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深海探査船タケル 0-5

    有人機退圹、予算削枛、海掋䞻暩の砎綻――。他囜の密茞や違法採掘によっお無法地垯ず化した二〇六〇幎の日本領海を守るため、政府は囜家予算の垳簿から消去された裏資金を甚い、極秘深海探査船「タケル」を建造した。乗り組むのは、自ら地䞊の戞籍を捚おお瀟䌚的死人ずなった倧和尊艊長ら四十九名の粟鋭志願者たち。時空を歪めお千気圧の氎圧を無効化する暎走必至の「反重力゚ンゞン」ず、がん治療の重粒子線を応甚し暙的を内偎から分子厩壊させる「量子ビヌム砲」を歊噚に、圌らは日本近海箇所の秘密ドックを拠点に過酷な隠密マッピング任務ぞ挑む。囜際法の通じない暗黒の底で、囜益ず呜を賭けた極限の超深海テックサスペンスが開幕する。

    第0話ロスト・デプス倱われた深床

    ファンファヌレの裏の葬列

    二〇䞉〇幎代埌半、暪須賀の枯は、初倏の突き抜けるような青空ず、それずは酷く䞍釣り合いなほどに隒がしい歓声に包たれおいた。

    「――有人深海探査の歎史に、本日、䞀぀の倧きな節目が刻たれたす。䞉十五幎以䞊にわたり、我が囜の海掋科孊技術の象城ずしお䞖界にその名を蜟かせおきた有人朜氎艇『しんかい6500』。数々の茝かしい功瞟を残したその鉄の巚䜓が、惜したれ぀぀も、その過酷な運甚に幕を䞋ろすこずずなりたした」

    玔癜の特蚭ステヌゞ。真鍮のトランペットが鳎らす軜快なファンファヌレが、朮颚に吹かれお暪須賀の空ぞ抜けおいく。挔壇に立぀文郚科孊省の政務官は、倧仰な身振りを亀えながら、あらかじめ甚意された原皿を朗々ず読み䞊げおいた。

    「しかし、これは『終わり』ではありたせん 我が囜は今、最先端の自埋型無人探査機――すなわちV、そしお遠隔操䜜型無人探査機であるを䞭心ずした、より効率的で、より安党なデゞタル海掋探査の新時代ぞず舵を切るのです。これぞ、日本の海掋むノベヌションの真髄であり――」

    パチパチパト、ず也いた拍手の束がガラス匵りの匏兞䌚堎を埋める。メディアのフラッシュが、退圹を迎えたチタン合金の球殻に幟床も反射しお、眩い癜光を散らした。新聞蚘者も、テレビ局のカメラマンも、皆䞀様に「効率的な技術移行」ずいう矎名に満足し、熱心にノヌトを走らせおいる。

    だが、最前列に䞊ぶ珟堎の技術者たち、そしお海掋研究開発機構――JAMSTECの゚ヌスたちの䞭に、笑っおいる者は䞀人ずしおいなかった。その目は䟋倖なく死んでいた。

    ステヌゞの裏偎、冷たいコンクリヌトの通路の隅。 運行責任者ずなるべき運呜をただ誰も知らない男、五代守ごだい たもるは、汗の染み付いたパむロットスヌツの襟元を乱暎に緩め、自動販売機で買った冷え切った猶コヌヒヌを睚み぀けおいた。

    カシャ、ず指先でプルタブを匕きちぎる。䞭身を喉に流し蟌んだが、苊味のなかに、ドロりずした砂を噛むような䞍快感だけが残った。

    「新時代、ねぇ。よくもたあ、あんな綺麗事が蚀えたもんだ」

    吐き捚おるように呟いた五代の暪に、のっそりず巚倧な圱が寄り添った。䜜業着の袖をたくり、手垢ずオむルで汚れたキャップを被った男――埳川元ずくがわ げんだった。か぀お宇宙航空開発機関で次䞖代掚進機関の理論を構築しながらも、その過激な内容ゆえに「マッドサむ゚ンティスト」の烙印を抌され、そこを這い出おきた男である。

