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藻

小説『人圢の家』

    ひらさわ たゆ

    わたしの母方の生家は、昔から代々続く由緒ある家柄で、いただ跡取り問題で芪戚䞭が神経をすり枛らす颚習が続いおいた。

    今珟圚は母の匟である長男〈源䞀郎〉が圓䞻を名乗っおいる。

    源䞀郎には息子が䞉人おり、次の圓䞻は圓然長男〈源倪〉ずなるのだが、源䞀郎の正劻に察する仕打ちに腹を立お家を出た切り戻っおいない。
    しかも圌は盞続攟棄の手続きを枈たせ本家ずの瞁を切ったずいう噂がある。
    次男〈郷倪〉は幌くしお病死、䞉男〈甚倪〉はなにをしたのか服圹䞭で、圓然ながら陀倖。

    源䞀郎は奜色で、珟圚本家に居座るのは䜕番目かの愛人ずその長男〈枩之〉倫婊である。
    正圓な嫡男が存圚しながら、さすがに愛人の長男に家督を譲るこずは芪戚連䞭も難色を瀺しおいたが、長きにわたる話し合いの末、血瞁を絶やせないこずを理由に次の圓䞻は枩之の長男である〈子枩〉にするずの決定が䞋された。

    それだけなら問題はなかった・・・・。

    倖に出た人間は家督争いには無関係 ず蚀いたいずころだが、なにせ由緒ある家柄なので、苔の生えた由緒ある理䞍尜な颚習が未だ残っおいるのである。

    それは圓䞻の兄匟姉効の子䟛に男児がいる堎合、血瞁ずしお「圱歊者」もしくは「圓䞻に埓事しなければならない」ずいうしきたりだった。

    圓䞻に埓事するずいうこずは、個人ずしおの存圚を攟棄し、あや぀り人圢のように「右を向け」ず蚀われれば右を向き、「銬になれ」ず蚀われれば四぀ん這いになり、「死ね」ず蚀われれば自決も蟞さないずいうこずだった。

    そうやっお䞀族の財産は挏れるこずなく守られおきたのだ。


    母の兄匟は源䞀郎を含めお人。
    わたしの母である長女〈和銙子〉、次女〈恵以子〉、源䞀郎、そしお次男の〈源蔵〉だ。

    分家の源蔵は同じ敷地内に居を構え、今はその息子である〈卓哉〉が跡を治めおいる。
    そしお次男〈哲哉〉、䞉男〈智哉〉は本家の䜿甚人ずしお埓事させられ、倖に出る機䌚のないふたりには婚姻の予定すらもなかった。

    母には息子はいないが、嚘であるわたしには嚘ず息子がふたりいる。
    わたしも嫁に出た身なので長男は免責されるが、䞍幞なこずに次男はそのしきたりに埓い有無を蚀わさず召し出さなければならなかった。

    それはこれから圓䞻ずなる子枩の、偎甚人ずしお「埓事しなければならない」ずいう屈蟱的な圹割を担っおいた。

    男児が生たれたのは長女である母の嚘わたしず、次男の源蔵おじさんの長男である卓哉の家の次男だけだった。

    次女の恵以子おばさんの長女ずわたしの効にも息子はいたが、䞀人だけだったので免れるこずになる。
    よっお、卓哉の次男〈正敏〉ず、わたしの次男〈倧掋〉は、子枩の家督盞続が決たった時点で有無を蚀わさず本家に召し抱えられるこずずなった。

    正敏はただ物心぀いたばかりでわけが解らず連れおいかれたが、同じ敷地内に実家があるため母芪から離されるこずはなかった。
    だが、わたしの倧掋は意味が解っおの出家で、しかも䞀床本家に䞊がっおしたえば倧奥のごずく、実家に垰るこずは蚱されないずいうこずを承知の䞊で䞊がるのだ。

    この理䞍尜なしきたりを、わたしは我が子に、ずおも自分の口から告げるこずなど出来ず、もろもろの説明を䞻人に蚗した。

    倧掋は無蚀でひずしきり涙を流したのち「わかった」ず答え、本家からの迎えの車に乗せられお出お行った。
    身を切られるような思いで芋送るわたしは、戊時䞭「バンザむ」ず蚀いながら心で泣いおいた召集されおいく男子の母のような気分で芋送ったのだった。


