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オコツガエシ

    あらすじ

    『オコツガエシ』
                 璃亜里亭 無音

    亡くなった人にもう一度会うため、遺骨と動物の骨を用いて行う禁忌の儀式「オコツガエシ」がSNSを通じて拡散される。簡易な手順と「ただいま」という帰還の言葉だけが共有され、各地で実行者が現れるが、帰ってくる存在は必ずしも本人ではなく、正体不明の“何か”であることが判明する。やがて儀式は連鎖的に広がり、政府や社会も制御不能となり、「死者は本当に戻るのか」という問いとともに、現実そのものが侵食されていく。





    〇とある地方紙の記事


     二月二十日午前二時半ごろ、G県のある住宅で、この家に住む会社員の男性(58歳)が倒れているのを、帰宅した住民の通報で駆けつけた警察官が発見し、その後死亡が確認された。
    警察によると、現場には同居女性(24歳)も倒れており、同じくその場で死亡が確認された。女性は男性の娘とみられている。本誌独取材によると、この女性は数週間前に葬儀が行われているという。
    現場周辺は焼け焦げたような臭いが立ちこもっており、周囲の状況などから、女性が男性を襲った可能性があるとみられている。警察は事件の経緯や動機について詳しく調査を開始している。また、近隣住民の話によると、被害宅からは時折動物の悲鳴のような声が聞こえたり、夜に人の名前とみられるような叫び声を上げていたことが複数回あったという。

    〇とある記者と刑事の邂逅


     新藤隆文。職業、ライター。そういえば聞こえはいいが、B級低俗アングラ雑誌の記者だ。人前で堂々と言えるような職業ではないが、どうにか食うに困ることはない程度に稼げてはいる。今日も最近アングラ界隈で話題の人面犬について取材をしたが、特に進展もなく、気分転換のつもりで入った喫茶店で、見覚えのある背中を見つけた。
    なじみの刑事の佐伯だった。
    声をかけると、彼は一瞬だけこちらを見て、すぐに目を逸らした。
    「……なんだ、お前か」
    そう言ったきり、コーヒーにはほとんど手をつけていない。
    顔色が悪い。
    寝ていない人間の顔だった。
    「相変わらず覇気のないツラですねえ。何かありましたか?」
    軽口のつもりだったが、佐伯は笑わなかった。
    しばらく沈黙が続いたあと、彼は小さく息を吐いた。
    「……オフレコだぞ」
    いつもの言い回しだった。
    だが、その声音はどこか乾いていた。
    「この前の事件、見ただろ」
    どの事件かと聞き返す前に、彼は続けた。
    「あれな、報道されてる内容、大部分が端折られてる」
    そこで一度、言葉を切る。
    何かを言いかけて、やめたように見えた。
    「……いや、違うな」
    佐伯はそう言い直して、視線をテーブルに落とした。
    「違うっていうか……」
    指先が、わずかに震えていた。
    「説明がつかないことが多いんだよ」
    その言い方が、妙に引っかかった。
    「何があったんです?」
    そう聞くと、佐伯は少しだけ顔を上げ、それから低い声で言った。
    「……死んでるはずのやつがな」
    そこで、また言葉が止まる。
    「帰ってきたんだよ」
     思いもよらない佐伯の言葉に一瞬吹き出してしまった。
    「どうしたんですか佐伯さん、ウチのクソ雑誌読みすぎて感化されちゃったんですか?」
    軽口を叩いたが、佐伯は笑わなかった。
    「G県の事件だ」
    「ああ、例の親子のやつですよね」
    「……あれな」
    佐伯は、少しだけ言葉を選ぶようにしてから続けた。
    「娘がやったって話になってる」
    「そうですね」
    一度、黙る。
    「……あいつ、食ってたんだよ」
    「は?」
    「現場でな」
    それ以上は言わない。
    「食ってたって……何をです?」
    そう聞くと、佐伯は視線を逸らした。
    しばらくしてから、ぼそりと呟く。
    「……父親だよ」
    「食ってたって……どういう意味ですか?」
    「口の中に残ってた」
    「いや……そんな」
    「まあそうだろうな、いくらお前でもそういう反応になるわな」
    「その娘っていうのは」
    そう言いかけたところで、佐伯が遮った。
    「……やめとけ。書くネタになると思ってる顔だな」
    「そりゃなりますよ。俺の飯のタネですから」
    「やめといた方がいい」
    そう言ったあと、少しだけ迷ってから続けた。
    「その娘な」
    「……葬式、終わってるんだよ」
    「は?」
    「火葬も済んでる」
    「いやいや、ちょっとまってください——」
    言いかけて、やめた。うまく言葉が出てこない。頭の中で何かが噛み合わない。
    死んでいる。火葬されている。
    なのに、帰ってきた?
    「……いや」
    一旦言葉を区切る。
    「それ、どういうことです?戻ってきたってことですか?」
     ようやく絞り出した言葉だった。
     自分でも、何を聞いているのか分かっていない。
     火葬されている。
     それはつまり、遺体が残っていないということだ。
     なのに、現場にいた。
     それも——人を食っていた。
     頭の中で整理しようとするほど、前提が崩れていく。
     佐伯はしばらく黙っていたが、やがて観念したように口を開いた。
    「……俺もな、最初は別人だと思った」
    「別人?」
    「顔、焼けてたんだよ。全部じゃない、片側だけだ火葬されてるんだもんな、そりゃ焼け跡くらいあるか」
     そこで一度、言葉を切る。
    「でもな」
     佐伯は、ゆっくり首を振った。
    「分かるんだよ」
    「……何がです?」
    「あの家の娘だって」
     即答だった。
    「目がな、残ってるんだよ。片方だけ」
     ぞわり、と背筋が冷える。
    「焼けてない方の目が、こっち見てる。写真と同じ顔でな」
     言葉を選んでいるようで、選べていない。
    「……それに」
    「歯型が一致した」
    「……は?」
    「歯科記録だよ。親族照会も済んでる。間違いなく、あの娘本人だ」
     喉の奥がひくつく。
     笑い飛ばしたいのに、笑えない。
    「……じゃあ、なんですか、火葬された人間が蘇って、そのゾンビが人殺したって言うんですか」
    「知らねえよ」
     即答だった。
    「そいつな」
     佐伯は、今度ははっきりとこちらを見た。
    「現場でな、そいつ」
     少しだけ、言い淀む。
     それでも、言った。
    「“ただいま”って言ってたらしい」
    「ただいまって……」
    「笑えねえよな、マジで」


    〇某アングラ雑誌掲載記事(ウェブ版)