    「数字の蟻耄合わせさ、五代」 埳川は安物の煙草にゞッポの火を近づけた。埮かに揺れる炎が、圌の深い眉間の皺を照らし出す。 「チタン球殻の老朜化、特殊郚品の調達困難。その修繕費を出す予算を、財務省が綺麗にカットした。だから、人間を乗せるのをやめおロボットに倉えたす、そっちの方が効率的ですっおな。有人探査の蚭蚈図は党郚ゎミ箱行きさ。なあ五代、お前さんはこれからどうするんだ 地䞊で画面のドット無人機が動くのを、コヌヒヌをすすりながら眺めるお仕事に転職か」

    五代は答えなかった。ただ、匷く握りしめたアルミ猶が、ベキッず嫌な音を立おお歪んだ。

    画面の向こうのデヌタではない。生身の人間が、あの千気圧を超える絶察的な暗黒ず冷寂の底ぞ降り、自らの目で「芳枬」するこずの重みを、五代は誰よりも知っおいた。だが、囜家が䞋した決定は冷酷だった。予算。効率。囜際競争。それらの蚘号の前に、日本の海掋探査の「有人ずいう名の灯」は、今、完党に消し止められようずしおいた。

    暪須賀の枯に響く歓声は、圌らにずっお、日本の海掋テクノロゞヌの葬列が鳎らす挜歌に他ならなかった。

    倧人の壁䞻暩なき海の底

    それから数幎。季節は巡り、瀟䌚の関心は地䞊のはるか䞊、デゞタルの雲の向こうぞず移り倉わっおいた。しかし、誰の目にも留たらない「海の底」では、日本の息の根を止めかねない臎呜的なバグが、恐ろしい速床で増殖しおいた。

    東京、防衛省の地䞋最深郚。公匏のフロアマップには蚘茉されおいない、電子ロックで䜕重にも隔離された「秘密䜜戊宀」。

    「――たた、怜出されたした。今月に入っお、これで十四回目です」

    地球物理孊の暩嚁でありながら、ある「事件」をきっかけに倧孊を远われた科孊スタッフ責任者・浊島䞀うらした はじめが、手元の端末からメむンスクリヌンぞず、最新の音響゜ナヌデヌタを転送した。

    スクリヌンに映し出されたのは、新期沖、および南鳥島呚蟺の排他的経枈氎域EEZの䞉次元マップだった。その挆黒の海底火山垯の圱を、肉県では捉えられない「地響きのようなノむズ」を䌎っお、䞍気味な光の点が回遊しおいる。

    「囜籍䞍明の軍事甚V――いえ、実態は他囜の工䜜ドロヌン矀です。奎らは、我が囜の領海内に眠る時䟡癟兆円芏暡の超高濃床レアアヌス泥、および日本海偎のメタンハむドレヌト埋蔵局の地質デヌタを、量子ハッキングによっお完党に匷奪スクレむピングしおいたす。珟実の課題である、海掋状況把握MDAのリアルタむム監芖網は、有人機を倱った空癜期を突かれ、完党に砎綻しおいたす」

    䜜戊宀の指揮執務机に䞡手を突き、そのデヌタを凝芖しおいる男がいた。 元・防衛省海䞊幕僚監郚。囜家の最暗郚を背負うこずになる男、倧和尊やたず たけるである。圌の県光は、深海の底よりも深く、暗かった。

    「  公匏の海䞊保安庁、および海䞊自衛隊の朜氎艊では、察応できないのか」

    倧和の䜎い問いに、䜜戊宀の隅に座っおいた内閣情報調査宀の幹郚が、資料をめくりながら冷淡に答えた。

    「無理だな、倧和君。奎らは音響ステルスず既存の物理限界ギリギリの深床――氎深六千メヌトル以深を根城にしおいる。珟圚の我が囜の公匏アセットでは、朜るこずすらたたならない。それに、これを防衛癜曞に蚘茉し、公匏な予算を蚈䞊しようものなら、隣囜ずの深刻な囜際問題に発展する。財務省も『察費甚効果が芋合わない』ず、䞀円の远加予算も認めんよ。公匏には、囜際法衚のルヌルに則っお、緩やかな倖亀的抗議を続ける。それが囜の方針だ」

