
売れる!ための作曲方法
【特別対談】SWEET GIGAYUUの「売れるためにやるべきこと」
爆発的に売れる曲を作るには、一体どうしたら良いのか。
結成以来、全く売れる気配の無いバンド
「SWEET GIGAYUU(スウィート・ギガユウ)」。
明るい光を放ちながら突っ走るGIGAと、それを静かな湖水のような優しさで見守るYUUが、「売れるための法則」について語り合いました。
■ 結局、あれをやるしかないという結論
GIGA:ねえ、YUU。あたくしたち、
SWEET GIGAYUUがちっとも売れない理由についてさ、昨日、お布団の中で3秒くらい真剣に考えてみたんだよね。
YUU:3秒は少し短い気もするけれど、考えてくれたのは嬉しいな。…何か分かったの?
GIGA:音楽の世界って、定期的に「昔のあのノリ、めちゃくちゃ良くない?」ってお祭りが始まるよね。
YUU:たしかに。80年代のきらきらした都会的な音楽が世界中で急に流行ったり、最近だと平成のノリが「エモい」とか言われて大爆発したりね。
GIGA:っていうことはさ、YUU。あたくしたちが今、一生懸命「新しい音楽」を作ろうと頭を悩ませているのって、もしかしたら一番の遠回りなんじゃない?
YUU:遠回り……というと?
GIGA:だって、時代がグルグル回ってるならさ、あたくしたちが今、あえて「古いノリ」で待ってれば、そのうち時代の方が勝手に1周回って、あたくしたちの場所に追いついてくるはずじゃん!
YUU:なるほどね…
GIGA: 自分から未来に走っていくんじゃなくて、じっと座ってタバコでも吸ってれば、未来が勝手に迎えに来てくれるんだよ。効率!
YUU:効率って。
でも、たしかに流行の最先端を追いかけるのは、終わりのない徒競走みたいなものだもんね。
GIGA:うん。となるとね、あたくしたちの音楽にはね、「外国」が圧倒的に足りないんだよ。
YUU:……外国?
GIGA:外国! 日本の流行歌の歴史を頭の中からずらっと引き出して、並べて、細かく解析してみたんだけどさ。
昔に売れている曲って、一番の聴かせどころで唐突に外国人の名前を叫び出したり、何度も連呼したりするパターンがあるの。
あれをやれば、あたくしたちも一発で、うな重とか食べながら旧車を転がせる身分になれるはずなんだ。
YUU:それはスゴイね。でも、唐突に外国人の名前を叫ぶって、どういうこと?
■ 傷だらけの彼女と、詰め寄る男の謎
GIGA: 例えばね、まず真っ先に出てくるのは、やっぱり「ローラ」。
YUU: ローラ…?
西城秀樹さんかな?あの情熱的な曲?
GIGA: そう、傷だらけの!
あたくし、あの曲の歌詞をじっくり頭の中で再現してみたんだけどさ……ローラ、ものすごい追い詰められてない?
YUU: えっ? 追い詰められている?どちらかというと、すごく深く愛されているお話だと思ってたけれど。
GIGA: だってさ、歌詞によると、ローラは「目の前で震えている」らしいんだよ。
それなのに、歌っている人が「ローラ!」って何回も、ものすごい勢いで連呼して詰め寄ってくる。
あたくし、自分がローラだったら耳を塞いでお布団の中で丸くなっちゃうよ。
どうなってるかな、あの二人の関係……。隣人がいたら、お警察をお呼びされてしまうよね?
YUU: ふふ、言われてみればそうだよね。
目の前で人が傷だらけで震えているときに、その人の名前を大声で叫ぶのって、客観的に見ると少し感情の出力が過剰というか……
あ、あの、ローラってきっと外国の方だよね?
GIGA:うん、お名前の響きからしてきっとそうだよね。
YUU:そもそも言葉は通じているのかな? 傷だらけで震えているローラに、日本語であれこれ熱く詰め寄って、ちゃんと意味が伝わっているのかどうかが、私はちょっと心配になってきたよ。
GIGA:ね。もし日本語がわからなくて、傷だらけで震えているなら、あたくしなら病院に連れて行くよ。 ホスピタリティ。
YUU: ホスピタリティの使い方違くない?
GIGA:…
■ メリー・アンの正体
GIGA:じゃあさ、次はTHE ALFEEさんの「メリー・アン」。これも時代を揺るがすくらい売れまくったよね。
でね、あたくし思ったんだけど……「メリー・アン」って、コンビなのかな?
