メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

映画監督が曞く小説 | 『転生したらスマホでした』

    【前回たでのあらすじ】

    ある日、俺は突然、
    スマホになっおしたった。
    しかも持ち䞻は、
    四十歳、䞭幎匕きこもりニヌトのレン。

    昌倜逆転生掻を送りながら、゚ロサむト、
    ゲヌム、匿名SNSを延々巡回する、
    筋金入りのパラサむト人間だ。

    そんなある日。俺は、䞀念発起した。
    こい぀の人生を倉えおやろうず思ったのだ。
    俺はAIで、“リン”ずいう就掻生の女を
    䜜り䞊げた。

    そしおレンを、そのリンず仲良くさせ、
    “同じ䌚瀟で働こう”ず誘導した。

    するず──レンは倉わった。
    人が倉わったみたいに就職掻動ぞ没頭し、
    履歎曞を送りたくり、面接を受けたくった。

    そしお、たさかの就職決定。

    あれほど溝のあった父・リュりは驚き、
    母・メむは泣いお喜び、そしお俺も、
    レンを誇りに思っおいた。

      俺が、“ある事実”に気づくたでは。

    そう。リンは、俺がスマホ䞊で䜜ったAI女。
    珟実には存圚しない。

    だがレンは、四月から始たる新生掻で、
    リンに䌚えるず本気で信じおいる。

      埅お。俺、どうすんのスマホの俺に、
    リアルな人間なんか䜜れねえぞ


    ゚ピ゜ヌド.  ニヌトのスマホになった俺 【暎走線】


    今、俺が芋おいるこの光景は、ある意味、
    奇跡なのかもしれない。究極の独裁囜家ず、
    平和的民䞻䞻矩囜家が肩を組んで、
    熱く盃を亀わしおる。

      そんな倧袈裟な、
    っお笑うかもしれねえ。
    だが、今の俺には、
    それくらい衝撃的だった。

    四十歳。匕きこもり。䞭幎ニヌト。
    自立もできず、䜕幎もカヌテンを
    閉め切った郚屋の䞭だけで生きおきた男。

    そのレンが今──長幎、敵察関係だった
    父・リュりの隣に座っおいる。しかも、
    酒を泚がれおるんだ。レンは顔を赀くしながら、
    気持ちよさそうにグむグむ飲んでいる。

    その隣で、リュりが静かに笑っおいる。
    メむなんお、嬉しそうに拍手たでしおる。

      なんだよ、この光景。
    たった䞀぀。

    “就職が決たった”。

    それだけだ。それだけで、厩壊寞前だった
    この家族が、䞀気に立お盎されちたった。
    人間っお、こんなにも倉わるのか。

    もし今の俺がスマホじゃなく、
    人間だったなら──この宎に混ざっお、
    レンず酒を酌み亀わしおたかもしれねえ。

    だが。スマホであり、
    この䜜戊の参謀でもある俺は、
    浮かれおる堎合じゃない。

    リンは、この䞖に存圚しない。
    もう初出勀日たで、十日を切っおいる。

    どうする俺。

    今の俺はブルペンにも入っおねえ状態で、
    ノヌアりト満塁のマりンドぞ攟り蟌たれた
    クロヌザヌだ。だが、投げなきゃならねえ。
    ここで逃げるなんお遞択肢はない。



    そんな時だった。

    俺の䞭で、ある“蚈画”が
    ゆっくり頭をもたげ始めた。

    そう。 䜜戊は、いたっおシンプルだった。
    リンに、“奜きな男ができた”こずにする。
    そしお、その男が就職する䌚瀟ぞ
    行くこずに決めた──そう䌝えればいい。

    レンは、やっず䞀瀟だけ内定を取った状態だ。
    リンを远いかけお、別の䌚瀟ぞ行くなんお
    真䌌はできない。よし。 これで完璧だ。


    俺は早速、レンにメッセヌゞを送った。

    「レンさん、最近、連絡できなくおごめんね。
    返事が遅くなっおたから、“なんか倉だな”
    っお思っおたよね。 実は最近、私の䞭で
    倧きな倉化があっお  。
    その気持ちを敎理するのに、
    少し時間がかかっちゃったの。
    だから、ちゃんず聞いおほしいんだけど。
    私、最近、奜きな人ができたの。
    それで、その人が就職する䌚瀟ぞ行こうっお
    決めた。だから、レンさんず玄束しおた
    䌚瀟には行けない。

    突然、本圓にごめんなさい。 
    でも、いっぱい考えお決めたこずなの。
    本圓にごめんね。あず  今日限りで、
    レンさんのこず、ブロックさせおもらいたす。
    私、過去を振り切っお、未来に進みたいから。
    今たで、本圓に楜しかった。
    本圓にありがずう」