    【衝撃】火葬済みの娘が帰宅!? 父親を“捕食”した怪異事件の全貌に迫る
     G県で発生した猟奇殺人事件に、新たな事実が浮上した。
     既に大手メディアでも報じられている通り、被害者は五十八歳の男性。犯人と見られているのは、同居していた二十四歳の娘である。       室内の状況から、娘が父親を襲った可能性が高いとされているが、本誌はこの事件における決定的な矛盾を掴んだ。
     関係者の証言によれば、犯行現場にいた娘は、すでに死亡していた人物であるというのだ。
     数週間前に死亡し、葬儀および火葬まで完了している。
     つまり、この事件は死者による殺人である可能性が浮上しているのだ。
     
    ■現場で何が起きていたのか
     本誌が入手した内部情報によると、現場の状況は常軌を逸していた。
     被害者男性の胸部は激しく損壊し、心臓は失われていた。そしてその傍らには、口腔内に肉片を残した状態で倒れている娘の姿があったという。
     言うまでもなく、これは通常の殺人事件では説明がつかない。
     さらに不可解なのは、その娘の状態である。
     遺体は一部に火葬の痕跡とみられる焼損が確認されていたが、顔の損傷は限定的であり、生前の本人と一致する特徴を保持していた。
     また、歯科記録との照合も一致。
     関係者は「別人の可能性は考えられない」と断言している。
     
    ■“ただいま”と呟いた死体
     現場に最初に到着した警察関係者の証言として、極めて不可解な情報もある。
     それによると、娘は発見時、まだ完全には絶命しておらず、
     「ただいま」
     と発言していたというのだ。
     帰宅の挨拶。
     それは、この家の住人として、ごく当たり前の言葉のはずだった。
     ―もし、それを発したのが生きている人間であれば。
     
    ■蘇りの儀式「オコツガエシ」との関連は?
     ここで本誌は、古くから一部地域に伝わる禁忌の風習に注目した。
     その名も―「オコツガエシ」。
     これは、遺骨の一部を用いて死者を呼び戻すという、いわば蘇生儀式の一種であるとされる。
     詳細な手順は不明だが、共通して語られるのは、
     ・遺骨の一部を保管する
     ・呼びかけを行う
     ・帰還した存在は「ただいま」と発する
     という点だ。
     今回の事件と、あまりにも符合しているとは言えないだろうか。
     
    ■あなたの家にも“帰ってくる”かもしれない
     現代においても、遺骨の一部を手元に残すという風習は珍しくない。
     そして、それがもし呼び水となるとしたら―。
     亡くなったはずの誰かが、ある日突然「ただいま」と言って帰ってくる。
     そして、その何かが、本当にあなたの知っている存在である保証はどこにもない。
     
     この事件は、単なる猟奇殺人ではない。
     「死者は戻ってくるのか?」
     その問いに対する、最悪の答えなのかもしれない。

    〇匿名掲示板ログ(抜粋)


    スレッドタイトル:
    【G県】火葬済みの娘が帰宅して父親食ったってマジ?【オコツガエシ】


    1 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:14:22
    例の事件、アングラ記事出てるな
    死んだ娘が帰ってきたってやつ
    2 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:15:03
    はいはい創作乙
    3 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:15:47
    でも地方紙の元記事はガチなんだろ?
    親子で死んでるやつ
    4 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:16:10
    3
    そこまでは事実
    あとは盛ってるだけ
    5 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:17:02
    いや「火葬済み」ってどういうことだよ
    そこ盛る必要ある?
    6 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:18:11
    オコツガエシって初めて聞いたんだけど何それ
    7 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:19:40
    6
    骨返しだろ?
    地方の風習であるらしいぞ
    8 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:20:55
    7
    それ適当に言ってない?
    9 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:22:13
    いや普通に怖いんだが
    「ただいま」って何
    10 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:23:01
    その記事読んだけど完全にゾンビで草
    11 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:24:18
    ゾンビならまだ説明つくだろ
    火葬済みって時点で詰んでる
    12 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:25:33
    歯型一致って書いてあったのが一番嫌なんだが
    13 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:26:10
    12
    そこリアルにするのやめろって感じだよな
    14 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:27:44
    でもさ
    遺骨って持ち帰るじゃん普通に
    15 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:28:12
    14
    まあそうだけど
    16 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:28:55
    いやマジでやめろ
    17 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:30:01
    呼ぶと帰ってくるって書いてあったけど
    誰が呼んだんだよ
    18 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:31:22
    17
    父親じゃね?
    19 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:32:05
    帰ってきて食われるの草
    20 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:33:40
    笑えねえよ
    21 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:35:12
    つーかさ
    「ただいま」って本当に言ってたん?
    22 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:35:55
    21
    流石に火葬されたやつがただいまは嘘松
    23 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:36:30
    いやあの雑誌だぞ。本気にするなよ
    24 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:37:02
    でも妙に正しいこと言ってる時もあるじゃんあの雑誌
    25 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:38:11
    24
    「ただいま」ってことは自発的に帰ってきたんか?
    26 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:39:27
    いや、オコツガエシしたから来たんやろ
    27 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:40:03
    26
    自分で呼んだ娘の化け物に食い殺される最期かあ
    28 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:41:18
    やめろ
    29 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:42:50
    なあこれさ、本当に本人なのか?
    30 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:44:02
    歯型一致してるって書いてあったろ
    31 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:45:11
    体が同じでも中身が同じとは限らんだろ
    32 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:46:33
    何それ怖い
    33 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:48:20
    オコツガエシってさ
    成功したらどうなるんだ?
    34 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:49:02
    33
    帰ってくる
    35 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:49:40
    だからそれは分かってる
    36 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:50:18
    「何が」帰ってくるんだよ
    37 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:52:01
    ……やめろって
    38 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:53:44
    いやでもさ
    仮に本当にあるとしてもどうやるんだよそれ
    39 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:54:21
    38
    呼ぶって書いてあったろ
    40 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:55:02
    呼ぶだけで帰ってきたら苦労しねえよ
    41 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:56:37
    40
    いや、呼ぶだけじゃない
    42 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:57:10
    41
    何急に
    43 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:57:58
    41
    知ってるやつ?
    44 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 12:59:12
    昔、似た話聞いたことあるだけだけど
    45 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:00:03
    44
    はよ
    46 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:01:26
    いや、やめといた方がいいと思うけどな
    47 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:01:58
    46
    なんでだよ
    48 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:02:44
    46
    そういうのいいから
    49 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:04:11
    断片的にしか知らんぞ
    50 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:05:02
    49
    それでいいから書け
    51 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:06:37
    まず骨がいる
    それはまあ分かるよな
    52 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:07:05
    51
    遺骨?
    53 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:08:12
    そう
    死んだやつの骨
    54 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:09:01
    それだけ?
    55 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:10:33
    いや、それだけじゃ足りない
    “繋ぐもの”がいる
    56 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:11:04
    55
    何それ
    57 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:12:28
    動物の骨
    何でもいいって話だった
    58 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:13:02
    は?
    59 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:13:45
    57
    急にそれっぽくなってきたな
    60 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:14:20
    57
    犬とか猫でもいいの?
    61 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:15:33
    種類は関係ないらしい
    混ぜるのが目的だから
    62 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:16:12
    混ぜるって何をだよ
    63 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:17:40
    骨を砕いて一緒に混ぜるんだ
    64 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:18:01
    やめろ
    65 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:18:42
    63
    おい
    66 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:19:55
    粉にするんだよ
    区別つかなくなるまで
    67 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:20:31
    無理無理無理
    68 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:21:08
    66
    それで?
    69 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:22:44
    焚く
    70 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:23:02
    は?
    71 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:23:51
    火にくべる
    煙にする
    72 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:24:20
    2度も火葬するのかよ
    73 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:25:33
    違う
    戻すためにやる
    74 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:26:11
    何を戻すんだよ
    75 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:27:48
    名前を呼ぶ
    ずっと
    76 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:28:12
    訳分からん
    77 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:28:59
    何回?
    78 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:30:21
    回数は決まってない
    止めるまで
    79 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:31:05
    78
    止めるって何
    80 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:32:40
    “返事があるまで”
    81 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:33:02
    ……
    82 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:33:40
    80
    返事って
    83 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:34:55
    「ただいま」
    84 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:35:21
    やめろって言ってんだろ
    85 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:36:02
    83
    それ記事と同じじゃねえか
    86 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:37:18
    だからやめとけって言ったんだよ
    87 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:38:04
    お前どこでそれ聞いた?
    88 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:39:12
    昔の話だよ
    89 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:40:01
    88
    誰から
    90 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:41:22
    やったやつから
    91 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:41:45
    は?
    92 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:42:10
    90
    おい
    93 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:42:55
    そいつどうなったの
    94 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:44:03
    帰ってきたって言ってた
    95 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:44:29
    誰が
    96 :名無しさん@おーぷん:2026/03/13(金) 13:45:10
    ……知らない方がいい

