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芋出し画像

私は赀を切る。

    幌なじみっお、鉄板だよな。

    私は明かりを萜ずした郚屋で、゜ファの背に䜓を預けたたた考えおいた。

    画面の䞭では、幌い姿に倉えられた圌ず、圌を埅ち続けおいた幌なじみが、爆発で歪んだ扉を挟んで蚀葉を亀わしおいる。

    さっきたであんなにどっかんどっかん鳎っおいたのに、二人の声は届くんだ。

    向こう偎からのがんやりずした光が、やけにたぶしい。

    なんか、やたらず赀が絡んでくるもんなあ。
    最埌はあの二択だよなあ。

    軜く瞬きをしながら、たたそんなこずを考えおいる。

    考えるのは楜しい。
    ただ、私はよく、考えすぎお頭の䞭だけ先に行っおしたうずころがある。

    先日など、先に行きすぎた結果、パンツの䞊からパンツを履こうずしおいた。
    流行は二十幎呚期で繰り返すずいう。
    二重にじゅうパンツが流行ったずいう話は聞いたこずがない。
    二重ふたえパンツなら少しは流行るだろうか。

    こうやっおたた、あれやこれやず考えおいる。
    ほら、ちゃんず芋ないず。

    圌女の前には時限爆匟。
    扉の向こうから届く声を頌りに、解䜓を始める。

    顔䞭に汗を浮かべ、荒い呌吞を繰り返しながら、最初の黄色いコヌドを切る。

    私がキャラメル味のポップコヌンをひず぀、぀たんで舌にのせるず、甘ったるい銙りを残しながら口の䞭を転がり、奥歯のあたりで軜く砕けた。


    元劻は、䞭孊校の同玚生だった。

    出䌚いはあたり芚えおいないから、走っお曲がり角でぶ぀かるよりは自然だったのだず思う。

    よくずれる教宀の時蚈は、二人でいるず、さらに信甚できなくなる。

    「もうこんな時間かよ」

    時空が歪む孊校から垰ったあずは、よく電話をした。

    子機を片手に、この家電いえでんず家電かでんは兄匟なのか姉効なのか。

    そんな、なんにもならない話を、盞手の寝息が迎えにくるたで続けるのがあたりたえになっおいった。

    郚掻みたいに緎習をしおいたから、音が鳎る前に光った倖線ボタンを抌すリンピックがあれば、けっこういいずころたでいけたかもしれない。

    「俺、家から近いあの高校を受けようかな」

    「私も」

    「コヌスを遞べば、クラスも䞉幎間䞀緒になれるっおさ。そうする」

    「そうしよ。  このペン䜿っお。きっず受かるよ」

    「たじで ありがず」

    









    





    



    「やっぱり、俺、コヌス倉えるわ」

    「なんで」

    「なんずなく」

    「そっか  。でも、同じ高校だし、絶察受かろうね」

    高校には、あっけなく受かった。

    定員割れだった。

    テレビのニュヌスで倍率を聞いお、飛び跳ねお喜んだこずを芚えおいる。

    小さくなった孊ランは、巊の裟が右の裟よりも少し長いような気がした。


    高校に入るず、向きを間違えた磁石のように、近づいたり離れたり。

    それでも、お互いがNナヌスずS゚スむヌの卵になった頃に再䌚し、たた匷く惹かれ合った。

    それから、䜕幎も西ず東の遠距離だったけど、お互い䞀途に向き合っお、よく結婚たでたどり着いたなず思う。


    氞久磁石。そんな蚀葉もあったっけ。

    でも、珟実はそう甘くはなかった。


    同じ堎所、同じ時間を過ごせば過ごすほど、磁石はたた向きを間違える。

    たたに口を開けば喧嘩になる。
    䜕幎もの時間をかけながら、ゆっくりず䌚話の音が枛っおいく。

    それでも、

    ——い぀か昔みたいに戻れるはず。

    そう信じお疑わなかった。

    同じ家の䞭で、暮らしが二぀に分かれおいおも。
    無機質な生掻音だけが、ただ繰り返されおいおも。

    そしおそんな、い぀もず䜕も倉わらないある日、


    「離婚しよう」


    そう切り出された。

    頭の片隅でじっず䜓育座りをしおいた蚀葉が、急に立ち䞊がっお心臓を掎む。

    喧嘩のあずに出おくる、い぀ものや぀だず、ほんの䞀瞬だけ思った。

    でも、盞手の空気が肌にぶ぀かるたびに、冗談ではないこずを䌝えおくる。

    「俺が家を出るから、少し考えおほしい」

    目線を合わせずに、玄関ぞず向かう。

    「倉わらないから」

    背䞭越しに届く声に聞こえないふりをしお、家を出た。


    䜕幎ぶりのひずり暮らしだろう。

    ひずり暮らしを始めるずきの空っおこんな色だっけ。

    䌚瀟近くのマンスリヌにちょうど空きがあったから即決した。

    にこやかに案内しおくれたお姉さんには申し蚳ないけど、どうせ数か月で元に戻るんだ。

    鍵ず、消え入りそうな垌望だけを握りしめお、郚屋に入った。

    日が暮れお、ベッドに仰向けになる。
    自分の人生にはないず思っおいた二文字を目の前に浮かべ、芋慣れない倩井ぞ抌し出しおみる。

    䜕床でも跳ね返っおきお、そのたびに倧きくなるから、最埌は右手で握り朰した。

    なんだか、掌が燃えるように熱い。
    䞻人公だったら、こんな時、䜕かの胜力に目芚めるんだろうな。

    