YUU:コンビ……って、どういうこと?
GIGA:やすよ・ともこさんみたいな感じでさ、メリーさんとアンさんって二人組なのかなって。
YUU:ふふ。二人組説…。
メリー・アン(Mary Ann)はね、一人の女性の複合名なんだよ。ヨーロッパの古い文化で、聖母マリア様と、そのお母様である聖アンナ様からお名前をいただいて、ひとつに繋げることがよくあるんだって。
だから、やすよさんとともこさんみたいに舞台に並んでいるわけじゃないと思うよ。
GIGA:なーんだ、そうなの!? あたくし、てっきり二人組かと思ってずっとモヤモヤしてたんだ。
すっきりした。あとね、もうひとつ気になるのが、メリー・アンはバルコニーにいるらしいんだ。
YUU:そうだね、歌詞にもそんな描写があるよね。GIGA:バルコニーって、日本の一般的なアパートのベランダとはちょっと違うでしょ?
ヨーロッパの石造りの建物とかにある、ちょっと突き出た柵のあるところでしょ?
そこに佇んでいるメリー・アンを、下から見上げている。これ、一体どこの国の話なんだろうね。
なんか、日本とは思えないんだよね。チャペルの鐘が聞こえるって歌詞もあるし。
YUU:そうだよね。どこなんだろう? アルフィーのみなさんの地元が、実は隠れキリシタンの暮らす静かな島だった……なんてことはないもんね。
GIGA:ないでしょ! 都会のど真ん中でしょ!
YUU:ふふ、そうだよね。
GIGA:んー…多少設定に無理があったとしても、外国人の名前を繰り返し、さらにそこはかとなくキリスト教を匂わせる。そういうやり方もあるのかな?
■ 感謝されすぎるモニカと、二度現れたジュリア
GIGA: じゃあ次は吉川晃司さんの「モニカ」。
これも売れたでしょ!
モニカへの感謝が止まらない名曲!
YUU: 感謝?
GIGA: そうだよ!「オー、サンクス、サンクス、サンクス、サンクス、モニカ」って、すごいサンクスっぷりだよ!大感謝祭!
YUU:祭では無いと思うけど、たしかに言ってるね。
あんなに真っ直ぐに、繰り返されるリズムで感謝されたら、モニカだって「どういたしまして!」って受け入れるしかないよね。
さっきのローラに対する詰め寄りに比べたら、モニカとの関係はすっごく健康的で、風通しが良い気がする。
GIGA:うん。サンクス連呼。しかも8月に。
YUU:ふふ。歌詞によると8月だね。あと、 海辺でやってる可能性あるね、これ。
GIGA:うん。でもね、その感謝の裏には、激しい恋の終わりとか、一瞬のきらめきに対する切なさが隠されているみたいだよ。
YUU:そうだね。それをカタカナ英語で「サンクス」と歌うことで、その距離感が、当時の若者たちの心に刺さったのかな?
GIGA: そうだよきっと!
やっぱり売れる曲には「外国」が必要なんじゃないの?
……あ、あとね!チェッカーズの藤井フミヤさんと、LUNA SEAの河村隆一さんって、どっちも「ジュリア」絡みの曲を歌ってるよね?
YUU: うん、そうだね。「ジュリアに傷心」と「ジュリア」。
GIGA: ジュリア!時代を越えて愛されてるよ! これはすごい。河村隆一さんは「ジュリハア」って言ってる気もするけどね。
YUU: ふふ。そうだね。
ジュリア(Julia)っていう名前は、音韻的に言うと「ジュ」という濁音の力強さと、「リア」という引きずるような甘い響きが同居してて、母音の並びも綺麗だから、メロディに乗せたときに声がすごくセクシーに伸びる性質があるのかもよ。
GIGA: なるほど! 言葉の響き自体に、最初から色気が組み込まれてるんだ。
だからフミヤさんが1回やったにも関わらず、隆一さんも、ジュリアを選ばざるを得なかったんだってことかな。
やはり…外国人の名前を叫ぶシステム、あたくしたちも導入するしかないでしょ。
■ 恥ずかしい?英単語の羅列大会
GIGA: あとね、外国人の名前だけじゃなくて、売れる曲ってもっと「外国」が必要なんだ。
……そこで英単語! 唐突に、しかも中学校で習うような分かりやすい英単語を入れるの!
