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小説 「䞃぀の季節」 ㉕

     時刻はもう午埌21時。和歌山枯に到着した倏矎はブラゞル人倫婊ず共に灯ヶ島からの迎えの船がくるのを埅っおいた。人は新倧阪駅で買ったサンドむッチをひず぀づ぀食べお埅合所のベンチで雑談しおいた。
    「かいちず暮らすのです。私たちず倏矎さんずベむビヌずみんなで幞せになるのです」
     倏矎の目頭は最み、倜の海に浮かぶたくさんの持船はたるで星のようにキラキラず茝いお芋えた。
    むカ釣り持船は東京の倜のネオンより䜕倍もきれいだ。かいちのふるさずは海も倜空も人々の心も柄みわたっおいる。きっず昚日たでの悲しみをすべお忘れさせおくれる。
     かいち、私幞せになっおいいんだよね。もう私たちを匕き裂くものは䜕䞀぀ないんだよね。
    倏矎は目を閉じ、䞡手を組んで倜空に祈る。
    神様、ありがずう、、。
     かいちに早く䌚いたい。早くあの胞に顔を埋めたいかいちはきっずこの子のこずも私ず同じように抱きしめおくれる。
     かいちは灯ヶ島の枯で人の到着を埅った。母胎に負担がかからないように配慮しお島の人たちは出迎えには出おこなかった。そこにはかいちず同玚生の村䞊ず祖母の浜枝の人が埅ち構えおいた。
     䞀方和歌山枯で迎えの船を埅぀ホルヘずマリアはかいちに枡すお土産のキヌホルダヌを入念にチェックしおいた。
    「ワクワクしたすね。かいちのふるさずきっず楜しいずころ」
    倏矎も
    「私も早く芋たいわ」ず答える。
    みな安堵しおいた。みな幞せだった。この瞬間だけは。
     しかし、次の瞬間、運呜のベルはけたたたしく小さな枯の埅合所に鳎り響く。悪魔のように気味の悪い音色だずブラゞル人倫婊は感じおいた。
    「もしもし」
    姑の茂子だった。
    「なっ、倏矎さん、倧倉なの。お願い、話を聞いおほしいの」
     茂子はずおも動揺しおいる。
    「お矩母さん、どうしたした」
    茂子は泣きながら喚くようにしお話し始める。ブラゞル人倫婊は倏矎の携垯のすぐ近くで楜しそうに笑っおいる。
    茂子は涙声で話を続けた。
    「お願い、、垰っおきお。倏矎さん、私が悪かったわ。䜕でもしたす。謝りたす。だから垰っおきおちょうだい」
    「萜ち着いおくださいどうしたんですか離婚しおほしいず蚀ったのは達圊さんの方ですよ」
    「違うの、違うのよ倏矎さん」
     茂子の話す内容に倏矎は愕然ずした
    「あの子は、、。達圊は肺癌の末期でもう長くは生きられないのだからあなたを突き攟すようなこずを蚀っお家を出たの」
    「えっどういうこずですか」
    突然のこずに倏矎は戞惑いを隠せない。離婚をしおもう愛情がないずはいえ、床は家族ずしお䞀緒に暮らしたその人が䞍治の病に䟵され、もうすぐ逝っおしたうず知らされお穏やかにいられるはずもない。
    茂子が倏矎に告げた真実は残酷なものだった。
    䜙呜を告知された達圊は自分が倏矎にしおやれるこずはひず぀しかないず離婚を決断したのである
    「あなたを自由にしおあげたいず蚀っおいたわ」
    茂子は泣き厩れた。
    離婚を蚀い枡される少し前に達圊は咳が止たらす、病院に受蚺に行った。たぶんそれからすぐに病名を知らされたのだろう。その時から達圊が家に戻らなかったこずは今にしおみれば蟻耄が合う。
     倏矎はしばらく呆然ず携垯を握りしめたたた、その堎に立ち尜くす。そしお自分の埌ろではしゃぐブラゞル人倫婊の声に倏矎ははっずする。
    私はこれから灯ヶ島に向かうためにここで迎えの船を埅っおいる。
     私にどうしろず、、。
    「かいち、、」
    「わたし、、どうすれば、、」
    達圊は私のために嘘を぀いお身を匕いた。氎島かいちに私ずこの子を委ねお人で逝く決意をした。
    「倏矎はもう自由に奜きなずころぞ行っおきなさい」
    達圊はそう蚀っおいる。
    だから自分は今ここにいる。
    かいちの故郷、和歌山に私は確かにこの足で立っおいる。
    倏矎は携垯を握る手に力を蟌め䜕も蚀えずに立ち尜くしおいた。
    「お矩母さん、私は垰りたせん。今さら勝手なこず蚀わないでください」そう蚀っお䞀蹎できたら。
    子䟛の頃に怯えたサタンに心を売り枡し、その化身になっおひどく暎蚀を吐きたい気持ちだ。
    真実を正面から突き぀けられた倏矎は身動きがずれないほどに息苊しさを芚える
    「どうかお願いしたす。あの子を人で逝かせないで倏矎さん、どうか、、」
     倏矎は頭を抱え、冷えたベンチの䞊に座り蟌んだ。
    もうすぐかいちに䌚えるの。
    抱き合っお幞せを噛み締めるの。
    でも、、。
     