    〇佐伯拓斗


     妻の遺影に手を合わせる。もう一年になる。乳がんだった。見つかった時には手遅れ、よくある話だが、まさか自分の身に起こるとは思っていなかった。自分たち夫婦には子供も居ない、文字通り、俺は独り身となったわけだ。
     遺影の傍らには手元供養として残してある遺骨がある。骨壺の蓋は空いていた。中身は少し減っている。
    「失敗か、そりゃそうか」
     
    ぽつりと呟く。自分で
    新藤の書いた記事への信頼なんて全くない。しかし、それでもこのオコツガエシに関しては試してみたくなった。だが、適当に買ったフライドチキンの骨なんかで上手くいくいはずがない。もっとちゃんとしたもの。もっと―
    「あいつ、骨付き肉嫌いだったんだよな」

     そんなことを想っていると、庭の方でガサリと音がした。見ると子猫が一匹蹲ってこちらを伺っている。親の姿はない。
     庭に出て手を差し出すと、少し迷ってから近寄ってきた。頬を撫でてやる。暖かい。妻も猫が好きだったな、と思い出した。細い喉が上下しているのが見えた。

    生きている。

     そんなことをするな。と、頭の中で声がした気がした。しかしそれよりも先に「これなら」という考えが浮かんでいた。気が付いた時、自分でも驚くほどの力を手に込めていた。
    「ごめんな」
    何か固いものが折れる音が複数回聞こえる。掌の中から力が抜けるのを感じた。子猫はほとんど抵抗しなかった。

     これでいい。これならきっと―

    〇とある記者と刑事の邂逅2


    新藤は今日も喫茶店を訪れていた。ネタの提供元である佐伯に会うためだ。とは言っても別に毎回会う約束を取り付けているわけではない。佐伯がよく使うこの喫茶店に、佐伯が訪れそうな時間帯を見計らって新藤が向かうといった適当な具合だった。
     新藤の読みは当たり、佐伯は喫茶店でコーヒーを啜っていた。
    「やあどうも、あのG県の件、何か面白い続報とかはないです?」
     いつものような軽い調子で佐伯に話しかけた新藤は佐伯の顔を見てぎょっとした。もともと人相のいい男ではなく、不健康な印象も受ける顔つきではあったが、今の彼はある種異様だった。恐ろしく濃い目の周りの隈、血走った目からは生気と死の香りを同時に感じ取ることが出来、なによりそんな状態の佐伯は気味の悪い薄ら笑いを浮かべていた。
    「おお、お前か」
    「さ、佐伯さん?どうかされたんですか?顔やばいですよ」
    「やばい……?はは、そうだな、やばいよ、確かに」
    「病気ですか?早めに病院に言った方が」
    「帰ってきたんだよ」
    「帰ってきた?」
    「本当に帰ってきたんだよ。確かにやばいよな、はは」
    「何言ってるんです?帰ってきた?何がですか?」
    「何が……?何が帰ってきたんだろうな、でもなんでもいいんだよ。とにかく、帰ってきてくれたんだ」
    「……なんかちょっと今日はやめときますわ、じゃあ、またネタ提供待ってます」
     佐伯の不気味さに圧倒された新藤は足早に喫茶店を後にした。
    「はは……ははは」
     静寂な喫茶店には、佐伯の乾いた笑い声だけが響いていた。



    〇とあるニュース


    「昨夜、東京都のアパートで男性が死亡しているのが発見されました。発見されたのは警警視庁捜査一課所属の佐伯拓斗さん(45歳)とみられています。また室内には40代女性と思われる遺体もあり、争った形跡もあることから、警察では殺人事件として捜査を進めています現場には凶器とみられるものは存在せず、また、佐伯さんは心臓を抉り取られていたとのことです。現場には焼け焦げた骨粉のようなものも残されており―」


    〇新藤隆文


     朝のニュースを見て驚愕した。佐伯さんが死亡した。しかも殺されたというのだ。少なからず親交のあった人だ、ショックは想像以上に大きい。そして、不謹慎かもしれないが職業病とでもいうべきか、ニュースの一文から目が離せなかった。「現場には女性の遺体、そして心臓が抉られている」という状況。これはG県の事件と同じではないか。正直記事にした段階での取材はおざなりだった。適当に情報を収集し、あとは自分の想像を多分に含ませながら書いた三文記事だ。しかし二度同じことが起きるとなるとこれは偶然では済まされない。
     そもそも佐伯と知り合ったのは病院の売店だった。自分は妻を白血病で早くに亡くしている。佐伯もそうだった。乳がんだそうだ。その妻の見舞いの際に売店で丁度最後の一つの品を互いにに譲り合ったのが最初だ。その後、仕事を進めていく中で再び出会うことがあり、記者と刑事であることがわかった。お互いに妻を速くに亡くしているという境遇から自然と親交を深めるようになり。佐伯は「オフレコだぞ」といいながら事件の内情等を新藤にリークしてくれていたのだった。
     報道された日時は、丁度喫茶店で佐伯とあった日だ。その日の夜に彼は殺されたのだ。思い返してみればあの時の佐伯の様子はおかしかった。病的な表情にうわごとのように「帰ってきた」と繰り返すばかり。もしや佐伯はオコツガエシを行ったのではないか。そして、呼び出したモノに襲われたので
    はないか。新藤はオコツガエシについて調査をすることにした。