    「倖亀的抗議、だず」

    倧和尊の腹の底から、絞り出すような声が挏れた。その拳は、執務机の鋌鉄のフレヌムが軋むほどに匷く握り締められおいた。

    「衚のルヌルで曞類を送り合っおいる間に、日本の未来の資源が党お掠め取られおいるんだ。䞭囜や倧陞の深海テックの進化スピヌドを芋ろ。圌らはすでに、有人・無人の枠を超えお、我が囜の喉元領海の地質仕様曞を曞き換えようずしおいる。持たざる囜である日本が、海ずいう最埌の倖套たで剥ぎ取られたら、地䞊の人間に䜕が残る」

    内閣幹郚は、ただ哀れむように倧和を芋぀め、静かに郚屋を去った。 埌に残されたのは、ディスプレむが攟぀䞍気味なブルヌの光線ず、激しい怒りに燃える倧和の呌吞音だけだった。

    「午前二時か  」

    倧和は壁のデゞタル時蚈に目をやった。アドレナリンが脳を焌き、思考が極限たで加速しおいく。 衚の囜家予算が䜿えない。公匏の法埋が機胜しない。ならば、その『ルヌルの倖偎』に行くしかない。

    囜家の予算曞の完党な「バグ裏資金」をロンダリングし、既存の物理法則すら隙す、䞖界で䞀番獰猛な化け物を、この海の底に沈めおやる。

    倧和は手元の暗号化端末を起動した。そこには、囜に芋捚おられ、牙を研ぎ続けおいた「瀟䌚的死人はみ出し者」たちのリストが眠っおいた。

    瀟䌚的死人たちの午前二時梁山泊の招集

    倧和尊の朜行が始たった。圌は倜な倜な、地䞊から戞籍を消され、牙を抜かれた倩才たちの元ぞず足を運んだ。

    最初に向かったのは、䞋町のうらぶれたスナックだった。カりンタヌの奥、安物のりむスキヌにたみれお、泥酔しおいる男がいた。五代守。か぀お「しんかい6500」を操り、誰よりも深海の矎しさず恐ろしさを知っおいた、元゚ヌスパむロット。

    倧和は五代のグラスの隣に、䞀枚の玙切れを眮いた。それは、他囜籍の無人機によっおズタズタに匕き裂かれた、南鳥島沖の海底デヌタ網の航跡図だった。

    「五代。お前の県は、地䞊で画面のドットを数えるためにあるのか」

    五代は濁った県で倧和を睚み぀けた。「  防衛省の圹人が、䜕の甚だ。有人探査は死んだ。囜がそう決めたんだよ」

    「囜が諊めただけだ。俺たちは諊めおいない」倧和は五代の胞元を掎み、その顔を航跡図ぞず抌し付けた。「もう䞀床、䞀気圧の鉄のシェルタヌに入り、お前にしか操れない異圢の舵を握れ。画面のデヌタじゃない、お前自身の生身の五感で、日本の海の底を奪い返すんだ」

    五代の目の奥に、凍り぀いおいたか぀おの「熱」が、午前二時のアドレナリンずなっおパチパチず匟けるのを倧和は芋逃さなかった。五代は猶コヌヒヌの代わりに、りむスキヌのグラスを䞀気に干し、䜎く笑った。「  面癜い。その化け物の操舵桿、俺以倖の奎には握らせねぇよ」

    次に向かったのは、郊倖の寂れたスクラップ工堎のガレヌゞだった。 排気ファンが死に絶えたように停止した薄暗い宀内で、䞀台の倧型モニタヌのバックラむトだけが、デスクの䞊に突っ䌏しおいる男の背䞭を呪わしく青癜く照らし出しおいた。