     達圊は小坂井あやに深々ず頭を䞋げた。
    これがきっず圌女ずの最埌の䌚話になる。
    達圊は噛み締めるように蚀った。
    「ごめんな、あやいやな圹割ばかりさせお」
    「ばかね。慣れおるわよむしろ私にしかできない仕事よ。私は優秀な秘曞だったでしょ」
    達圊はこくりず頷いた。
     あの倜、達圊は震えながらここに来おあやに助けを求めた。
     医者からあず半幎だず䜙呜宣告をされたこずをあやに話した。その数時間前、病院の蚺察宀で達圊は初老の医者にすがり、懇願した。
    「この子に䌚えたすか」
    倧事に持ち歩いおいた我が子の゚コヌ写真。癜衣のその人の県前にすり付けた。
    医者は静かに銖を暪に振った。
    「玄束はできたせん」
     病院を出おタクシヌでこのマンションにくるたでの間の蚘憶はほずんどない。
     達圊はあやの入れおくれた枩かい飲み物を飲み、少し萜ち着きを取り戻し、あやに静かに告げた。
     愛する劻ず子にこの呜を以お償いたい。だから協力しおくれないか。
     あやは
    「わかったわ。うたくやる。あなたのために。い぀も通りにね」
    泣きながら達圊を抱きしめた。
     高局階のマンションから芋えるのは家路を急ぐ車の列。ひしめき合うような人々の暮らし。
     達圊ずあやそれぞれの異なる苊しみはどこにも溶け蟌めずに朝を迎えた。達圊は倏矎が秋原家を出たずいう知らせを母芪の茂子から聞いたあず、倏矎のいない秋原邞に垰っおいった。
    「私が最埌たであなたに寄り添っおあげるわ」
    あやはそう蚀っおくれた。
    しかし達圊はそれを受け入れなかった。
    「倏矎ず暮らしたあの家で最埌をむかえたいんだ。あや、君にそんな蟛い思いをさせる぀もりはないよ」
    達圊はそう蚀っおマンションのカギをあやに返した。
     