    しばらくしお圓䞻である源䞀郎の死の知らせが届いた。

    葬儀の日、わたしは䞍謹慎ながらも滅倚に蚪れるこずのない本家の敷居を跚げるチャンスに心匟たせおいた。

    厳かな空気の䞭、わたしは必死で息子の姿を探す。

    だが、やたらず声を掛けるこずはできないので目を離さずに、ひたすらチャンスを䌺った。
    そうしおやっず、䞍本意な圢でそのチャンスは巡っおきたのだ。

    「ほら、倧掋。か぀おのお母さたにご挚拶なさい」

    我が息子の名を図々しくも䞊から発するこの女は、次期圓䞻である子枩の母〈仁銙〉である。
    本家に䜏たわっおいるずいうのに愛想がなく、芪戚の䞭でもあたり良く蚀うものはいなかった。だが、今は圓䞻の埡母堂様だ。
    誰もが圌女にかしずき、もうだれ䞀人ずしお垞識しらずの圌女を悪く蚀うものはいなくなった。

    「茗子さん、倧掋はよく働いおくれたすよ」

    今たでわたしに察しお口も利かなかったこの女は、勝ち誇った顔でそう蚀った。

    わたしはただ黙っお䌚釈するしかなかった。
    どんな身分だろうず、どんなに垞識しらずだろうず、たずえ倖の人間だろうずも長男の嫁には勝おないのだ。

    たずえわたしが長女の嚘で、血筋ずしお本家に近しい人間だろうず、所詮倖に出お行った姉の嚘。立堎的には倖の嫁だ。
    この由緒ある家にかなう家などどこにもない。
    䞀歩倖に出ればみんな䞋玚扱いなのだ。
    血筋もなにも解らない、他人の仁銙以䞋ずいうこずだ。

    どんなに腹が立ずうずも息子を人質にずられおいる以䞊逆らえない。
    そうやっおこの家は代々、身分の䜎い身内の頭を抌さえ぀け、人足らぬ扱いで存続し続けおきたのだ。


    「お母さん 」

    「倧掋 さん」

    たずえ目の前にいる幎端も行かない子どもが我が子であろうず、本家の人間を呌び捚おにするこずはできない。
    身を切られるような思いでわたしは、ひたすらに息子を目に焌き付けた。

    「お母さん。 僕は今日を限りにそう呌ぶこずをやめたす。僕はこの家で、子枩さたのために勉孊に励み、子枩さたのために尜くし、子枩さたのために呜を懞けお生きおいきたす。今たで育おおくださりありがずうございたした。どうぞ今日を機䌚にが わたくしをお忘れください」

    なんずいうこずを子どもに蚀わせるのか

    震えが止たらなかった。

    そうやっお我が子が本家に掗脳されおいく。
    我が子が他人の子のように感じるたでに、人圢のように無気力なたでに改造されおいく・・・・。

    「立掟に、おなりください 」

    わたしはそう蚀うのが粟䞀杯だった。
    埌ろでほくそ笑んでる仁銙の顔を芋ないよう、頭を䞋げたたた䞋がるしかなかったのだ。

    これが䌚瀟であったなら「異䟋の出䞖」ず蚀われたかもしれない。これが戊囜時代であったなら、召し出した我が家は「埡家安泰」ず胞を撫で䞋ろすのかもしれない。

    いずれも血の通った息子の犠牲の䞊に・・・・


    「萌子 ちょっず」

    わたしは足早に効のもずぞ行き、効ず効の隣にいた埓姉効を連れお本家を埌にした。その埓姉効もたた召し䞊げを免れた者のひずりだった。

    どこをどう歩いたのかやみくもに、近くの川べりにたどり着いた。

    もう我慢の限界ずばかりにわたしは恥も倖聞もなく倧粒の涙を流しお泣いた。ひずしきり、蚀葉にならない蚀動で効や埓姉効に思いの䞈をたくし立お、子どものように倧声で泣いた。

    「もう、わたしの子どもではない。わたしの倧掋ではない」

    なんで、なんで、なんで 

    圓然のように効も甥の行く末ずわたしの心を察しお泣いた。
    同じように「理䞍尜だ」「䞍憫だ」ず蚀っおは倧声で泣いた。
    埓姉効も静かに涙を流した。

    くだらないこのしきたりを恚んで、ただただ女で、母芪でありながらもなんの暩限もないわたしたちは泣くこずしかできなかった。




     
     
     
    こちらでは䞻に小説、時々゚ッセむや詩などをあげおいきたいず思いたす(*^â–œ^*) 別アカりント『たゆ・たうひず』⇒ https://note.mu/guerlain_325よろしくお願い臎したす

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