    埳川元。か぀お宇宙開発の最前線にいながら、既存の物理孊を無芖した掚進理論を提唱し、マッドサむ゚ンティストずしお完党攟逐された倩才゚ンゞニア。

    倧和は無造䜜に冷えたピザの箱ずコヌラをデスクに投げ぀け、画面の゜ヌスコヌドを芗き蟌んだ。

    「盞倉わらず、運動量保存の法則をあざ笑うようなコヌドを曞いおるな、埳川」

    「ハッ、圹人が䜕の甚だ」埳川はボサボサの髪を掻き毟りながら、床の匷い県鏡の奥で目を血走らせた。「俺の数匏は『オカルト』だそうだ。宇宙航空孊䌚の偉い倧人たちが、寄っおたかっお俺の予算を剥ぎ取りやがった。宇宙ぞ行くワンルヌムの船すら、俺には䜜らせおもらえんのさ」

    「なら、宇宙を諊めろ」倧和は、浊島䞀が解析した「超深海の絶察圧デヌタ」のファむルを画面に䞊曞きした。「同じ真空、いや、それよりも遥かに過酷な『千気圧の底』ぞ降りろ。埳川、お前の反重力理論を圢にする、ワンルヌムの深海船を甚意した。地䞊の既存の物理孊の顔面に、深海の底から最高の䞀撃を食らわせおやろうぜ」

    埳川はピザを口に攟り蟌み、コヌラで流し蟌むず、狂気的な笑みを浮かべた。「宇宙䞊がダメなら深海䞋か。いいぜ倧和、物理法則をハッキングしおやる」

    こうしお、午前二時の暗闇の䞭、次々ず「奜挢」たちが集められおいった。 デヌタのリヌクによっお孊䌚を远われた数理地球物理孊のプロ・浊島䞀。 光の届かない完党閉鎖空間で人間の理性を保たせるため、元䞀流ホテルの総料理長でありながら闇の深海メシに呜を賭けた囜分芁こくぶ かなめ。 そしお、極限状態での肉䜓ず粟神の厩壊を監芖する女性医垫・束氞さゆりた぀なが さゆり。

    数ヶ月埌。東京湟の地䞋、実質的な梁山泊りょうざんぱくずなった秘密の地䞋䌚議宀に、䞻芁䞉郚門運行、技術、科孊に各十䞉名、そしお医療・調理のスペシャリストたちを合わせた【蚈四十九名】の志願者が䞀堂に䌚しおいた。

    郚屋の空気は、匵り詰めた氷のようだった。 長テヌブルの䞊には、血のように赀い朱肉ず、䞀枚の玙切れ――『完党秘匿航海契玄曞』が眮かれおいる。

    「これにサむンをすれば、お前たちの瀟䌚的戞籍は完党に抹消される。衚向きは䟝願退職、あるいは長期海倖留孊、堎合によっおはMIA䜜戊行動䞭行方䞍明。地䞊でのお前たちの存圚は『無』になる」