    〇とある民族学者の論文1


    「オコツガエシと呼ばれる儀式は北関東を中心に見受けられます。諸説ありますが、オコツガエシとは漢字で書くと御骨返し、骨を返すと書きます。内容としては、故人の遺骨、一部で構いません。それに動物の骨、これも一部で構いませんが、それぞれ用いる量が多いほど効力も強いと言われています。それら二種類の骨を砕き、混ぜ合わせ、火に焼べ、返したい人物、つまり甦らせたい人物の名を繰り返し呼ぶのです。これを骨が燃え尽きるまで行う。儀式としては非常にシンプルで単純なものですね。しかしここで一つの疑問があるかと思います。なぜ動物の骨が必要なのか。これは人間の骨だけではこのような単純な儀式では呼び戻すのが不可能だからということです。逆に動物霊は比較的簡単な儀式でも呼び出すことが出来る。こっくりさんなんかが有名ですね。あれも動物の低級霊を降霊させる儀式ですが、あれと同じように、動物霊を媒介として、人間を呼び戻そうというのがこの儀式なのです。まあこれも、所謂俗説に過ぎないものではありますが。しかし、上手くいく確立は芳しくありません。要は、動物霊の方に引っ張っられてしまい、人間の霊体が非常に不完全な状態となるのですね。いわば、ガワだけ呼び戻せると言ったような状態となるわけです。人間の骨を多くすればいいのかという問題でもなく、そもそもこれは、低級な動物霊を呼び出すことを利用しているのです。人間の骨の割合を多くしたところで、そもそもの動物霊の召喚そのものが難しくなってしまうだけでしょうね」

    〇某アングラ雑誌掲載記事(第二弾・ウェブ版)


    【続報】“帰ってきた妻”に殺された刑事――G県事件との共通点と禁忌儀式「オコツガエシ」の真相


     以前本誌が報じた、G県における“火葬済みの娘が父親を捕食した事件”。読者諸氏の間でも賛否両論を巻き起こしたあの怪異事件に、極めて酷似した事例が新たに発生した。
     舞台は東京都内。
     被害者は警視庁捜査一課に所属する現職刑事―佐伯拓斗氏(45歳)。
     現場の状況は、既視感を覚える異様さだった。


    ■心臓が「ない」遺体
     警察関係者からの内部情報によれば、佐伯氏の遺体は自宅アパートで発見された。胸部は大きく損壊し、心臓は失われていたという。
     さらに不可解なのは、現場にもう一体の遺体が存在していた点である。
     それは女性だった。
     しかし―
     その身元は、現在も「確認中」とされているとされているが、実際のところ既に照合済みだという。
     年齢は四十代と推定。だが、佐伯氏の周辺人物を洗っても、該当する女性は浮上していない。
     奇妙なのはここからだ。
     佐伯氏の知人は語る。
    「あいつ、ずっと奥さんの話してたんですよ。亡くなってからも……」
     つまり、現場にいた女性は「すでにこの世にいないはずの人物」、つまり佐伯氏の妻である可能性があるのだ。


    ■一致する“食痕”
     本誌が入手した情報では、女性遺体の口腔内からは肉片が検出されている。
     そしてその歯型は佐伯氏の妻の歯科記録と一致していたという。
     この一致は、G県事件と完全に同一の特徴である。
     ・被害者の心臓部が損壊
     ・加害側の口腔内に肉片
     ・歯型一致
     偶然にしては、あまりにも出来すぎている。


    ■刑事が追っていた“死者の帰還”
     ここで注目すべきは、佐伯氏がG県事件の関係者であった点だ。
     彼は当該事件の初動捜査に関わっており、現場の異様さを直接目撃している。
     関係者はこう証言する。
    「あの人、言ってましたよ。“帰ってきた”って」
     さらに別の証言では、事件前の佐伯氏は著しく様子を変えていたという。
     睡眠不足、錯乱、そして――
    「何度も同じ言葉を繰り返していた」
     その言葉は、
    「帰ってきた」
     だった。


    ■儀式「オコツガエシ」との符合
     本誌が以前報じた禁忌の風習「オコツガエシ」。
     遺骨を用いて死者を呼び戻すとされるこの儀式と、今回の事件には無視できない共通点が存在する。
     改めて整理しよう。
     ・遺骨の一部を手元に残す
     ・呼びかけ(名前)を行う
     ・“返事”があるまで続ける
     ・帰還した存在は「ただいま」と発する
     そして―
     “帰ってきたものは、本当に本人とは限らない”
     という点だ。
     G県事件のネット掲示板ログにも、同様の指摘が見られた。
    「体が同じでも中身が同じとは限らんだろ」
     この言葉は、もはや単なる憶測とは言い切れない。
     ちなみに被害者宅からは配偶者の遺骨の一部発見されている。


    ■“成功してしまった”可能性
     もし仮に、佐伯氏がオコツガエシを行っていたとしたら。
     そしてそれが“成功”していたとしたら。
     問題は一つだけだ。
     何が帰ってきたのか?
     顔は一致する。歯形も一致する。だが、それが「同一人物」である保証はどこにもない。


    ■あなたは呼びますか?
     現代において、遺骨の一部を手元に残す行為は決して珍しいものではない。
     手元供養。形見。記憶。
     それらはすべて、“繋がり”だ。
     そしてオコツガエシとは――
     その繋がりを、意図的に“引き戻す”行為である。
     名前を呼ぶだけでいい。
     返事があるまで、続けるだけでいい。
     それはあまりにも簡単だ。
     だからこそ、危険なのかもしれない。


     亡くなった誰かが、ある日突然帰ってくる。
     玄関の向こうから、聞き慣れた声で。
     「ただいま」と。
     それが本当に、あなたの知っている存在だと、言い切れますか?

