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想暮(おもいくる)clip -日々の景色を留めた、三つの断片-

    序


    日々に溶け込む甘い記憶は形を成さず
    届かぬ想いが層を重ね、既に遠い暮らし

    狂う程に明日は続き、拾い集めた言葉もとうに彼方へ

    誰にも気づかれないままに景色を見渡し
    留めたのは答えの出ない日の忘れもの

    地平のその先に季節の面影を望み
    生活は、おもいくる刹那の轍

    いとけなく今日はざわめき、静かに呼吸は一日を灯す

    名前のない感情は深い場所に埋もれ
    見晴らした風景にいつかの淡さを添え

    人々が描く時間の細部になる

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    五月の陰が薫る


    その緑色は不思議に影を魅了した

    葉の間から覗く深さは、光の誘惑から逃れて間もない

    枯れてしまうともわからずに
    踊る草葉は祈り、上へと手のひらをかざす
    見つからないように、携えた想いが土の中から囁いた

    遥か先から吹く風は髪の間を通り抜け
    始まる事がないまま新しさをさらっていく
    鞄に忍ばせた恵みが、見つからない名前を求めては消える

    同じ形のない揺らぎの中に、現れてはまた薫る
    遠くに聞こえたピアノの音が、一つずつ拾いあげていった

    数えきれない言葉は意味を成さず
    肌触りだけが緑の中へと埋もれていく
    調い始めた色の行方は、隠れた気配を追っていた

    程なく潤いを待ち、緑はまた少しだけ背伸びをする

    陰に憧れ葉裏に触れた

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    緑の束に宿る


    束ねられた緑に残る空からの忘れ物は
    細い葉の上に小さな透明さを作る

    誰かの涙に似た粒は、風を受け揺れる間に消える
    無数の呼吸を携え、絶えず見つからないように

    足場の気配から土の懐かしさが香る
    生活に根を張ることは出来ず、想う輝きと陰り
    伸びる線の産毛が絡めとり、綺麗に落ちることもなく

    冷たさを保ちながら振動を重ね
    少しの重さで凛と弾かれた音を待つ

    いつまでも届かない響きは
    漂いながら天候の契りをほどいていく
    くるめくばかりの雲の切れ間に

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    遠くならない景色


    山裾は間もなく訪れる候を向こう側へ隠す
    外れた野道から望むも景色はまだ遠くならない

    消えかけた標を線でなぞり、緑に沈む午前が居残る
    決めかねた先へ風を譲り、道は静かに足元で別れた

    選ばない行き先は影を落とし、やがて群衆に変わる人の形

    何かに配置されたように並ぶ建物は
    その大きな手のひらで仰がれ揺り返す

    彼方からひとしきり円にそよぐ
    何処かで焚かれた香が作る生活の輪郭

     
     
    年末に向けて生活が多忙になる為、更新をしばらくお休みします スキをくださった方、ありがとうございました また詩を書きたくなった頃ひっそり戻ってくるかもしれません いつか、たった1人の大切な人に 届けばいいな、と思いながら 旅や日常の隅っこに落ちている 詩や散文を書いています

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