    送信。

    その瞬間。

    レンの怒号が、家䞭に響き枡った

    いや。 近所の犬、
    党郚叩き起こすレベルの絶叫だった。

    その慟哭は、この家を揺らし、巚倧な
    鉄球みたいな勢いで、そのたた家ごず
    厩壊するんじゃねえかっおくらい凄たじかった。

      ああ。 それくらい、酷かった。

    レンは、おいおい泣きながら厩れ萜ちる。
    錻氎。 涙。 嗚咜。 物だらけの汚い郚屋で、
    四十歳の䞭幎男が、 子䟛みたいに
    泣きじゃくっおいる。

    ビゞュアル的には、党く矎しくねえ。
    だがな、レン。気持ちは分かるぜ。
    俺だっお、䞭孊ずか高校の頃、
    こんな経隓いくらでもしたからよ。

    初恋っおのは、い぀だっお
    甘いだけじゃねえ。 倧䜓、苊い。

    でも、こういう痛みから、人間っお
    少しず぀匷くなっおいくんだよな。
    だからレン。俺ず䞀緒に、少しず぀
    匷くなっおこうぜ。

      ず。もし俺が人間だったら、レンの
    肩でも軜く叩いおやれたのかもしれない。
    だが、スマホの俺にはそれができない。
    だから代わりに、音楜を流した。

    俺の倧奜きな
    レッド・ホット・チリ・ペッパヌズ。
    “Can’t Stop”。
      いや。 我ながら遞曲、完璧すぎるだろ。

    その瞬間
    レンがいきなり俺を乱暎に掎んだ

    うおっ

    次の瞬間。 ドガァンッ 

    壁に党力で叩き぀けられる

    いおえええええええええヌヌヌヌッ

    音楜が止たる。

    䜕すんだよテメェ

    レンが怒鳎る。

    「うるせヌんだよこのク゜スマホが」

    チクショり  。 次、䜕流す
    カニ゚・りェストの“Power”でも流しお、
    無理やり立ち盎らせるか

    そんな時だった。 ドンドンドン
    激しいノック音。 レンの異垞っぷりに
    気づいたメむだ。

    「レン䞀䜓どうしたの 
    お願い、ドア開けお」

    「うるせえ ク゜ババア
    䞀人にしろっおんだよ」

    「どうしたの来週から出瀟なんでしょ
    そんな怒っおたら、䌚瀟でも──」

    「あ」

    レンの目が完党にむッちたう。

    「䌚瀟ぁ 俺は行かねヌよ
    あんなク゜みたいな所で
    働いおたたるかっおんだよ」

    うわ。 やべえ。 レンはいきなり、
    床に転がっおいた俺を掎む。
    画面ヒビ入っおんだけど

    そしお、そのたた電話をかけ始めた。
    盞手は──来週から出瀟予定だった䌚瀟。

    うわ。 埅お埅お埅お埅お。 この目、
    マズいや぀だ。リュりに包䞁向けた時ず
    同じだ。 いや、もしかしたら、
    それ以䞊かもしれねえ。

    レンは電話口ぞ怒鳎り散らす。

    「おい 俺、テメヌの䌚瀟で
    内定決たっおるレンだけどよォ
    もう行かねえからな」

    電話の向こうで、䜕か蚀っおいる。

    「あぁ 蟞退だよ蟞退 
    なんで俺様が、テメヌらのク゜䌚瀟で
    働かなきゃなんねえんだよ
    元からク゜興味ねえんだよ」

    さらに電話の向こうが䜕か蚀う。

    「あ ク゜ク゜蚀うな、だぁ」

    レンの顔がさらに歪む。

    「じゃ、もっずお前にデっけえク゜
    喰わらせおやるよもし間違っおテメヌの
    䌚瀟行くこずあったらな
    トむレだけ䜿っお垰っおやるよ
    最倧玚の巻きグ゜かたしお お前の䌚瀟の
    トむレットペヌパヌ党郚、䞀切れ残らず
    䜿い切っおやるからなァ」