    〇とある日の夜


     風呂場で子猫の解体を行った。ただ骨を抜き取ればいいだけだと思っていたが思っていた以上にてこずってしまった。包丁では無理で、のこぎりを使って解体した。刃を入れたごりっとした感触が手から離れない。四肢をバラし、内臓を抜き取った後、肉を骨から引きはがした。魚をさばくのとは違う、大の大人が全力を入れて引きはがしてようやくといった具合だった。残骸は新聞紙に何重にも包み、冷凍庫に入れた。肉片を綺麗に落とした骨を用意する。そして、骨壺の中から妻の遺骨を一かけら取り出す。その二つをくだき混ぜ合わせる。完全ではないが粉末状になったそれをフライパンに入れ、コンロを点火する。そして唱える妻の名前を。
    「美幸……美幸……」
     部屋中に骨の焦げる嫌な臭いが立ち込めるが、佐伯は全く意に介さずひたすら今は亡き妻の名前を呼び続けた。その時、インターホンがなった。
    「え」
     とっさのことに反応が出来なかった。インターホンは鳴り続ける。

    ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

    「ま、まさかな」
     震える足取りで玄関へ向かいドアを開ける。
    「え」
    目の前に居たのは、白いぼろきれのようなワンピースを着た女性だった。ところどころ火傷のような跡がある。そして、その女性はニタリと笑みを浮かべてこう言った。

    「ただいま」

     佐伯は思わずその女性を抱きしめた。
     
    「美幸…美幸なんだな……!!」

    女性もゆっくりと抱き返してきた。しかしその瞳は彼の首筋をじっと見つめていた。

    〇とある民族学者の論文2


    「さて、動物の骨、動物の霊を媒介に人間の霊を呼び戻すと言いましたが、そう簡単なことではありません。基本的には中身はほぼ動物霊、ガワだけ生前の人間だけということがよくあったそうです。まあ実際民間伝承に伝わっているだけの話ですので、実際のところは、肉体が呼びもどされることなんてことは起きるわけがなく、シャーマンのような存在にその霊を降ろすというような形をとっていたのだと思われます。そしてこの儀式、ことの発端は決して「亡くしてしまった人にもう一度会いたい」等というものではないのです。先ほど申し上げた通り、呼び出された例は非常に不完全な状態の低級な動物霊です。生への渇望に満ちている。つまり、生者を襲うわけです。お気づきですか?この儀式はもともと生物兵器を意味出すための儀式だったと言われているのです。北関東の有力者が戦の際に兵力補充のために始めたというのが最初と言われています。つまり、最初から亡くなった人間になど会えないということです。しかも、呼び出したものは制御不能。記録によれば、呼び出されたものは味方すら襲ったといいます、真偽の程は確かではありませんが。しかしいつしかその伝承が形を変え、今に伝わるようなオコツガエシの技法として残っているのです」

    〇新藤隆文2


     記事を書き終わった。佐伯の死を飯のタネにしたことについては後ろめたさもある。しかし、記者魂とでもいうべきものが新藤を突き動かした。これは記事にしなければいけない、自分が書かなければならないと。
     アクセス数も上々で、ネット上でも盛んに議論されている。オコツガエシとはなんなのか、本当に効果はあるのか等。
     当の新藤はオコツガエシに対しては恐怖を抱いていた。一番目の事件の時はスプラッタ的な殺人事件程度にしか思っていなかったが、あんな事件が短期間で、酷似した状況下で二度も起こるはずがない。

     オコツガエシは、確実に何かしらの効果を及ぼす術だ。

     これが新藤なりの答えだった。そしてその及ぼされる効果は芳しいものではない。芳しくないどころか命の危険があるものだ。

     それなのに

     それなのに

     新藤の目の前には車に轢かれたであろう犬の死骸が転がっていた。
     新藤はスマホを取り出、「閉眼供養」「改葬」について調べ始めた。
     犬の死骸の周りにはハエがうるさく飛び回っていたが、むき出しになった骨は綺麗な色をしていた。
     無意識に新藤の手は、その骨に手を伸ばしていた。

    〇SNSタイムライン1


    投稿者:@miyu_life
    ねえこれ知ってる?「オコツガエシ」ってやつ
    亡くなった人に会えるらしいんだけど…

    #都市伝説 #オカルト
    投稿者:@ghost_lover
    やってみたいけど普通に怖いんだがw

    投稿者:@taku_0921
    母親の骨、手元にあるから
    今日やってみる
    ダメ元だけど
    #オコツガエシ

    数時間後

    投稿者:@taku_0921
    煙やばい
    臭いもやばい
    でも名前呼んでるとなんか変な感じする

    #オコツガエシ実況

    投稿者:@taku_0921
    今インターホン鳴った
    こんな時間に誰だよ

    #オコツガエシ
    投稿者:@taku_0921
    帰ってきた

    #オコツガエシ成功
    投稿者:@yui_memorial
    嘘だと思ってたけど本当に来た
    ちゃんと話もできた。待ってありえない泣きそう

    #オコツガエシ

     この投稿はX(旧Twitter)にて膨大なインプレッションを獲得している。

    〇SNSタイムライン2


    投稿者:@kazuki_real
    オコツガエシ成功したって言った者だけど、なんか母の飯の食べ方おかしいけどまあいいか。そんなことどういでもいいよな。また一緒に暮らせるんだし

    投稿者:@yui_memorial
    昨日から寝てないみたい。ずっと起きてる、生まれ変わっちゃったら寝なくても大丈夫になったのかな?

    投稿者:@taku_0921
    なんかおかしい
    これ違う
                       

    投稿者:@news_alert
    【速報】都内で異常死事件
    被害者の胸部が損壊し、心臓が確認されず

    #ニュース

    投稿者:@net_watch
    この人昨日までオコツガエシ実況してたやつじゃね?

    @ura_zine_official
    【新着記事】
    火葬済みの娘が帰宅し父親を捕食――
    禁忌儀式「オコツガエシ」との関連とは?
    #オコツガエシ #怪異事件
    (リンク)

    @skeptic_neo
    またこの雑誌かよwww
    #オコツガエシ

    @mourning_diary
    ……これ、ちょっと無理
    読んでて気分悪くなった
    #オコツガエシ

    @urban_legend_love
    普通に民俗ネタとして面白い
    誰か検証しない?
    #オコツガエシ

    @kuyashii_onnna
    「ただいま」って言うの、無理
    泣いた
    #オコツガエシ

    @bones_keeper
    手元供養してる身としては笑えない
    普通に怖いんだけど
    #オコツガエシ

    @trial_streamer
    検証配信やるわw
    材料揃えばいけるっしょ
    #オコツガエシ実況

    〇ライブ配信老ぐ(切り抜き)


    【タイトル】
    「【検証】オコツガエシって本当に帰ってくるの?w」

    「はいどうもー、今日はね、今話題の“オコツガエシ”やっていきます」

    「ちゃんと許可取ってるからね、じいちゃんの遺骨ちょっとだけ」
    「あと鶏の骨。これでいいらしい」
    「いやー、怒られたらどうしよw」

    ※コメント
    ・やめとけ
    ・ライン超えすぎ
    ・普通に怖い
    ・成功したら神

    「じゃ、いきます。まず骨を砕いてそれを火にかけてっと」
    ※コメント
    ・てか配信で身内の遺骨砕くとか倫理観終わってて草
    ・まじでやるのかよ……

    「……伸介じいちゃん、伸介じいちゃん」

    「……伸介じいちゃん、帰ってきて」

    ※コメント
    ・おいやめろ
    ・声小さくね?
    ・もっとはっきり呼べ

    「伸介じいちゃん」
     その時、インターホンが鳴った。
    「え?」
    配信はここで中断されている。

    〇SNSタイムライン3


    @news_alert_jp
    【速報】
    都内で配信者の遺体発見
    室内に不審な焼却痕
    #オコツガエシ

    @trial_streamer_fan
    え、あの配信の人じゃね?