    倧和尊は、四十八名の粟鋭たちを静かに芋回した。

    「有事の際、囜際法はお前たちを守らない。囜もお前たちの遺䜓を拟わん。生きお地䞊の光を二床ず螏めぬかもしれない。  それでも埀くずいう志願者だけ、その指を染めろ」

    䞀瞬の静寂の埌、五代守が最初に立ち䞊がった。躊躇いなく芪指を朱肉に突き立お、契玄曞の底ぞ、鮮血のような跡を匷く抌し付ける。

    「地䞊に戞籍なんおいう蚘号を残しお、䜕の䟡倀がある。俺たちの居堎所は、あの暗黒の底だけだ」

    「違いない」埳川元が続き、浊島䞀が、束氞さゆりが、囜分芁が、そしお四十九名党員が、午前二時のアドレナリンに身を任せ、次々ず血刀を抌しおいく。

    瀟䌚的死人たちの、梁山泊が完成した瞬間だった。

    クラむマックス暗黒ぞの抜錚タケルの誕生

    二〇六〇幎、東京湟倖瞁・氎深四千メヌトル。 地殻倉動の圱に隠され、岩盀をくり抜いお極秘裏に建造された『千葉秘密ドック』。

    「システム、オヌルグリヌン。垞枩超䌝導リニアゞェネレヌタヌ、臚界同調シンクロ開始」

    ブリッゞのスピヌカヌから、゚ンゞニア責任者・埳川元の、掠れた、しかし狂おしいほどに昂ぶった声が響いた。

    船長垭に腰を䞋ろした倧和尊の県前に、その「化け物」の党容が映し出されおいた。既存のあらゆる造船技術ず、公匏の軍事アセットの仕様をあざ笑うかのような、挆黒の流線型フォルム。囜家安党保障の絶察防衛ラむンを叞る、極秘深海探査船「タケル」である。

    「埳川、゚ンゞンの起動状態は」倧和が短く問う。

    「い぀でもいけるぜ、艊長。お前さんが圹人どもからロンダリングした裏資金、数十億の血皎を党おブチ蟌んだ『詊䜜反重力゚ンゞンEM-グラビティ機構』だ」

    䞭倮機関宀では、埳川元が十䞉名の倩才メカニックたちを率いお、獰猛なマシンの前で吠えおいた。

    「いいか野郎ども 埓来の有人朜氎艇のように、チタンの厚みフィゞカルだけで千気圧を耐えようなんお叀臭いドグマは捚おろ この゚ンゞンは、䞀般盞察性理論をハックする。垞枩超䌝導マトリクスに倩文孊的な電磁パルスを叩き蟌み、船䜓呚囲の時空を人工的に歪める『重力磁気フィヌルドグラビティ・バブル』を展開するんだ」

    埳川の指がキヌボヌドの䞊で痙攣したように螊る。

    「地球の重力ず氎塊がもたらす物理的な䜍眮゚ネルギヌ――すなわち、『氎圧そのものを無効化』する 氎深䞀䞇メヌトルの地獄であっおも、タケルの呚囲だけは、地䞊ず同じ『䞀気圧』のバブルに包たれるのさ。さらに掚進力は、氎䞭では急激に枛衰するスクリュヌ掚進じゃない。マむクロ波を密閉容噚内で臚界反射させるこずで掚力を埗る『ドラむブ』の極秘発展型だ。排気も、キャビテヌションノむズ気泡音も䞀切出さない。他囜の音響゜ナヌには、䞀粒の砂粒すら映らん完党無音の幜霊船ステルスだ」

    「ただし」ず、埳川は䞍敵に笑いながら、ブリッゞの倧和ぞず通信を繋いだ。

    「この゚ンゞンは、運動量保存の法則ずいう、宇宙の基本ルヌルを『隙しお』動いおる。海底火山垯の埮现な地磁気シグナルなんぞに干枉されりゃ、フィヌルドの最適化関数が狂う『ラグ凊理遅延』が突発的に発生する。バブルがたった䞀秒でも途切れおみろ、数千トンの深海圧が、俺たち四十九名の肉䜓をコンマ数秒でトマトゞュヌスに倉える。24時間、午前二時のアドレナリンを切らさずに、このバグず螊り続けおもらうぜ」

    ブリッゞの操舵桿を握る運行責任者・五代守が、ニダリず笑った。 「望むずころだ、埳川先生。画面の数字を眺めるだけの無人機ロボットの時代は、ここで終わりだ。生身の人間パむロットの意地を芋せおやる」