YUU: あ、それもよくあるね。日本語の文章の中に、突然英語をねじ込むみたいな感じ。
GIGA: そうそう! それをあたくしたちも、どんどん取り入れてみようよ。
もっと「外国」を足さないと。
さあ……王道の英語と言えば?
YUU: ……えっと、私?
……「Yeah(イエー)」……?
GIGA: いいねえ! じゃあ次はあたくし。
「Wow(ウォウ)」!
YUU: なんか、こうして言葉だけで言うのって、すごく恥ずかしいね……。
次は、「Oh(オー)」とか…。
GIGA: 大丈夫、恥ずかしがったら負けだよ! どんどんいこう。「Forever(フォレバー)」!
YUU:フォレバーって…すごく、カタカナだね。
じゃあ……「Baby(ベイビー)」……。言ったあと、ちょっと顔が熱くなるね。
GIGA: 勢いで行かないと!ほら!売れないよ!
「Midnight(ミッナイ)」!
YUU: ふふ。ミッナイ…。
これは?「Fly away(フライアウェイ)」。
GIGA: いいねー!そこからの、
「Destiny(デステニー)」!
YUU: ふふふ。デステニーって…。
じゃあ、車で駆け抜ける、
「Highway(ハイウェイ)」。
GIGA: あたくしのそばにいて!
「Stay with me(ステイウィズミー)」!
YUU: きつく抱きしめて……
「Hold me tight(ホーミタイ)」……うう、やっぱりこれ、恥ずかしいよ…。
GIGA: あはは!いいの出たね!ホーミタイっ!
孤独な時は、「Loneliness(ロンリネス)」!
YUU: あ…新しい私になる、
「Brand-new(ブランニュー)」。
GIGA: サビの前には! 「Get down(ゲッダン)」!
YUU: ゲッダン…!ふふふ。
美しき思い出、「Memories(メモリー)」。
GIGA: 昂ぶったらとにかく!
「Runaway(ランナウェイ)」!
……こんなもんかな?
どうよ、この単語を並べるだけで、何となくミリオンセラーの匂いがしてこない?
YUU: うーん、確かにどの単語も、単体で強いイメージを持っているよね。日本語だと「永遠に」って言うと少し大袈裟に聞こえるけど、「フォレバー」って歌うと、軽みが出るというか…。
カタカナ英語っていうのは、感情の輪郭を少しだけ抽象化して、誰にでも当てはまる形にする効果があるのかな。
GIGA: そうなんだよ! 日本語のままだと、生々しすぎてちょっと重たいメッセージも、カタカナ英語にするだけで、急に軽やかでおしゃれな空気を出すんだって。
あたくしたち、今まで真面目に日本語の情緒とかにこだわり過ぎてたのかも。
もっとこう、脳に直接効く「外国」をドバドバ入れるべきだったんだよ!
■ あたくしたちが叫ぶべき、最高の外国人
YUU: そっか。外国人の名前を叫ぶことと、お決まりの英単語を散りばめること。この二つを組み合わせれば、SWEET GIGAYUUの新しい道が開けるかもしれないんだね。
GIGA: そうだよ! というわけで、ここからが本題。あたくしたちの曲の中で叫ぶ外国人は、誰にする? ローラやモニカ、ジュリア(ジュリハア)はもう先人が開拓しちゃったから、あたくしたち独自の、しかも聴いた人が「おっ」となるような名前にしたいんだよね。
YUU: 誰がいいかな……。あんまり普通すぎる名前だと、他の曲に埋もれちゃうし、かといって難しすぎる名前だと、みんなが一緒に叫べないもんね。
GIGA: あたくしね、もう決めてるの。あたくしたちの好きな、あの最高にかっこいい男たちの名前にしようよ!
YUU: 私たちの好きな……?
GIGA: そう! 「シルベスター」、「アーノルド」、そして「ジャン」! これしかない!
YUU: ……!
GIGA: どう? この三人が並んだときの、圧倒的な存在感と、絶対的な安心感!
YUU: それって……シルベスター・スタローンさんと、アーノルド・シュワルツェネッガーさんと、ジャン=クロード・ヴァン・ダムさん……だよね?
GIGA: そうだよ! 1980年代から90年代のスクリーンを血と汗で彩った、ハリウッドの
「漢(おとこ)」たちだよ!
想像してみてよ、最高潮のところで、あたくしたちが「シルベスター!」って拳を突き上げて叫ぶ姿を。
YUU: ふふふ。それはすごい迫力だね。でも、GIGAちゃん、その三人の名前を叫ぶと、曲が急に、なんていうか……B級アクション映画みたいになっちゃわない?