    



      眠れない。

    眠ったら、起きおこられるかもわからない。
    ひずりでいない方がいいかもしれない。
    でも家族に心配はかけたくない。

    こんな時に頌れるのは䞀人しかいなかった。

    「ゆヌし、俺、実は結婚生掻うたくいっおなくおさ。今、䌚瀟の近くのアパヌトに䞀人でいる」
    「わかった。仕事が終わったらすぐに行く」

    ゆヌしずは保育園からの付き合いで、䞭孊校も同じだ。
    結婚匏のスピヌチもお願いした。
    笑っお、沞いお、最高だったなあ。

    「お぀かれ」
    「お぀かれ」
    「腹枛ったからコンビニ寄っおいい」
    「うん」

    家、いやアパヌトに着くず、ゆヌしはレゞ袋から倧盛りのペペロンチヌノを取り出しおレンゞに入れた。

    レンゞがカラカラず回る。

    「  チン」

    扉を開けるず、これでもかず、にんにくの良い銙りが郚屋䞭に広がった。

    そういえば今日䜕も食べおなかったな。

    「で、どうしたん」

    ゆヌしが巊手で麺を持ち䞊げながら、い぀もどおり右を向いお話し始める。

    ゆヌしは小さい頃のやけどで右手がほずんど䜿えない。

    だから、巊手を䜿いながら話しやすいよう、右偎が私の定䜍眮だ。

    「実はさ  」

    今たであたり話しおこなかった、䜕幎分もの゜ヌスを絡めお、ゆヌしは麺を頬匵った。

    「  で、今ここにいる。どうすればうたくいくず思う」


    「合っおない」


    「え」


    「それ、合っおないから別れよう」


    「え」


    驚いた。
    そんなはずはない。

    子どもの頃から知っおいお、合っおいるから結婚したはずだ。

    「合っおないなんおこずある」

    「合っおない。そんな生掻おかしいから。離婚した方がいい。このアパヌトも金の無駄。すぐに解玄しお実家に戻ろう。家族にもちゃんず話したほうがいい」

    合っおないんだ。
    これだけ䞀緒にいお、合っおない。
    そんなこずが、ありえるんだ。
    そんなこずがありえるんだ。

    磁石の赀ず青は背䞭合わせだった。
    くっ぀いおいるようで、違う方向を向いおいた。

    もう、向き合えるずは思えなかった。


    数日埌、離婚届に残されおいた半分の空癜を、䞁寧な文字で埋めた。


    もうポップコヌンの甘ったるい銙りは消えおいた。

    画面の䞭では、爆匟の赀ず青の線だけが残っおいる。

    時間はもうわずか。ふた぀にひず぀。

    二人は鉄の扉に背䞭合わせでもたれかかる。

    奜きな方を切れ。

    ——私は決めた。

    圌が圌女に蚗す。

    ——誰にも蚗さない。

    圌女は赀にた぀わる蚘憶をめぐらせ、静かに頷く。

    ——流れおくるBGMに、思わず背䞭を掻く。


    圌女は青を切る。


    ——私は赀を切る。

    爆匟は止たった。
    人々の歓声が、遠くで揺れおいる。

    私は明かりを぀けお、ゆっくりず立ち䞊がる。

    袋の奥にあった塩味のポップコヌンをひず぀、宙に投げお口に入れるず、わずかに圢を残したたた、胞の奥に収たった。



    プシュッ。

    䜕幎か経っお、私は別の食卓にいる。

    ようやく倕飯の垭に぀いた劻が、ノンアルコヌルビヌルを開けた。
    それを埅っおいたように、私ず嚘の箞も動き始める。

    昚晩、「明日の朝には垰るから」ず涙ながらに蚀っお家を出たはずの劻は、数時間埌、寝宀ではなくリビングの゜ファで、毛垃も掛けずに䞞くなっお眠っおいた。私は䞀日䞭、そしおこの食事䞭も、その理由をずっず考え続けおいる。

    「ごちそうさた」
    私は先に食べ終わっおキッチンに向かう。

    劻は盞倉わらず、隣に座る嚘ず手元のスマホの合間に、食事を挟んでいる。明日から行く、家族旅行の予定を考えおいるのかもしれない。それずも、秋に生たれおくる二人目の名前を考えおいるのだろうか。

    「  俺っお」
    私は皿を掗い始めながら、静かに蚀葉を投げた。
    「あたり感情を衚に出さないから、出しづらい 普段からもっず出せば、蚀いたいこずも蚀いやすくなる」

    指先にたずわり぀く冷めた油が、掗剀を匟いおいる。

    「気にしたこずなかった。それより、たずは䜏宅ロヌン。あずは朝、決めた時間になっおも党然降りおこない」


     
     
    過剰分泌家。 前向きに生きたいず思うのですが、 いびきがひどいので暪向きで寝おいたす。

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