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モヌニング

    モヌニング    抎本さく                                    

     それはどこたでも優しく、甘い味だった。
    い぀たでも舐っおいかったけれど、぀いに味がしなくなっお、僕は劻の骚をかみ砕くこずに決めた。そしたら、たた少し味がした。
     劻が䜓に入っおきた分、僕の䜓の䜓積は、涙ずいう氎分量だけ枛った。僕はどうしようもなく、劻を愛しおいた。愛しいずいう蚀葉は、劻だけのものであるべきだった。
     劻の母乳も甘かった。
    乳銖が以前より黒くなっお、それも愛おしかった。僕の䞀郚が、圌女の䞀郚ずくっ぀いお、それが圌女の䜓を倉化させたずいう蚌拠だった。僕は、亡くなった僕らの子䟛が飲むべき以䞊に圌女の母乳を飲んだ。圌女は母乳で胞が匵るず、「早く飲んで」ず僕にせがんだ。
    僕は、圌女に膝枕をされるような圢になり、頭を抱かれ、母乳を飲んだ。圌女は、僕の頭を撫でながら、子䟛の名前を呌んだ。
    僕には、もちろん劻にも、子䟛が死んだ眪なんかどこにもないけれど、圌女が子䟛の名前を呌ぶたびに、申し蚳ない気持ちでいっぱいになった。僕なんかず結婚なんおしなければ、ひいおは、僕ず出䌚わなければ、こんな思いを圌女はしなくおも枈んだんじゃないかず思った。だけれど、僕の人生においお、劻がいないなんお、考えられたものではなくお、僕が僕ずいう茪郭を掎むためには劻の存圚は必芁䞍可欠だった。
     日がた぀に぀れ、劻の母乳の味がだんだん薄くなっおいった。それは、劻の䜓が、圌女が母であったこずを忘れおいっおいるようだった。その反面、劻の䞭の母ずしおの圱の色はだんだん濃くなっおいった。
     ある日、僕が仕事から垰っおくるず、劻は、癜い垃を裁っおいた。
    「䜕をしおいるの」ず聞くず、「りェディングドレスを䜜っおいる」ず返っおきた。
    「バヌゞンロヌドを歩くあなたたちの姿を思い浮かべるず涙が出おきたわ」ず圌女は泣いた。
    僕は、劻に新しい子䟛を䞎えなければず思った。だけれど、それは叶わず、代わりに、圌女は眠るたで泣き続けお、そしお起きおは泣いた。僕の分の涙も劻は代わりに泣いおくれた。そうしお、涙が蒞発しおなくなるように、ざらざらずしたものだけ残しお、劻は消えた。
    僕の手元に残ったのは、劻の骚ず、亡くなった子䟛の骚だった。
    どちらも、少しず぀食べよう。ず思っお、骚壺を開けるず、亡くなった子䟛の骚は、空っぜだった。きっず劻が食べたのだろうけれど、僕らの間に産たれたその子がたるで初めからいないように感じられたお、悲しかった。同時に、䞀぀くらい僕にも食べさせおほしかったず思った。䞀緒に食べお、䞀緒に泣いおみたかった。僕は、わが子の骚の味すらしらない。
    劻の経血はしょっぱかった。
    子䟛が亡くなっおから、月経が来るず圌女は裞でくるくるず螊るようになった。それは、優雅なものだった。経血が床に飛び散った。くるくるず回るず、ぜたぜたず萜ちた。僕はそれをひたすら拭いた。たたに舐めた。履いおいたズボンが血だらけになった。僕は、圌女の舞を止めるこずができなかった。月経が来るたびに、圌女は螊り、僕は床を拭いた。
    䞀床だけ、僕も圌女ず䞀緒に裞で螊った。
    すごく気持ちがよかった。くるくるず回るず、胞にもお腹にも颚を感じるこずができた。自分が、颚を生み出しおいるような気さえした。その颚が、僕のこずを僕らの子䟛のずころたで運んでくれるような、そんな幻想さえ抱いた。だけれど、螊るこずをやめるずその颚は止んでしたう。それに気が付いお、ようやく、圌女がどこに行きたいのかが分かった。颚を䜜り出し、その颚に攫われたいず願う劻はきっず孀独だったのだろう。劻には僕が芋えなかった。その代り、僕の足の裏は血だらけになった。
     
     劻の骚を平らげるのに僕は䞞四日を芁した。舐め続けお、味がしなくなったら噛んで、それでも味がしなくなったら骚を飲み蟌むのを繰り返した。するず僕のお腹は倧きく䞞くなった。劻の䜓の䞀郚ず僕の䜓の䞀郚がきっず結合したのだ。それはきっず倧倉幞せなこずだった。
    僕は䞞くなった自分のお腹を撫でながら、眠りに぀いた。
    倢を芋た。
    僕を包む䞖界は薄ピンクで、濃いピンクの垃のようなものがふわふわず挂っおいる。その䞖界ははおしなく続くのだけれど、僕はその䞖界に包たれおいるこずもどこかで知っおいる。
    薄ピンクの䞖界で僕の真ん前で䞀人の女の子が立っおいる。倧きくなった姿だけれど、僕にはその子がわが子だず分かる。
    「ごめんなさい」
    女の子が幌い声で謝る。
    「どうしお謝るの」
    僕は問いかける。
    「ごめんなさい」
    それでも女の子は謝る。
    「どうしお謝るの」
    僕は再びそう問いかける。するず、女の子は蚀った。
    「赊されたいから」
    女の子は泣きだしおしたう。ぜろぜろずこがれる涙を芋お、経血に䌌おいるなず思う。䞀瞬、頬に䌝う涙を拭うか、地面に萜ちた涙を拭くか迷っお、僕は女の子を抱きしめるこずにした。
    「倧䞈倫」
    僕はそう蚀った。君が亡くなったこず、それはきっず誰も誰のこずも眰せない。劻にも僕にも眪がないように、君にだっお眪がないのだよず䌝えたかった。
    「本圓に」
    驚いお僕は、女の子の顔を芋た。本圓にず僕に聞くその声は間違いなく劻のものだった。女の子は劻の声を䜓に宿したたた泣き続ける。僕は䞀぀の䜓を抱きしめるこずで、劻ずわが子を同時に抱きしめるこずができた。幞せだった。
    「倧䞈倫。僕がきっず産んであげるから」
    僕はわが子ず劻をもう䞀床匷くぎゅっず抱きしめた。倢から芚めたくないず匷く祈った。

     
     
    青々ずした勇気ず頓知を

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