
死にたくなったら俺に言え(謎の小学生が隣にいた)最終話【光の先に君がいた】
みなとみらい駅に着く。
変わらず、人が多い。
改札を通りエスカレーターに向かう。
同僚を見かけ、軽く手を振る。
無視をされた。
...まあ、いい。
エスカレーターに乗る。
優しい風が緩やかに流れる。
少しだけ景色が滲んで見えた。
それでも何故かキラキラと輝いている。
エスカレーターを登り切った先。
小学生がいた。
小さく手を振っている。
俺は駆け寄る。
「...どうした?」
「あのね...おじさん」
ーーもう、死んでるよ
「え.....?」
両手を見る...
握る...開く...
動く。
その手で顔を覆う。
なんだ?まだ...
生きてる?
何の痛みもない...
人が歩いてくる。
俺にぶつかりそうになる。
避けない...
俺の中を通り過ぎる...
....えっ....
な、なんだ。
...本当に...俺は...
「そう...もうね...」
小学生が少し笑った。
「ボクはここまで...だよ」
「え...ちょっと待ってくれ...」
手を握ろうとしたが、掴めない。
すり抜けてしまう...
やだよ、そんなこと言うなよ...
そばに、そばにいてくれよ
小学生は優しく笑う
「これから小さな旅がはじまるよ」
小学生が離れて行く。
ーーじゃあね またね
言い残したその言葉だけが、やけに軽くて。
やけに、遠くまで響いた。
待ってくれよ...
声は出ているはずなのに、届かない。
足を動かす。
走る。
それでも距離は縮まらない。
人の波の中、小学生の姿だけが、やけにくっきり見える。
なのに...
少しずつ、薄くなっていく。
おい...!
手を伸ばす。
届かない。
また、すり抜ける。
.....くそ.....
立ち止まる。
息は乱れていない。
心臓も、何も言わない。
ただ...
“何もない”だけだ。
小学生の背中が、人混みに溶ける。
完全に見えなくなる、その直前。
一度だけ、振り返った気がした。
笑っていた。
視界が、ふっと白くなる。
駅のざわめきが、遠ざかる。
眩しく光だけが残る。
ーー
目を開ける。
ここは...
この土の匂い...見覚えのある、古ぼけた校舎。
俺が通っていた小学校...のグラウンド?
みんな楽しそうに草野球をしている。
その笑顔はイキイキしていた。
ーー懐かしい面々がいる...
悪ガキ5人組.....マツ、ダイ、ゴン、アキ...
そして...もう1人が...俺....
......そうか
......そうだったんだ
あの小学生は
俺だったんだ.....
小学生の俺は俺に気付く。
少しだけ手をあげた。
ような、気がした。
また、眩しい光が俺を包む。
ーー
ここは...
誰もいない職員室。
目の前の机に作文らしきものが
積み重なっている。
風もないのに...
勝手にパラパラと作文がめくられて行く。
俺の名前が見えた。
タイトルは...
「30ねんごのじぶんへメッセージ」
げんきですか?
ぼくはげんきです。
しあわせですか?
そうじゃなかったら
ぼくがたすけにいきます。
まっててね。
風が吹く、そして光に包まれる。
ーー
河原にいる。
目の前を親父とお袋が手を繋ぎ
通り過ぎて行く。
2人笑っている。
声は聞こえない。
でも、確かに、幸せそうだった。
その背中がゆっくり光に溶けていく...
気づけば、よく知っている古いマンションの前に立っている。
一段、一段...
階段を登る。
心地よい風が流れていく...
部屋の前に着く。
ポケットから鍵を出し、ドアを開ける。
ただいま
おかえり
わん!
うん、幸せだ
やっと、そう思えた
.....ありがとう
終