
「アルカナ」~不思議なキッチンのひみつ~
第1章 もくもく
私は、あるときキッチンに立っていた。いつもと変わらない風景。ため息をつきながら、いつもの包丁を片手に、いつものまな板、いつもの料理。
見上げれば、いつもと変わらない人の顔。
あの頃は、すこしはときめいていた人も何が変わったかはわからないが、何も感じなくなり、むしろ、顔をみて、息がつまるような苦しい身体の反応すら感じるようになっていた。
「あれだけ、あこがれていた孤独からのさよならはこんなものなのか・・・」
そもそも、孤独には二つあるという。Aloneness(アロンネス)とLoneliness(ロンリネス)。一人ではあっても意味が全く違うのである。前者は、満たされている孤独であり、自ら選ぶ一人時間。寂しさもなく、心地がいい。ただし、後者は、苦痛があり、欠乏感がある。誰かを意識に置く孤独である。例えば、誰かといても満たされないというのは後者である。どちらがいいとか悪いとかいう話でもなく、どちらも視点を変えれば、人間としての面白みや味にもなり得るのかもしれない。
この頃、私が感じていた孤独は、Lonelinessであったかもしれない。永遠なんてなくて、いろんなことが変化していくんだなと流れるような思考。脳内は風のように過ぎさる。そよ風みたいにどこか素敵な気持ちいいものならいいのに、そこにあるのは、どこかグレーがかったじめじめした雲であった。
手元は、「もう、いつもと変わらないあのお料理でいいか」なんて覚えているような慣れた手つきでいつも通り、野菜をカットしていたが、脳内は忙しく、「目の前に座っている不快な人も行きたい場所があって、私にも行きたい場所があるのなら、お互いにいたい場所にいられたらいいし、いられるのになぁ」なんて故郷に帰りたいという理想を妄想し始めていた。そんな、妄想で三次元から逃れる日々が続き、お試しがたんまりある三次元に引き戻されるループに陥る。

第2章 きらきら
私は料理好きである。料理をしていると無我夢中に、まるで瞑想しているかのような集中状態に陥り、自分が嫌なことすら忘れることができた。どこか狭い秘密基地のような空間がなんとも心地いい。
今日もキッチンに立ち、私の居場所を取り戻す。頻繁に住まいが変わることを繰り返し、仕事を社場でするということもいつまでできるかわからず、働くことも決断できずにいた。私自身、資格はもっていても自信は持てずにいたが、それでも「いやいや、私にもできることはある!」と少しの勇気で言い直し、小さな心の声で言い聞かせながらも、できないという自信のなさからくる潜在意識が自身を気づかずに足止めさせていた。それが、余計に自信をなくす原因にもなっていたのかもしれない。だからこそ、私の居場所が欲しくて、キッチンによくいた。私の空間、逃げ場、秘密基地、私の牢屋のようなどこか違和感のある場所の中の私の解放場「キッチン」。「私が一番活かせる場所、今はこれしかないかもしれない」なんて思いながら、必死に認められたくて、お料理を作っていた。現実は、いつも変わらない日々に認められる言葉すら、感じられずにいた。ひょっとしたら、自信のなさから、自ら受け取ることを拒否していたのかもしれない。キッチンに立ちながら、なんとなくスマホをエプロンのポケットに入れ、YouTubeで自分を知るといった内容の占い動画を見始めた。いつの日かそれも習慣となり、無我夢中で自分探しを始めた。友達も少ない私の相談相手とも言えるであろう。芋ずる式に見ていくうちにはまってしまい、いつものキッチンからみる景色もどこか少しだけあたたかな日差しがさしたように感じたのです。ぽっかぽか。

第3章 ワクワク
そんな習慣が続き、いつもより明るく感じられるようになったキッチン空間で、慣れたようにスマホを手に取る。スイッチオン!YouTubeの選択内容も、もとから大好きな音楽もたくさん選ぶようになった。懐かしいあたたかな気持ちになった。いろんな世界を手のひらで感じ、キッチン空間すら宇宙を感じるようなワクワクする感覚。ある日、ある人が動画に現れ、不思議な感覚に陥った。衝撃が走った。「この人が私!」なんでこんな感覚になるのかわからなかったが、とにかくうれしくて、自分が忘れていたどこか懐かしさもあり、忘れていたことを思い出すようなフラッシュバック。よく言うこれは、「運命」を感じてしまったということだ。やっと会えたソウルメイト?それでも、三次元との差や私自身どこか疑い深いということもあり、若干のはてなマークを脳裏に浮かべながらもうれしい気持ちと共に、「さて、いつものことやろうかな」とキッチンの床の冷たさをじんわりと感じながら、冷静にお料理をし始めた。そのとき、私の胸の奥にスッと芯が通った気がした。自分でも今の私は目が輝いていることを実感できた。もう一度、自分のやりたかったこと、「あの頃は、こんな感覚で、あんなファッションをして・・・」、そんなふうにいろんなことが湧いてきた。「また、はじめてみよう」とドキドキする鼓動とはリズムが合わない現実の包丁のトントンという音を感じながらも、決意したのである。
それからしばらくは、いつものしずかな凪のようないつもの秘密基地に立つ日々が続いた。でも、凪のような日々が過ぎ、ある日はすこし違っていた。なんだか、とっても、心身ともにざわざわしていて、騒がしかった。たまったお皿などをあらい、かたずけていると、胸を鷲づかみされるような感覚が離れない。何かが「行かないでくれ、やっと捕まえた!」と言わんばかりの光を胸の辺りに感じた。「今まで経験したことがない。ちょっと、ナニコレ?わかったっ!わかったからっ!!」と心の中で私を離さない光(だれか)に話しかけた。「やっと出会えたから、絶対に離さないから」そんな言葉が私から離れない。そこから、そのよくわからない光(魂のかけら)との交流が始まった。