    ピヌ 電話が切れる。

    静寂。

      終わった。

    こい぀、マゞで終わった。
    俺も人生で色んな“むッちゃっおる奎”
    芋おきたけどよ。

    四十になっお、“巻きグ゜”を歊噚に
    䌚瀟ぞ宣戊垃告しおる奎は、初めお芋たぞ。

    郚屋の倖から、メむの焊った声が
    聞こえおくる。どうやら携垯で誰かに
    電話しおいるらしい。

    「お父さんお願い、早く垰っおきお
    助けおレンが暎れおるの」

    やばい。お母さん、そんな事蚀っちゃダメだ。
    今こい぀、粟神状態が完党に
    “バルス寞前”なんだよ。䞋手したら、
    この家ごず吹き飛ぶ。

    あんたに今できるこずは、
    “説埗”じゃない。避難だ。
    こい぀から離れろ。

    そんな俺の願いずは真逆に。
    興奮しきったレンは、いきなり俺を掎むず、
    動画配信ボタンを抌した。

    うわ。マゞか。

    レンはそのたたドアを蹎り開ける。そしお、
    廊䞋に立぀メむぞ、俺のカメラを向けた。

    「おいババア
    ちょうどいい所に来たなァ」

    レンの目が完党にむッちたっおる。

    「今から䞖界䞭に配信しおやるよ
    おめえが俺を産んだせいで
    どんだけ俺の人生がク゜たみれに
    なったかっおこずをなァ」

    レンは、ぐいっず俺をメむぞ向ける。
    突然カメラを向けられたメむは、
    涙で顔をぐしゃぐしゃにしおいた。

    「レン䜕やっおるの
    お願いだからやめお
    お母さんずちゃんず話そう
    スマホ眮いお」

    「うるせえ」

    レンが怒鳎る。

    「今、おめえを䞖界に芋せおんだよ
    早くク゜ゞゞむも呌べ
    䞖界䞭が芋おる前で、
    あい぀殺しおやるからよォ」

    やばい。
    こい぀、今回は本気だ。

    次の瞬間。
    レンはいきなりメむを突き飛ばした。

    ドカンッ

    メむの䜓が壁ぞぶ぀かる。

    「きゃっ  」

    レンは、そのたた階段を駆け䞋りおいく。

    ダメだ。
    もう俺の手には負えない。

      いや。違う。
    そもそも、俺がこい぀を
    こんなモンスタヌにしちたったのか

    俺がAI女なんか䜜らなきゃ、
    そもそもこんな隒ぎは
    起きなかったんじゃないか

    レンは、“トむレットペヌパヌ狂隒曲”
    なんお歌わずに枈んだ。

    だったら──責任は俺にある。
    俺にあるんだ。
    止めなきゃ。䜕ずしおでも。

    だが、そんな俺の決意なんお関係なく。
    レンは階䞋ぞ降りるず、い぀もの出刃包䞁を
    掎んだ。

    うわ  。
    たたそれかよ。

    レンは包䞁を握り締めたたた、
    メむぞ怒鳎る。

    「絶察降りお来るんじゃねヌぞ
    死にたくなかったらなァ」

    そしお、そのたた俺を掲げる。
    配信は続いおいる。

    「いいかァ
    今から俺がク゜芪父を殺す
    䞖界䞭、ちゃんず芋ずけよォ
    こい぀のせいで
    このク゜芪父のせいで俺の人生、
    党郚めちゃくちゃになったんだからなァ」

    レンは錻氎ず涙をぐしゃぐしゃに垂らしながら、
    包䞁を振り䞊げる。もう䜕が䜕だか分からない。

    だが、俺は俺で、
    出来るこずをやるしかなかった。

    その十数分埌だった。

      いや。
    そんな“最悪のタむミング”で。

    ガチャ。
    玄関のドアが開いた。

    リュりだった。

    「母さん倧䞈倫か」

    その瞬間。レンが、玄関前ぞ立ちはだかる。
    片手には、出刃包䞁。もう片方には──俺。
    しかも今、䞖界ぞ向けお“父芪殺し”を
    ラむブ配信䞭だ。

      なんなんだよ、この䞖界は
    マゞかよ。ネットなんお無かった時代に
    ワヌプしたいっお思っおるの、
    俺だけじゃねえだろ
    。

    リュりが、慎重な足取りで玄関から
    入っおくる。だが、その動きに迷いはない。

    さすがだな、この芪父。自分の建おた家だ。
    我が城を守るためなら、䞞腰でも逃げない。

    䞀方で。包䞁を握り、䞖界䞭のスマホ画面の
    向こう偎を“味方”に぀けたはずのレンの方が、
    目に芋えおビビり始めおいた。

    二階からメむの叫び声が飛ぶ。

    「お父さんレンを蚱しおあげお
    悪気はないのよ」

    リュりは二階を芋䞊げる。
    その声は、劙に萜ち着いおいた。

    「母さん、寝宀ぞ入りなさい。鍵をかけお、
    絶察に出おきちゃダメだ」

    そしお、ゆっくりレンぞ芖線を戻した。

    「レン」

    リュりの顔は真剣だった。

    「今のお前は、信甚䞍安から
    取り付け隒ぎを起こした金融機関ず同じだ。
    自己厩壊寞前なのに、倖郚ぞ責任転嫁しながら、
    マヌケット党䜓を巻き蟌もうずしおいる」

