
静かな道しるべ(3)―バックオフィスの盲点

営業や事業部門――いわゆるフロントオフィスには、
どれだけ部門同士で摩擦があっても、
最終的には「お客様に迷惑をかけられない」という、
揺るぎない基準があります。
その基準があるからこそ、
多少の意見の違いは飲み込み、
問題を前に進める力が生まれる。
外の世界が、彼らの判断を自然と整えてくれるのです。
一方で、
人事、総務、経理、情報システムといったバックオフィスには、
別の難しさがあります。
彼らにとっての「お客様」は、
社内の利用者であり、経営者であり、
つまり“同じ会社の中にいる人たち”です。
そのため、
問題は外へ向かうことなく、
社内の論理の中で絡まり続け、
ときに泥沼のような状態に陥ってしまう。
本来、バックオフィスもまた、
最終的には「お客様のために会社を整える」役割を担っている。
その点ではフロントオフィスと何も変わらないはずなのに、
どういうわけか、その視点にたどり着けない場面が多い。
その理由は、
能力の問題ではなく、
外の世界に触れていない構造そのものにあるのだと思います。
外の基準がないと、
人はどうしても“自分の正しさ”に寄りかかる。
部門の論理、社内のルール、
「前例」「手続き」「責任範囲」――
そうしたものが、いつの間にか目的そのものにすり替わっていく。
そして気づけば、
本来の使命であるはずの
「お客様のために会社を整える」という視点は、
静かに遠ざかってしまう。
バックオフィスの難しさとは、
その“視点の迷子”にあるのかもしれません。