
言葉の「向き」が変わるときーー排水口とドレインの狭間で
日本語の漢字は「表意文字」だ。
文字そのものが意味のイメージを運んでくる。
例えば「日」という字を見れば、私たちは一瞬で太陽の熱さや、流れる日付を想像できる。
ところで、私たちが日常的に目にする「排水口」という単語からは、どんなイメージが浮かぶだろうか。
排水口の英訳は「drain」という。
そして、これまで私は「ドレイン」という言葉に対してある種の誤解をしていたのである。
私はその単語を「吸収する」という意味だと思っていたのだ。
おそらく、ファンタジー小説やアニメなどで見る「エナジードレイン(魔力吸収)」の印象が強かったのだろう。排水口が勢いよく水を吸い込んでいく様子とも重なっていた。
しかし、実際の「drain」の意味は真逆だった。「(液体を)排出させる」「消耗させる」が本当のところらしい。
つまり、私は「内側へ引き込む(吸収)」という向きで言葉を捉えていたが、実際は「外側へ流れ出ていく(消耗)」という向きの言葉だったのだ。
この誤訳に近い勘違いは、私に強い教訓を与えてくれた。
言葉には力があり、そして「向き」がある。
よかれと思って使っている言葉、あるいは何気なく使っている言葉が、実は自分を回復させるどころか、排水口のようにエネルギーを消耗させているメッセージになっているかもしれない。
言葉の「向き」を掛け違えると、私たちの思考もまた、意図しない方向へ流されてしまうのだ。
参考