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つらい時はいいことだけ、思い出してみる


    もし自信をなくしてくじけそうになったら

    いいことだけ、いいことだけおもいだせ


    これはアンパンマンたいそうの歌詞の冒頭です。
    私は、この言葉に救われたことがあります。

    働き始めて数年が経ち、少しずつ責任が増えていきました。
    立場も変わり、今まで先輩だった人を指導する側になることもありました。

    けれど、その頃から職場での風当たりが強くなりました。

    何をやっても否定される。
    間違いを常に指摘される。
    注意された記憶ばかりが頭に残る。

    いつしか、自分が何をしても間違っているような気がしていました。
    どうしたらいいのかわからない。

    そんな時でした。

    当時、子どもがアンパンマンに夢中でした。
    一緒にテレビを見る時間だけは、不思議と仕事のことを忘れられました。

    「懐かしいな」そんな気持ちで眺めているうちに、「あれ?アンパンマンってこんなに面白かったっけ」なんて思うこともありました。

    そしてある日、エンディングで流れたアンパンマンたいそう。
    その歌詞の一節が、耳に飛び込んできました。

    「もし自信をなくしてくじけそうになったら
    いいことだけ、いいことだけおもいだせ」

    という歌詞でした。

    その頃の私は、「自信ってなんだっけ?」という状態でした。
    今にも心がくじけそうで、本当にポキッと折れてしまいそうでした。

    否定される。
    注意される。
    うまくいかない。

    そんなことばかりに意識が向いていました。

    だから「いいことだけおもいだせ」という言葉が、妙に心に残ったのです。

    いいことだけ思い出してみる。

    子どもと過ごす時間。
    妻と過ごす時間。
    ゲームをしている時間。
    友人と遊んだ記憶。
    好きなものを食べた日。
    何気なく笑った時間。

    思い返してみると、意外とたくさんありました。

    その時ふと思ったのです。
    私は、つらいことばかり考えているから、つらくなっているのではないか。

    もちろん、現実の問題が消えたわけではありません。
    職場の状況も変わっていません。けれど、頭の中が苦しいことで埋め尽くされていたことには気づきました。

    否定され続けていたせいか、思考が固まっていたのでしょう。

    できなかったこと。
    失敗したこと。
    嫌だったこと。
    そんなものばかり探していた。

    だから見える景色まで暗くなっていたのかもしれません。

    あなたにも、似たような経験はないでしょうか。

    何かうまくいかない時期が続くと、人は自然と「できなかったこと」に目を向けてしまいます。それは決して弱さではなく、真剣に取り組んでいる証拠でもあります。でも、真剣であればあるほど、失敗や指摘が深く刺さってしまう。

    気づけば一日の終わりに振り返るのは、うまくいかなかったことばかり。「あの一言は余計だったかな」「なぜあの場面でああ言ってしまったのだろう」そんな自問が、眠れない夜を作ってしまうこともあります。

    でも、少し立ち止まって考えてみてください。

    今日一日、本当に何もうまくいかなかったでしょうか。
    誰かにありがとうと言われた瞬間はなかったか。

    小さなことでも、自分なりにやり遂げた場面はなかったか。

    ランチが美味しかった。
    帰り道の空がきれいだった。

    それだけでも、十分です。

    人の記憶は、ネガティブな出来事を優先して記録しようとする性質があると言われています。生き延びるための本能とも言えますが、現代の日常においては、それが自分を追い詰める原因になることもある。

    だからこそ、意識して「いいこと」を思い出すことに意味があるのだと思います。

    アンパンマンたいそうの歌詞は、やなせたかし先生のメッセージです。
    だからこそ、本質をついているのかもしれません。

    現実を変えることはすぐにはできなくても、今日この瞬間に何を思うかは、自分で選ぶことができます。

    まず一つだけ、最近あったいいことを思い出してみてください。
    小さくていい。
    誰かに言えないようなことでいい。

    それが、少しずつ自分を取り戻すための、最初の一歩になるかもしれません。


     
     
     
    小説とエッセイを書いています。 すべてを説明するのではなく、少しだけ余白を残す文章が好きです。 その余白が、読んだ人それぞれの感じ方や考える時間につながれば嬉しいです。

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