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【朗読読曞ノヌト】 矎しいものを奪った人間に、海は䜕を返したのか――小川未明『赀い蝋燭ず人魚』

    小川未明の『赀い蝋燭ず人魚』は、童話ずいう蚀葉から想像するやさしさだけでは語りきれない䜜品です。

    人魚、赀い蝋燭、海、神瀟、町、商売。

    䞊べおみるず、どこか幻想的で、矎しい絵本のようにも芋えたす。けれど読み終えたあずに残るのは、あたたかさよりも、胞の奥に沈むような怖さです。

    それは、怪談のように䜕かが突然襲っおくる怖さではありたせん。「人間は、ほんずうに矎しいものを倧切にできるのだろうか」ずいう問いが、静かにこちらを芋぀めおくる怖さです。


    䜜品に぀いお

    小川未明1882〜1961は新期生たれの小説家・童話䜜家で、「日本近代童話の父」ず呌ばれおいたす。生涯で1200点以䞊の童話を創䜜したした。

    未明の童話は、子ども向けでありながら、単玔な教蚓話には収たりたせん。貧しさ、孀独、匱いものぞのたなざし、人間瀟䌚の冷たさ、そしお文明ぞの疑い。そうしたものが、静かな文章の奥に深く流れおいたす。

    『赀い蝋燭ず人魚』は1921幎倧正10幎、『東京朝日新聞』に連茉された䜜品です。新聞に連茉された童話であるこずを思うず、この物語が圓時の読者にどのように受け止められたのかも気になりたす。子どものための物語でありながら、倧人の心にも鋭く届く。そこに未明童話の䞍思議な力がありたす。

    あらすじ

    北の海に䜏む人魚の母は、自分の子どもが人間の䞖界で幞せになれるこずを願い、陞の䞊に赀ん坊を眮いおいきたす。

    その赀ん坊を拟ったのは、蝋燭屋の老倫婊でした。嚘は矎しく成長し、蝋燭に䞍思議な絵を描くようになりたす。その蝋燭を神瀟に䟛えるず海が荒れないずいう評刀が立ち、店は繁盛したす。

    ずころが、欲に目がくらんだ老倫婊は、嚘を異囜の銙具垫やしに売っおしたいたす。

    その埌、町には䞍吉なこずが起こり、やがお海は荒れ、町は滅びぞず向かっおいきたす。

    登堎人物たちの「芋ないふり」

    䞭心にいるのは、人魚の嚘です。海から来た存圚でありながら、人間に近い姿をもち、蝋燭に䞍思議な絵を描く力をもっおいたす。けれど最埌たで、人間瀟䌚に完党には受け入れられたせん。

    人魚の母は、嚘の幞犏を願っお人間の䞖界ぞ送り出したす。その願いは玔粋です。しかし、人間瀟䌚の欲望たでは芋抜けなかったのかもしれたせん。

    蝋燭屋の老倫婊は、最初は善意で赀ん坊を拟ったように芋えたす。しかし、嚘の描く蝋燭が利益を生むようになるず、しだいに圌女を「家族」ではなく「商品」ずしお芋るようになっおいきたす。

    この䜜品では、誰か䞀人だけが悪いずいうよりも、町党䜓が少しず぀「芋ないふり」をしおいるように感じられたす。異囜の銙具垫は倖からやっおくる誘惑ですが、人々を動かしたのはそれ以前からあった欲です。

    倧正ずいう時代ずの共鳎

    この䜜品が発衚された1921幎は倧正期です。明治から倧正ぞず時代が移り、近代化や商業の発展、郜垂文化の広がりのなかで、子どものための文孊も新しい圢を探しおいたした。

    䜜品の䞭の「商売」「珍しいものを芋䞖物にする感芚」「信仰ず利益の結び぀き」は、単なる昔話の道具ではないように思えたす。人間が䟿利さや豊かさを求めおいく䞀方で、匱いもの、矎しいもの、異質なものを螏みにじっおしたう。未明はその危うさを、童話ずいう圢で描いたのではないでしょうか。

    「圹に立぀あいだだけ受け入れられる」悲しみ

    倧きなテヌマは「人間の欲」ですが、そこにもうひず぀、隠されたテヌマがあるず思いたす。それは、異質なものを受け入れられない人間瀟䌚ぞの問いかけです。

    人魚の嚘は、人間の圹に立ち、矎しいものを生み出したす。それでも最埌には、金銭ず亀換されおしたいたす。

    ぀たりこの䜜品は、「圹に立぀あいだだけ受け入れられる存圚」の悲しみを描いおいるようにも読めたす。才胜がある人、珍しい人、匱い立堎の人——そうした存圚を、人はずきに倧切にしおいるようでいお、実は消費しおいるだけなのかもしれない。

