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Photo bylazy_planet

本を洗う。【ショートショート】

    僕は幸せ者だ。
    この世の美しいもので出来ているきみに選ばれ、
    その瞳に映ることを許されたのだから。薔薇もダイヤも綺羅星も、きみには敵わない。毎朝きみの瞳に最初に映るのが僕であることを誇りに思う。見つめ合うきみと僕のことを愛と呼ぶらしい。


    「どう?すごく綺麗になったでしょう」

    妻が声をかけてきたので、
    僕は読書中の本を閉じた。
    妻が洗った本からは石鹸の香りがした。
    昨日、
    妻は唐突に家中の本を洗い始めたのだった。
    この家の本の中には
    嘘や醜いものが巣喰っているのだと妻は言い、
    何かに取り憑かれたように
    石鹸を泡立てて本をこすり、
    シャワーのお湯で流し、
    庭の物干し竿に引っ掛けて干した。
    洗い終わった後の僕の愛読書の文章は
    すっかり磨かれて
    以前とは違っているような気がした。
    こんなにも甘い美辞麗句が並んでいただろうか。
    妻は本に顔を寄せて匂いを嗅ぐ。

    「まだ嘘の匂いがする。洗い直すから返して」

    僕はため息をついて、
    キレイゴトばかりの本を妻に手渡した。


    『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』


    ******

    いつか参加したいと思っていた企画に
    ようやくこっそり入り込ませていただくことが
    できました。
    田原さん、ありがとうございます。

    #毎週ショートショートnote

     
     
    綴リスト*エッセイ.小説.空写真。日本左利き協会ホームページにてショートストーリー連載*AJINOMOTO PARK×noteコンテスト『おいしいはたのしい』審査員特別賞。秋の読書感想文コンテスト佳作。ショートショートnote杯佳作。無断転載.AI禁止です。

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