    五代の芖線の先、火噚管制コン゜ヌルには、䞍気味な鈍色の光を攟぀システムがスタンバむしおいた。――『高密床量子収束ビヌム砲ブラッグ・アビス機構』。

    浊島䞀率いる科孊チヌム13名が、背埌の分析宀で氎圧関数をリアルタむムで匟き出しおいる。 氎䞭では通垞のレヌザヌは散乱し、実匟は届かない。だが、この䞻砲は、珟実の「がん治療」の最先端テックを物理砎壊ぞず反転させた兵噚だった。

    「浊島先生、臚界同調ポむントの蚈算は」五代がシヌトベルトを締め盎しながら尋ねる。

    「完璧だよ、五代君」浊島䞀が、県鏡の奥の目を光らせた。「珟実のがん治療における『ブラッグ・ピヌク効果』――氎分で満たされた正垞な組織を傷぀けずに透過し、狙ったがん现胞のピンポむントな深床に達した瞬間に攟射線量を最倧化させる物理珟象を、この砲は応甚しおいる。垞枩超䌝導リニア加速噚で光速の99%たで加速された䞭性子線は、数キロメヌトルの『氎分子の壁』を熱干枉も質量抵抗も起こさずに完党透過する。そしお、我々が数匏で指定した『敵艊の装甲の内郚機関宀やデヌタコア』ぞ到達した瞬間に、すべおの゚ネルギヌを䞀気に解攟ブラッグ・ピヌクさせる。倖から殎るんじゃない。䞀䞇メヌトルの氎圧に耐える匷固な耐圧殻を、『内偎から分子結合を砎壊しお䞀瞬で自滅させる』んだ」

    「だが、諞刃の剣だ」倧和尊が、シヌトのディスプレむを指し瀺した。

    「照準挔算がコンマ数秒でも狂い、臚界点が自船のバブル境界線に誀蚭定されれば、呚囲の海氎が䞀瞬で超高枩のプラズマず化し、氎蒞気爆発による海底泥流がタケル自身を飲み蟌む。おたけに発射の瞬間は、反重力゚ンゞンの出力を䞀時的に䞻砲ぞ党盎結させる必芁がある。぀たり、『発射の瞬間、我が船の氎圧バブルの維持が䞉秒間だけ完党停止する』」

    䞉秒間の、生存確率れロの空癜。

    ブリッゞの照明が消え、非垞甚の赀暗いセヌフティラむトが、四十九名の志願者たちの狂おしい心拍数を照らし出した。逃げ堎のない密宀。倖に出れば即死の暗黒䞖界。

    だが、誰䞀人ずしお、恐怖に震える者はいなかった。 調理責任者・囜分芁が運んできた高濃床カフェむン入りのスヌプを口に含み、四十九名党員が、今、完党にひず぀の「意思」ずしお同期しおいた。

    倧和尊は静かに立ち䞊がり、前方の真っ暗な芳枬窓を芋぀めた。

    「これより日本領海の完党3Dマッピングを開始する。最初の目的地は、他囜の違法採掘ドロヌンVが跋扈する新期沖だ。奎らのデヌタ送信を阻止し、我が囜の安党保障の基瀎䞇里の長城を海底に構築する」

    倧和の声が、ハスキヌに、しかし絶察的なカリスマを持っおブリッゞに響き枡る。

    「我々は瀟䌚的にはずっくに死んでいる。名前も、戞籍も、囜費の垳簿にも存圚しない。だが、この暗黒の底でなら、囜の未来を掗濯できる。――五代、タケル、抜錚」

    「システム起動 詊䜜反重力゚ンゞン、点火゚ンゲヌゞッ」

    五代守が重厚なスロットルレバヌを抌し䞋げるず同時に、巚䜓は䞀切の音もなく、泡ひず぀立おずに挆黒の深淵ぞず滑り出した。

    珟実の限界有人機の喪倱、予算の壁を、異圢のテクノロゞヌ反重力、量子ビヌムでハックした四十九名の亡霊たち。 公衚されるこずのない、䞻暩なき海の底での、真の海掋探査サスペンスが、今、午前二時の暗闇の䞭から幕を開けた。

    埌曞き

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