    @clip_archive
    例の配信の最後の部分、音入ってたんだけど

    @clip_archive
    「ただいま」って言ってる声、入ってる

    @skeptic_neo
    ……は?

    @mourning_diary
    無理無理無理無理

    @bones_keeper
    これ、ダメなやつだ

    〇SNSタイムライン4

    @trend_watch
    現在「#オコツガエシ実況」がトレンド入り

    @challenge_now
    逆に成功したやついないの?
    #オコツガエシ実況

    @lost_family
    弟を呼びたい
    #オコツガエシ

    @quiet_user
    やめた方がいい
    これは違う

    @anonymous_47
    成功した

    @anonymous_47
    帰ってきた

    〇匿名掲示板ログ

    112 :名無しさん@おーぷん:2026/03/26(金) 21:14:02
    SNSで広まりすぎだろこれ

    113 :名無しさん@おーぷん:2026/03/26(金) 21:15:11
    配信者の件ガチっぽいな

    114 :名無しさん@おーぷん:2026/03/26(金) 21:16:03
    成功報告上がってるのが一番やばい

    115 :名無しさん@おーぷん:2026/03/26(金) 21:17:28
    いやあれ成功じゃねえだろ

    116 :名無しさん@おーぷん:2026/03/26(金) 21:18:44
    じゃあ何なんだよ

    117 :名無しさん@おーぷん:2026/03/26(金) 21:19:55
    「返ってきたもの」だろ

    〇ニュース速報


    「速報です。N県にて男性の不審死体が発見されました。現場の状況などから、昨今全国各地で頻発している不審死事件との関連性を視野に、警察は捜査を開始しています。なお、遺体の状況としては全国の事例と同様、心臓が抉られているということです。現在、全国で発生している一連の異常死事件について、警察庁は模倣行為の可能性を指摘しつつも、詳細な再現性については否定していません。
    また、複数の自治体で“遺骨の一部紛失”や“墓荒らし”の被害も報告されており―」

    〇新藤隆文3


     今日も新聞の一面、ニュース特番、ネット掲示板では例の不審死事件を取り扱っている。そこまでして死人に会いたいものなのだろうか。自問した新藤は首を横に振った。今自分の目の前には妻の遺骨と、あの日に拾った犬の骨がある。

    ふと、記憶が蘇る。病室の匂いだった。消毒液と、わずかに甘い薬品の匂い。窓際のベッドに寝かされていた彼女は、いつもより少しだけ痩せて見えたが、それでも笑っていた。
    「また変な記事書いてるんでしょ」
     からかうような声だった。
    「仕事だからな」
    「嘘。好きでやってる顔してる」
     図星だった。何も言い返せずにいると、彼女はくすりと笑った。
    「まあいいけど。あなた、そういうの向いてるし」
    「褒めてるのかそれ」
    「褒めてるよ」
     その時の声を、まだ覚えている。
     思い出そうとしなくても、勝手に浮かんでくる。
     だからこそ、思う。
     ――もし、もう一度だけ聞けるのなら。
     馬鹿げている。
     新藤は首を振った。
     そんなもの、あるわけがない。死んだ人間が戻ってくるなんて、あり得るはずがない。記事にしたのも、所詮はネタだ。アクセスを稼ぐための、誇張と脚色に過ぎない。
     分かっている。
     分かっているはずなのに。
     机の上の骨から、目が離せない。

    「それでもいい。会えるのなら、それでもいいんだ」

     手にしたハンマーで、新藤は骨を粉々に砕いた。

    〇政府内部文書(非公開・抜粋)


    機密指定:レベル3(要機密)
    件名:「オコツガエシ」関連事案に関する初動対応方針


    現在、全国各地で発生している一連の異常死事件について、以下の共通点が確認されている。
    ・被害者の胸部損壊(心臓欠損)
    ・現場に残された燃焼済み骨粉状物質
    ・加害者と見られる人物の身元不明、または死亡済み人物との一致
    ・事件発生前後におけるSNS上での特定ワードの拡散(「オコツガエシ」「ただいま」等)


    当該事案について、感染症対策としての封じ込めは無効である可能性が高い。
    理由は以下の通り。
    ・発症条件がウイルス・細菌ではなく「行為(儀式)」に依存
    ・潜伏期間が存在せず、発現が即時的
    ・再現性がSNS等で拡散されている


    対応方針:
    1.情報統制
     ・主要SNS運営企業に対し、関連ワードの削除・検索制限を要請
     ・動画配信プラットフォームに対し、検証配信の即時削除
     ・報道機関への非公式通達(詳細な描写の自粛要請)
    2.遺骨管理の強化
     ・火葬後の遺骨の分骨・持ち帰りに関するガイドラインの再検討
     ・寺院・葬儀業者への通達(異常な取り扱いの報告義務)
    3.異常個体への対処
     ・対象は「一般民間人として扱わない」
     ・発見次第、速やかに無力化・焼却処分
     ・接触者の隔離は不要(感染性なしと判断)


    付記:
    本件は従来の災害対策の枠組みでは即応困難であり、「情報災害」および「民俗的パニック」としての側面が強い。
    本現象に対し「倫理的抑制」は機能しない
    理由:対象者は合理性より感情を優先するため
    例:「危険と理解していても実行する」割合が極めて高い

    特に、「亡くなった家族に会いたい」という動機が抑制不能である点が最大の問題である。


    〇事案報告書(抜粋)


    管理番号:OCG-1472-A
    発生日時:二〇二六年三月二四日 午後十時頃
    発生場所:S県某市 集合住宅(築二七年・二階建て)三〇一号室
    【概要】
    通報により警察官が臨場。室内にて成人男性1名(32歳)および女性遺体1体を確認。男性は即死状態、女性は現場にて活動停止を確認。状況は既報のオコツガエシ関連事案と高度に一致。
    【現場状況】
    ・居室中央に簡易的な焼却跡あり(直径約40cm)
    ・焼却物は骨粉状物質と炭化残渣の混合体
    ・換気不十分により室内に強い異臭(焼骨および有機物燃焼臭)
    ・床面に血痕飛散、壁面に打撃痕複数
    【被害者(男性)】
    ・胸部大きく損壊、心臓欠損
    ・死因は失血性ショックと推定
    ・両前腕に防御創あり
    ・爪内から異物(毛髪・繊維片)検出
    【女性個体(加害側と推定)】
    ・年齢推定30代後半
    ・全身に焼損痕(特に右側頭部および肩部に顕著)
    ・衣服は一部炭化、家庭用衣類と一致
    ・口腔内より肉片検出(DNA照合により男性と一致)
    【身元確認】
    ・女性個体の歯科記録は、当該男性の配偶者(故人・死亡時39歳)と一致
    ・当該女性は約十一か月前に死亡、火葬済み
    ・遺骨は同室内仏壇にて一部保管されていたことを確認
    【補足事項】
    ・骨壺内部の遺骨量が明らかに減少
    ・台所にて動物骨(鶏と推定)の破砕痕確認
    ・フライパン内に骨粉残留物あり
    ・スマートフォン履歴に「オコツガエシ」関連検索多数
    【通報内容(要約)】
    通報者(同階住人)は以下の証言を行っている。
    ・「夜遅くに男性の怒鳴り声が聞こえた」
    ・「女性の声もしていたが、内容は不明」
    ・「“帰れ”“違う”といった単語を確認」
    ・その後、大きな物音が数回発生し、沈黙
    【追加証言】
    別住人より、事件直前の時間帯に以下の音声を確認したとの報告あり。
    ・「ただいま」と聞こえた
    ・声は女性のものであったが、抑揚に違和感


