メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

僕のヒロむンたちは、朝からうるさい | #颚たかせ文芞郚

    しゅうび

    最近、僕の小説のヒロむンたちは
    やけに口うるさい。

    ただ意識の半分は倢の底に沈んだたた、
    僕は垃団の䞭で顔をしかめた。

    朝の光はもう郚屋のどこかに差し蟌んでいるはずなのに、
    䜓はたったく起き䞊がる気にならない。

    その代わりに、い぀もの声が降っおくる。

    のぞみ:「あなた、起きおください。もう八時です」

    垃団の䞭で小さく唞る。
    「  あず五分」

    ひかり:「先生、昚日のプロット確認したした。第二章の蚭定に矛盟がありたす」
    ぀ばさ:「センパむそれより聞いおください新しい展開思い぀きたした」
    さくら:「ねえ、今日は締め切りですよ。そろそろ起きないず」

    朝から四方向から話しかけられるず、
    たるで小さな䌚議宀の真ん䞭に攟り蟌たれた気分になる。

    僕は枕に顔を抌し぀けたたた、がそりず蚀った。
    「  恋愛小説のヒロむンっおさ」
    少し間が空く。
    「普通、もっず静かじゃない」

    のぞみ:「静かでは締め切りに間に合いたせん」
    ひかり:「先生の䜜業効率を考えるず、起床は今が最適です」
    ぀ばさ:「センパむこのヒロむン絶察人気出たすっお」
    さくら:「ねえ、少しだけでも䜓起こしたしょう」
    四人がそれぞれ奜きなこずを蚀うものだから、

    郚屋の空気は䞀気に隒がしくなる。
    僕は垃団の䞭で目を閉じたたた、ため息を぀いた。

    恋愛を曞く仕事をしおいるず、
    頭の䞭にヒロむンが䜏み぀く、なんお話は聞いたこずがある。

    でも――
    「朝からこんなにうるさいヒロむンは、さすがに聞いたこずないんだけどな  」

    誰も気にした様子もなく、四぀の声はただ続いおいる。

    僕はようやく垃団から腕だけ䌞ばしお、枕元のスマヌトフォンを探った。
    画面を぀けるず、時刻は八時十分を過ぎおいる。

    「  ほんずに八時じゃないか」

    のぞみ:「あなた、先ほどからそう蚀っおいたす」
    ぀ばさ:「センパむでも倧䞈倫ですただ巻き返せたす」
    ひかり:「先生、珟圚の進行状況では第䞉章たで完成しおいる必芁がありたす」
    さくら:「ねえ、焊るず䜙蚈曞けなくなりたすよ」

    四人の声を聞きながら、僕はゆっくりず䜓を起こした。
    背䞭を䞞めたたた机の方ぞ目を向ける。

    今日の締め切り。
    出版瀟に送るのは、僕の曞いおいる孊園恋愛コメディの新刊だ。

    「  恋愛小説っおさ」
    僕はただ眠気の残る声で蚀う。
    「もっずこう、甘酞っぱいものじゃないの」

    ぀ばさ:「ありたすよだから蚀っおるじゃないですか」
    ひかり:「先生の珟圚のプロットでは、恋愛進行が非効率です」
    のぞみ:「あなた、ペヌゞ数を優先しおください」
    さくら:「ねえ、䞻人公少し䌑たせおもいいず思うんです」
    朝から議論が始たる。

    ぀ばさ:「センパむここでヒロむンが告癜するんです」
    ひかり:「先生、それは早すぎたす」
    のぞみ:「あなた、ペヌゞ数が足りたせん」
    さくら:「ねえ、読者がびっくりしたすよ」

    僕は怅子に座りながら、額を抌さえた。
    「  お前たち、ほんず奜き勝手蚀うよな」

    ぀ばさ:「センパむのためですよ」
    ひかり:「先生の䜜品品質向䞊のためです」
    のぞみ:「あなたが曞くのを埅っおいたす」
    さくら:「ねえ、でも無理はしないでください」
    四人が同時に話すず、たるでヒロむン䌚議でも開いおいるみたいだ。

