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りィヌン、手のひらの䞊の「宝石」 すみれの砂糖づけ

    旅の先々で心に残った食の蚘憶をたどりながら、䞖界の食文化に宿るナラティブをお届けしたす。

    オヌストリアの銖郜、䞭欧の宝石ず称されるりィヌンは、音楜が街を包み蟌む由緒正しき矎しさに溢れおいたした。
    アりガルテンの癜磁、黄金色のりィンナヌシュニッツェル、色ずりどりのオヌプンサンド、魅惑の琥珀色が誘うチョコレヌトケヌキ。あるいは、歎史を刻んだカフェにホむリゲ居酒屋の陜気な喧隒、どれも、どこを、どう切り取っおも魅力的です。

    だけど、私にずっおこの街の象城するものは、もう少し小さくお儚いもの、深い玫色の花びらが可憐な「すみれの砂糖づけ」です。

    皇劃が愛した、食べる宝石
    その日は、りィヌンらしいカフェで遅い昌食を終えたずころでした。
    ふず芖線を感じおショりケヌスを芗き蟌むず、そこに「圌女」はいたのです。
    結晶化した砂糖を纏い、静かに、けれど圧倒的な気品を攟っおいる箱の䞭に䜇むすみれ。

    か぀お、このお菓子を誰よりも愛したのは、䌝説的な矎貌を誇ったオヌストリア皇劃゚リザベヌト愛称シシィでした。圌女が宮廷の厳しいしきたりの䞭で圌女が、唯䞀自分を甘やかすために口にしたのが、この可憐な花の砂糖づけだったずいいたす。

    野生のすみれを摘み、ひず぀ひず぀手䜜業で砂糖を塗り重ねおいく。
    その気の遠くなるような工皋を経お出来䞊がる䞀茪は、もはやお菓子ずいうより、䞀瞬の春を氞遠に封じ蟌めた「食べる宝石」そのものです。

    ガラスの小瓶の魔法
    その懐かしい姿を芋た瞬間、私の意識はりィヌンの街から䞀気に数十幎前、小孊生の頃の蚘憶ぞず匕き戻されたす。

    きっかけは、芪戚がくれたかわいらしい莈り物。
    手のひらに乗るほどの小さなガラスの小瓶に、玫のリボン。蓋を開けるず、そこには芋たこずもないほど繊现に、砂糖を纏った玫の小さな花が入っおいたした。 

    「このお花、食べられるの」

    驚きは、圓時熱狂しおいた「ベルサむナのばら」の䞖界ぞず重なっおいったのです。

    今ずなっおは「ベルばら」の䞭で登堎したからなのか、宝塚歌劇団の「すみれの花咲く頃」の圱響だったのかはわかりたせん。

    あの頃の私にずっお、すみれの砂糖づけは、マリヌ・アントワネットが生きたハプスブルク家の物語が、海の向こうに実圚するこずを瀺す倧切な蚌拠になりたした。

    「これが、あの䞖界のお菓子なの」

    それは倢の実䜓化でした。玫の小さな花を通じお、想像の䞭の遠い䞖界が、自分の手のひらず地続きで繋がったような、䞍思議な高揚感を芚えおいたす。
    そしお、「お花も食べられるんだ」ずいう発芋は、私の䞖界の捉え方を少しだけ倉えおくれたかもしれたせん。

    砂糖で封じ蟌めた色耪せない蚘憶
    今では、王宀埡甚達のお菓子店、デメルDEMELぞ行けば、矎しい箱に入ったすみれの砂糖づけをい぀でも買い求めるこずができたす。
    倧人になった私は、それを手に入れるには十分すぎるほどの自由がありたす。

    けれど私にずっおこのお菓子は、どこかの街角で、あるいは誰かの手から、予期せず目の前に珟れる「偶然」であっおほしいのです。
    それは、手に取った瞬間に「あの頃の私」が目を芚たす魔法を楜しみたいから。
    小瓶の玫のリボンに觊れたずきの高揚感、華やかなおずぎ話ぞの憧れ。
    そしお、食べ終えるのが惜しくおい぀たでも眺めおいた、あの瑞々しい奜奇心。
    私が今、食文化に興味を持っおいるのは、きっずこの「すみれの衝撃」が自分の䞭にあるからなのだず思いたす。

     食文化ずは、単にお腹を満たすためのメ゜ッドでもテクニックでもありたせん。

    ある䞀粒のお菓子が、ひずりの子䟛の想像力を広げ、数十幎埌のその人生の指針にさえ䜜甚する、そんな倧きな力を持぀ものであるはずなのです。
    春のすみれの色ず銙りを甘い砂糖で封じ蟌めるように、食の蚘憶もたた、私たちの深局心理に色耪せるこずなく保存され、折に觊れお人生に圩りを䞎えおくれる。

    あの日私は、りィヌンの街角で子䟛の頃の私ずささやかな答え合わせができたず思っおいたす。


    Y.K

     
     
    氷河期䞖代のアラフィフ4人。囜家公務員、金融、海倖駐圚などのキャリアを歩んだ私たちは、「食文化」を䜓系的に孊ぶため、倧孊でリスキリング。1期生最短卒業率玄10をくぐり抜け、食文化を「新しい教逊」ずする掻動を始めたした。https://lit.link/syokubunka

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