    【現場音声記録(断片)】
    現場に残されていたボイスレコーダーより抽出。
    「……帰ってきたんだろ」
    「違う……お前じゃない」
    「やめろ、来るな」
    (数秒間の沈黙)
    「――ただいま」
    (衝突音・悲鳴)

    【対応記録】
    臨場警察官到着時、女性個体は男性遺体上に覆いかぶさる形で存在。
    呼びかけに反応なし。接触直後に急激な運動を確認。
    ・対象、立位へ移行
    ・顔面左側は原形保持、右側は焼損により崩壊
    ・片眼にて視認行動を確認
    発砲記録:計7発命中
    →運動停止せず
    追加要請により焼却班出動。
    高温処理にて完全停止を確認。
    【所見】
    本事案においても、
    ・遺骨使用
    ・動物骨混入
    ・焼却行為
    ・呼称行為
    の四要素が確認されている。
    また、女性個体は外見・歯科情報ともに一致する一方で、行動様式は明らかに人間のそれとは異なる。
    特に以下の点が注視される。
    ・対象は被害者の防御行動を無視し接近
    ・致命傷(銃創)を受けても活動継続
    ・発声内容が極端に限定的(「ただいま」)
    【結論】
    当該個体は、被害者の配偶者の肉体的特徴を保持しているが、同一人物であるとは断定できない。
    付記:
    現場撤収後、当該居室のドアに内側から複数の引っ掻き痕が確認された。
    形状は人の指によるものと推定されるが、
    発生時刻については不明。

    〇ニュース特番


    「政府は本日、相次ぐ異常死事件について緊急会見を行いました。現時点で病原性感染症等の可能性は否定されており、市民の皆様には冷静な行動を呼びかけています。また、インターネット上で拡散されている“特定の儀式”については……」

    一瞬、原稿を読むアナウンサーの声が詰まる。

    「絶対に真似をしないよう、強く警告しています。繰り返します。インターネット上に散見される儀式行為は決して行わないよう、強くお願いたします。皆様の命を守るための行動です。よろしくお願いいたします」

     

    〇政府会見


    「現在報告されている一連の事案についてですが、科学的に説明可能な範囲での調査を進めております」
     壇上の男はそう言って、一度だけ手元の資料に目を落とした。紙がわずかに震えている。
     記者席から一斉に手が上がる。
    「死者が帰ってきたという証言については?」
     一拍の沈黙。
    「そのような事実は確認されておりません」
     即答だった。しかし、その直後に続く言葉がわずかに遅れる。
    「現場の状況については、現在精査中であり――」
    「歯科記録の一致についてはどう説明するのか?」
     別の記者が被せるように質問する。
    「個別事案についての詳細は差し控えます」
    「しかし複数の事例で一致が確認されているとの情報がありますが」
    「繰り返しますが――」
     男は一瞬だけ言葉に詰まる。
    「現在、確認中です」
     会場がざわつく。
    「“オコツガエシ”と呼ばれる儀式との関連性は?」
    「極めて危険かつ悪質なデマです。絶対に試さないようにしてください」
     強い口調だった。だがその直後、別の記者が冷静に問いかける。
    「ではなぜ、その“デマ”と一致する事象が全国で発生しているのか説明をお願いします」
     沈黙。
     カメラのシャッター音だけがやけに大きく響く。
    「……現在、因果関係は確認されておりません」
    「否定できない、ということですか?」
    「確認されておりません」
     同じ言葉を繰り返す。
    「SNS上での“成功報告”については?」
    「虚偽、あるいは錯乱状態による誤認の可能性が高いと考えています」
    「では、その投稿者が直後に死亡している件については?」
     空気が一段冷える。
     壇上の男は、一度だけ水を口に含んだ。
    「……個別事案です」
    「偶然だと?」
    「現時点ではそう判断しています」
    「現時点では、ということは将来的に判断が変わる可能性がある?」
    「……あらゆる可能性を排除せず、調査を進めています」
     言葉が曖昧になる。
    「政府として、この現象を“存在しない”と断言できますか?」
     その質問に、男は即答できなかった。
     ほんの数秒。だが会場の全員がその間を感じ取るには十分な時間だった。
    「……現時点で、確認されている科学的事実としては」
     言い直す。
    「そのような現象は存在しません」
     しかしその声は、先ほどより明らかに弱い。
    「現場の音声記録についてはどう説明するのか?」
    「“ただいま”という発声が複数記録されていると聞いていますが」
     ざわめきが広がる。
    「音声についても解析中です」
    「人間の声ではない可能性は?」
    「そのような前提での質問にはお答えできません」
    「では、人間の声であると断言できますか?」
    「……解析中です」
     再び同じ答え。
     後方から別の声が上がる。
    「もし仮に、その儀式が再現可能なものであった場合、政府はどのように対応するのか?」
     その瞬間、壇上の空気が張り詰めた。
    「仮定の話にはお答えできません」
    「既に再現されているという報告がある」
    「確認されておりません」
    「ではなぜ削除要請を?」
     一瞬、言葉が止まる。
    「……公共の安全のためです」
    「安全とは何から守るためのものか?」
     答えが出ない。
     マイクがわずかにハウリングを起こす。
    「……不確かな情報による混乱を防ぐためです」
    「“混乱”ですか?」
     記者の声が低くなる。
    「それとも、“再現”を防ぐためでは?」
     完全な沈黙。
     壇上の男は何も言わない。
     ただ、手元の資料をめくる音だけが響く。
     やがて、別の官僚がマイクを引き寄せた。
    「本件については以上とさせていただきます」
    「まだ質問が――」
    「繰り返します。本件については以上です」


    〇SNSタイムライン4(政府対応発表後)


    @news_alert_jp
    【速報】政府、「オコツガエシ」関連投稿の削除要請へ
    @free_speech_now
    令和言論統制キター!
    @lost_family
    消さないで
    お願いだから消さないで
    @skeptic_neo
    いや普通に危険だから消せよ
    @trial_streamer_alt
    BANされたから別垢でやるわw
    #オコツガエシ実況
    @mourning_diary
    やめて
    お願いだからやめて


