
静かな道しるべ(1)―頑張る、ではなく、やりぬく

とあるシステムの構築プロジェクトに携わっていた頃のことです。
誰も正解を持っていない。
前例も、教科書もない。
ただ霧の中を、一歩ずつ進むような日々でした。
多くの課題が同時に押し寄せ、先が見えない不安を抱えながら、
それでも前に進まなければならない局面が続いていました。
そんなある日、私は上司に相談しながら、思わずこう口にしました。
「頑張ります」
その言葉を聞いた上司は、少し間を置いて、静かに言いました。
「頑張る、ではなく、やりぬく」
その言葉は、励ましというより、姿勢を正すような響きでした。
頑張る――そう言うとき、どこか心の奥に「到達できなくても仕方がない」という
わずかな逃げ道を残している自分がいる。
気持ちの高ぶりに頼り、勢いで乗り切ろうとする面もある。
しかし、霧の中のプロジェクトでは、その勢いは長く続かない。
必要なのは、気分や勢いではなく、
何があっても目標に到達させるという、静かで強い意志だと気づきました。
今日できることを、淡々と積み重ねる。
状況がどうであれ、手を打ち続ける。
正解がなくても、前に進む。
やりぬくとは、そういう姿勢なのだと。
あの一言は、今も仕事の節目で思い出す、静かな道しるべのような教えです。