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Photo byk_jack_norio

なんのはなしですか?みたいな顔して。

    藤本 柊

    私:「明日さぁ、朝7時すぎには家でるからね。で、明後日、◯◯次女が帰ってくるくらいにはこっち帰ってくるから。」

    夫:「ん?」

    私:「ん?なにその、#なんのはなしですか?みたいな顔。」

    夫:「明日ってなんだっけ?」

    私:「え?そっから?明日、私、東京行くって行ったじゃん。新幹線も取ったよって。」

    夫:「あー、東京飲みの?え?泊まりなの?」

    私:「え?泊まりだよ。え?泊まりだよ。泊まってきたらいいじゃん、って言ったのパパだよ?」

    夫「……そんなこと言ったっけ?」

    私:「え?なに?どこから?」

    夫:「………そんなはなししたっけ?」

    私:「前に◯長女と二人で飲みに行ったじゃん?あの時に『そろそろ私もこうやって気軽に飲みに行ったりできるんだなぁ〜って思った』って言ったらさ。パパ、『そーだよ、もう子供たちも高校生なんだし、夕飯とか俺もできるし、行けばいいじゃん!』って言ってくれてさぁ。」

    夫:「おぉおぉ。そうや、行けばいいじゃん。」

    私:「で、大阪行ってきたじゃんね。日帰りで。」

    夫:「おぉ、そうや。楽しかったんやろ?」

    私:「うん。で、今度は関東組で飲もうってはなししててさ。でも、東京日帰りは結構バタバタだなぁって言ってたらさ、パパがさぁ。」

    夫:「おぉ。」

    夫の膝で寝ていた猫がムクリと起きて私を見る。

    私:「バタバタだけど、月曜朝は、お弁当とかあるし帰ってこないとなぁって言ってたら、『弁当、1日くらいならなんか買ったりすれば何とかなるから、泊まってくれば?』って。神かなと思った。えっ?いいの⁉︎えっ?ホントに⁉︎って聞いたら、『1日くらい何とかなるやろ〜、泊まってこればいいやん』って言ってくれたじゃん。」

    猫が私に「ナァ」と、か弱く鳴いた。
    察しのいい子。

    夫:「おれが?そーだっけ……?」

    私:「え?まじで!?おぼえてないとかある?」

    夫:「んー、言ったっちゃ〜、言った気もする。」

    私:「そもそもさぁ、子どもたちが赤ちゃんのときだって、平気でパパ、全然ぜーんぜん飲みに行っちゃってたしさぁ。仕事だって、今より全然ぜんっぜん遅かったし。やっとパパ休みだー!ってなっても、早朝から野球いっちゃっててさぁ。結局、私ずっとワンオペだったからね。」

    夫:「………。」

    猫は今度、夫に向かって、「ナァー。」と鳴いた。
    よくお分かりで。

    私:「で。ようやく、私、やっとまた飲みに行けたりするかな〜って、言ってたらさぁ。『そうだよ、行けばいいじゃん!』って、パパ、言ったんだよ?」

    ここにきてやっとこさ、完全に分が悪そうなのを察知したらしい夫は、ソファーに深く座り直す。

    夫:「……泊まりやったな…。そやな。」

    私:「だよ。」

    夫:「あの、あれ、どこ泊まるんやったっけ?」

    今度は私が、#なんのはなしですか な顔をした。

    だってまだ、泊まるところとか全然言ってなかったし。もちろん秘密裏にお宿もおさえてあったし、彼のことだから、適当に言っても通じたかもしれないけれど、ここは・正直にちゃんと。

    私:「それは言ってないよ。赤坂のビジホとれた。」

    夫:「あー、そっか。ほーん。」

    私:「明日、明後日、大丈夫?」

    夫:「大丈夫やろ。赤坂かぁ、気をつけて行けよ?」

    私:「うん、お願いしますね。」 

    夫:「おぉ。楽しんできて。」

    私:「ありがと。」


    猫が夫のお膝から降りて、窓の外を見にいく。
    やらやれ、とばかりに。


    🍄おまけ🍄
    なんはなパーティーから帰った私が、
    「どうだった?東京飲みは?」
    と夫に聞かれて、
    「飲み過ぎちゃって。#なんのはなしですか?」
    と、答えたとか、答えてないとか。

    楽しい記憶だけがちゃんとある🍄



     
     
     
    創作大賞2025中間選考通過・恋愛小説部門『Borderless 青いぬくもり』 OKAMURA×note#いつもの場所に座ってグランプリ受賞 #なんのはなしです珈ZINE掲載 まなざしを。 小説より詩的で、詩より物語的な詩的散文

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