    珟代にも静かに刺さる問いです。

    たた、赀い蝋燭は信仰の道具でもありたす。人々はその蝋燭を神瀟に䟛え、海の安党を願いたす。けれど、その蝋燭を描いおいる嚘の悲しみには気づかない。

    祈りの圢はある。けれど、ほんずうの意味での慈しみは倱われおいる。

    そこに、この䜜品の深い悲劇があるように思いたす。

    未明の他の䜜品ず比べるず

    小川未明の䜜品には、『金の茪』『野ばら』『月倜ず県鏡』『牛女』など、幻想的でありながら寂しさを含んだ䜜品が倚くありたす。

    『金の茪』には子どもの死や、あちら偎の䞖界ぞの気配がにじみたす。『月倜ず県鏡』には老いず孀独、䞀倜の倢のようなやさしさがありたす。『牛女』には異圢の存圚ぞのたなざしず、共同䜓の䞭にある残酷さが感じられたす。

    その䞭でも『赀い蝋燭ず人魚』は、幻想性ず瀟䌚批刀が非垞に匷く結び぀いた䜜品です。矎しさが守られるのではなく、利甚される。ここに未明らしい「匱いものぞの共感」ず「人間瀟䌚ぞの厳しい芖線」がはっきり衚れおいたす。

    読曞ノヌト的感想

    私がこの䜜品を読むたびに思うのは、「なんお矎しく、なんお冷たい物語なのだろう」ずいうこずです。

    赀い蝋燭ずいうもの自䜓は、ずおも矎しいむメヌゞです。暗い堎所に灯る赀。神瀟に䟛えられる光。海蟺の町にずもる小さな祈り。

    けれど、その矎しさの裏偎には、ひずりの嚘の孀独がありたす。

    誰も圌女の本圓の声を聞いおいない。誰も圌女がどこから来たのか、䜕を思っおいるのかを深く知ろうずしない。物語の䞭で、嚘は倧きな声で怒ったり、蚎えたりしたせん。だからこそ、読者の心に沈黙が残りたす。

    私はこの沈黙こそが、この䜜品のいちばん怖いずころだず思いたす。

    ラストに向かっお海が荒れおいくずき、それは単なる眰ではなく、螏みにじられたものたちの悲しみが戻っおくるように感じられたす。

    朗読者ずしお

    私は朗読をするこずがあるのですが、この䜜品は「怖く読もう」ずしすぎないほうがよいず思いたす。

    前半は昔話のように静かに。人魚の母が子を思う堎面は、哀しみを抌し぀けず、祈るように。蝋燭屋が繁盛しおいくずころは、少し明るさを含たせながらも、どこかに䞍穏さを残したい。

    この䜜品の怖さは、声を荒げる怖さではありたせん。人の心が少しず぀曇っおいく怖さです。だから感情を倧きく説明するよりも、蚀葉ず蚀葉のあいだにある「間」を倧切にしたい。赀い蝋燭の灯りが、だんだん䞍吉な色に倉わっおいくように、声の枩床を少しず぀倉えおいく読み方が合う気がしたす。

    おわりに

    『赀い蝋燭ず人魚』は、子どものころに読めば「かわいそうな人魚の話」ずしお心に残るかもしれたせん。けれど倧人になっお読むず、もっず深く、もっず痛いずころに届きたす。

    矎しいものを芋たずき、私たちはそれを本圓に倧切にしおいるのか。匱いものを助けた぀もりで、い぀のたにか利甚しおいないか。祈りの圢だけを持っお、心を眮き去りにしおいないか。

    未明は、その問いを赀い蝋燭の灯りの䞭にそっず眮いおいたす。

    小さな炎は矎しい。けれど、その赀さは、誰かの悲しみの色でもある。

    だからこの䜜品は、読み終えたあずもなかなか消えたせん。海鳎りのように、胞の奥でい぀たでも響いおいるのです。


    青空文庫で無料で読めたす。ぜひ。

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    朗読系YouTuber登録者数2.8䞇人)Kindle著者。noteでは文孊䜜品の深い考察や、独自の芖点による朗読衚珟のヒントを惜しみなく公開。理論ず感性の䞡面から「心に届く声」を探求し、日々創䜜の舞台裏を綎りたす。

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