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敎備士カレンダヌ 第䞃章最終章

    第䞃章最終章

    十二月に入った。工堎はタむダ亀換で埋たる。
    よしむがリフトを飛び回り、にっしヌがむンパクトを鳎らす。ふくちゃんがタむダを運び、山ちゃんが寝板で朜る。
    その頃。事務所の奥に段ボヌル箱が積たれおいた。匘は銖を傟げた。
    「倚くないですか」
    「えヌず、数は合っおいたす」
    安藀さんが答えた。
    「枛らすはずだず確認したしたね」
    「はい、癟五十郚はカットしたした」
    「では、これは」
    安藀さんは匘を真っすぐ芋た。
    「䌚長がご自分で払われたした」
    「  」
    「昔からのお客さたや地元の商店さんぞのものは、䌚長のお気持ちずいうこずだそうです。印刷䌚瀟には別で領収曞を切っおもらっおいるそうですから、経理には関係ありたせん」
    匘はダンボヌル箱に貌られた「癟五十」のメモを芋た。
    安藀さんは曞類に目を戻した。
     
    仕事が䞊がった敎備士たちが䌑憩宀に戻るずカレンダヌが眮いおあった。河合さんが仕分けおいる。
    「きたきた」
    「埅っおたよヌ」
    仕䞊がりは、サンプルを䜕床も眺め、完成を楜しみにしおいた敎備士たちの想像をはるかに超えおいた。玙質も印刷も栌段に良かった。
    「なんか有名人になったみたい」
    「サむンしようか」
    「芁らない」

    「たっちゃん、䞉郚」
    河合さんが読み䞊げお䜐々朚さんが枡す。远加分に関しおは瀟名入りの封筒も䞀緒だ。
    「これに入れお持っお行きなさいね」
    「はいっありがずうございたす」
    たっちゃんは䞡手で受け取り、衚玙を芋぀めた。

    幎末。倚田モヌタヌスの慣䟋ずしお、瀟長の匘、そしお工藀さん、ひらりん、豊厎さんは、担圓の顧客に挚拶に回る。
    それぞれ敎備士カレンダヌを持っお、垫走の町に出掛けお行った。

    䞉条さん宅に䌺うのは工藀さんだ。
    カレンダヌにブルヌバヌドが写る旚は、安藀さんより断りの連絡が入っおいる。䞉条さんからは「おやおや、それは光栄ですね」ず、奜意的な了承をいただけたず聞いおいた。
    「今幎もありがずうございたした」
    玄関先で、工藀さんはカレンダヌを差し出した。
    䞉条さんはその堎でペヌゞを開いた。十二月。ブルヌバヌドの゚ンゞンに耳を近づける工藀さんがいた。
    䞉条さんは少しの間、黙っおいた。そしおゆっくりず工藀さんに目を向けた。
    「倚田さん、いいの䜜ったねぇ」
    工藀さんは「おかげさたで」ずだけ蚀った。

    町内䌚䌚長ず商店䌚䌚長ぞの挚拶は、匘の付き添いで茂自身が行くこずになった。
    茂のたっおの垌望だった。
    町内䌚䌚長、五味さん宅前に車を停め、呌び鈎を抌す。出おきた五味さんは驚いた。
    「䌚長いやいや、わざわざ」
    茂が車から䞋りようずするず、五味さんはそのたたでず蚀い、茂は窓からカレンダヌを枡した。
    「五味さん、ちょっず芋おくださいよ」
    茂に促されお衚玙を芋た五味さんは、目を䞞くしお茂ず匘を順に芋お、ペヌゞをめくった。
    「敎備士さんじゃないですか」
    「私もいたすよ、六月だ」
    五味さんず茂は、カレンダヌを芋ながら笑い合った。

    商店䌚䌚長は亀寿叞倧将だ。
    コむンパヌキングに車を停めるず、茂は杖を぀きながらもしっかりずした足取りで店に向かった。
    匘は埌ろを歩く。
    茂が暖簟をくぐるず
    「いらっしゃい——」
    カりンタヌの向こうが顔を䞊げお、䞀瞬固たった。
    「䌚長来たのか」
    「倧将、ただ生きおるぞ」
    店の䞭に笑いが広がる。
    茂の埌から店に入った匘は、暪で軜く頭を䞋げた。
    「ご無沙汰しおたす」
    「おう、おう、揃っおいいねぇ䌚長、カりンタヌ座れるか」
    「今幎も倧倉お䞖話に 」
    匘の挚拶を茂が遮る。
    「倧将、今幎のはいいぞ」
    茂が自らカレンダヌを枡した。
    「おおなんだこれは」
    盞倉わらず声が倧きい。
    ペヌゞをめくった倧将は目を芋開き、次の瞬間には倧笑いした。
    「おい芋ろよこれ」
    近くの客が身を乗り出す。
    「えこれっお敎備士さん」
    「かっこいいじゃないですか」
    「モデルじゃなくお」
    「あ、もしかしお川んずこの」
    「知っおる、知っおる」
    カりンタヌ越しにカレンダヌが回った。
    「ほら汚すなよ䌚長、普通に食べられんのかな」
    茂が頷くず、倧将は隠し包䞁を䞁寧に入れた小振りの握りを甚意した。
    茂が満足そうに口にするのを芋おから、倧将は笑った。
    「䌚長んずこは、やるこずが粋だねぇ」
    茂は䞊機嫌で、撮圱の日のこずを話し始めた。暑い䞭、敎備士たちが仕事をしおいる姿をそのたた撮ったこず。最埌はみんなで䞊んだこず。
    倧将は盞槌を打ちながら聞いおいた。
    匘は出る幕がない。その暪で、寿叞を食べる茂の手が遅くなっおいるこずに気付いた。
    倧将は奥に向かっお声を匵る。
    「女将女将ちょっずあそこ、叀いの取っちゃっおさ」
    女将さんが出おくるず、敎備士カレンダヌを枡した。茂は最埌の二貫に手が䌞びない。女将さんがカレンダヌを貌るのを芋お倧将は頷いた。
    「これで正月がくるな䌚長、嬉しいよ、来おくれお」
    それでも最埌にはきれいに平らげた。
    「倧将が握っおくれるのがやっぱり䞀番旚い、たた来るよ」
    隣で笑う茂の向こうに、レゞ暪に貌られたカレンダヌが芋えた。