SWEET GIGAYUUって、一応せつないメロディなんかも大切にしてるでしょ?
GIGA: いいんだよ! もう、売れたらいいんだよ!
旧車転がして、高速乗って、うな重食べたいの!
むしろ、そのゴツゴツした名前を、あたくしたちのメロディに乗せるからいいんだよ!
YUU: すごいよくばりだね……。
けど、あえて彼らの名前を、私たちのメロディとか、コーラスで包み込む。それはちょっと、面白いかもしれないね。
GIGA: でしょ? じゃあ、さっき挙げた売れる英単語と、この三人の名前を取り入れて曲を作ってみようよ!
■ 売れる!作曲開始!
YUU: う、うん、やってみようか。じゃあ、まずはイントロから、どんな風に入る?
GIGA: イントロはね、とりあえず、 「……イエー。……ウォウ。……オー。」とか言うでしょ。
YUU: ふふ。いきなりだね。目を閉じたりして情感たっぷりにやるのかな?じゃあ、Aメロはどんな?
GIGA: Aメロは、都会の片隅で孤独に震えている主人公。まさに「ロンリネス」だよね。 「ミッナイのハイウェイ、あたくしの心はブランニュー」みたいな感じで、さっきの単語をこれでもかってくらい詰め込むの。
YUU: なるほど、情報多いけど、響きはすごくスムーズだね。じゃあ、Bメロで少しずつ感情が高ぶってきて、サビ前に向かっていくところだ。
GIGA: そう! Bメロの最後で、ドラムがドコドコドコドコって激しくなって、そこですかさず叫ぶ!
「……ホーミタイ! ステイウィズミー! シルベスターーーッ!!」
YUU: 出たね。いきなりスタローン。
でも、不思議と「シルベスター」の「ター」の部分が、ロングトーンで綺麗に伸びそうだね。
GIGA: そうなんだよ! 「ター」は母音が「ア」だから、一番声を張り上げやすいの。西城秀樹さんの「ローラ!」の「ラ」と同じ原理だよ。あたくしたちは科学的にサビを構築しているんだよ!
YUU: たしかに……理にかなっているのが、ちょっと悔しいな。じゃあ、二番のサビはやっぱり、あの人?
GIGA: 当然でしょ! 二番のサビ前は、運命に立ち向かう「デステニー」を持ってきて、そこから一気に爆発するの。 「……フライアウェイ! ゲッダン! アーノルドーーーッ!!」
YUU: そうなるよね。いきなりシュワツネ。
あの不屈の肉体がメロディに乗るわけだね。聴いている人も、なぜか「よし、明日も頑張って生きよう」って気持ちになりそう。
GIGA: あはは!シュワツネって言わないよね!
じゃあ、最後の最後、曲のクライマックスである大サビはどうする?
YUU: 最後はやっぱり、みんなの思い出を一つにする「メモリー」とか言って…
そこから、満を持して……。
二人: 「ジャン・クロード・ヴァン・ダム!!!」
GIGA: あははは! 最高! フルネームで!
YUU: ふふ、ジャンだけフルネーム。
でも、「ジャン」だけだとちょっと短くて、大サビの余韻が足りないかもしれないから、フルネームにすることで、グランドフィナーレ感が出るよ。バックスピンキックが決まったときのような、鮮やかな爽快感があるね。
GIGA: そうそう! 最後に、美しく180度開脚して着地するようなイメージだよ。これでSWEET GIGAYUUの代表曲「マッスル・デステニー(仮)」の完成は近い!
■ 売れる予感と、あたくしたちのこれから
YUU: 「マッスル・デステニー」……タイトルはちょっと…変な格ゲーみたいだけど、「外国」がたくさん入ってるし、売れる曲ができるかな?
GIGA: できるはず!あたくしたち、今までこだわりすぎてたんだよ。
個性とか、独創性とか…そんなんじゃ売れないんだって。「マッスル・デステニー」には、
惜しげもなく外国人と英語をぶち込むんだから今度は売れるよ!きっと!
YUU: ふふ。売れるといいね。ベタベタなラブソングに、大量の英語と、圧倒的な外国人を混ぜ込む。それが私たちが売れるための第一歩だね。
GIGA: うん!さあ!曲を作ろう!
YUU: うん、がんばろう。
そうして出来上がったのがこの曲みたいです。
あとこちらも。