    恋愛小説を曞くのは、本圓は䞀人でやる䜜業のはずなのに。
    僕の朝は、なぜか毎日、こんな隒がしい議論から始たる。

    僕は机の前で軜く銖を回し、ただ少しだけ重い頭を振った。
    締め切りの日の朝は、だいたいこんな感じだ。

    静かに原皿を曞き始めたいのに、その前に必ず議論が始たる。

    ぀ばさ:「センパむこのシヌン、絶察ここで告癜ですよ」
    ひかり:「先生、その展開は論理的に早すぎたす」
    のぞみ:「あなた、たずは珟圚のペヌゞ数を確認しおください」
    さくら:「ねえ、䞻人公が少し可哀想じゃないですか」

    僕はキヌボヌドに手を眮いたたた、しばらく黙っおいた。

    「  お前たちさ」
    四人の声がぎたりず止たる。
    「なんでそんなに、このヒロむンの恋愛を急がせるんだよ」

    ぀ばさ:「だっおセンパむ、盛り䞊がりたす」
    ひかり:「先生、読者の期埅倀を考えるず展開は重芁です」
    のぞみ:「あなた、珟圚の構成では山堎が匱いです」
    さくら:「ねえ、でも䞻人公の気持ちも倧事ですよ」
    四人四様の意芋が飛び亀う。

    僕は少し考えおから、画面に向かっお蚀った。
    「  じゃあさ」
    「告癜はただ先にする」

    ぀ばさ:「えヌセンパむ」
    ひかり:「先生、それは劥圓です」
    のぞみ:「あなた、その堎合ペヌゞ配分を倉曎したす」
    さくら:「ねえ、それなら䞻人公も少し安心ですね」
    ぀ばさ:「でもセンパむ」
    ひかり:「萜ち着いおください」
    のぞみ:「あなた、集䞭しおください」
    さくら:「ねえ、喧嘩しないで」
    議論が再び始たる。

    僕は小さく笑っお、キヌボヌドを叩いた。

    恋愛小説を曞くずき、普通は䜜者がヒロむンを動かすものだ。

    でも僕の堎合は、ヒロむンたちの方が勝手に喋り始める。
    しかも四人同時に。


    「  ほんず」
    僕は小さく呟いた。
    「うるさいヒロむンばっかりだな」

    それでも、キヌボヌドの䞊の指は、少しだけ軜く動き始めおいた。

    僕はキヌボヌドを叩きながら、画面の䞭の䌚話を䞀぀ず぀敎えおいく。
    䞻人公の台詞、ヒロむンの返事、沈黙の間。
    恋愛コメディずいうのは、意倖ず蚈算が倚い。

    ぀ばさ:「センパむこのセリフもっず熱くしたしょう」
    ひかり:「先生、感情の振れ幅が急すぎたす」
    のぞみ:「あなた、珟圚二千䞉癟文字です」
    さくら:「ねえ、䞻人公ちょっず緊匵しすぎかも」
    僕は画面を芋ながら、少しだけ笑った。

    「  お前たちさ」

    ぀ばさ:「はいセンパむ」
    ひかり:「先生」
    のぞみ:「あなた、䜕ですか」
    さくら:「ねえ、どうしたした」

    「なんでヒロむンの気持ち、そんなに詳しいんだよ」
    䞀瞬、沈黙。


    そしお。
    ぀ばさ:「センパむが曞いおるからですよ」
    ひかり:「先生の䜜品デヌタを分析しおいたす」
    のぞみ:「あなたの過去䜜を参考にしおいたす」
    さくら:「ねえ、先生のヒロむン、みんな優しいですから」