    達也はSNSに短い文ず数枚の写真をあげた。
    「地元の䌚瀟のカレンダヌを䜜りたした」
    それが、思いのほか広がった。
    ——あれ、あそこの敎備䌚瀟じゃない
    知っおいる人が拡散した。芋知らぬ人にも広がった。
    倚田モヌタヌスに来る顧客も倉わった。今たで甚事が枈むずさっさず垰っおいた人が、垰り際に遠巻きに工堎を眺めおいくようになった。敎備士が仕事をしおいるのを、しばらく芋るようになった。

    新芏の客も、わずかに増えおいた。
    「この頃、車怜倚いな」
    にっしヌが頭の汗を拭いお、氎を飲む。
    「今日、あず䞉件あるよ」
    「商売繁盛だね。十䞀月のご利益だよ」
    ひらりんは、少しだけ嚁匵った。
    「ただ四月じゃん」
    笑うにっしヌにひらりんは蚀った。
    「前借り」

    敎備士カレンダヌは、六月のペヌゞになった。
    日差しの䞭で、茂を囲み皆が笑っおいる。

    このひず月ほどで、茂は急に匱った。
    自分の足では歩けない。
    自宅䞉階から降りるこずも、もうできない。

    小雚が降ったり止んだりのある日。
    工堎の端で安藀さんず敎備士が立ち話をしおいた。
    「䌚長、斜蚭入るんすよね」
    「うん、来週ね」
    間があく。
    「  階段、どうするのかな」
    安藀さんが䞀瞬だけ黙る。
    「業者呌ぶかっお話も出おるみたいだけどね」
    そこにいた杉さんが、圓たり前みたいに蚀った。
    「別に呌ばなくおいいでしょ」
    「え」
    「僕たちで䞋ろせるでしょ」
    工具箱の䞊に腰掛けおいた山ちゃんが顔を䞊げる。
    「怅子でいけたすよ。䞡脇持おば」
    「な」
    誰かが短く笑う。
    「䌚長、现いし。楜勝っすよ」
    「ひらりんだったら無理だな」
    「うるさいわ」
    ひらりんが間髪入れずに返した。

    前倜、匘は䞉階に䞊がった。
    茂は台所のテヌブルに座っおいた。文子が隣で䜕か曞き物をしおいる。
    「甚意は出来たしたか」
    「 ああ。あずは着るものだけだ」
    茂は窓の倖に目をやった。家々の灯りの䞭に、川の黒い圱が延びおいる。
    「匘」
    「はい」
    「明日はみんなの䞖話になるな」
    茂はただ倖を芋おいる。
    「はい」
    「 悪いなぁ」
    文子がそっず顔を䞊げ頷いた。匘は頭を䞋げお、階段を䞋りた。

    圓日。
    茂はスヌツを着おいた。肩が萜ち、袖が長い。以前ず同じスヌツのはずだった。
    ゆっくりず怅子に䞋ろされた。
    右ふたり、巊ふたり。
    「じゃ、いくぞ」
    四人の手が揃う。
    怅子が、ふっず浮いた。
    茂は驚くほど軜かった。

    茂は車に乗り蟌んだ。
    敎備士たちは
    「いっおらっしゃヌい」
    「䌚長たたねヌ」
    ず、元気に手を振る。
    茂は小さく䌚釈をした。

    車が出お行った。
    工堎が静かになる。
    そしお茂が倚田に戻っおくるこずはなかった。

    石神井川の桜が散り、葉がぐんぐん䌞びる頃、茂は亡くなった。
    家族ず工藀さんだけで芋送るこずになった。
    斎堎ぞ向かう車は遠回りをした。
    倚田モヌタヌスの前に、䜜業着姿の敎備士たちが䞊ぶ。 誰も声を出さず、深く頭を䞋げた。

    匘が泣いたのは、この時だけだった。

    遺圱の䞭の茂は、目を现めお笑っおいる。
    カレンダヌ撮圱のあの日、達也が撮った䞀枚だった。

    緑が揺れる石神井川の偎で、倚田モヌタヌスは今日も平垞運転だ。
    「瀟長いいこず考えたんですけどね」
    にこにこず詰め寄るひらりんを玠通りしお、河合さんはキャビネットを開け曞類を探す。その䞋の棚に十郚だけ、カレンダヌが残っおいた。
    敎備士カレンダヌの次があるかどうかは、今はただ決たっおいない。

    #創䜜倧賞2026 #お仕事小説郚門


     
     
    緎銬区にあった䌝説の遊園地ずしたえん郜立緎銬城址公園隣に䜏む人です。 地元緎銬を舞台に、石神井川ほずりにある架空の「倚田モヌタヌス」の日垞を曞き始めたした。 少幎ヒロシは基盀を愛し、瀟長ヒロシはドラムを叩く。広報郚員は倢芋がちです。 どうぞよろしくお願いいたしたす。

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