    〇とある寺院


     住職は通達書を握りしめていた。
    「遺骨の持ち帰りは控えるように、か……」
     乾いた笑みが漏れる。
     紙の端が、わずかに指の汗で湿っている。墨で印字された文字は整然としているのに、書かれている内容だけが現実から浮いているようだった。
    「そんなことで、止まるものか」
     小さく呟く。
     寺は古い。木造の本堂は何度も修繕されているが、柱には時代の重みが染み付いている。夜になると軋む音がよく響く。今日はやけにそれが多い気がした。
     奥へと歩く。
     本堂のさらに奥、普段は檀家以外立ち入らない納骨の間。そこに小さな棚が並んでいる。預かっている骨壺たちだ。
     数は多くない。一つ一つに名前があり、誰かの人生の終わりが収められている。
     その前に立つと、住職は自然と背筋を伸ばした。
    「……すまんな」
     誰にともなく呟く。
     通達は理解できる。理屈も分かる。だが、それが現実に通用しないことも分かっている。
     人は、手放さない。
     失ったものほど、近くに置こうとする。
     それがどれだけ危ういことであっても。
     ふと、違和感に気づいた。
     一つの骨壺。
     蓋が、わずかにずれている。
    「……?」
     近づく。
     確かに、朝は閉まっていたはずだ。ほんの数ミリ。だが確実に隙間がある。
     指先で触れる。
     冷たい。
     当たり前だ。陶器なのだから。
     だが、その冷たさが妙に生々しく感じられた。
     ゆっくりと蓋を持ち上げる。
     中を覗く。
     骨は、ある。
     だが――
    「……減っている?」
     錯覚かと思った。
     量を正確に記憶しているわけではない。それでも、何度も見てきたものだ。違和感は確かにあった。
    「……気のせいか」
     

    〇警察庁内部会議


    「発生件数、昨日比で三倍です」
    「地域は?」
    「全国です。地域性等の偏りはなしとみられます」
    「SNSの削除は?」
    「全く追いついていません。“成功報告”が削除より早く増えている状態です」
    「……なぜやる?」
    誰も答えない。
    「会いたいからです」
     静かであり、ひどく重たい言葉であった。
    「最も厄介な動機だな……」
     会議室内は静まり返った。

    〇厚労省および宗教関係者協議


    「遺骨の管理強化についてですが」
    「それは文化的問題になります。法的強制力を持つものではありません」
    「しかし現実に人が死んでいる。現状への対応は急務です」
    「分骨や手元供養は一般化しています。禁止すれば反発は避けられません」
    「では代替案は?」
    「民間の反発程度どうでもいい。要は効果があるかどうかだ」
    「……正しい供養を啓発するしか」
    「間に合うと思いますか?」
    「そもそも正しい供養とは何を指し示すのか」
    「所管官庁も正式決定していない中での議論は限界があります」
    「そもそも何をもって正しいとするのか、法的根拠があるわけでもなし」
    誰も答えなかった。
    「警察や自衛隊は対応できんのですか?」
    「現在警察庁及び防衛省と協議中です」
    「対応とは一体何を指し示すのか」
    「……蘇った死体の駆除です」

     会議室の一同から一様にため息が漏れた。

    〇現場対応部隊(記録音声)


    「対象確認……女性型と見られます」
    「損傷あり。顔面右側焼損」
    「動いた!」
    「撃て!」
     拳銃の発砲音が響く。
    「……倒れたか?」
    「待て、まだだ」
    ゆっくりと、そのそれが顔を上げる。
    焼け残った片目が、こちらを見る。
    そして、
    「ただいま」
      

    〇自衛隊出動記録


    「対象、再起動確認」
    「再起動って言うな……」
    「じゃあなんて言えばいいんだよ!」
    「知らん……撃て!」

    銃撃音。

    「……効いてない」
    「焼却班呼べ!」
    「接近するな!」
    「来るぞ!」
    「前段命中、しかし目標健在!」
    「続けて撃て!目標の完全沈黙まで撃ち続けろ!」
    「焼却班到着!」
    「放て!」
    通信途絶。

    〇非公開映像ログ


    映像は手ブレしている。
    焼け焦げた女が、ゆっくり歩いてこちらに近寄ってくる。
    カメラを携えた者が自動小銃を放つ。銃弾が当たる。
    止まらない。腕がちぎれ、顔のか半分が吹き飛んでもまだ、それはこちらへと歩を進めてくる。
    口が動く。
    音声はノイズ混じりだが、
    はっきりと聞こえる。
    「ただいま」


    〇SNSタイムライン5

    @last_message
    帰ってきた
    でも違う
    違う違う違う違う違う

    @mother_call
    ごめん
    呼ばなきゃよかった。こんなことになるなんて
    @unknown
    もう一回呼べば
    ちゃんとしたの来るかな、今回のは失敗だったってことにならないかな?

    〇最終政府談話(未公開)

    機密指定:4(最重要機密)

    「オコツガエシ」関連事案に対する最終対応

    1.儀式に関する情報の完全遮断は不可能
    2.人的損耗は許容範囲を超過
    3.終息の見込みなし報告日時点での事案発生は全国で2000件を突破

    結論:本現象は制御不能

    付記:唯一の抑制手段は、「呼ばせないこと」である。しかし、それを強制する手段は存在しない。人間の「亡くなった人に会いたい」という根源的欲求を制御することは不可能である。

     以上をもって、オコツガエシ対策室は解散
    、オコツガエシ事案対応室へと改組することとする。

    〇ただいま


    テレビでは専門家が語っている。
    「これは集団ヒステリーの一種で―」
    音を消した。
    意味はない。
    分かっている。
    あれは、いる。
    確実に。
    理屈ではない。
    現実として、帰ってきている。
    机の上には、砕かれた骨。
    混ざり合い焼かれたそれ。
    そして―
    スマートフォン。
    画面には、自分の記事、コメント欄。
    「やってみた」
    「帰ってきた」
    「成功した」

    「違う」
    新藤は、静かに呟いた。
    「成功なんかじゃない。そんなこと分かってる」
    インターホンが鳴る。玄関のドア越しに声が聞こえた。
     新藤が反応せずにいると、インターホンが二度、三度と鳴る。

    「ただいま」

     声が玄関から聞こえてきた。
     その声は、記憶のものよりもやや濁っていた。
     理解ってるさ、全部、でも
     一瞬の間を置き、俺は答えた。

    「おかえり」

     俺は、誰を待っていたんだろう。
     ドアを開ける。目の前にはところどころ破けた白い衣服を身にまとった女性が立っていた。その顔は、妻のものだった。

    無限にも思える時間、二人は見つめあった。実際には数秒ののことだったであろう。

    「おかえり」

    新藤はそういうと、目の前の女性を抱きしめた。

     女性の目線は、新藤の首筋に向いていた。

                       終



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