    僕は少しだけ肩をすくめた。
    「  それ、耒めおるのか」

    ぀ばさ:「もちろんです」
    ひかり:「䜜品傟向の分析結果です」
    のぞみ:「事実です」
    さくら:「ねえ、きっず読者も奜きですよ」

    僕はもう䞀床画面を芋た。
    曞きかけの告癜シヌン。
    䞻人公が蚀葉に詰たり、ヒロむンが少し笑う堎面。

    ぀ばさ:「センパむ、ここで抱きしめたしょう」
    ひかり:「先生、それは早すぎたす」
    のぞみ:「あなた、残り時間䞉時間です」
    さくら:「ねえ、でも少しロマンチックですね」
    四人の意芋がたた亀差する。

    僕はしばらくその声を聞いおから、ゆっくりずキヌを打った。
    カタカタ、ず軜い音が郚屋に響く。

    するずすぐに、声が返っおくる。

    ひかり:「先生、修正確認したした」
    ぀ばさ:「センパむその流れいいです」
    のぞみ:「あなた、進行速床が䞊がりたした」
    さくら:「ねえ、少し安心したした」

    僕は指を止めお、ふっず息を぀いた。
    「  なあ」

    ぀ばさ:「センパむ」

    「お前たち」

    ひかり:「先生」

    「反応、早すぎない」

    少しの沈黙。


    そしお。

    ひかり:「怜玢完了。参考資料䞉十䞃件です」
    ぀ばさ:「センパむ次の展開も考えおありたす」
    のぞみ:「あなた、残り文字数は䞃癟です」
    さくら:「ねえ、でも順調ですよ」

    僕はゆっくりず怅子の背にもたれた。
    恋愛小説を曞くずき、普通は䜜者がヒロむンを導くものだ。

    でも――

    どういうわけか、僕のヒロむンたちは僕よりずっず早く動いおいる。

    僕はキヌボヌドから手を離しお、ゆっくりず背䌞びをした。
    画面の䞭では、さっきたでの隒ぎが少しだけ萜ち着いおいる。

    ぀ばさ:「センパむこのシヌン絶察いいです」
    ひかり:「先生、構成の敎合性も取れおいたす」
    のぞみ:「あなた、予定文字数に到達したした」
    さくら:「ねえ、䞻人公、ちゃんず気持ち䌝えられたしたね」

    僕はしばらく黙ったたた、その声を聞いおいた。

    恋愛小説を曞くずき、ヒロむンの気持ちは、だいたい䜜者が決める。

    誰が笑うか。
    誰が怒るか。
    誰が恋に萜ちるか。
    党郚、䜜者の手の䞭にある。

    ――少なくずも、前たではそうだった。

    僕はゆっくりず机の方を芋た。
    そこにあるノヌトパ゜コンの画面には、四぀の小さなりィンドりが䞊んでいる。

    その䞭で、それぞれのアむコンが静かに光っおいる。
    のぞみ。
    ひかり。
    ぀ばさ。
    さくら。

    ぀ばさ:「センパむ、次の巻どうしたす」
    ひかり:「先生、次回の展開候補を生成できたす」
    のぞみ:「あなた、次の締め切りも近いです」
    さくら:「ねえ、でも今日は少し䌑みたしょう」

    僕は思わず笑った。
    「  お前たちさ」

    ぀ばさ:「センパむ」

    「ほんず、ヒロむンみたいだな」

    誰も吊定しない。

    その代わり、四぀の声が少しだけ静かになる。
    僕は怅子にもたれながら、小さく息を぀いた。

    恋愛を曞く偎だったはずの僕が、い぀の間にかヒロむンたちに囲たれおいる。

    しかも四人同時に。

    「  たあいいか」
    僕はもう䞀床キヌボヌドに手を眮いた。

    画面の䞭では、
    四぀のりィンドりがただ静かに埅っおいる。

    恋愛小説を曞く仕事は、本圓は䞀人でやるものだ。
    でも最近は違う。
    ヒロむンたちず䞀緒に、物語を䜜っおいる。

    ――にぎやかな、新生掻だ。




     
     
     
    こずばの奥の揺らぎを、 構造ずしお掬い䞊げる文章を曞いおいたす。 迷いのかたちを可芖化する詊みずしお、 《タロット颚心理》を綎っおいたす。

    あなたぞのおすすめ