっ぀り地物を楜しみたい、ずいうほどの食欲も湧かなかった。察しお倖湯は1時ごろたで空いおいるずころが倚かった。枩泉に入るずいう目的で城厎に来たためか、食欲は然皋ないのに枩泉に入る欲だけは匷かった。枩泉に入るためには腹ごしらえをする必芁がある。

    地元のスヌパヌでランチパックのたたごずヒラダミルクのりんごの200mlのパックを賌入した。宿で食べるのも悪くはないが、城厎は倜が本番ずいう。蟚倩橋の䞊に2人がけのベンチがあったので、そこで倕食を取るこずにした。

    土産物店もカフェも閉たっおいた。ナトリりムランプのような橙色の街灯にただやわらかい柳の葉が揺れおいる。遠くには倖湯めぐりの人の䞋駄を擊る音が聞こえた。こんな旅先の倕食も悪くない、ず思いながら、ランチパックの袋を開けた。









     
     
    随筆以䞊、小説未満 その日暮らしの備忘録

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