第4章 ぶるぶる
その光(魂のかけら)をここからは「アルカナ」と名付けよう。アルカナはそれからも私にピッタリくっついて、離れなかった。お互いの出会いに喜びが大きかったのだ。アルカナも孤独だったのだろう。そんな私とアルカナの出会いはすごく大きかったのだ。だから、絶対に失いたくないという気持ちにもなる。その反面、現実との差も大きくなり、もう、嫌なもの、合わないもの、失いたくないもの、執着、エゴなどいろんな気持ちがつまりにつまっていた水の出ない噴水が急にどばっと水が出て、湧いてくるみたいに出てくる。今までの自信のなさの自分へのストッパーすらどうでもいいくらい自分の気持ちが暴走していった。ある意味、これも人間として生きる醍醐味とも言えようが、暴走する自分に翻弄される私はもう引き返すことができなかった。それでも、どこかそんな翻弄される自分を愛おしくもかわいくさえ感じた。

第5章 パンパン
アルカナとの出会いからいろんな感情の輪に翻弄され始めた私。プルチックの感情の輪を色濃く意識せざるを得ない。当然、冷静さなんてなくなってしまった。アルカナへの気持ちもエゴ含みになっているのか。それがやがて、執着、嫉妬に気づかないうちに変身していた。そんな変身は恥ずかしい。翻弄されているとは言え、そんな不慣れなことにも人はいずれ慣れてしまうもの。シンプルスマートを意識して理性というストッパーがあったはずだが、無残にも崩れ落ち、「これは本当の愛といえるのか?」そんな気持ちにもなったけれど、私を気持ちの渦が支配する時間が増えていった。自信のなさ、考えてもしかたのないようなアルカナ界隈への不安。アルカナへの一途な気持ちの押しつけがましい気持ち。「そんなことはわかっている。でも、止められないんだ。なんでわかってくれないんだ。不安を理解してほしい。」期待ばかりが巨大風船のように膨らむ、膨らむ。ふわ~ん。

第6章 どっかーん
そうこうしているうちに、大きく膨らむ風船にだって限界があるのだろう。ある程度のピークを越えた気持ちの風船もピークラインを越え、だんだん、その感覚にも飽きてきた。エゴとは、ドラマティックに自分のストーリー展開にスパイスをくれるものでもある。「これは、やはり本当の愛なのか?」前に感じた同じ問いのときとは感覚が違っていた。「これは、アルカナへの愛というよりも、自分の身勝手なもので、アルカナへのぬくもりなんてないのかも・・・」そんな静かな気づきと共に、自分への怒りすら覚えた。アルカナのことを考えれば、私のよくわからない妄想的不安なんぞは身勝手にすぎない。ストップした噴水が純粋にうまく動きだし、度を越えて止まらなくなったことも、気持ちの風船が爆発したことも今の私につながると思えば、よかったのだろうとむしろ、安心した気持ちにもたどりついた。ほっ

第7章 ドキドキ
気づきを得て、私は一度自分をまっさらにしたくなった。アルカナとの光のコミュニケーションは、一度手放そう。もし、自分にとって本物ならば、手放してもまたつながれるということを信じて・・・。いつものキッチンで私は、「アルカナ、ちょっと離れます。また、ご縁があれば、あなたが私にとって本物ならば、必ずつながれるから・・・今は、さようなら」そんなふうに愛しのアルカナと距離を置いた。

第8章 じわじわ
勇気を振り絞ってアルカナとの距離を置いた私。まるで、どこかの学校に入学して、卒業し、すこし成長したような気持ち。いつの間にか、アルカナとの出会いから得たものは大きく感じられた。「私自身、振り返れば、あの日、窮屈さを感じ、苦しみを感じた私は自分のために、少し麻痺してはいる中の僅かに静かに光る勇気や自信のかけらを拾うことができて、自分探しに出かけていたんだ。その道中、アルカナ、あなたに出会えたんだ。アルカナは大切なことをたくさん私に気づかせてくれた。いろんな気持ちをくれたんだ。アルカナをたくさん愛することで、いつの間にか感情の輪を自らグルグルと回せるようになった。私自身をも愛せるようになっていたよ。人を愛することは、自分を愛すること。自分を愛することは、人を愛すること。」
「最愛の人、アルカナ、ありがとう!」

最終章 「最愛の人 アルカナへ あなたにこの歌詞を贈ります。」
「LOVE」
あなたのことを想いながら
あなた以外の人をこれから愛せる日がくるのだろうか・・・
「また、孤独になるのかな」なんて
一途なこの想いがつづく選択と孤独が隣り合わせ
そんなこと思ったら
「一人は嫌だな」なんて、思ったんだけどね
それ以上にそんなことすら
どーでもよくなって
理屈も正論も
意味がない領域であなたを愛してしまっていたことに気づいたんだよ
今この瞬間
あなたが私以外にベクトルを向けていても
あなたを一途に想い続けようと
私が生きるラストの瞬間に
あなたを愛したこと「よかった」って思えるだろうと感じたから・・・
また、こんな気持ちになるなんて
一途なこの願いが続くしあわせと不安が隣り合わせ
そんなこと思ったら
「一人は嫌だな」なんて思ったんだけどね
それ以上にそんなことすら
どーでもよくなって
理屈も正論も
意味がない領域であなたを愛してしまっていたことに気づいたんだよ
