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Photo byibaraki_nakai

神様の探し物。【ショートショート】

    「時計、失くしたんだ」

    起き抜けの私に、神様は慌ててそう言った。
    伸びをして部屋を見回すと、
    嵐の後のように物が散乱していた。

    どういうこと?

    神様は呻きながら
    私の机や箪笥、ドレッサーから食器棚の中まで
    手荒く引っ掻き回している。

    「何やってるのよ、ここは私の部屋よ!
    勝手なことしないで」

    「だってないんだもん、時計が」

    白い絹地の服の裾が抽斗に挟まったまま、
    神様は半べその潤んだ瞳で振り返る。

    仕方ないな。

    私はわざと大きな溜息をつくと、
    無言で時計探しを手伝い始めた。
    神様は私をみると安堵して微笑み、
    小さな声で

    「ありがと」

    と言って
    ベランダの物置きの中を覗きに行った。

    なんだってそんな大切なものを失くしたのだろう。
    神様が時計を失くしたら
    世界の時間が止まってしまうというのに。
    お陰で今の私は寝坊大遅刻を
    免れているわけだけれど。

    窓の外の街はしんとして何も動かない。
    私たちを除いては。
    一向に進まない太陽は
    探し物に夢中な私たちを見下ろし続けていた。


    『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』

    *********

    田原さんの企画に
    参加させていただきました。
    ありがとうございます。

    #毎週ショートショートnote




     
     
    綴リスト*エッセイ.小説.空写真。日本左利き協会ホームページにてショートストーリー連載*AJINOMOTO PARK×noteコンテスト『おいしいはたのしい』審査員特別賞。秋の読書感想文コンテスト佳作。ショートショートnote杯佳作。無断転載.AI禁止です。

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