
神様の探し物。【ショートショート】
「時計、失くしたんだ」
起き抜けの私に、神様は慌ててそう言った。
伸びをして部屋を見回すと、
嵐の後のように物が散乱していた。
どういうこと?
神様は呻きながら
私の机や箪笥、ドレッサーから食器棚の中まで
手荒く引っ掻き回している。
「何やってるのよ、ここは私の部屋よ!
勝手なことしないで」
「だってないんだもん、時計が」
白い絹地の服の裾が抽斗に挟まったまま、
神様は半べその潤んだ瞳で振り返る。
仕方ないな。
私はわざと大きな溜息をつくと、
無言で時計探しを手伝い始めた。
神様は私をみると安堵して微笑み、
小さな声で
「ありがと」
と言って
ベランダの物置きの中を覗きに行った。
なんだってそんな大切なものを失くしたのだろう。
神様が時計を失くしたら
世界の時間が止まってしまうというのに。
お陰で今の私は寝坊大遅刻を
免れているわけだけれど。
窓の外の街はしんとして何も動かない。
私たちを除いては。
一向に進まない太陽は
探し物に夢中な私たちを見下ろし続けていた。
『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』
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田原さんの企画に
参加させていただきました。
ありがとうございます。