
オーバードーズ 8月25日愛美<2>①
目の前の席に少し不機嫌そうに座る男をチラリと見る。
ああ、私ったら何しているんだ。
こんな無愛想な男性に慰めてもらうくらいならチャラいその辺のホスト擬きに慰めてもらった方がよかったじゃん。
少し冷静になった思考をさらに落ち着かせるためにオレンジジュースを一口飲んだ。
「そういえば、名前知らない。教えてもらってもいい?」
「…佐藤高人」
「ふーん、タカヒトくんね。」
タカヒトくんはいかにも不機嫌ですって言っているように、ボソッと呟いてアイスコーヒーを少し飲んだ。
思い切ってまずは気になっていたことを聞いてみた。
「タカヒトくんはホテルに何で私を連れていかなかったの?」
「は??」
「だって男の人って弱ってる女の子いたら慰める〜って言ってその対価にエッチ求めるじゃない?だから何でタカヒトくんはホテルに行かないんだろうって不思議で」
いつだってそうだった。
失恋して泣いていた私を友人だった男は、忘れさせると言って抱いてきた。
ある男はお酒を落ち込んでる私にたらふく飲ませて、強引に抱いてきた。
いつだって夜に会えばセックスが纏わりついてきた。
最初こそは好きな人じゃないと嫌だと泣いたり、死にたくなったけれども、何度もされてきては心が麻痺したように何も思わなくなった。
タカヒトくんは見るからに私を蔑むように眉を寄せながら話した。
「ひどい偏見だな。」
「じゃあ何で声かけたの?」
「分からないけど…野良猫見たときと同じかな。」
「の、野良猫…。」
「野良猫見た時ってそのまま帰ったら後で罪悪感が出るから、それと同じ。」
タカヒトくんは無愛想だけど野良猫にはどうやら優しいようだ。
最初話している時はなんて無愛想で失礼なヒトって思ったけど、よくよく考えれば道端で震えてる野良猫をほっとけないと手を差し伸べる優しい人なんだと思う。
「タカヒトくん。」
「ん?」
「優しいね!ありがと!」
「ああ。」
アキちゃんは照れた時私の頭をくしゃっと撫でて恥ずかしそうにするのに、タカヒトくんはただぶっきらぼうに答えてアイスコーヒーを口につける。
こんな細かいところもわざわざアキちゃんと比べる自分が憎い。
それほどまでに自分はアキちゃんがいないと生きていけないんだと身に沁みてしまう。
こんなことを思うだけ不毛なのに。
馬鹿だなあ。