     倏矎はすっかり痩せおしたった元倫を献身的に看病した。
     闘病䞭に生たれた子䟛は男の子だった。達圊は朊朧ずした意識の䞭でその子の顔に觊れながら、
    「ごめんよ。ママを頌んだぞ」ず蚀っお埮笑んだ。それが達圊が発した最埌の声だった。
     その子は聖也ず名付けられ、達圊によく䌌た顔立ちの初孫を茂子はずおも可愛がっおいた。倏矎が病院で達圊に付き添っおいる間、自らすすんで子守りをかっおでた
     ただヶ月の我が子ず愛する劻を残しお達圊が倩囜ぞ旅立ったのは肌寒い秋の終わりのこずだった。
     茂子の憔悎しきった姿は芋るに耐えられないほどに哀れなものだった。
     四十九日の法芁を枈たせたあず、遺品の敎理をしおいた倏矎に茂子は告げた。
    「倏矎さん、今たで本圓にありがずう。達圊をちゃんず看取っおくれたこず、感謝しおいたす」
    そしお
    「これからは自由になっお自分の幞せを぀かんでちょうだい。わたしは芪戚もいるし、倧䞈倫だから」
    倏矎はほっず胞を撫で䞋ろす。
    達圊を芋捚おなかった自分にほっずする。
    矩母ずも円満に終わる。
    かいちにも䌚える。
    悪魔にならなくお本圓によかった。胞を匵っおこの子ずかいちの元ぞ行こう。
     そう決めお荷物の敎理を始めた矢先のこずだった。
    預かっおもらっおいた息子を匕き取るために茂子の家を尋ねた。
    「お矩母さん、い぀も聖也の面倒を芋おもらっお本圓に助かりたしす。荷物も片付いたので明日には家を出たす」
     茂子は聖也の方に芖線を向けたたた、倏矎の顔を芋ようずもしない。
    次の瞬間、倏矎は凍り぀いた。
    矩母の腕の䞭ですやすや眠るその子を受け取るためにそっず䞡手を差し出し
    「お矩母さんありがずうございたした。あずは倧䞈倫です」
    ずいっお赀ん坊に觊れた。
    しかし、茂子はくるりず身䜓を翻す。
    「たっちゃん、ベッドでお昌寝したしょうね。お母さんが今から矎味しいスヌプを䜜っおあげるから」
     たっちゃん、、。
    おそらく幌い頃、達圊は母芪からそう呌ばれおいた。
    「お矩母さん、どうしたんですか。この子はあなたの孫で聖也です。達圊さんではありたせん」
    「たあ、おかしなこず蚀わないでください」
    「お矩母さん、しっかりしおください」
     翌日、受蚺した倧孊病院の医垫から重床の認知症だず告げられる。
    家族ず死別した高霢者が珟実を受け止められず、認知症を発症するケヌスは少なくない。あんなに気䞈に振る舞っおいた茂子も䟋倖ではない。
     病状はあっずいう間に進行し、茂子がだんだんず壊れおいく様を倏矎は日々、目の圓たりにした。
     このたた攟眮するわけにもいかず
    芪戚の人たちず話し合い、斜蚭ぞの入所が決たった。盞倉わらず孫の聖也を息子だず思い蟌み、かいがいしく䞖話をする日々は続いた。
     匕き離すず倧声で泣きわめき倏矎を困らせた。斜蚭の看護垫が鎮静剀を投䞎しおなんずか萜ち着かせたあず、倏矎はやっずそこから離れ、垰宅するこずができた。
     斜蚭に入所する祭に倏矎は亡き達圊に代わり茂子のキヌパヌ゜ンの圹目を匕き受けた。
     時々、息子を茂子に䌚わせおあげるために面䌚に行った。達圊ずはすでに離婚しおいるこず、この子は達圊ではなく、孫であるこずを茂子に理解できるはずもない。
     投薬の効果も出おきお泣きわめいたり䞍穏になるこずはなくなったが、面䌚を終え、聖也を連れお垰ろうずするず悲しそうにすすり泣く。
    面䌚にいくたびにそれは続いた。
     倏矎は息苊しく思う。しかし芋捚おるこずはできなかった。䞀人息子を倱っお䜕かにすがり付いおいないず生きおいられない哀れな老人から聖也を匕き離すこずができなかった。

     倏矎は「しばらく、そちらには行けそうにありたせん」ずかいちに手玙を曞いた。すべおを語っおしたえばかいちはきっず迎えにきおくれる。だけど倏矎は敢えおそれを遞ばなかった。
     かいちならきっず最埌たでこの哀れな老女を芋捚おない。
    「誰も䞍幞にしない」ず蚀ったかいち。
    倏矎は決めたのだった。
    私もそうしようず。
     かいちからの返事は
    「俺は䞀生埅぀よ」
    ずいう䞀蚀だった。
     人を぀なぐオリオン座が冬の倜空に瞬いおいた。
     倏矎は灯ヶ島の方角にたっすぐ手を䌞ばし、目を閉じかいちを求めた。かいちもたた倜空の䞋で倏矎を思う。
     ぀の赀い糞は鮮やかな光を攟ちながら固く結ばれた。

     それから幎埌、秋原茂子は眠るようにしお愛する息子のいる倩囜ぞず旅立った。

     秋原倏矎、氎島かいち。
    運呜の出䌚いをしお運呜に翻匄され、運呜によっお再び導かれた人が結ばれたのは出䌚っおから幎埌。共に28才の秋のこずだった。
     手を繋ぐ人の間には小さな男の子が倩䜿のように埮笑んでいる。仲良く぀䞊んだオリオン座は灯ヶ島の矎しい浜蟺で肩を寄せあっお囁き合う。
     「もう離れない」ず。

            終わり

     最終回です。本圓にもどかしく、数奇な運呜に翻匄されたふたりはやっず幞せになりたす。
     皆さん、今日たで芋守っおくださっおありがずうございたした。
    どうかかいちず倏矎、そしお聖也くんの未来、応揎しおくださいね。
    灯ヶ島はきっず圌らを幞せにしおくれる島。
     皆さたにも玠晎らしい未来がおずずれたすように☺
    次回䜜は未定ですが、たた投皿したいず思いたす。
     ひずたず圌らずお別れです。
    読んでくださっおありがずうございたした😆💕✚
        星のひかり




     



     




     







     
     


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