ショートショート #雨の日の傘
朝は快晴だった。天気予報だって「曇り」だと言っていたのに…
帰宅途中、容赦のない大雨に見舞われた。
雨宿りの軒下で、濡れた服を気にしながら呆然と立ち尽くす。あ〜もう、ついてないわ。溜息をついてぼーっと雨空を仰いでいた、その時だ。
どこからか、聞き覚えのある節回しが聞こえてきた。
「アホが見〜る〜、ブタのけ〜つ〜」
下校途中の小学生が、雨合羽を着て水たまりを跳ねながら歌い去っていく。私と目が合った気もする。
何だそれ!と一瞬ムカッとした。だが、ずぶ濡れで空を仰ぐ自分の姿は、確かに客観的に見れば情けない「豚のケツ」を拝んでいるようなものかもしれない。絶妙なタイミングとあまりに秀逸なフレーズ。
「……負けたな」
私は怒りを通り越し、名もなき子供たちの間で受け継がれてきた口承文芸――フォークロアの圧倒的な洗練度と戯れ心に、雨の中でただ脱帽するしかなかった。(397文字)
すずうさ🐇
