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Photo byaries_sunrise

【シロクマ文芸部】🍲具は少ない日があってもいい。

    🌿神薙鈴音

    さてと。

    鍋の具はどうしよう。


    あまり体調がいいわけではないから、
    たくさんの具の用意は難しい。


    いつもなら
    豚肉に白菜、椎茸、えのき、白ネギ、お豆腐……

    そして、すりおろし大根にゆずポン酢しょうゆ。

    それが、うちの定番だ。


    でも、大根なんて今の状態じゃすりおろせない。

    それは夫に頼むとしようか。

    なんてスッと “夫に頼む” と
    書けるようになったわたしに、
    ふとホッとする。


    若い頃の私は、人に頼むのが苦手だった。

    長男長女に多い“しっかり者”という思い込みのまま、いつの間にか、全部を抱え込んでしまっていた。


    頼ることは迷惑、
    弱さを見せてはいけない——

    そんな風に言い聞かせていたのかもしれない。


    そこから抜け出すのに、
    ほんとうに時間がかかった。


    いまは、できない日はできないと言える。

    頼れるところは、そっと頼ってもいいと思える。


    そしてーー

    減らした具材のぶんだけ、
    夫の「それで十分だよ」という静かな声が、
    やさしく染みてくる。

    それを認められた自分に、
    ひとり小さく微笑む。

    鍋だって、具が少ない日があっていい。

    無理に盛り込まなくても、
    必要なものだけでじんわり温まる。


    人もきっと、同じなんだろう。

    背負いすぎず、
    いまの自分に
    ちょうどいい“具材”だけを選んで、
    静かにあたためてあげればいい。

    足りないところがあるからこそ、
    そっと差し出される優しさに
    気づける日もある。

    引き算の美学、
    なんて言うと大げさだけれど。

    そんな暮らしができたら、
    少しだけやさしい明日が来る気がする。



    今回の文章は、
    シロクマ文芸部さんのお題「鍋の具は」
    から生まれたものです。


    台所のひとこまをきっかけに、思いがけず、
    自分の内側の変化に触れる時間になりました。

    お題があると、自分の奥にしまっていた気づきがふっと顔を出すことがありますね。

    シロクマ文芸部のみなさま、小牧さん、ここまで読んでくださったみなさま、本当にありがとうございます💐

    寒い日に、ぜひとも、おいしいお鍋を堪能されてください🫕


    #エッセイ
    #日々のこと
    #心のこと
    #無理しない生き方
    #自己受容
    #シロクマ文芸部
    #鍋の具は


     
     
     
    神薙鈴音(かんなぎ すずね) ことばは、心を鎮める舟のようなもの。 書くたびに、凪へと向かう旅をしています。

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