
ネムノキ【短歌の世界に生きる植物たち】
今回のテーマはネムノキ。名前くらいは聞いたことのある人が多そうだ。
「ネム」は「眠る」の「ねむ」である。ネムノキは夕方になると(つまり暗くなると 光に反応している)葉が閉じるという習性を持っており、その様子がまるで眠るようだからこの名がついたらしい。ちなみにこの習性は「就眠運動」と呼ばれる。
同じく葉を閉じる植物で有名なものにオジギソウがあるが、こちらは触ると閉じる等刺激に反応を示すので、メカニズムはネムノキと異なる。


日本人とネムノキの歴史を探ってみると、奈良時代の万葉集にネムノキが詠み込まれた短歌があるので、かなり長いことが分かる。
昼は咲き夜は恋ひ寝る合歓の花きみのみ見めや戯奴さへに見よ
(ひるはさきよるはこひぬるねぶのはなきみのみみめやわけさへにみよ:昼は花ひらき、夜は恋いつつ寝る合歓木の花を、あるじだけ見ていてよいだろうか。お前も見なさい。)
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/detailLink?cls=db_manyo&pkey=1461
「夜は恋ひ寝る」とあり、奈良時代にはすでにネムノキの就眠運動が知られていたようだ。
紀郎女が大伴家持に送った歌である。この歌に対して、家持はこう返している。
我妹子が形見の合歓木は花のみに咲きてけだしく実にならじかも
(わぎもこがかたみのねぶははなのみにさきてけだしくみにならじかも:あなたの形見の合歓木は花ばかり咲いて、おそらく実にはならないのでしょうよ。)
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/detailLink?cls=db_manyo&pkey=1463
恋の誘いを上手くかわしたようだ。
鎌倉時代になると、こんな歌が詠まれた。
山深みいつよりねぶと名をかへてかふくわの木には人まどふらむ
「かふくわ」とあるが、これはネムノキのこと。ネム(ノキ)は漢字で「合歓」と書く。
「合歓」は中国で当てられた字なので、本来「ねぶ」という読みはない。ネムノキの習性を見た日本人がこのような読みを生んだのだろう。
「いつより」への返答として、先ほど見た万葉集の歌の存在から奈良時代にはすでに「ねぶ」と呼ばれているなと思ったのだが…奈良時代にはまだひらがなもカタカナもなかったため全て漢字表記だったはずだ。例えば先ほどの紀郎女の歌は次のように書く。
晝者咲夜者戀宿合歡木花君耳将見哉和氣佐倍尒見代
ここからどうして読みが分かるのだろう。本当に奈良時代ネムノキは「ねぶ」と呼ばれていたのだろうか?
もう少し調べたい。
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