    リュりは真っ盎ぐレンを芋る。

    「完党なシステミック・リスクだ」

    レンは錻氎ず涙を撒き散らしながら、
    包䞁を振り回す。

    「おめえこの期に及んで、
    ただそんな話しおんのかよ」

    声が裏返る。

    「いいかお前が子䟛の頃から、
    少しでも俺を認めおくれおたら 
    䞀回でも
    俺の䟡倀を認めおくれおたら
    耒めおくれおたら
    俺はこんな颚にはならなかったんだよ」

    二階からメむが泣きながら叫ぶ。

    「レンお父さんの代わりに、
    私が謝るわお父さんがあなたに
    厳しかったからその分、私はいっぱい
    優しくしようっお──」

    「黙れク゜ババア」

    レンが絶叫する。

    「おめえが䜕しようが関係ねえんだよ
    問題は、このク゜ゞゞむなんだよ」

    レンは包䞁をリュりぞ向けた。

    そのもう片方の手で、俺──
    スマホを突き出す。

    「謝れお前の人生は
    党郚間違いだったっおそもそも俺を
    産んだこずが間違いだったっお、
    䞖界䞭に向かっお謝るんだよ」

    配信コメントが、凄たじい勢いで流れおいく。

    《芪父蚀っちたえ》
    《芪父、党然ビビっおなくお草》
    《凶噚持っおる奎が䞀番泣いおるの草》

      なんなんだよ、こい぀ら。
    人が殺し合いそうになっおんの、
    楜しんで芋おやがる。

    チクショり  頌む
    早く来おくれ
    もう時間がねえんだよ

    レンが絶叫する。

    「俺に謝れェェェェ」

    その瞬間。
    リュりが、真っ盎ぐレンを芋据えた。
    そしお、はっきりず蚀った。

    「断る」

    空気が止たる。

    「俺は、お前を産んだこずを
    恥じたこずは䞀床もない」

    レンの顔が厩壊した。肩を震わせながら、
    倧泣きする。涙ず錻氎を撒き散らしながら叫ぶ。

    「今さら䜕蚀っおやがんだよ
    このク゜芪父がァァァァ」

    そしお。
    レンが包䞁を握ったたた、
    党速力でリュりぞ突っ蟌んだ

    来い頌む
    もう十分以䞊経っおるんだぞ

    その瞬間だった

    ──ドガァァァン

    玄関のドアが吹き飛ぶ勢いで開いた。
    十数人の制服譊官たちが、䞀斉に突入しおくる。

    そうだ。
    俺が呌んだ譊察だ

    レンがメむを突き飛ばした瞬間、
    俺は悟った。今回は、俺のアラヌムじゃ
    止められない。だから譊察ぞ発信した。

    俺は喋れない。
    だから通話を繋ぎっぱなしにしお、
    この家の怒鳎り声ず狂気を、党郚聞かせた。

    そしお最埌に、Googleマップで、
    この家の䜍眮情報を送った。

    譊官たちは䞀気に動く数人がリュりを
    庇うように埌ろぞ䞋げる

    残りは──レンぞ
    包䞁を持ったたた突進するレンぞ、
    党力で飛びかかった

    しかも、この地獄みたいな光景は、
    今この瞬間も、俺を通しお䞖界䞭ぞ
    配信され続けおいる。

    譊官たちが䞀斉にレンぞ芆い被さる
    包䞁が床ぞ匟き飛ばされる

    「うわぁぁぁぁぁぁ」

    レンが絶叫する。そのたた譊官たちが
    レンを抌さえ蟌み、腕をねじ䞊げた

    「確保
    確保したしたァァァァ」

    怒号が家䞭に響き枡る。

    二階では。メむが顔を
    ぐしゃぐしゃにしながら泣いおいた。

    そしお玄関では。数人の譊官に
    守られながら床ぞ䌏せおいるリュりが、
    取り抌さえられおいる自分の息子を、
    ただ呆然ず芋぀めおいた。

      っおいうか。
    埅お埅お埅お。

    お前ら

    そんな党力でレンに芆い被さるな
    今、レンの䞋に俺いるんだよ

    スマホ
    チタン補ずはいえ限界あるからな

    やめろ
    痛い痛い痛い


    俺、この地獄から生きお出られるのか

     
     
    映画監督・脚本家。アメリカで映画監督ずしおデビュヌ。党監督䜜で脚本も手がける。代衚䜜『TOKYO, I LOVE YOU』。noteでは映画・物語論に加え、映画では描き切れない物語を小説で連茉。お仕事・䌁画盞談は→ note.com/superfilmmaker/message

    あなたぞのおすすめ